解らない事ばかりだけど。
そんな中で、解る事がある。解った事がある。
それは…。

質問 × 回答 × 決定事項?
コンコン

隣の窓をノックする。


「トシー、居るかー?」


それから声を掛けるが、返事はない。
まぁ、部屋に明かりが点いてないから、居ないのは確信犯だ。


「居ませんねー、っと」


カラリと窓を開け、身を乗り出し、窓から部屋へと入る。
それから勝手知ったるトシの部屋、ってなモンで部屋に明かりを点けて。


「誰にも言わねーから。ごめんな、トシ」


多分風呂にでも入ってんだろう。
不在の部屋の主に謝って、俺はキョロリと部屋を見渡す。
だって気になるじゃん!知りたいじゃん!


抑えきれない好奇心に、俺はもう一度グルリと部屋を見る。
うーん、目に入るトコにはやっぱねーか。
つか相変わらず、綺麗に整理整頓された部屋だ。


「まずは…ベットの下」


ひょいっとベットの下を見る。
…ない。
枕の下にももちろん、ない。


「えー、後机の中とかぁ?」


引き出しを開ける。
…うーん、ない。
タンスとか、備え付けの収納場所にもない。


「えー、じゃぁ何処よ?」


某死神ノートの主人公みたいに辞書のケースの中とか?
まさかと思いつつ、辞書ケースを取り出すと、そこにはズッシリと重い辞書がやっぱり入ってて。


「あったらあったで複雑なんだけど。なきゃないで、それもちょっと…」


健全な男子高生として、それってどーよ?と思ってると。


「あ?んだ、来てたのか」
「!!」


ガチャっとドアが開いて、風呂上りのトシが戻って来た。
俺は瞬間ビクっとなるが、振り返って。


「お、おぅ。邪魔してるぜ」
「あぁ。悪かったな、風呂入ってた」


トシは俺の様子に気づいた様子はない。
は〜…ビビった。
追求されたら、何て答えて良いのか解んねーよ。
まさか馬鹿正直に「エロ本探してました」なんて言える訳ねーし。


「……………………………………………………」


チラっとトシを見る。


「ぁん?どうした?」
「な・何でもねー!」
「?」


つか、…色っぽくね?
…濡れた黒髪とか。
うぅ、辰馬と高杉が変な事言うから、妙にそっち方面に意識が…。
てか、顔熱い。
もしかして俺、今顔赤くなってねーか?


「ん?何かお前、顔赤くねーか?熱でもあんじゃ…」
「お、俺も風呂入ろっかな!借りるな、風呂!!」
「あ?あ、あぁ…」
「おばさーん!風呂貸して〜!!」


トシの言葉を遮って。
俺は慌てて、部屋を出る。
そして大声でおばさんに風呂を借りる事を宣言し、階下へと行く。
う〜、駄目だ駄目だ!
何か変に意識しちまって、何かもう駄目だ!
風呂にでも入って、頭サッパリさせよう!!







「あー…逆上せた…」


湯船に浸かって、何か色々考えてたら、どうやら逆上せたらしい。
ボーっとする頭でトントンっと階段を上がる。
そしてトシの部屋に着くと。


「…ずいぶんゆっくりだったな」
「んー?んー…、何か色々考え事してたらなー…」
「考え事?」


…あ。
しまった、と思ったら。


「何かあったのか?」
「い、否、別に何もないけどさ!俺もたまには、何かこう…考えるんだよ、色々と」


急いで取り繕いの言葉を紡ぐ。
トシはそれを少し怪訝そうな表情で聞いて。


「色々と、なぁ…」
「そう、色々と」


何処か納得行かない風だったが、それ以上は追求して来なかった。
それにホっとしてると。


「つか、さっきから髪からポタポタ水滴垂れてんぞ。ちゃんと拭けよ」
「う、うん…」
「拭いてやるから。…ほら、こっち来い」
「え…い、良いよ。自分でやる」
「テメーで拭いて、そのざまだろ。それにいつもやってやってんじゃねーか」
「良いってば。それに子供ガキじゃねーんだから。それにいっつもなんてやってもらってねーっての」
「いつもじゃなくても、結構頻繁にやってやってんじゃねーか。てか、何遠慮してんだよ」
「遠慮じゃなくて!」
「遠慮じゃなくて?」
「う〜…」
「唸ってねェで。ほら、銀時」


甘い声で呼ばれて。
…多分本人には意図も、甘く呼んでるつもりもねェんだろうなぁ、なんて思って。
こう言うトコ、ホントズルいと俺は常々思う。
ズルいと思うけど。…抗えない。
悔しいが、俺はどうやらトシに甘える?のが好きらしい。
ぜってー本人には言わねーし、悟らす気もねーけど。


「おい」
「…わーってるよ」


俺は促されるまま、トシへと近づく。
てか、何で俺こんな緊張してる訳?
確かに、んなのトシも言う通り、いっつもじゃねーけど、よくやってもらってんじゃん。
緊張する必要なんてなくね?
あっちだって全然気にしてる様子、ねェんだし。
ドキドキする胸を押さえて、トシの元に辿り着く。
そっと、首に巻いてたタオルを外され、頭に宛がわれる。
それから優しい手付きで、頭を拭かれる。
俺は下を向いたまま、なすがままだ。


「……………………………………………………」
「……………………………………………………」


沈黙が。部屋を支配する。
これって、何かしゃべった方が良いのか?
いつもはどうしてたっけ…?


「おい」
「へ?!な、何?!!」
「?何ビビってんだよ」
「び、ビビってなんか居ねェよ?!」
「声引っ繰り返ってるし」
「引っ繰り返ってねーって!!」
「解ったよ。でけー声出すな。今何時だと思ってんだよ。後ろも拭いてやるから、後ろ向け」
「お、おぉ…」


言われるまま、後ろを向く。
すると。


「ちょっと拭き難いな」


そう言って、トシが俺の傍を離れ、ベットへと腰掛ける。
?何だ。


「ココ、座れ」
「へ…?」


指差された場所。
そこは足を開いたトシの、間の床、だ。
え、それはちょっと…。


「ほら、早く来い」
「え、あ、ぅ・ぅん」


何か今更拒否るのも変な気がして。
俺は頷いて、そこに座る。
ぅわ、心臓の音、静まれ…!!


「……………………………………………………」
「……………………………………………………」


ち、沈黙が痛い…。


「……………………………………………………」
「……………………………………………………」


何かしゃべれよ!
しゃべってよ、お願い!!
300円あげるからぁぁ!!!


「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」

…チュっ…

「!!!!!」


項に感じた柔らかい感触。
自分の身体が、カっと熱くなるのを感じて。


「いいいいいいいいい、今っ!」


バっと項に手を当てて、振り向く。
てか、今!項にチューした!!


「くっ、顔真っ赤」
「だ、ば、て…!」


あぁもう。
言葉が出ねェ。
言葉なんて出る訳がねェ。


「何、意識してんだよ」
「いっ…、な…、おまっ…!」
「何言ってんのか、全然解んねーよ」


否!お前何でそんなあっけらかんとしてんだよ!!
慣れてる?慣れてんの、お前?!!


「……………………………………………………」
「…銀時?」


何かそう考えたら、無性にムカついて来て。
俺はプイっとトシから顔を背けた。
そしたらトシは不思議そうに俺を呼ぶ。
けど、ぜってー見てやんねー。
テメ、俺の知らないトコで遊んでやがったな。
アレか、優等生風装って、影で遊んでたんだな。


「おい、どうしたんだよ、銀時」
「…んでもねーよ」
「何でもねー訳ねーだろ。何だよ、急に不機嫌になってんだよ」
「別に不機嫌になんて…なってねーよ」
「なってんだろーが」
「なってねーつってんだ」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……ハァー、悪かったよ」
「…別に謝ってもらうような事、されてねー」
「されてんだろ。俺が項にキスしたのが嫌だったんだろ」
「別にヤだった訳じゃ……」


そこまで言って、ハっとなって口を噤んだ。
ヤバい。俺、何言ってんだ…。


「…ヤじゃ、なかったのかよ」
「うっせー。もうこの話題お終い。終わり!」
「答えろよ。銀時」
「……別に、…ャじゃなかったよ。ビックリした、だけ」


真摯な声に、俺はもう観念して答える。
一度真剣に問い掛けて来たトシは、答えるまでしつこい。
それを知ってる俺は、観念するしかないのだと、長年の付き合いで知ってる。


「じゃぁ何で、怒ったんだよ」
「だ、から、それは…」
「何だよ?」
「…………ょって思った、から」
「は?聞こえねーよ」
「だ・から!慣れてる風だから、どんだけ遊んでたんだよって思っただけつってんだろ!!」
「……………………………………………………」
「優等生風装って。お前俺の知らないトコで、何処で遊んでたんだよ」
「…おま、……それ勘違いだ」
「はぁ?今更とぼける?とぼけますか、このヤロー」
「マジだって。つーか、誰よりもテメーが俺と一番長い付き合いだろーが」
「だから俺の知らないトコで遊んでたんだろーが」
「だからちげーって」
「…嘘だ」
「本当だって。テメーとした、この間のキスがファースト・キスなくれーだ」
「ぇ、マジで?」
「マジで」


信じられない言葉に、思わずポカンとトシの顔を見れば。
今度はトシが俺から視線を逸らして、呟く。でもほんのり頬が赤い。
ま、マジでか…。


「じゃ、じゃぁ何でさっきの、あんな慣れた風だったんだよ!」
「別に慣れてる風じゃねー!お前の耳が真っ赤になってたから、遊び心でやっただけなんだよ!んで、お前が超テンパってたから、逆にこっちが落ち着いたつうか…」
「お、俺で遊ぶな!」
「遊んでねーよ、悪戯心だろ。…俺はお前の反応で、落ち着いたつうか、……そう言う訳だ。別に慣れてる訳でもねーよ」


ガシガシと頭を掻いて。
白状したトシに、俺はやっぱりポカンとするしかなくて。
何…じゃぁ、マジで俺の勘違い?


「なぁ、トシ」
「あ…?」


俺がトシを呼ぶ。
するとトシがこっちを向くから。
そのままソっと唇を合わせる。
すると。


「な…!!」
「……………………………………………………」


バっと俺から距離を取って。
真っ赤な顔するトシが居る。
…マジだ。


「おま、何……!!」
「ニヒー、マジだ。トシ真っ赤ー」
「あ、当たり前だろ、おま…!!」
「……なぁなぁ、トシ」
「あぁ?今度は何だよ…」
「ぶっちゃけて聞くけどさ」
「?んだよ」
「トシはさ、俺とヤりたいとか思う?」
「は?!な、何が?!!」
「だから。…トシはさ、俺とSexしたいと思う?」


俺がそう言うと、トシはもう言葉が出ないと言う風に真っ赤になって口をパクパクさせてる。
…別にからかってる訳でもなくて。
昼間、辰馬達と話してて、フと思った事。
トシは俺とSexしたいと思ってるのだろうか。
俺は考えないようにしてた。
同性だし、幼馴染だし。
小さい頃から一緒に居たから。
この気持ちに気づいて、両想いになるなんて絶対ないとも思ってたし。
それが両想いになれて。
まさかその先を考えるなんて思わなかったから。
きっとトシも同じなのかな、って思ってたけど。
でもホントを知りたい。


「あー……真面目に答えた方が良いか?」
「ったり前じゃん」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……正直。ヤりてーと、思う」
「そう…なんだ」
「…テメーは?」
「俺?」
「あぁ」
「んー……よく、解んねェ」
「解んねェ?」
「だって、ぜってー両想いになるなんて思ってなかったし。同性だし」
「あぁ、それは俺も」
「だろ?その先なんか考えた事もねーって言うか。考えないようにしてた」
「まぁ…俺もそう、かな」
「だろ?」
「ん。でも、俺はその事考えたら、素直にヤリてぇと思ったぜ。お前と」
「そ、そうかよ…」
「まぁ、お前がヤりてーと思うまでは、待っててやるよ」
「…んで上から目線なんだよ。因みにだけど、トシはどっちが良いの?」
「どっちって?」
「えーっと……挿れたい?挿れられたい?」
「は・はぁ?!テメ、俺を掘る気か!!!」
「え、えぇ、俺、掘られんの?!」


驚いた風のトシに、逆に俺の方が驚く。
えぇ、何?トシの中では決定事項なの??


「…念の為聞いとくが、お前、俺に挿れたいのか?」
「……解んね」
「解んねー、か」
「ったりめーだろ。だって、ヤるとか、そう言うのも考えた事ねーつーか、考えねーようにしてたのによぉ」
「そりゃそうだな」
「と、トシは、ど、どうなんだよ…?」
「………俺は」
「俺は…?」
「…お前を抱きたい、と思ってる」
「!!」
「お前に……触れたい」
「た、タンマ!!ちょっ、待ってって!!!」


突然の告白(?)に、心臓が爆発しそうだ。
ちょっちょっちょっと待って!
んな事急に言われても…否、話振ったの、俺だけどね?!


「別にすぐにとは言わねーよ。お前がその気になるまで、いつまでも待ってやるって言ってんだろ」
「……だから、何で上から目線なんだつうの」


ポンっと頭を叩かれて。
辛うじてそう返す。
でも心臓は全力疾走したみてーにドキドキしてっし。
顔もこの上なく熱い。きっと耳まで真っ赤だ。耳もすっげー熱い。


「…そろそろ寝るか。テメーも自分の部屋、戻れ」
「……ぅん」


頷いて。
俺は窓から自分の部屋に戻る。


「お休み」
「お休み」


そう言って窓を閉め、カーテンをする。
ベットに寝転がっても。
さっきのトシの言葉が頭をグルグルする。
トシは。
俺の事、そう言う風に見れんだな。
そう思っても。
不思議と嫌悪感なく、代わりに妙な高揚感と言うか、フワフワした気持ちになる。

(喜んでんのかな、俺…)

よく解らない。
何か俺、解らない事ばかりだ。
解んない事ばっかだけど。
解らない中で、解る事・解った事がある。


『お前に……触れたい』

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ」


脳裏でリピートされるトシの声が、どうしようもなく、俺をドキドキさせると言う事と。
今夜は眠れそうにないって事。



・END・
2011/06/29/UP