ただ、伝えたい。
今宵、この日。
…生まれて来てくれて、ただ、有難う、と。
……好きだよ。大好きだよ。
「ただいま〜」
「おっ帰り〜!!」
「ぅわ!な、何だ?!」
食事の用意をして、土方が帰って来そうな時間に玄関で待機。
ただいまと帰って来た瞬間に、お帰りの言葉と共に、俺は土方に抱き着いた。
突然の事で目を白黒させてたけど、しっかりと俺を受け止めた土方。
よしよし。
「お帰り!んで、誕生日、おめでと〜
」
おまけとばかりチュっと頬にキス。
「お、おまっ…知って…!?」
「もっちろん。土方の事は何でも知ってるよん」
「何でもって、お前なぁ…」
「あ〜その目は疑ってるなぁ?本当だぞ〜」
「疑ってなんかいねェけどよぉ…」
「本当だってば。風呂は何処から洗うとか、朝起きた時何するかとか、あ、後何処が一番感じるとか…」
「あ〜あ〜!!解った!解ったから…取り合えず離れろ。家に入れん」
「あ、ごめん」
盛り上がる俺に、土方は少々呆れたとうに溜息を吐いて、俺にそう促す。
俺はその言葉に気づいて、土方から離れる。
「な〜な〜、どうして、んな顔してんだよ。もっと嬉しそうにしろよな〜」
「元々、んなツラだ。つうか、この歳でおめでとうも何もあったもんじゃねェだろうが」
「む〜……って、ぁれ?何か荷物多くね?」
「あ?あぁ…誰が広めたんだか知らねェが、署にも広まっててな。貰ったんだよ」
「…女子からじゃねェだろうな」
「…何かと騒ぎてェんだろ」
「あ〜!これグッチのネクタイじゃん!こっちはシャネル……」
ムー!
やっぱ朝、一番に言えば良かったぁ!!
「な、何だよ…」
ツラだけは無駄に良い奴だかんな。
狙ってる奴、多いんだろうな…。
「貰って来ちまったモンはしょうがねェけど、お前…」
「だ、だから何だよ…」
「浮気だけはすんなよな」
「なっ…!」
「したら泣くぞ」
泣いて喚いて、大声で言ってやる。
コイツは俺んだーって。
「…無駄な心配してんじゃねェよ」
「…へ?」
くしゃっと髪を撫でられて。
…ん?何でコイツ顔赤くしてんだ??
「…お前以外見てねェよ」
「………………………………………」
き、聞きました?!
聞きましたか、この野郎!!
凄い事言ったぞ、コイツ!!!!!!
「あ〜…とにかく飯飯。はぁ〜何か今日は無駄に疲れ……」
「ひ、土方!!」
「ぅわ!な、何だよ」
「ワン、モア、プリーズ!!」
「は、はぁ?」
「今の!もっかい!もっかい言って!!」
「な、何でもう一回言わなきゃいけねェんだよ!良いから飯!!」
「き、聞こえなかった!聞こえなかったから、もう一回!!」
「バッチシ聞こえてたじゃねェか!」
「良いじゃん、減るもんじゃねェし!」
「減るわ!俺の羞恥心的何かが…!!」
「羞恥心なら減った方が良いじゃねェか!な?!もう一回だけ〜!!」
「だぁぁ!まとわり着くな!!俺は疲れてんだ!そして腹も減ってんだ!!!」
「ケチ〜!土方のケチ〜!!」
そそくさと部屋に入る土方に、ブーイングして。
俺は玄関に置いたままの袋いっぱいの荷物を持ってリビングへと行く。
「は〜…しっかし本当に貰ったなぁ…」
それもどれもこれもブランドモンじゃね?
んなに警察って儲けてんのかよ。
税金食いモンにしてんの?
つうか、こんなモン受け取ってる、アイツが…!!
「…言っとくけど」
「はへ?」
振り向くと、軽装に着替えた土方が、袋を覗き込んでる俺に声を掛けて来た。
「それ、勝手に机に置かれたモンだからな」
「…………………………………」
「直接受け取ったのは近藤さんからとか、同じ部署の男からだけだからな」
「…………………………………」
「な、何でそこで怒ったツラになんだよ…」
急にムっとした顔つきになった俺に土方は動揺してる。
お前は浮気じゃねェって、主張してるつもりかも知れませんけどね。
「…そりゃアレか。断ってこの量って自慢か、この野郎」
「は?!ち、違っ…!!」
「ホスト気取りか、この野郎ー!!」
「ぅわっ…!!」
袋の中身を土方にブチ撒けて、俺はキッチンへと入る。
何だ何だ、この野郎!!
「怒んなよ」
「怒ってません」
「怒ってんだろうが」
「む〜…」
「お前だって誕生日でもねェのに、高価なモン貰って来てんだろうが」
「ホストは良いの。お客さんの気持ちなんだから」
「俺のだって気持ちだろうが」
「気持ちって、そりゃ好きって気持ちだろうが!んなもん、余計貰ってくんなー!!」
「…金時」
「…っっ…」
がーっとなった俺の手首をパシっと掴まれて。
いつの間にか間近に来た土方がジっと俺の顔見る。
…うっ。
「嫌なら来年からは全部捨てる。今回のだって捨てるし…来年もお前が祝ってくれんなら、何も要らねー」
「べ、別に捨てる必要は……」
「だから。怒んな」
「………解った」
…本当。
無駄に顔だけじゃ良いよな。
くっそー。
「土方君、ホストんなれば?」
「はぁ?」
「モテるよ、きっと」
「別にモテたくもねェし、警察って職業が俺には向いてると思ってる」
「ぁははは、確かに」
そんな会話をしながら、食事の準備も完了。
2人でテーブルについて。
「乾杯」
「乾杯。誕生日おめでとう、土方」
「…サンキュ」
ワインを開けて、2人でグラスを傾ける。
テーブルには俺の手料理が溢れんばかりに乗ってる。
「しっかし随分作ったな」
「うん。はりきって作った」
「どれも手が込んで。すっげェ」
「だ〜ってお祝いしたかったんだもん」
「2人で食いきれるか?」
「そしたら明日食えば良いじゃん」
「いーや。…やっぱ今日中に食う」
「へ?む、無理すんなって」
「だって今日の為に作ったんだろ?じゃぁ、今日中に食わなきゃな」
「そう…だけど」
「な。…いただきます」
そう言って手を合わせて、料理を食べ始める土方。
今日の為。
だから、今日中に、か。
「へへ…」
「何だよ」
「べっつに〜。…ぁ、そうだ」
「ぁん?」
「プレゼントもあんだ」
「え?!ま、マジでか…?」
「うん。マジマジ。…ちょっと待ってな」
俺はそう言って席を立つ。
最初はどうしようか迷ったんだけど、でも、うん…せっかくだからと思って。
「はい」
「あ、有難う…」
小さく梱包された箱を土方に差し出す。
土方は少し戸惑ったように、それを受け取る。
「あ、開けて良いか…?」
「うん」
そろそろと言った感じで、それを開く。
どう、だろう…。
「……………………………………」
「あ、のさ…!お前が、そう言うの着けないのは知ってるんだけど、その…お、お前に似合いそうだから…」
プレゼントしたのは、クロスのネックレス。
土方がこう言う類のアクセサリーをしないのは知ってるんだけど、見た瞬間に土方に似合いそうだな、と思ったから。
それに…。
「だ、駄目かな…?」
「…否。お前が似合いそうだつって買って来てくれたモンだろ?…嬉しいよ」
「よ、良かった」
何とか受け取ってくれて、ホっとする。
「着けてみるか」
「う、うん」
モゾモゾとしながら、それを着ける。
「あ…やっぱ良く似合う」
「そっか?何かいつも着けねェから、変な感じだな」
照れくさそうに笑う土方に、俺も笑みを浮かべる。
想像以上に似合う。
良かった…本当に。
「サンキュな」
「うぅん。良かった、気に入ってくれて」
「…料理とかだけで充分なのに」
「うぅん。…あげたかったんだ。……それに」
そう。
ネックレスをあげたのには意味がある。
「…それに」
「ぁ、っと…」
促されて、ちょっと戸惑う。
これって、あれ…だよな。
「金時?」
視線を彷徨わせていたら、優しい声で呼ばれて。
ピクンと、身体が反応する。
「ぁ、のな」
「ぅん?」
「…ネックレスをプレゼントする、ってのはな」
「あぁ」
「………………………………………」
ガタっと席を立って。
土方に歩み寄る。
…きっと。
…多分。
「ネックレスをプレゼントするってのは」
「?」
スっと腕を伸ばす。
キュっと腕の中に土方を捕らえて。
「…お前をずっと、縛っておきたい、って事」
耳元でそう呟いて。
チュっとキスをする。
「…お前…」
「……………………………………」
…きっと。
…多分。
独占欲の強い奴だと。
思われるかも知れない。
否、思うよな。
でも、な。
お前が本当は凄く優しい奴だって、俺は知ってる。
これからだってきっとお前は数え切れない人を救って、中には俺みたいにお前を好きになる奴が現れるだろう。
それでも、きっと。…絶対。
俺以上にお前を好きに…愛する奴はきっと現れないから。
忘れないで。
俺はお前を世界一愛してる。
ずっと、ずっと…。
「…馬鹿だな、お前」
「……何で」
「…さっき、言ったろ」
「ん…」
サラリと、指が俺の頬を伝って。
髪に伸びたと思ったら、そのまま引き寄せられる。
それに逆らわないまま、唇が触れる。
熱が…伝わる。
「…『来年もお前が祝ってくれんなら、何も要らねー』って」
「…んっ、ぁ…」
「だから。縛るモンも何も要らねェよ。…俺はお前が居れば、それで良い…」
今宵。
この日。
生まれて来て、おめでとう。
生まれて来てくれて、有難う。
俺と出会ってくれて、有難う。
俺を選んでくれて、有難う。
HappyBirthday、十四郎。
・END・
2007/05/05UP