「セーラー服、ミニスカチャイナ服、ナース服、メイド服」
「…何だ、それは」
資料室で一服していた俺を突然訪れた男は、開口一番にそう告げる。
何だ。何の話だ。
「やき、腕を上げればヘソが見え隠れするセーラー服と、ギリギリスリットのミニスカチャイナと、ピンクのナース服と、絶対領域のフリフリメイド服、どれが好みなが?」
「……お前な」
…前言撤回。
知りたくない。何の話か解りたくねェ。
「いきなり来て、何アホな事ほざいてんだよ」
痛む頭を抱えながら、俺は口にしていた煙草を近くにあった灰皿に押し付ける。
それから、ぁ、しまった、と思った。
「銀時に着せる服の話ぜよ。折角やき、先生の好みの服にしちゃるぜよ?」
「……そう言う話をしてんじゃねェよ」
…あぁ、聞きたくない話題の核心を聞いちまったよ。
俺のアホ…。
「どれも男が着る服じゃねェだろうが」
「でも銀時じゃったら似合うと思うんやけど」
「…だから、そう言う話をしてんじゃねェっての」
思わず坂田がそう言う服を着ている姿を想像しようとする自分の脳内を殴りたくなる。
…似合う。似合うから困……嫌々、何言ってんの、俺。
「ぁ、解った!やっぱアレじゃな。男のロマン、スクール水着にセーラー服上着だけ」
「っ、だから、違うっての!!お前、アイツの友達だろうが!!!」
堪らなくなって叫べば。
キョトンとした顔を浮かべて。
「そうじゃ。友達ぜよ」
「だったら!普通止めるべきだろが。…何協力してんだよ」
「友達じゃから、協力しちょるんじゃろ?…ぁ、猫耳も着けた方が好みがか?」
「訳解んねェ…。…つうか、それ明らかに要らねェオプションだろう。お前、俺の事何だと思ってんだよ」
「ふむふむ。猫耳属性はない、と。人には言えない性癖があるきに。…訳解らなくぜよ。だって友達にゃ幸せくじゅうてもらいたいじゃろ?」
「幸せになってもらいてーなら、男同士でも良いってのかよ。…属性って何だよ。言えねェ性癖なんかねェし。つうか、お前俺の事そう言う目で見てんのか?あぁ?」
「聞いてみただけきに。気ぃ悪くしやーせきとおせ。…眼鏡は?真ん丸い可愛い奴着けるぜよ。…まぁ、わし等は反対して所で、銀時が決めた事じゃしなぁ」
「決めたって…大体アイツが何で俺に執着すんのかも解んねェっての。…………眼鏡、ねぇ」
「ぁ、眼鏡属性はあるんじゃな」
「め、眼鏡に関しては何も言ってねェだろうが!!」
「あっはっはっは、でも反応したぜよ」
豪快に笑うコイツに俺はやっぱり首を傾げる。
友達だから協力する。
それは理解出来る。
でもそれは異性の場合だろうが。
男の、しかも教師って、普通止める所だろが。
それを堂々…こんななって俺のトコに来る、その意図もいまいち解んねェな…。
俺はポケットから煙草を取り出し、1本口に咥える。
「…ったく。んな事に熱心になるなら、勉強にも熱心になってもらいてーもんだな」
「ん?」
俺が呆れながら呟くと、坂本はメモ帳から顔を上げて、マジマジと俺の顔を見る。
「…何だよ」
「やっぱ教師じゃな〜思って」
「あぁ?ったりめーだろうが」
「まぁ、そんなおんしじゃから、許しちょるちゅうのもあるんじゃがな」
「あぁ??」
意味の解らない言葉に首を捻れば。
「まぁ、今回のコスチューム大作戦(By銀時)は無理ちゅう事じゃな」
「大作戦って…ぁのな、んなのこっそりやって驚かせるモンじゃねェのか?しかも小声で坂田案だって言ってるし」
「まぁ、そこまで頭が回らないのは金時の良いトコろじゃろ?金時曰く、「先生の為
」じゃと」
「良い所つうか…声色と真似すんな、キモい」
「あっはっは〜何気に先生も酷いぜよ。…でもな、わし思うんじゃ」
「?何だよ」
「金時に一番似合うんわ、学ランじゃなかか?」
「あ?制服じゃねェか」
「でも学校の誰より似合う思わんか?」
「あ?あ、あぁ…ん?そ、そうか??」
「そうじゃぁ。あれほど学ラン着こなす男もなかなか居らんきに」
「ん?んん??まぁ、男、だしな…」
学ランに似合う似合わないと言うのが存在するのだろうか。
微かに疑問に思いつつ、俺が頷けば、ニコーっと坂本は笑って。
「そうじゃそうじゃ!何ちゅうても、金時は肌、白いじゃろ?」
「あ、あぁ…そうだな」
「白い肌に黒は栄えるきに。金時が一番似合っちょるじゃろ?学ラン」
「…確かに」
何となく、アイツの学ランの姿を思い浮かべる。
「髪も銀髪じゃき、それがますます学ランの黒を引き立たせてるんじゃ」
「…あぁ、それは解る。あの光にキラキラ光る銀髪が、幻想的で綺麗だよな」
「じゃろじゃろ?最近は髪を切りに行っちゃーせんから、伸びた銀髪が襟足に銀髪が掛かって、白い首に掛かって、ますます綺麗じゃ」
「大体アイツ、首元開け過ぎなんだよな」
「でも鎖骨が綺麗に見えて良かじゃろ?」
「それでも第二ボタンまでなら解るけど、第三とかは開け過…………」
「………………………………」
はた、と気づいて。
思わず口を噤めんだが、時すでに遅し。
そろ〜っと坂本の方に視線を向ければ。
ニコニコと笑う坂本の顔。
…あぁ、今ほどコイツの顔を殴りたいと思った事はない。
しまった。
本当にしまった。
心の底からしまった。
数分前の俺を完膚なきまでに叩きのめしてやりたい。
あぁ、時間よ、戻れ。戻ってくれ。
…頼むから。
「おぉ〜い、金時!コスチューム大作戦(By銀時)のコスチュームが決まったぞぉぉぉ!!!」
「待ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!」
・END・
2007/09/18UP