この気持ちを解明したいと思う。
けれど。
それを追求してしまったら。その正体を知ってしまったら。
もう二度と、お前の隣に立てなくなる、…予感がする。

青空 × 手紙 × 屋上 ×



何処までも青い空。
雲1つない。
屋上に寝転んで、俺はその、何処までも青い空を眺めた。
時折、何処からともなく流れて来る小さな雲を視線で追い掛けて。


「…最悪…」


つーか、最低。
こんな青い空の下。
俺の心はどん底だった。
それもそのはず。
ただ今の時刻。
7:23


「…何やってんだよ」


昨日の夜。
銀時と話をした。
話つっても、昨日ドタキャンした約束の謝罪つうか、何つうか…。
その時に見つけた、銀時への…多分、ラブレター。
それを見つけて、何でだか俺は凄い動揺してしまって。
そんな俺を気づかれたくなくて。
俺はまるで銀時から逃げるように、銀時の部屋から去った。
部屋に戻っても、自分への嫌悪と、得体の知れない気持ちに振り回されて。
…結局一睡も出来ないまま、現在に至る。
現在に至るつうか…。


「…変に思ってる、よなぁ」


銀時と顔を会わせ辛くって。
どうして良いのか解らなくて。


「つか、いきなりアレはねェよなぁ…」


向かいの銀時の部屋の窓にメモ紙1枚張っつけて。
俺は。


「完全に逃げてんじゃねェか…!!」


俺はこんな早朝に学校の屋上に寝っ転がってる。
自分の行動ながら有り得ない。


       有り得ねェつえば…」


そして信じられない事に、もう1つ有り得ない事が起きている。
それは…。


「つうか、んで、俺の手の中にあん時の手紙があんだよ…!!!」


あの時元の場所に戻したと思っていた手紙を俺は何故か握り締めている。
確かあん時銀時が部屋に戻って来て、驚いて、でも咄嗟に元の場所に戻したはずだ。
俺は昨夜の自分の行動を思い返す。
確かに返した。つうか、戻した。
それなのに何故俺の手の中に?


「…ん?」


そしてふと気づく。
あれ?
確か返したよな?
元の場所に戻したよな?
ん?あれ?でも、それから…。


「…あ!!」


そうだ。
思い出した。
俺、何か訳解んなくなって、手を握り締めて。
掌に食い込んだ爪が、皮膚を破って、血が流れ出そうになって。


「…咄嗟に何か握り締めたじゃねェか…!!」


昨晩から続く、自分の訳の解んねェ行動に混乱する。
何だ?何でだ?
何であんなに動揺する必要がある?
こんなんただのラブレターじゃねェか…。
ただの…。


「………ただ、なんかじゃねェっての……」


太陽の光にかざしても。
中の文字は見えない。
一体この中に、どんな言葉が綴られているのだろう。
それを読んで、銀時はどんな事を思うのだろうか。
どれだけの想いが詰まっているのだろう。
そして、銀時は何と思うのだろうか。


「…返さなきゃな」


返さなきゃいけないと思っている。
勝手に持ち出して。
まだこんな風に持ってる。
中身さえ、見てないにしろ。
返さなければいけない。
これは自分が持っていて良いものではない。
本来の持ち主の、贈られた持ち主の元へ。
そう思っているのに。
心が拒絶をする。
これを渡してしまったら?
そればかりが脳内を駆け巡る。
これを渡して。
銀時もその子の事を気にして。
2人が付き合い始めてしまったら?
そう考えただけで、血が冷たくなっていく気がした。


「…っ、くそ」


握り潰して、ゴミ箱へ捨ててしまえればどんなに楽だろう。
けど、それは出来ない。
してしまえば、もう二度と銀時と顔を合わす事は出来ない。
きっと自身がそれを許せなくなる。
面と向かって返せないにしろ、そっと部屋の隅にでも置いておけば、その内気づくだろう。


「〜っっ、くそ!くそくそくそ!!んで、俺が、んな気持ちになんなきゃなんねェんだよ…!!」


苦しい。
胸が締め付けられて、呼吸さえも止まってしまいそうだ。
どうしてこんな気持ちになるか。何でこんなにも苦しいのか。
        微かに感じる、予感めいたもの。
それでも。
この正体をはっきりと、明確にしてしまえば。
それこそ、二度と。
銀時と顔を合わせられなくなる。
それだけは避けたい。
それだけは強く思う。


「………逢いてェな………」


目を閉じれば。
こんなにもはっきりと思い浮かぶのに。
それはまるで目の前に在るみたいに。
…そう思うのに。
今は無性に逢いたくないアイツに逢いたくてしょうがない俺が居る。


「…矛盾、してんなぁ」


この気持ちをはっきりさせたら駄目だと思いながら。
今はこうしてはっきりと自覚してる。
…けど。
今。
今、だけ。
この時間に独りだけ、独りだけのこの時間だけで良いから。
俺達、生徒が来る時間になるまで。
生徒達が来たら。…お前が登校する頃には。
いつのも俺に戻るから。
いつもの俺に戻って。笑って、昨日の事と今朝の事、笑って謝るから。
そして、もう二度とこの想いを開いたりしないから。
心の奥底、海より深い底に沈めて。
想ったりしないから。


「……好き、だぜ……」


        お前を想う俺で居させてくれ…。



・END・
2008/06/30UP