「……嘘だ…そんなの…信じねェぞ……」



ガックリと、金時はその場に跪いた。
弱々しい小声で、まるで呪文のような言葉を繰り返しながら。



「だから言っただろう。…マフィアは所詮マフィアだ。例外はない。       さぁ、金時」
「…?」
「立て。んで、俺を撃て」



高杉の言葉に、金時は一瞬何を言われているのか理解出来なかった。
身体を強張らせて、そして最初は小さく、次第に大きく、首を振って。



「?!だ、だから出来ねェつってんだろうが!!」
「何でだ?」
「何でって…『仲間』を撃てるかよ!!」
「俺は死にたがってんだよ、金時。お前に撃たれてな。…『夜兎』との約束を違える訳にはいかねェ」
「そんな約束無効だ!俺はそこまでして『攘夷』を復活させたくねェっ!!」
「誰よりも『攘夷』を復活させたかったのはお前だろう?」
「っっ、そう…だけど!『仲間』を失ってまで取り戻したい『場所』じゃねェ!!!」
「いつだってお前と俺の意見は合わねェな」
「んな意見、受け入れる訳ねェだろうが!!」
「…………………………………」
「…………………………………」



互いに、言葉を閉ざした。
ただ瞳をぶつけ合い、沈黙が辺りを支配する。



「……弱く」



不意に高杉が小さく言葉を紡いだ。



「…?」



その言葉にピクリと身体が反応する。
しかし金時はそのまま静かに高杉から紡がれる言葉を待った。
そんな金時に高杉はまるで今にも泣きそうな、それでも口元にだけ笑みを浮かべながら…。



「弱くなったな、金時」
「…!」
「昔のお前なら迷わず撃った。お前は強かった。誰よりも強く、気高かった。…俺はそんなお前に惹かれてたんだ」
「…っっ…」



違うと。
叫びたい気持ちが金時を支配する。
それは強さではなかったのだと。
叫びたいのに、咽喉も口もカラカラで。
何かが絡みついたように、言葉を紡ぐ事が出来なかった。
金時は小さく首だけを振って、高杉の言葉に拒絶の意を伝えた。
だけど。



「撃てよ。銃を構えて、俺を撃て。そしてそれで昔のお前を取り戻せ。俺を     ……殺せ」
「っっ!出来、ねェっ…!!」





「金時…居るのか?!!」





「土、方…?」



がっしゃんと大きな音を立てて、扉のないドアから人が現れた。
…土方だった。
それに驚きながらも、安堵の気持ちが広がった。
土方は金時の姿を見つけると、ホっと胸を撫で下ろし。
そして傍らに居る高杉に気づくと、ギっと高杉を睨み付けた。



「!…高杉!!」
「…くっくっく、こりゃぁ驚いた。まさか金時と警察イヌが知り合いだったとはな」



高杉は土方の姿を確認すると、瞬間驚いた顔をしたが、不敵な笑みを浮かべ笑った。
そんな高杉に構わず、土方は手にしていた銃を構え、銃口を高杉に向けて叫ぶ。



「銃を置いて、両手を挙げろ!!」
「………………………………………」
「俺の言葉が聞こえねェのか!高杉!!銃を置いて、両手を挙げろっっ!!!」



標準を誤らないように左手を沿え、土方は叫ぶが、高杉は意にも返さないように。



「…くっくっく」
「…何が可笑しい?」
「くっくっく…そうか、そう言う事か、…金時」



不意に呼ばれ。
金時は視線を高杉に向ける。



「…?」
「コイツがお前を弱くした。…コイツを殺せば」
「!」



言われた言葉を理解する前に。
金時は行動に移していた。



「お前はまた、…強くなれる」
「止めろ!!!!」


ジャカ!!!


立ち上がり、銃口を横を向いている高杉のこめかみ近くへと押し当てた。



「止めろ…もう止めてくれ、高杉!」
「何だよ、金時。…俺に銃、向けられるじゃねェか」
「違う、違うんだ、高杉。……コイツは…土方は関係ねェ…」



混乱する頭を整理しようと、金時は懸命に自身を冷静にさせようとした。
そんな金時を他所に、高杉は言葉を紡いだ。
それはとても楽しそうに。



「まぁ、俺を止めるのは良いけどな。…アイツ、止めなくて良いのか?」
「…え?」



言われた言葉の意味が解らなかった。
高杉の顔を見て、その表情が楽しげに微笑んでいる事に気づいて、金時は高杉の視線の先に目を向けた。



「……!!」





「そこまでネ」





土方の背後で解らないが、声で解った。



「神楽…?」
警察ポリスが紛れてるなんて…本当鼻の利くイヌ、アルな」
「夜兎…テメェが黒幕か!!!」



土方が動かない事から、背中に銃口でも当てられているのだろう。
土方は悔しそうに唇を噛み締め、叫んだ。



「無駄口叩かない方がヨロシ。お前の背中の銃口に気づかないアルか?お前の頭に風通し良くさせるカ?…ゆっくり、両手を上に挙げるネ」
「…く、そ…!」
「銃、捨てるヨロシ」
「………………………………………………」


…カシャン…


土方の手から銃が落ちる。
静まり返った部屋にその音が木霊する。



「…か、ぐら…」
「待たせてごめんネ、金ちゃん」
「…………………………………………………」



土方の背からひょこっと顔を出し、ニッコリと笑ってそう言った神楽に、金時は何と答えて良いのか解らなかった。
視線を背けた金時に、神楽は何も感じにように。
浮かべていた微笑むを、スっと冷酷な表情へと戻すと、視線を高杉へと向けた。



「高杉。…これはどう言う事ネ?返答次第ではタダでは済まないヨ」
「くっくっく、あ〜済まねェな。ボス。さっさと始末を着けるぜ。…金時」
「!!」



呼ばれた声に、身体が硬直した。
汗が、こめかみから頬に流れる。
冷たくて、ぬるりとした。
…とても嫌な汗。



「引き金を引け。…それで全てが『始まる』」






2008/06/09UP