ページを捲る指先。
なぞったその先には。
微笑む、幼い頃の俺と。
…幼いお前。

写真 × 指先 × 十年後



開かれたままのカーテンの裾を握って。
閉められた窓を眺める。
閉められた窓は、何も映さず。
ただジっと。
その先が見えれば良いのに、何て考えてる。


「…何だよ」


避けられた手が。
触られた手が。
…熱い。
変だ。何か凄く変だ。
落ち着かない。
胸騒ぎみたいな、不安…とは違うけど、何か違和感みたいなのが胸に広がる。
これってトシに手を払われたから?
でもマジでトシ、すっげー汗掻いてたし。
…具合悪ぃのかな?
ゃ、でも女と遊んでるくらいだし。
……ぁ、何かムカムカして来たよ。銀さん、ムカっとして来ちゃったよ。
カーテンをもう一度、ギュっと掴んで。
俺はジっと窓の向こうに目を凝らす。
そうして。間もなく、俺はハァっと溜息を吐いた。
見てたって何かが見える訳ねェだろう。
トシの部屋も電気点いてねェし。
風呂かもう寝てるかのどっちかだろう。
俺は、もう一度溜息を吐いて、カーテンの裾をそのまま横にスライドさせて、カーテンを閉めた。


「ハァ〜…」


ボスっとベットに横になって天井を眺める。
何だか落ち着かない。
モヤモヤする。
この分じゃ寝れねェかもなぁ〜…。


「………………………………」


チラリと部屋を見て。
起き上がって、本棚に無造作に収まってるアルバムを取り出す。
胡坐を掻いた足の間にアルバムを置いて捲る。
ペラペラと捲られるページ。
沢山の写真、思い出。


「…ぁ、これ初めて取っ組み合いの喧嘩した時のだ」


お互いズタボロで、すっげー顔してる。
まだ喧嘩の最中なのか、お互いそっぽ向いてるし。


「あぁ、これ!誕生日会の!!」


懐かしー!
そうそう、この時俺がトシのケーキに立てられたロウソク勝手に消して。
また取っ組み合いの喧嘩したんだっけ。



「…ぁ」


ページを捲ると。
今度はケーキを真ん中に、2人でロウソクを吹き消してる。
トシは照れくさそうに。
俺は満面の笑みを浮かべて。
小さな手で、その手には決して小さくはない1ホールのケーキを持って。
2人で…ロウソクを吹き消してる。


「…この頃から、トシは照れ屋だったな」


ツツツ…と幼いトシの顔に指先を這わす。
真っ赤な顔して、不貞腐れてるみたいな、怒ってるみたいな顔、してる。
その隣で、俺は嬉しそうに、笑ってる。
嬉しくて嬉しくてしょうがないって顔、してる。
それは正に、無垢って感じで。
この先の、この未来の…こんな気持ちを抱えるなんて想像も出来なくて。
ページを捲るごとに、成長していく俺達。
それでも変わらない。笑顔。
写真の俺達は、時には笑って。怒って。
色んな表情を写してる。
こう言う表情が、時間が。ずっと続くんだと思ってた。
1年後も、5年後も、10年後も、20年後も、ずっと。
それなのに。
俺は今、こんな気持ちをトシに抱いてる。
辛くて、痛くて、切なくて…。
変わらないと思ってた。
俺達の距離、関係、時間。
ずっと続くと思ってた。


「…本当、諦め悪ぃよな…」


フっと笑って。
顔を上げた。
割れてしまったら。
その形は戻らない。
戻らないと解っているのに。
諦められない。消し去る事が出来ない、この気持ち。
しかも、未練たらしく…。


「…………………………………」


未練たらしく……。


「……あ                                   っっ!!!!!!!!!!」


俺は思わず声を上げた。
そしてアルバムがあるのも忘れ、ベットから慌てて立ち上がる。
バサっとアルバムが落ちるのも気にも止めず。


「ない?!ないない?!ないないないないなぁ                    いっっ!!!!!!!!!!」


俺は机に駆け寄る。
バサバサと机に積み重なった教科書やらノートを床に落としていく。


「ない!ない!!なぁぁぁぁいぃぃぃぃぃっっっ!!!!」


ほっぽり放しの鞄の中身を全部出しても。
机に積み重なった教科書やらノートをバサバサと振っても。
ない。ない!
ぇ、ちょっと待って。
俺、確かに持って帰って来たよな?!
鞄に突っ込んだよなぁ??!
何で?!どーしてないの??


「手紙がなぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!!」



・END・
2008/06/14UP