俺以上に、俺を知っている人。
そんなのアイツ以外、思い浮かぶか?

屋上 × 弁当 × 青空



「お〜、トシ、銀時。お早う。随分遅い登校だな」
「はよ、近藤さん」
「はよーゴリラ」
「っ、だから!お前いい加減、近藤さんをゴリラつうなよ!!」
「ははは。良いよ、トシ。もう愛称として…受け入れる。……シクシク」
「嫌々!んな落ち込んだ風に言われたって、受け入れてるようには聞こえねェし、つか受け入れんなよ!!」


始業ギリギリに登校すれば。
同じくギリギリに登校した近藤さんに会った。
この人は銀魂学園3年の近藤勲さん。
俺達が所属している剣道部の部長を務めている。
俺が中学時代に惚れたって言う剣の持ち主はこの人だ。
真っ直ぐで、真摯な剣の持ち主。
俺が憧れている人物だ。
…それをコイツは。


「ったく、いー加減自覚しろよな、ゴリラ」
「…おい、銀時」
「へいへい。解りました解りました。コンドー先輩」
「片言で言うな!」
「うっせェな〜」


ゴリラゴリラと…もうちょっと先輩を敬え!


「あぁ…それはそうと、トシ」
「んぁ?何だよ、近藤さん」
「昼飯。総悟も交えて、屋上な」
「OK、解った」
「何何〜?また昼飯の合同会議?ゴクローなこって」
「オメーには関係ねェだろうが」
「あ〜!何その言い草。俺も剣道部なんですけど〜?」
「じゃぁ、オメーも合同会議出るか?」
「ヤーだよ。面倒臭ェ」
「じゃぁ口出しすんな」
「ムっ。今の言い方、ムカっと来た!」


俺と銀時は剣道部。
俺は2年の代表、3年の代表は近藤さんで、1年の代表は1つ下の沖田総悟と言う奴。
放課後の部活動の練習メニューや試合の時のメンバーなどは、この代表間で話し合って決めてる。
中学ん時と違って、高校の部活は強制じゃぁねェから、銀時は帰宅部になるんだと俺は思ってた。
だけど、銀時曰く、「トシがしつこく誘うから」剣道部に入部したんだそうだ。
…未だに思うが、俺ぁそんなしつこく銀時を誘ったか?
確か、銀時が俺に…
「トシは高校も剣道やるの?」
とか聞いて来て、俺がそれに…
「あぁ。その為にこの学校に入学したからな。すっげェ強い人が居んだ。銀時はやんねェのか?」
とか答えて。んで、銀時が…
「え〜…ヤダ。俺は良いや。バイトとかもしてーし。パス」
とか言ったんだけど、見学だけでもして行こうぜ、と一緒に行ったような行かなかったような…。


「…トシ?」
「…あ?」
「あ?じゃねェっての。何ボーっとしてんだよ。さっさと教室行かねェと遅刻んなんぞ」
「あぁ…悪い悪い。ちょっと考え事してた」
「考え事?」
「あぁ。…なぁ、銀時」
「ん?何だよ」
「俺さぁ、お前に、んなにしつこく剣道部入れつったっけ?」
「あぁ?何?今更、んな事考えてたのかよ?」
「否…まぁ、そうなんだけどよぉ…。どうにも…んなにしつこく言った覚えが……」
「あぁ、そりゃぁしつこかったね。『銀魂学園剣道部にはお前が必要だ!』とか言ってさ〜」
「そりゃ嘘だろうが!んな事俺が言うはずがねェ!!」
「あはは。うん、嘘。…だけど、良いじゃん。今更、んな事、どーだって」
「や、あぁ…まぁ、そうなんだけど……」


俺がそれに納得したような納得しないような、曖昧な返事をした時だった。


「お早う、土方君」


すれ違いに掛けられた、声。
咄嗟に。


「あぁ、お早う」


そう返して、俺は首を傾げる。


「…何。トシ知り合い?」
「……否、知らねェ…と思う」


挨拶されたから普通に返したけど。
あんな女子、知り合いだったか…?
元々あんま女子とは接点を持たない俺だ。
限られた女子で、しかも挨拶して来る女子…幾つか顔を思い浮かべるが、どうにも当てはまらない。


「……ふ〜ん」
「…んだよ。そのツラ」
「べっつに〜?元々こんなツラなんですぅ」
「あぁ?んだよ、言いたい事があんならはっきり言えよ!」
「うっさい!つべこべ言わず、教室急ぐぞ、教室!!」


急に機嫌の悪くなった銀時に叱咤されながら。
俺達は教室へ急いだ。





「それから銀時の機嫌がどうにも悪くてよぉ…」
「…ふ〜ん。そりゃぁ大変だなぁ」


昼休み。
弁当を持って、屋上に行った。
すでに近藤さんも総悟も来ていて。
俺は傍に行くと、腰を下ろして弁当を開ける。
そして今朝ほどから、急に機嫌の悪くなった銀時の話をした。
近藤さんも不思議な顔して、俺の話を聞いている。
そうだよなぁ、やっぱ不思議だよなぁ…。


「…そりゃぁ、旦那は災難でしたねぃ」
「あぁ?」


この独特のしゃべり方をするのが、俺等の1個下の沖田総悟と言う男。
姿形は、美少年と言うに相応しい人物だが、その中身は相当のS。
正にサディスティック星の王子、と言った感じだ。
その外見とギャップで女子に人気があるってんだから、世の中解んねェよなぁ…。
そんな沖田は銀時の事を「旦那」と呼ぶ。
何故だか知らねェけど。


「何で俺じゃなくて、銀時が災難なんだよ」
「そうだぞ、総悟。銀時は急に機嫌が悪くなったんだぞ?」
「…はぁ〜。だからアンタ等、モテないんでさぁ」


ハァ〜とわざとらしい溜息を吐いて。
総悟は箸を置いて、俺達を見る。


「旦那が機嫌が悪くなったタイミングを見れば、何で旦那がヘソ曲げたんだか、すぐに解りましょうや」
「銀時の機嫌が…」
「悪くなったタイミング?」


総悟の言葉に俺達は首を傾げる。
機嫌が悪くなったタイミングつったって…。
見知らぬ女子に朝の挨拶された時、だろ?
ただ挨拶だけで…。


「…あぁ」
「…解りやしたか」
「アイツ、自分が挨拶されなかったんで、それでヘソ曲げたのか」


ポンっと手を叩いて、納得する。
何だよ…ガキだな、アイツ。
俺がそう納得すると、沖田はまた、ハァァァ〜と今度は長めの、わざとらしい溜息を吐いた。


「…旦那も本当報われねェや」
「あぁ?どう言う意味だよ」
「こんな鈍感の何処が良いってんですかねぇ…俺には理解出来ねェや」
「はぁ?」
「だから。旦那は嫉妬してるんじゃないかって事です」
「嫉妬?でも銀時はその女子の事、知らなかったぜ?」
「…ハァァァァァァ〜。だから。嫉妬する相手は、その見知らぬ女子じゃなくて、『モテる』アンタに、ですよ」
「はぁぁぁぁぁ??」


言われた言葉に思わず、呆れてしまった。


「あのなぁ…俺達男同士だぜ?んで、見知らぬ女子に挨拶されたくれェで、銀時がその女子に嫉妬しなくちゃならねェんだよ」


意味解んねェ。


「でも、あれだよな。一部の女子には噂んなってるらしいぜ。トシと銀時」
「…知ってるよ」


どっから漏れたんだか知らねェけど。
俺が毎朝銀時を起こして、一緒に登校している事は、一部でよく知られてる。
まぁ登校は、誰かに見られる可能性があるから良いけど、…朝は、んで知ってんだって話だ。
それを一部、ほんの一部だが、女子が噂だっててるらしい。
曰く、『俺と銀時はデキてるらしい』
甚だ馬鹿らしいし、一部だから放って置いてるが。


「…まさかと思うけど、近藤さん、信じちゃいねェだろうなぁ?」
「し、信じてねェよ!!……まぁ、仲良いなぁ、とは思ってるけど!」
「まぁ…隣同士だし、小さい頃からの腐れ縁だからな」


俺の問いに、近藤さんは慌てたように首を左右に振り、言う。
…その仕草がすっげェ怪しいけど。
言及しないでおく。
頭痛くなるから。


「え〜、あれって嘘なんですかぃ?」
「ったりめェだ!何が悲しゅうて男とデキてたまっか!!」
「え〜、でも土方さん、女に興味なさそうだったから」
「男にはもっと興味ないわ!!」


わざとらしく残念そうな声で言って来た総悟を怒鳴りつけ、俺は弁当を食べ始める。
ったく。本当にアホしか居ねェな、この学校は。


「…でも。あながち間違えではないかもな」
「何が?」
「だから。総悟の意見がだ」
「はぁ?近藤さんまで何言ってんだよ!?」


言われた言葉に、思わず口に含んでいた米粒を吹き出してしまった。
隣で沖田が「汚ねェな、土方、この野郎」と言っていたが、それに怒る間もなかった。


「だって辻褄合うだろうが」
「そりゃぁそうだけど!アンタ、アイツが俺に惚れてるとでも言うのかよ?!」
「嫌々、流石にそれはないと思うが、お前等幼馴染だろ?」
「あぁ、そうだけど?」
「だったら。ほら、長年一緒に居た奴が、急に彼女とか出来たら、取られた気分になるだろう?」
「彼女じゃねェっての!」
「解ってるって!…だけど、そう言うもんだろ?」
「…もしそうだとしても。アイツに、んな気持ちが働くとは思えねェけどなぁ…」


渋る俺に、近藤さんは笑顔で。


「まぁまぁ。そう難しく考えんでも良いだろう。そう言う一例もあるって事だ!」


一例、ねぇ…。


「でもなぁ…どうにも俺には、アイツが、んな風に思うとは思えねェ…」
「まぁ、長く付き合ってるとは言え、銀時も知らないトシの一面があるように、トシも知らない銀時の一面もあるって事だ!」


…銀時の知らない俺の顔?
んなのあるか?
それこそ、俺の知らない俺の一面を銀時は知っているような気がする。


「…想像出来ねェ」


ポツリと漏らした言葉は。
そのまま青空に溶けていった。



・END・
2007/11/20UP