「…ほき?ついつい怒ってしまって、ひやい態度をとってしもうたんなが?」
「……そうだよ」
「銀。お前はっきり馬鹿だろう?つか、脳タリンだな。脳足りん。決定」
「うっさー高杉!自分だって解ってんだよ!自覚してんだよ!つか!!テメーにだけは言われたくねェっっ!」
「んだと?!!」
昼休み。
ゴリラ達との合同会議で居なくなったトシの代わりに、俺はクラスメイトの辰馬・高杉と昼飯を食ってる。
因みにコイツ等も俺と同じ剣道部だ。
「大体自業自得じゃねェか!それをグダグダグダグダ……!」
「う〜…だってすっげームカついたんだよ!それに今は反省して落ち込んでるつうの!んなダチ見て、突き落とすんじゃねェよ!」
「あ〜?だって…なぁ?」
「…ほがぁ、慰めようがないきね」
「冷たっ!お前それでも俺のダチ?!」
「ちゅうても…しょうがないじゃろが。覆水盆に還らず、ぜよ」
「身から出たサビ、だな」
「うがぁぁぁ!お前等本当、役立たず!!」
「気にしてんなら、仲直りしに行きゃぁ良いだろうが」
「行けるかよ!理由聞かれたら、どーすんだよ!」
「素直に言やぁよかよ」
「馬鹿か、お前等は!」
「…俺等が馬鹿だとしたら、銀は土方馬鹿だよな」
「…ぜよ」
ダンっと机に拳を立てて、そう叫ぶ。
すると、辰馬も高杉もハァ〜…と深い溜息を吐いて。
それから高杉はケっと吐き捨てたような呟きをして、食べ掛けだった弁当を再開させてる。
な、何だよ…。
「はや腹を括って、告白すればしょうえいがやないかね」
「それが出来たら苦労しねェっての!!」
…そう。
俺は幼馴染のトシに恋してる。
そりゃ、トシも俺も男だし。
こんなの可笑しいって思ってる。
思ってるんだけど…。
「あーっ!…何かムズムズする。こんなのヤだ」
俺は頭を抱えて、机に屈服する。
胸の中がムズムズ…否、ムカムカ…嫌々、モヤモヤする…。
こんなのヤだ。こんな俺、俺じゃねェ…。
「大体、あんな剣道馬鹿の何処が良いんだよ。俺には理解出来ねェな」
「…元よりお前に理解してもらおうなんて、毛先ほど思ってねェよ」
…そうだよ。
トシは昔っから冷たそうに見えて、本当はすっげェ優しい。
何でも相手に気づかれないように、そっと気遣ってくれるし、それを当たり前みたいにしてくれる。
外見だって、俺とは正反対でサラサラの直毛黒髪で、すっげェ格好良いし…。
「やき、しゃんしゃん告白してしまえばしょうえいろうが」
「んな事出来るかよ。アイツ、ノーマルだし、それに……」
まぁ俺だって、トシ以外の他の男なんて願い下げだし、元々はノーマルだったんだからな…。
…この気持ちに気づいたのは、中学の最後の頃。
トシが高校の剣道の試合を見に行った、その時だった。
その試合を見に行った後、トシが家に帰って来た。
俺は俺の部屋から、隣の、窓から見えるトシの部屋にトシが入って来たのに気づいた。
俺が「お帰り、試合どうだった?」って聞いたら。
「…あぁ、凄かった…」ってまるで心ここに在らずみたいな、上の空で返事をしたから。
「何何?んなに強い奴居たのかよ?」と俺もちょっと興味を惹かれた。
そしたら。
「…銀時」って。今まで見た事もないくらい、今度は瞳を輝かせて。
「俺、銀魂学園行く」っていきなり言い出した。
「は?だっ…だって、おま、ワンピース学園行くって…」俺が慌てて、そう言ったら。
「俺、あの人と一緒に剣道がしてェっ!」なんて熱血しちまって。
その時だった。
俺がどうしようもないくらいの焦燥感に襲われたのは。
それはまるでトシがどっか行っちまうみたいに。
もう俺なんかの手の届かないトコに行っちまうみたいな。
そんな気持ちに駆り立てられたんだ。
そん時は。ただ仲の良かった幼馴染が、自分を含まない、新しい世界を突然広げたから。
それに対する、戸惑いとか、孤独感、みたいなモンだと思ってたけど。
…そう思ってたけど。
でも中学卒業の時に。
女子に囲まれるトシを見た時。
どうしようもない嫉妬心や、まるでトシを盗られてしまう、みたいな気持ちんなって。
俺は自分の気持ちを自覚した。それが幼馴染とか、腐れ縁だけの気持ちじゃないって事に。
…戸惑いはあった。
だって今までただたんの腐れ縁だと思ってた、しかも男の幼馴染にこんな気持ち抱いちまって。
俺は異常なんじゃないかって。
自分に対する不信感とか、信じられない気持ちと、日に日に大きくなるトシへの気持ち。
そんなどうしようもない気持ちを抱いてた時。
コイツ…辰馬達に会った。
辰馬が言ったんだ。
「それが男じゃったとしても。そうやって誰かを好きになるちゅうは、しょうえい事じゃなかか」
「大体テメェは。…土方が誰かと仲良さそうにしてっと、こっちが痛くなるような面してって、気づいてんのかよ」
「もう…良いんじゃなかか?」
「俺は…それでテメェを軽蔑したりとか、そう言うの全然ねェぞ?」
それで良いと。
肩を叩いてくれた。
知ってて。それでも一緒に居てくれた。
だから、俺はそれでも良いんだと。
胸の想いをトシに伝える気はないけど。
でも、それでもこの気持ちを抱えてて良いんだと。
心の底から安堵して、…受け入れた。
「それに?何だよ」
「ほら、もし告白してさ…まぁ、100%断られるだろ?そしたら、今の位置だってなくなっちまうんだぜ…」
「物事に100%なんてあるかよ」
「そうじゃぞ、金時。晋助の言う通りじゃ」
「…銀時だから」
有り得ないって解ってる。
トシが俺の告白、受け入れないなんて事。
でもこうやって。否定してくれるのは、すっごい救われる。
言葉に出して言えないけど。いっつも感謝の気持ちでいっぱいになる。
「…でもよぉ」
「あ?何だよ、高杉」
「駄目だったとしてもよ?それで小さい頃からの友達切るかぁ?」
「…切るだろうが。普通なら」
「切るかぁ〜?」
「まぁ、ワシが晋助に告白するちゅうこっちゃなぁ」
高杉と辰馬は俺とトシと同じで、小さい頃からの幼馴染だそうだ。
でもこの2人の場合、俺とトシと違って、親友…みたいな感じじゃなくて、辰馬が高杉のお兄さんみたいな感じだ。
いっつも何かしらやらかす高杉を辰馬がいっつも気づかれないようにそっとフォローしてる。
だからなのか解んねェけど。どうやら高杉は辰馬に頭が上がらないみてェ。
「辰馬が俺に〜??まぁ、100%断るな。こんなおっかねェ恋人居るか」
「えずい言われようじゃな、晋助」
「だってそうだろうが。ん〜…でももしそうなったとしても…。その後の関係は変わんねェだろうな?」
「まぁ…そうじゃろうな。おんしはそう言う奴ぜよ」
「それはあれだろ…。お前等だから、だろ?」
「そうかぁ?ふん、でももしそうなったとしたら。銀、お前大した奴に惚れてねェな」
「ムカ。お前にトシの何が解るってんだよ!!」
「たかが告白されたくれェで、長年付き合ったダチ切るのが、大した事ねェつってんだよ」
「まだ告白もしてねェし、切られてもねェっての!それになぁ、トシはすっげェ優しいんだぞ!毎朝俺の事起こしてくれるし!」
「んなの、辰馬だって毎朝俺を起こしてくれるっての!毎朝殴られんだぞ?!信じらんねー!!」
「俺だって殴られてるつうの!でもなぁ、毎朝俺の鞄の中身入れてくれっし、チャリでだって送ってくれるつうの!!」
「はぁぁ?それなら俺だって…」
ダンっと机を叩いたと同時に2人で立ち上がる。
「お前、本当は辰馬好きなんじゃねェの?」
「はぁ?好きかよ、こんなモジャモジャ!!」
「あっはっは。げにまっことえずい言われようじゃぁ〜」
いつの間にか、あらぬ方向に向かった怒鳴り合いに。
そんな言い合いを教室でギャンギャンやってたら。
「…何喧嘩してんだよ」
「トシ…?!」
突然現れたトシ。
俺が驚いていたら。
「んだよ。思ったより元気じゃねェか」
「は??」
「否…まぁ、別に良いや。……これ、やるよ」
トン、と俺の机に置かれたパックジュース。
「へ??何で?」
「ん…まぁ、その…お、侘び?」
「はぁ?侘び?何で?」
「や…その、何か…今朝から機嫌…良くなかっただろ?」
「へ…?」
「学校来る、までは…その、そんな感じしなかったし。…俺、が…その、気づかねェ内に気に障る事、したのかな〜と…」
しどろもどろに言葉を告げる、トシ。
俺は思わずポカンとしてしまった。
それに気づいたトシが焦った様子で。
「否…俺の勘違いならそれで良いんだけどよぉ……俺ぁ甘いモン飲まねェから、これお前飲め。俺の奢りだ」
パックのイチゴ牛乳。
それを机に置いて。「じゃぁな」と、立ち去ろうとするトシに。…俺は。
「トシっ!」
「あ?」
「…ごめん…それと、これ、サンキュ!」
「……あぁ」
今はこのままで良いと思う。
いつか。
もしかしたら。
きっと。
「丁度咽喉渇いてたんだよな!」
この関係を変えたくなるかも知れない。
この関係を終わらせたくなるかも知れない。
でも、それまでは。
「ぇへへへ」
「…顔、蕩けてるぜよ」
「ケっ。結局、銀が何で機嫌悪くなったか解ってねーじゃねェか」
「いーのいーの!見ろ見ろ、高杉〜!やっぱトシは優しいだろ〜

」
「わ、解った!解ったから、ひっつくな!ちょっ、おい、こら、銀時!!重いぃぃぃ〜…」
この恋は、秘密のまま。
・END・
2007/11/20UP