「あれ?旦那?」
「んぁ?」
沖田が屯所に戻ると、隊員達の待合室に見慣れぬ銀髪。
思わず声をあげた沖田に、その銀髪がゆっくりと振り返る。
「旦那ぁ、どうしたんですかぃ?とうとう何かして捕まりやした?」
「よせやい。銀さん良い子だもん。捕まってなんかいねェよ」
「じゃぁ何でまた屯所に…」
「いやね、お宅のゴリラさんが…」
『銀時、依頼だ』
『ん?』
『これ。何も聞かず、城のおやっさんトコ届けてやってくれねェか?』
『…書類?』
『あぁ。急ぎなんだけどよ、俺これからどーしても抜けねェ用事があってな。先方には話つけてあっからよぉ』
『…別に依頼なら受けるけどよぉ…良いのか?』
『あ?』
『一般市民に、こんな重要らしい書類任せて良いのかって話』
『まぁ…おめェだしなぁ』
『…は?』
『お前何かつうとウチの手助けしてくれるし。『見るな』って言えば見ねェだろ?』
『……まぁ。一応仕事、だし』
『じゃ、問題ねェじゃん』
「ふぅ〜ん」
「で。仕事終わったんで、知らせに来たら、「じゃぁ今菓子でも持って来るからココで待ってろ」って」
「…あぁ、それで」
「ん?」
「いやぁ、さっき山崎が…」
「山崎?あのジミー君がどうしたの?」
「…あぁ、いいえ、こっちの話でさぁ」
「??」
何だかんだと言って、近藤は銀時を気に入っている。
今回の件だってそうだ。
自身に用事があって行けないのなら、他の隊員に頼めば済む。
それをわざわざ屯所に留まらせたりしたのは…。
「くっくっく、近藤さんも、つくづく土方さんに甘いでさぁ」
「??」
不思議そうに沖田の顔を見ている銀時に、沖田はニッコリと微笑んで。
「まぁゆっくりしてって下せぇ。まだまだ時間は掛かりそうですから」
「えぇ?!そんなに時間掛かるの?!ってかどんな菓子だよ?!」
「真選組取って置きの、飛び切り美味しい甘味ですぜぃ」
土方の今日の巡回場所はココからかなり離れた場所。
最近自由な時間がないとイラついていた所だ。
戻って来ていきなり、最愛の恋人がココに居たら、あの仏頂面はどんな顔をするだろう?
ちらりと沖田が時計を見る。
「…何か用事でもあんの?沖田君」
「へ?」
「いやね、さっきから時計ばーっか見てるから。何か用事でもあんのかなぁ、と思って」
「用事なんかありやせんぜ」
「そう?」
「ただ、そろそろだなぁ〜と思って」
「?何が」
銀時の問いに、沖田がソっとTVを指差す。
「?」
TVには、お昼独特の、ドロドロの恋愛劇が繰り広げられている。
「旦那なら、どうしやす?」
「へ?」
「この、状況」
『…他に好きな人が出来たんだ』
『そんなっ…!』
『君には悪いと思ってる…!けど、…頼む、別れてくれっ!』
「…って言われたら」
好きな人に、好きな人が出来た。別れてくれ。
…そう言われたら。
「俺…なら?」
「えぇ」
「……そうねぇ」
寝っ転がっていた銀時がゆっくり起き上がる。
TVを見て。それから…。
「…別れるよ」
凛とした声が響く。
「別れるよ。綺麗さっぱり」
「…あっさりしてやすねぇ」
「湿っぽいのは嫌いなんだ。別れるんなら後腐れない方が良いだろ?」
「縋り付かないんですかぃ?」
「俺が?あはは、イメージじゃねェだろ」
「銀時…っ!!!」
「おわっ、多串く、ちょっ…!!」
部屋に声が響いたかと思ったら。
銀時の腕を取り、土方がドカドカと廊下を渡る。
「あ〜ぁ、ちょっとからかうつもりがねぇ。…意外な答え聞いちまったぜぃ、旦那」
独り残された沖田がポツリと呟いた。
足音はもう遠い。
「…てっ!」
ガラっと自身の部屋の襖を開けると、土方は捕らえていた銀時を中に押し込む。
「いってェな、何すんだよ!!」
いきなりの扱いに、流石の銀時も声を荒げるが。
「ぐっ!」
ドカっと肩を力付くで抑えられ、その声は続かなかった。
「な、何だよ…?」
「俺ぁ、お前の何だよ…?」
「は、はぁ…?」
「俺は!お前の何だって聞いてんだよ!!」
「何って…何だよ、いきなり!つうか、何で怒ってんだよ!」
「怒るだろうが!!」
「…っ!」
「…久々にお前の声聞けたと思ったら…「別れを持ち出されたらすっぱり別れます」だぁ?!そりゃぁ怒りたくもなるだろうが!!」
「だ、だから!それは『例えば』の話だろうが!!」
「例えだろうが!てめェはそうやってすっぱり、俺を切れんだな!!」
「ぅ…そ、それは…」
「結局それぐらいの想いって事だな、てめェは…」
「ち、違ェよ…」
「あぁ?!何処が違うってんだよ?!」
「…だって、…じゃねェかよ」
「あ?」
「…人の想いは、一生じゃねェだろうが」
「……てめぇ。言うに事欠いて俺の気持ち疑おうってのか?」
「ぁたたた、痛いって!そーじゃなくて!や、そうかも知れないけど!!」
「あぁ?!何が言いたいんだ、てめェっ!!」
「だから!人の想いってのは一生じゃねェだろうが!今はそいつを好きでも、いつかはその人じゃない人を好きになるかも知れねェだろうが!」
「つまり!何が言いてェ?!」
「俺は俺の見る目を信じてんだ!!」
「……あ?」
「あ〜、くそっ!二度と言わねェぞ?!良いか、良ぉく聞けよ?!俺は…てめェを信じてんだ!!」
「あ?」
「俺は女じゃねェから。子供が出来た、結婚したいとか、そう言う縛る術を持てねェ!出来る事はただ、てめェを信じる事だ!」
「……………」
「お前が、んな事言わねェって、信じてる!けど、言われちまったら………見る目がなかったって、諦めるしか…ねェだろ」
つまりは。
信じてるから。
永遠なんてないけど。
誓い合うものは何1つ持ってはいないけど。
君が紡いでくれた気持ち、言葉、それ等を信じているから。
君とならこの想いを添い遂げられると。
…ただ信じているから。
自分の見る目を。
君の気持ちを。
「…銀時…」
「〜っっ、くそ、言うつもりなかったのによぉ〜!!お前が怖い顔して、凄むからだぞぉ?!」
「…んなに怖かったか?」
「ったりめェだ!鏡見ろ、鏡!!」
「…あぁ、今はきっとニヤケ顔が拝めんだろうな」
「〜くそっ、死ね!死んでしまえ!俺の気持ちも汲み取れねェてめェなんか死んでしまえぇっ!!」
「死んだら泣くくせに」
「誰が泣くかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
・END・
2006/06/25UP