いつのも放課後。
そうなるはず、だったのに。



「メンド〜…」



片手にある出席簿と『例』のモノ。
今日渡されて、初めて聞いた話なのにすでに噂になってっし…。
あ〜…こりゃまた煩くなるなぁ…。
なぁんて思ってたら。



ダダダダダダダダダダっっ!!!!



「…来たよ。来ちゃったよ。どうするよ、おぃ」



廊下に鳴り響く、地鳴りにも似た足音。



「銀八っ!!!!!!!」



キキィィィっとブレーキ音でも聞こえてきそうな勢いで土方が現れる。



「ひ〜じ〜か〜たく〜ん。…廊下は走るな、先生を呼びつけにするなって学校で習わなかったか?」
「見合いするって本当か?!!」
教師ヒトの話聞こうね〜」
「なぁ!!本当なのか?!!」
「あ〜…ったく、誰だよ話バラまいた奴。見つけ出して、3/4殺しな」
「…本当なんだな」
「あ〜、もうメンドくせェ。そうそう、本当。ほれ、見合い写真もこのとーり」



ひょいっと出席簿と一緒に持ってた見合い写真を見せる。
それを見た土方はますます険しい顔をして。



「…勿論断るよな」
「何で?」
「何でって…!!」
「これで結婚でもしちまったら、お前俺ん事諦めるかなぁ?」



意地悪にそう言えば、土方は俯いてしまう。
そう。
コイツは何を血迷ったのか、教師の…クラス担任である俺に告白して来たのである。
いートシした俺の何処が良いんだか…しかも男なんですけど…。
断っても断ってもしつこく言い寄って来るから、最近は慣れたもので、軽くあしらってる。
それでも、めげる様子はない。
タフつうか、何つうか…。
その情熱をもっと違う事に燃やせよ。



「…断れよ」
「だぁから。何で?断る理由ないじゃん」
「…………………」



俺がそんな事を考えていたら、土方が苦々しく吐き捨てた。
なーんで俺がお前の指図受けなきゃいけないのよ。
そう思ってあっさり切り替えしたら、今度はだんまり。
しばらく黙り込んだと思ったら、ギュっと拳を握って。



「…お前が結婚しちまったら、俺の気持ちはどうなる?」
「…だからいつも言ってるでしょ。土方の気持ちには応えられません。もっとちゃんとした青春しなさいって」
「…っ、俺は…!!」



俯いてた顔を上げて。
吐き出すように言葉を続ける。
…あ〜ぁ。
んな顔すんなよ。
だからイジメたくなっちゃうのよ?



「…俺は…青春したい訳じゃない。好きな…好きな奴と結ばれたいだけ、だ…」
「………………………」
「これでも、お前に告白するまで相当悩んだんだ…先生だし、男だし…」
「………………………」
「それでもっ…!それでも俺はアンタが…っ!!」



…はぁ〜。
ったく、しょうがねェなぁ…。
イジメてる自覚はあるけど、これじゃぁ俺がまるっきりの悪者じゃん。



「わぁったよ」
「え…?」



この年の奴って本当面倒。
ストレートで何でもかんでも体当たり。
こっちの都合なんかお構いなし。



「今回の見合いの話持って来たの理事長ババァなんだよ。だから断り辛ェっての…」
「…ぇ…それ、って…」
「ほれ。もう下校時間だろ。とっとと帰れ。寄り道すんなよ」



そう言って背を向けて歩き出す。
あ〜…何て言って断るかなぁ…。



「断んだよな、見合い話!!」



嬉しそうな声が聞こえて。
何か悔しくなった。



「…だってしょうがねェじゃん。俺、こぉんなに土方君に愛されてるみたいだから」
「あ、あぃっ…!!」
「何?違うの?」
「ち、がわねェ、けど…そう…面と向かって言われっと……」



いつも人の顔見れば、好きだ、付き合えと煩いくせに。
いざ俺がそれを口にすれば赤くなって。
純情なんだか、大胆なんだか。
教師オレになんか惚れたクセに。



「そう言う訳でちゃんとお断りするから、安心して下校しなさい」



ヒラリと手を振った。
あ〜…俺本当、アイツに甘いよなぁ…。



「銀八!!」
「あ?何?つうか、『先生』をつけなさぃ…」



呼ばれて振り返れば…。
真剣な顔した土方が居て。
何?どったのよ、急に。



「しつこいって言われるかも知んねェけど…俺、本当にマジだから!」
「…はぃ?」
「本当にアンタの事好きだから!」
「…………………頭大丈夫?」
「だから!!」
「………………無視ですか」
「それまで、誰のモンにもなるなよ!!!」



…っっ…
っのヤロ…!
人の気も知らねェで好き勝手叫んでんじゃねェっ…!!



「……………そうね〜」



本当この年の奴って面倒。
何でもかんでも体当たり。
大人こっちの都合なんてお構いなし。



「土方君」



ニコっと笑えば。
ほんのり赤くなった顔が可愛い。
…なんて悔しいから絶対言ってやんねー。



「誰が誰のモノにもならないって?」
「…え…」



意地の悪い笑みをニヤリと浮かべて、そう言えば。
驚愕の顔が顔に張り付く。



「いつ、誰が、俺は誰のモノじゃない、なんて言いましたか?」
「…え…そ、れ…どぅ言う…意味…?」



震える声が返って来て。
…ぅん。ちょっとだけ、満足。



「先生は『みんな∞∞の銀八先生』ですよ。所有権なんてねェの」



次に俺が紡いだ言葉に。
驚きで見開かれた目と。
一気に安堵した顔。



「ま、紛らわしい言い方してんじゃねェっっ!!!!」
「あははは、じゃぁね、土方君。また明日」
「…じゃぁな」



そのまま職員室に向かって歩き出す。
…本当、あの年の奴等って面倒。
体当たりで、純粋で。



「…バーカ」



俺は『教師』なのよ?
先生と生徒∞∞∞∞で恋愛なんて出来る訳ねェだろ。
…だから。



「俺が欲しけりゃさっさと大人になりやがれ」



お前が俺の『生徒』じゃなくなるまで。
それまでは、俺の我慢の捌け口になれよ。
卒業の日の、その時まで…。



「…それまでイジメ倒してやる」





・END・
2006/07/04UP