どうしてなんだろう。
閉じ込めようと。
押し殺そうとしているのに。
それを止めるのは。
…どうしていつもお前なの?

手紙 × 電話 × 鬼ごっこ × バイト



(ない!)

(ない、ない、ない…!!)


俺はその夜。
そりゃもう、部屋全部の荷物をブチ撒けたんじゃないかってくらい、物を引っくり返して。


「おい、銀時!今何時だと思ってるんだ、もう寝ろ!!」
「わ、解ってるよ、親父!!」


夜中にそんな大捜索を始めたもんだから、親父には大目玉喰らうし。
しかも探し物の手紙は見つかんないで、散々だった。


「ちょっと待て、俺、落ち着け!」


今日は、…そうだよ、トシが俺の約束ドタキャンして、俺はすンげームカついて。
ゲーセンで格ゲーでもやってスカっとしようと思ったんだけど、途中で補習のプリント忘れて。
しかもそのプリントつうのが、すンげー強面の、ヘドロセンセーの奴で。
やんなきゃ殺されると、溜息一つ学校に戻ったんだよ。
そんで、辰馬と高杉に会って。
丁度良いとばかりにトシの事愚痴って。


「んで、あーして、こーして…」


そうだよ。
下校時間になるまで教室に居て、見回りのセンセーに帰れって言われて、「へぇ〜い」って返事して。


「確かにカバンに入れたんだよ…」


絶対入れたはずなのに、カバンの中身全部取り出しても。
引っくり返して振っても、手紙は出て来なかった。
もしかしてカバンの中に入れてた教科書の間に挟まってるのかと、教科書バサバサ逆さまにして振ったけど、なくて。
後は、帰って来てカバンの中身出した時にどっかに落っことしたか、だけど。


「机の下も、全部探したのにねーよー!!」
「銀時!!!」
「わーたよ!!!」


頭を抱えて叫ぶ俺に、親父からの激怒が飛ぶ。
こりゃそろそろ止めねーと爆弾が爆破するな。
寝る…つっても寝れねーよ。


「教室か…?でもぜってー入れたと思うんだけど…」


考えられる要素は、教室のみ。
教室にあれば良いんだけど…あれば良いのか?


「とにかく、即行回収してねェとな、うん」


朝一で学校行って、教室ん中探そう。
俺はそう決意して、目覚ましを掛ける。
…が、しかし。
結局寝れなかった俺は、空が明るくなるや否や飛び起き、家を飛び出す。
トシには俺を迎えに来る頃の時間にメールするとして。
マジで、手紙、教室にありますように!!


「ってやっぱ校門、開いてねーよなー」


学校に着き、閉じたままの校門に溜息一つ。
こんな早く、学校来たくなかったけど、まぁ、しょうがねーだろ。
早く手紙見つけて、安心して寝てーよ。
俺は校門を飛び越え、教室に向かった。
まだ校舎には誰も居ないらしく、ガランとしてる。
いつもは騒然としてる教室が、ガランとして静かなのが落ち着かない。


「っと、到着!まーずはー床!」


教室に着くと、カバンを投げ捨て、床に這い蹲る。
床には紙一つ落ちてなくて、俺をがっかりさせる。
や、床が綺麗なのは良い事だけど。


「やっぱ机か…?」


物が詰め込まれてる自分の机に手を突っ込み、中に入ってるものを掻き出す。
しかし中に入ってたのは、プリントとか、要らなくなった答案用紙とか、要らないモンばっか。
有り得ねェけど、ロッカーも引っくり返してみたが、結果は机の中と同様。


「だー!マジで何処行った!!」


マジで何処行ったんだよ…勘弁してくれ…。


「人生初のラブレターだつーのー…」


ガックリと項垂れる俺に。


〜♪〜♪〜♪


「んだ?!電話?この忙しい時に誰だよ!!…はい、もしもし?!」


突然鳴った携帯。
俺は半分キれ気味に携帯に出ると。


『…んだ、もう起きてんのか』
「っ、トシぃ?!」


バっと教室の時計を見れば、そろそろ皆が登校して来る時間。
ヤバ、探しモンに必死でトシに連絡すんの忘れてた!!


「わ、悪ぃ、俺今日、もう…」
『その分なら間に合いそうだな』
「…は?何が?」
『学校。…悪ぃ、俺、もう学校来てんだ』
「はぁ?!今日朝錬あったっけ??」
『ねェ。…ちょっと野暮用があって、早目に学校来たんだよ』
「何だよ、野暮用って?」
『野暮用は野暮用だよ。つー訳で、今日はテメー一人で学校行けよ』


つーか、俺ももう学校居るっての。
俺がそれを言おうとしたら。


『…なぁ、銀時』
「んぁ?何だよ」
『……………………………………………………』
「?おい、トシ、…電波悪ぃのか??」


突然途切れた会話に、携帯の電波状況でも悪いのかと携帯の画面を見る。
画面はまだ通話状態のままで。
電波も3本、ちゃんと立ってる。


「もしもーし?トシぃ?聞こえてるか?」
『…………………………か?』
「は?んだよ、聞こえねーよ。電波悪ぃのか?こっちは3本立ってるぞ?」
『…お前』
「ん?何だよ」
『………もし、もしもだけどよぉ』
「…?何だよ」
『誰かに告られたりしたら。…ソイツと付き合うのか?』


…は?
いきなり何を言い出すんだ、コイツは。
誰かにって…誰に?
つうか、何でいきなり、んな話……。
話に……。
…。
……。
………。
………………。


「……………………………………………………」
『……………………………………………………』
「……………………………………………………」
『……銀時?』
「あ                         !!!!」
『な、何だ?!!』
「手紙ぃぃぃぃぃ!!!」
『…っ』
「テメーだな、トシ!俺の部屋から手紙持ってただろ!!」
『な、何…』
「返せっー!馬鹿!!よりにもよってオメーが持ち出すか!!最悪だ!!お前今何処に居るー!!」
『何処って…』
「学校つったよな?!学校の何処だよ、俺も今学校に居んだよ!!」
『は、はぁ?何で…!』
「何ではこっちの台詞だ、ボケェ!ちょっと待ってろ、今そこに行く!!!」


俺はブチっと携帯を切る。
アイツが居るとなると、場所なんて限られてる。
教室か裏庭、部室・剣道場に、屋上!
まずはこっから一番近い、屋上から…!


「って、居たー!!」
「ゲっ!」
「ゲじゃねーよ!何お前逃げようとしてんだよ!コラ、待て、泥棒!!」


ガラっと教室から出たら。
階段を駆け下りてる、トシ発見。
この野郎、何バックレようとしてんだよ!
俺は急いでトシの後を追う。


「おい、コラ、トシ!止まれ!手紙返せ!!」
「うっせー!ついて来んな!!」
「アホか!ついて行くに決まってんだろーが!!」


何で朝っぱらから、俺はトシと鬼ごっこをしなきゃなんねェんだよ!
こっちは徹夜明けなんだぞ?!


「お、トシ。それに銀時。朝から元気だな〜」
「うっせーゴリラ!好きで走ってんじゃねー!!っ、待てっての、トシ!!」
「テメー近藤さん、ゴリラつうなつってんだろーが!!」
「今は、んな事言ってる場合じゃねェっての!こっちは徹夜明けなんだよ、いい加減止まれっての!!」
「テメーだけ止まれば良いじゃねェか!!」
「ふざけんな!良いから、手紙返せっ!!」


俺がそう叫ぶと。
ザっと急にトシは立ち止まる。
…いつの間にか、裏庭んトコまで来ちまったじゃねェか…。


「ぜぇ〜ぜぇ〜、よ、ようやく観念したか、この馬鹿トシ」
「……んなに大事かよ」
「あぁ?」
「んなにこの紙切れが、大事かって聞いてんだよ」
「はぁ?何言ってんだよ」
「答えろよ」
「……………………………………………………」


何、ピリピリしてんだよ。
んな、お前だっていっぱい貰ってんじゃねーかよ。
…ま、トシが持ってるそれは、意味合いがちっと違うけど。


「…ハァ。……大事だよ。………これで良いだろ。ほれ、返せよ」


溜息交じりに答えて。
トシに近づこうとすれば。


「…っ、んなのただの紙切れじゃねェか……」
「…トシ?」


背を向けたまま。
トシの目の前にかざされた、真っ白な封筒。


「?!っ、トシ!!」


それの両端を、トシは持ってて。
力を込めたのか、真ん中から、切れ目が入る。
…俺は。
それに気づいて。
必死にトシの腕にしがみ付いた。


「っ、何してんだよ!何やってんだよ!!」
「…っっ!!」


俺がそう叫ぶと。
トシはハっとしたように呆然と俺を見て。


「……悪ぃ」


それだけポツリと呟いて。
ダランと腕を下げて。


「…俺、何やってんだ…」
「ト、シ…?」
「最悪だ…悪い、銀時」


ガっと俺の胸元に手紙を押し付けて。
もう片方の手で、自分の顔を覆ってる。
だからトシの表情は俺には見えない。
見えない、けど。


「てかさ、トシ」
「…ん、だよ…」
「多分だけどさ、勘違いしてるよ。トシ」
「勘違い、だと…?」
「うん。…これさ、何だと思う?」
「何って………ラブレター、だろ?」
「違う違う。これ、依頼書」
「依頼、書…?」
「ほら、俺、万事屋やってんじゃん」
「あ、あぁ…何でも屋みてェな奴、だろ?」
「うん。これね、それの依頼書」
「……………………………………………………」


俺がトシの眼前に手紙を振って見せる。
俺の言葉を聞いたトシが、顔を上げて茫然自失と言った様子で俺を見る。
そんなトシが可笑しくて。
ニヤっと笑って。


「何だと思ったのかな〜トシ君は
「……………テメェ、俺を謀ったな」
「ヤだな〜。俺、一言もラブレターなんて言ってねェじゃん」
「だったら、んであんな必死んなって俺の事追い掛けて来たんだよ!!」
「だって報酬は学食の食券(デザート券)だもん。依頼内容知らなきゃ、報酬も貰えないだろ?甘味の為なら必死になりますよ、俺は」
「ぐっ…」
「それに俺も聞きたいな〜?どーしてトシはあんな必死に俺から逃げてたのかな〜?」
「そ、それは……」


解ってる。
トシの答えはきっと。
俺が望んでいるものじゃないなんて事。
それはきっと、俺がこの『恋』に気づいた、最初の勘違いなあの思いと一緒。
『幼馴染が自分を残して、突然世界を広げてしまう事への焦燥感、孤独感』
ずっと一緒に馬鹿やってたもんな。
…そりゃ、高校でお互い、違う友達が出来たけど。
それでも。…やっぱオメーと一緒に居る時間の方がずっともっと長い。


「ったく。トシのせいで早起きして教室探す羽目にはなるし。失くしちまったと思って、ハラハラして徹夜しちまうし、サイテーだぁ」
「わ、悪い…」


解ってる。
この想いは閉じ込めなきゃいけない事。押し殺さなきゃいけないって事。
それでも。何でだろーな。
そう思って。閉じ込めて。押し殺して。かき消そうとする度に。
こうやって。


「しょうがねーなー。許してやっから、午前中は、屋上で寝るから、お前も付き合えよな」
「お、俺もかよ?!」
「当たり前だろ。誰のせいで早朝捜索、アーンド鬼ごっこしたと思ってんだよ」
「…ぐっ」


強く強く引き寄せて。
俺をガッチリ放さないなんて。
ほーんと卑怯だよな。


「あ、ついでにイチゴ牛乳買ってよ」
「…チっ、……しょーがねェな」


…それからな、トシ。
これ、依頼書とか、嘘だから。本当はラブレターだから。
でもきっと。それはトシが想像してるモンと違うモンだから。
これくらいの嘘は、許されるだろ?
だって、俺は閉じ込めようとしてんだから。
押し殺そうとしてんのに。
それを止めさせてんのは、トシなんだからな。
             好きだぜ、トシ。



・END・
2009/09/09UP