開かれたままのカーテンの裾を握って。
閉められた窓を眺める。
閉められた窓は、何も映さず。
ただジっと。
その先が見えれば良いのに、何て考えてる。
「…何だよ」
避けられた手が。
触られた手が。
…熱い。
変だ。何か凄く変だ。
落ち着かない。
胸騒ぎみたいな、不安…とは違うけど、何か違和感みたいなのが胸に広がる。
これってトシに手を払われたから?
でもマジでトシ、すっげー汗掻いてたし。
…具合悪ぃのかな?
ゃ、でも女と遊んでるくらいだし。
……ぁ、何かムカムカして来たよ。銀さん、ムカっとして来ちゃったよ。
カーテンをもう一度、ギュっと掴んで。
俺はジっと窓の向こうに目を凝らす。
そうして。間もなく、俺はハァっと溜息を吐いた。
見てたって何かが見える訳ねェだろう。
トシの部屋も電気点いてねェし。
風呂かもう寝てるかのどっちかだろう。
俺は、もう一度溜息を吐いて、カーテンの裾をそのまま横にスライドさせて、カーテンを閉めた。
「ハァ〜…」
ボスっとベットに横になって天井を眺める。
何だか落ち着かない。
モヤモヤする。
この分じゃ寝れねェかもなぁ〜…。
「………………………………」
チラリと部屋を見て。
起き上がって、本棚に無造作に収まってるアルバムを取り出す。
胡坐を掻いた足の間にアルバムを置いて捲る。
ペラペラと捲られるページ。
沢山の写真、思い出。
「…ぁ、これ初めて取っ組み合いの喧嘩した時のだ」
お互いズタボロで、すっげー顔してる。
まだ喧嘩の最中なのか、お互いそっぽ向いてるし。
「あぁ、これ!誕生日会の!!」
懐かしー!
そうそう、この時俺がトシのケーキに立てられたロウソク勝手に消して。
また取っ組み合いの喧嘩したんだっけ。
「…ぁ」
ページを捲ると。
今度はケーキを真ん中に、2人でロウソクを吹き消してる。
トシは照れくさそうに。
俺は満面の笑みを浮かべて。
小さな手で、その手には決して小さくはない1ホールのケーキを持って。
2人で…ロウソクを吹き消してる。
「…この頃から、トシは照れ屋だったな」
ツツツ…と幼いトシの顔に指先を這わす。
真っ赤な顔して、不貞腐れてるみたいな、怒ってるみたいな顔、してる。
その隣で、俺は嬉しそうに、笑ってる。
嬉しくて嬉しくてしょうがないって顔、してる。
それは正に、無垢って感じで。
この先の、この未来の…こんな気持ちを抱えるなんて想像も出来なくて。
ページを捲るごとに、成長していく俺達。
それでも変わらない。笑顔。
写真の俺達は、時には笑って。怒って。
色んな表情を写してる。
こう言う表情が、時間が。ずっと続くんだと思ってた。
1年後も、5年後も、10年後も、20年後も、ずっと。
それなのに。
俺は今、こんな気持ちをトシに抱いてる。
辛くて、痛くて、切なくて…。
変わらないと思ってた。
俺達の距離、関係、時間。
ずっと続くと思ってた。
「…本当、諦め悪ぃよな…」
フっと笑って。
顔を上げた。
割れてしまったら。
その形は戻らない。
戻らないと解っているのに。
諦められない。消し去る事が出来ない、この気持ち。
しかも、未練たらしく…。
「…………………………………」
未練たらしく……。
「……あ っっ!!!!!!!!!!」
俺は思わず声を上げた。
そしてアルバムがあるのも忘れ、ベットから慌てて立ち上がる。
バサっとアルバムが落ちるのも気にも止めず。
「ない?!ないない?!ないないないないなぁ いっっ!!!!!!!!!!」
俺は机に駆け寄る。
バサバサと机に積み重なった教科書やらノートを床に落としていく。
「ない!ない!!なぁぁぁぁいぃぃぃぃぃっっっ!!!!」
ほっぽり放しの鞄の中身を全部出しても。
机に積み重なった教科書やらノートをバサバサと振っても。
ない。ない!
ぇ、ちょっと待って。
俺、確かに持って帰って来たよな?!
鞄に突っ込んだよなぁ??!
何で?!どーしてないの??
「手紙がなぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!!」
・END・
2008/06/14UP