ホテルの一室。
ベットテーブルに置かれたランプだけが照明の、薄暗い部屋で。
カチっと着けられたライター。
ジジっ…と音を立て、煙草に火が着いた。






〜Christmas Alegre〜






「…はぁ」



そのホテルの一室で一糸まとわぬ格好で、銀時はベットで横になっていた。



「…んだよ、溜息なんか吐きやがって」



そんな銀時の傍で、土方は先程着けた煙草の紫煙を吐き出して、銀時に声を掛けた。



「吐きたくもなるつうの」
「んだよ。良くなかったか?」
「………………………」
「ん、んだよ…テメーだって出しただろう、3回も」



サラリと告げた土方に、ジロリと銀時は土方を睨んで。



「…あぁ、そうね、あぁ、そうね。出しましたよ。てか、土方君が弄るし?突っ込むし?出しちゃいましたよ、ピュピュっとね」
「…色気もロマンもねェ言い方だな」
「あってたまるかー!つうかさ、つうかさ?!世間ではホワイト・クリスマスだ聖夜だ騒がれてんのにさ?俺何やってんの?!俺何やっちゃってんの?!」
「何って…」
「野郎とホテルでシケこんじゃってさ、なーにが聖夜だ、精夜の間違いだろ?!ゴムまみれの夜じゃねェかー!!」
「…安心しろ。ゴムなんか使ってねェから」
「お前は寧ろ使えー!!おまっ、妊娠しないと思って馬鹿にすんなよ?!腹壊すんだよ?腹壊しちゃうんだよ?!!」
「…ったく。何が不満なんだよ。ホテルココの代金だって俺が持ってるし、良かったんなら良いじゃねェか」
「良い訳あるかー!俺が言ってるのはね、土方君!!!」
「な、何だよ…」



身体を起こして、銀時はビシっと土方を指差して言う。



「恋人でもねェ、テメーと何でクリスマスにホテルでSexしなきゃいけねェんだって事だよ!!!」
「…ふん。別に今日がクリスマスってだけで、別に普段と変わんねェだろうが」
「そうだけどさ、そうだけどさ、わざわざクリスマスってのがムカつく!他の男女は健全な性生活してるってのにさー!!」
「…はっ、下らねェ」



今だぎゃぁぎゃぁと喚く銀時を失笑した。
そして紫煙をフゥと吐き出して。



「クリスマスなんて子供ガキがプレゼント貰って喜ぶ日だろうが」
「一々尤もなのが余計にムカつくわ!…はぁ〜俺何でこんなのと一夜共にしてんだろ…しかも受けてるし…」



はぁ、と溜息を吐いて。
銀時はまた、ベットへと潜り込む。
微かに揺れるランプが、長い影を伸ばす。



「…………おい」
「…んぁ?」
「…お前、何で俺と過ごす?」
「…土方君が誘ったから」



土方の呼び掛けに、シーツをかぶったまま、返事を返す。



「…じゃぁ、俺以外が誘っても、お前はのこのこ姿を現すのか?」
「…………………何が言いてェんだよ、てめー」
「そろそろ観念したらどうだって話をしてんだよ」
「観念?観念って何をさ?あれか?俺が尻軽だって事か?」
「誤魔化すな」
「……………………………………」



ギュっと灰皿に煙草を押し付け、土方がシーツに隠れた銀時と向き合う。



「テメーもいい加減気づいてんだろ?」
「何を?…さっぱり意味解んねー」
「銀時……ツラ、出せ」
「ヤだ」
「銀時」
「……疲れた。寝る」
「寝んな!…あぁ、もう!俺は観念したぞ!!俺は……」
「ストーップ!!言うな言うな、言うなぁ!!!」



ガバリと身体を起こし、銀時は両手で土方の口を塞ぐ。



「あああああアレだぞ?!言ったら後戻り出来ないし、アレだ、そそそそそそうだよ、アレ!」
「ぷはっ、…んだよ、アレって」
「アレだよ、お、俺達は、ほれ、アレだ。お互い嫌いだ何だ言ってる方がお似合いなんだって」
「Sexしてんのにか?」
「それは〜アレだ、ほれ、お互い決まった相手も居ないし、溜まった性欲をだな、発散的…」
「自分が女的立場でか?」
「その方が楽だから!!」
「…テメー…」
「この歳で…認められるか」



俯いてしまった銀時に、土方もハァと溜息を吐いて。



「…それって、認めてると同じじゃねェか」
「認めてねェよ!冗談じゃねェ!!俺はテメーが…!!」
「…俺が?」
「…っ」



口にした言葉。
しかしそれは真摯に見つめられた瞳に、最後まで告げる事が出来なかった。



「俺が…何だよ」
「…っ、性格悪いぞ、お前!!解ってんだろ?!」
「解んねェよ。最後まで言えよ。…俺が、何だよ」
「……っ」



いつもは言える、一言。
言えるはず、なのに。



「…………………………………」
「言えよ。そしたら。こんな関係も、何も。全部最後にしてやるから」
「!!!」
「言えよ。…最後にしたいなら」
「ひ、きょ…ぅ、だぞ」
「どっちがだよ」



言われた言葉に、返す返事が見つからない。
…否。
本当は見つかっているのだ。
見つかっていて。
でも、それを口にする事が出来ない。
認められない。
認める訳にはいかない。



「……ぃ、だ」
「聞こえねェ」
「…らぃ、だ…」
「…もっとはっきり言いやがれ」
「…っ、嫌いだ!大嫌いだ!!!」
「…………………………」
「…………………………」



吐き出すように叫んだ。
叫んだ後、肩で息をしながら。
睨むように土方を見つめる。



「…解った」
「…ぁ…」



そして土方はそう告げると、スっと立ち上がって。
傍にあった着物を手にし、それに袖を通す。



「…………………………」
「…じゃぁな」
「……………たぃ」
「…あ?」



そのまま、銀時に背を向けたまま、土方は部屋を後にしとうとした。
しかし小さく告げられた声にピタリと足を止め、振り返る。



「な、ん…」
「…だ、から。……の、反対」
「………………………」
「な、何だよ」



暫く呆然と銀時を見つめていた土方だったが。
スっと足を銀時の方に向けて歩み寄って来る。



「ななななななな何だよっ…!!」
「………遅ェんだよ、馬鹿」
「は、はぁぁぁ?!!!」



そしてそのまま腕を伸ばして、ギュっと銀時を抱き締める。



「ちょっ、ちょっ…!!」
「俺も…“大好き”だ、銀時」
「ちょっ…!俺、“大”まで付けてねェから!!“も”って何よ、“も”って!!」
「だって『大嫌い』の反対は『大好き』だろ?」
「!?そ、そうだけど!でも、アレだから!言葉のアヤって言うの?!」
「くっくっく…どんな言葉のアヤだよ。…もう良いだろ。覚悟、決めろ」
「へ、ぁ、う…」
「往生際の悪い奴だな」
「うっさいな!お前に俺の気持ちが解ってたまるか!この歳で…この歳で……」



シクシクと両手で顔を隠して。
泣き真似をする銀時に。



「良いじゃねェか。寂しいクリスマス過ごさなくて良くなったんだぜ、…お互いにな」
「うっさい!黙ってくんないかなぁ?!黙ってくんないかなぁ?!!」
「そうだな…」
「…土方君?」
「黙れば…キス出来るしな」
「………………」





・END・
2006/12/24UP