「あけおめ〜多串君〜」
「だからてめェ、俺は多串じゃねェ……」
ガラリと開けられて自身の部屋の戸。
聞こえて来た声と独特の呼び名に、土方は眉間に皺を作りつつ振り向く。
が。
振り向いた先に居たのは予想と違った装い。
煌びやかな女性の着物。…しかし醸し出す雰囲気は間違いなく予想の人物のそれで。
「銀、時…か?」
恐る恐る尋ねてみれば。
「おう。俺俺。こんな格好してっけど、流石恋人だな。よく解ったな。うんうん、偉い偉い」
ドカドカと部屋に入って来て撫で撫でと、銀時が土方の頭を撫でる。
「撫でるなっ!つうか、俺をんなふざけた名前で呼ぶのはお前くらいしか居ねェだろうが!!」
「むー。何だよ、折角銀さんが褒めてやってんのに」
そしてちょこんと土方の隣に腰を下ろした。
「…お前にそんな女装趣味があったとは知らなかったぜ」
「趣味じゃねェって。仕事だよ、し・ご・と」
「仕事?」
「そっ。お正月から万事屋銀ちゃん大忙しなのよ」
「その気色悪い格好が仕事だぁ?」
「むっ。気色悪いとは失礼な。これでも結構好評なんだぞ」
「……あぁそうかよ。そりゃぁ良かったな」
「あ」
「んだよ」
「妬いてるだろ」
「やっ、妬いてねェっ!!」
「嘘嘘。今すっげェ可愛い顔してた。ありゃぁ妬いてる顔だ」
「かっ…!男が可愛い訳ねェだろ!!つうか、何で可愛いで妬いてるになんだよ!!」
「だって可愛かったんだもん。大丈夫大丈夫。銀さん男は好きじゃないから」
「……あ、っそ」
「あ、でも多串君は好きだよ」
ニコっと銀時が笑う。
(ぅ…)
その表情に土方の怒りは一気に低下する。
(…ったく。可愛いのはどっちだよ)
「多串君?」
「あ?あ、あぁ…つうかてめェ、いつまでんな格好してる気だよ。さっさと着替えろよ。服、俺んトコにあるだろ?」
「俺もそうしてェんだけどよぉ。また夜から仕事でさ。時間空いたからさ、新年のご挨拶がてら会いに来たんだよ」
「…ついでかよ。そりゃぁご苦労さん」
「違います。今年んなってから、まだ会ってねェだろ?どっかの誰かさんが忙しくて。だから俺がわざわざ時間作って来たんだよ」
「……………」
「俺がわざわざ会いに来てくれて嬉しい?」
「……んな格好でなけりゃぁな」
「素直じゃないなぁ、多串君は」
「土方だつってんだろうが」
プイっとそっぽを向かれたが、銀時は満足そうに微笑んだ。
「で?」
「え?」
「マジで着替えねェ気か?」
「だから。お前馬鹿?もしかしなくても馬鹿ですか?」
「あぁっ?!喧嘩売ってんのか?!」
「俺ぁ夜からも仕事だっつってんだろう」
「…じゃぁ一旦脱いで、また着りゃぁ良いじゃねェか。んなヒラヒラヒラヒラ。目障りだ」
「馬っ鹿、お前ナメんじゃねェ。自慢じゃねェが一人じゃ脱げないんですよ、着れないんですよ」
「威張るな。……じゃぁ、今日はずっとそのままって訳か?」
「別に良いじゃん。気にするな」
「気にするわっ!!」
「何々?銀さんの着物姿にムラムラ来ちゃう?」
「………………」
「解った解った。冗談だって冗談。刀しまいなさい、刀」
「…チっ」
「じゃぁさ」
「ん?」
「恋人らしい事、しよっか?」
「……話の流れがさっぱり解らんのだが」
「だぁ〜って久々じゃん。会うの。それにこの格好なら、いちゃいちゃしてても可笑しくないだろ?」
「目一杯可笑しいわっ!!おめェがさっさと着替えれば良いだろうが!!」
「だから。一人じゃ着れないんだって」
「んなの、仕事始める時にまた着せてもらえば良いじゃねェか!!」
「ん〜そう言われればそうなんだけど〜でもその為に早くココ出なきゃ……………あ」
「あぁん?!」
「解った」
「あぁ?何が?」
「お前これ、脱がせたいんだろ?」
「はぁぁぁ?!!」
「あれか?帯の端握って、「良いではないか良いではないか〜」「あぁ〜れぇぇ〜」って奴。アレやりたいんだろう?」
「……………………」
「いやはや。新年早々、多串君もお盛んだね。まぁそんなプレイも、銀さん対応しちゃうけど?」
「……………………」
「ん〜……」
シュルシュルと少しだけ帯を解いて。
「ほい」
端を土方へと差し出す。
「あんまり回すのなしな。流石の俺も目ぇ回すから」
「「ほい」じゃねェよ。「目ぇ回すから」じゃねェよ。「流石」の意味が解んねェよ」
「おぉ、一息で突っ込んだな。ってかやんねェの?」
「てか…それ、一人じゃ着れねェんだろうが…」
「ぅん…まぁ…でも、脱いだら脱いだで早く戻って着せて貰えば良いだけの話だし」
「……………
」
「ん?どったの?ヤんねェの?」
至近距離に銀時が土方に近づいて。
くぃっと首を傾げる。
「……………………」
沈黙が2人の間に流れる。
「……………………」
「って、なぁ〜んちゃって」
「……………………」
「冗談冗談。やっぱ引っ掛かんないか。幾ら銀さんでもそんなプレイに対お…ぅ……」
「…上等だ、こらぁ」
「…はぃ?」
「やってやろうじゃねェか」
「ちょっと待て!落ち着け!瞳孔開ききってるぞ?!」
「言っとくけど、言い出したのテメェだからな」
「え、えええぇぇぇぇ?!嘘ぉぉぉぉん!?」
・END・
2006/06/13UP