最初は何気なく始めた事だった。
アイツと…土方と朝を迎えて。
珍しく俺の方が先に目覚めて。
(あ〜…腹減った…)
痛む身体を騙し騙しソっと起こして。
隣に眠る土方を起こさないように、布団を抜け出して。
(ぁたた…くそ〜…無茶しやがって……)
身体を動かすとあちこちがギシギシする。
本当はすっごくムカつくはずなのに。
着物を羽織って、風呂場に移る。
洗面所に付いてる鏡が不意に目に入り。
…幸せそうに微笑んでる俺が居る。
本当はすっごいムカついてるはず、なのに。
…嬉しそうに微笑んでる俺が居る。
「なぁ〜に緩んだ顔してんだよ」
とてもじゃないが、アイツには見せられない。
そんな事を考えながら、羽織ってるだけの着物を脱ぐ。
熱いシャワーを浴びて。
風呂から出ても。
アイツはまだ夢の中。
疲れてんのかなぁ…。
疲れてんだろうなぁ…。
…そう思うから。
起こさないようにソっと近寄って、キスを送る。
「…んっ…」
あ、ヤベ。
…起こした?
……起こしちゃった?
「…すぅ…すぅ…」
息を殺して居れば。
また聞こえる。
静かな寝息。
…まだ時間あるから。
もうちょっとだけ寝とけ。
今度はソっと離れて。
起きたらきっと、お腹減ってるだろうから。
つうか、俺がお腹減ったから。
朝飯を作ろうとキッチンへ向かう。
神楽は新八んトコ行かせてるから。
多分夜まで帰って来ない。
つうか、帰って来るなって言ってある。
それまでは2人の時間。
不意に笑みが零れる。
…多分、今鏡見たらまたニヤついた、幸せそうに微笑んでる俺が居るんだろうな。
「ご飯と味噌汁…後、納豆で良いかな」
冷蔵庫の中を確かめてメニューを決める。
マヨネーズは…。
「…ぁ、切れてる」
昨日半分残ってたから足りると思ったのはどうやら甘かったらしい。
「…ないと怒んだろうなぁ〜」
怒らないにしてもガッカリするかも知れない。
…。
……。
………。
「…仕方ねェなぁ」
卵…はあるな。
んで、油…胡椒、塩…。
「…ん…銀時?」
そんなこんなをしていたら。
襖がスーっと開いて、部屋から土方が出て来た。
「あ、土方君。起こしちゃった?」
「否、もう起きる時間…って、何やってだ、お前?」
ボウルを抱えてる俺に近寄って。
後ろからボウルの中身を覗いて来る。
「ん?お料理してるの」
「そりゃぁ解るが…何だ?ボウルの中身」
「内緒〜」
「あ〜?んだとぉ?!」
「あ、馬鹿!溢しちゃうだろ〜!」
中身を聞いて来る土方に。
食卓に並ぶまで内緒、と言えば。
何だ何だと、腰に手を回して来る。
いつもはしない、甘い仕草。
「じゃぁ何だよ。教えろって」
後ろから抱き着いて。
コトンって俺の肩に顔を置いて。
いつもじゃ絶対見せない仕草。
…可愛いつったら怒んだろうな。
だってコレが。
こんなんなって俺に甘えてるコレが。
『真選組の鬼副長』なんて誰が想像付く?
「じゃぁ、ヒント。…はい」
ボウルの中のものを指で一掬いして、土方の目の前にやる。
そうすればパクっとそれを口に含んで。
「…あ、馬鹿、コラっ」
指に付いた『それ』を一舐めれば良いのに。
ヤラしい舌の動きで俺の指まで嘗め回す。
「…っ、ちょっ、コラ!駄目、だってば…!」
「…ぅま」
「…ぁ…ん、ちょっと…!朝飯抜きにされてェのか!?」
「…感じる?」
「…馬鹿…」
「くっくっく。んな顔で言われても説得力ねェぞ?」
「…ぅるさい。折角銀さんが朝飯作ってやってんだから!さっさと離しなさい!」
「はぃはぃ」
それを往なせば。
仕方なさそうに指を口から出す。
…も〜昨日散々シたでしょうが。
「だってよ…」
「…何だよ」
不服そうに告げる土方に。
何だと問えば。
「…お前が可愛い事するからだろうが」
「可愛い?何が?」
「…それ」
「それ?」
指を差された、ボウルの中身。
「それ、マヨネーズだろ?」
「あ?あぁ、うん、そう。昨日切れちゃったみたいでさ。ないと駄目かな、と思って作った」
「お手製マヨなんて可愛過ぎだっつうの」
「……何それ」
お手製マヨが可愛過ぎなの?
訳解んね。
「あ〜もぅ。…朝飯良いから、寧ろお前喰いたぃ……」
「…………………」
ぅわ!
すっごい台詞言ってるよ、土方君!!
ってか、俺!
そこ突っ込むトコ!突っ込むトコ!!
「………………………」
「……ふぅ〜ん」
「な、何よ…」
ジっと横顔に土方の視線を感じる。
逃がれようにも、土方がガッチリ腰に手ェ回してるから逃げられない…。
「満更、でもなさそうだな…?」
「……っっ……」
低音で耳元で呟かれて。
ゾクゾクゾクっと背筋に這う、…『快感』
「顔、真っ赤だぜ…銀時?」
「お前がエロい声で呟くからでしょうが…」
あ〜ぁ。
折角朝飯作ったのに。
俺は1つ溜め息を吐いて。
クルリと反転して。
ギュっと土方の首に腕を回した。
「…美味しく召し上がれよ、このヤロー」
「勿論」
嬉しそうに呟くコイツに。
…あ〜ぁ、俺は何でこんなにもコイツに弱いんだか、と呆れるやら何やら。
まっ、コレが『惚れた弱み』って奴か。
「…愛してるぜ、銀時」
「…ん…俺も」
近づいて来る土方に。
俺はソっと目を閉じてキスを待った。
・END・
2006/07/24UP