「教育者の不摂生とはよく言ったもんだなぁ。銀八」

「それを言うなら『医者の不摂生』ね。教育者って語呂悪ぃから。…って何でお前がウチに居んのぉぉぉ!!おまっ、授業は?!」

「…風邪で寝込んでるって聞いたから…」

「…あのね?先生も人間ですからね。そりゃぁ風邪で寝込む事もあるから。そんな先生の所に授業サボって来やがりますか。まぁだ心労掛けようとしやがりますか、この野郎」

「…だって先生一人暮らしだろ?」

「はぃはぃ、先生は寂しい独りモンですよ〜?」

「だから…その、看病に…」

「…………………」

「………何だよ」

「嫌、あのね、気持ちは嬉しいんだけどね、多串君」

「土方だつってんだろうが。風邪引いててもそのネタ引きずるのかよ」

「先生その気持ちスッゴい嬉しいんだけどね、土方君。さっきっから聞いてます、お前授業はどうなされましたか?」

「………自主休講」

「そう言うのを世間ではサボりつうんだよ。俺は大丈夫だから今からでも遅くない。学校戻んなさい」

「だって……」

「だってもさってもないの。さっさと戻って勉学に励みなさい。学生の本分は学業でしょうが」

「嫌だ」

「嫌だってお前ね…」

「…心配で授業どころじゃねェよ。アンタ独り暮らしだし、面倒つって飯とかおろそかにしてそうだし……」

「…………………」

「……………何だよ。人の顏ジロジロ見て」

「心配したの?勉強が手につかないくらい?」

「…………悪ぃかよ」

「嫌々。悪いなんてね、一言も言ってないから。…そっかそっか、心配して、ねぇ…」

「だから何だよ!」

「嫌々。なかなか嬉しいもんだなぁと思ってね」

「…あ?」

「わざわざ風邪っぴきの恋人を心配して学校自主休講サボりまでしてくれちゃって。教師としては怒んなきゃいけないけど恋人としては嬉しいかなぁ、と」

「…かな、なのかよ」

「じゃぁ、嬉しい」

「…じゃぁって何だよ。じゃぁって」

「あらヤだ。反抗期?」

「何でお姉言葉なんだよ。…あぁ、もう突っ込み入れるのも疲れる!風邪っぴきは大人しく寝てろ!!」

「ぅわっ、乱暴だな〜。先生は病人だぞぉ?」

「病人なら病人らしく寝てろ」

「…土方君」

「あぁ?今度は何だよ?!」

「……有難う、心配して来てくれて」

「……ケっ。急にしおらしくなんな。……調子狂う」

「ふふ。…あ、そだ」

「…あ?」

「折角来てくれた事だし。どうせだから土方君こいびとに甘えちゃおっかな」

「ぇ、甘っ…?!」

「お腹減った」

「…は?」

「お腹減った。何か作って♪」

「…………………それ甘える内に入るのかよ」

「入るよぉ。いつもは強請んないもん」

「嘘吐けっ!いっつも甘いモン買って買って言うくせによぉ!!」

「聞っこえませぇ〜ん。…ねぇねぇ、お腹空いたってばぁ〜!」

「あぁ、もぅ解ったよ!…そん代わりレトルトしか買って来てねェからな」

「上等♪土方君の料理ベタは知ってるもん」

「ったく。色々買って来て正解だったぜ。どーせてめェの事だから何も食ってないだろうと思ってたしな」

「何で俺の事だからなのよ?」

「アンタ自分の事結構存外に扱うじゃねェか。飯なんか何日食わなくても平気なツラして」

「失礼な!ちゃんと食べてますぅ」

「…それはケーキとかの事を言ってるのか」

「俺にとっては食事なの」

「俺がレトルトばっか食ってると文句言うくせに!」

「それは土方君がまだ成長期だからでしょ〜?」

「ケっ。だからそんな細っこいんだよ」

「…。それってさぁ、遠回しに抱き心地悪くて嫌って事?」

「ブっ!そ、そう言う事を言ってる、んじゃ…っ!!」

「抱・き・心・地・悪・く・て・嫌・な・の?」

「………………………」

「………………………」

「………………悪くねェよ。何か甘い匂いするし………」

「…………土方君のスケベ」

「スケっ…?!お、お前が言わせたんだろ?!!」

「俺が聞いたのは抱き心地の話ですぅ〜。匂いの事は聞いてません〜」

「……あぁ言えばこぅ言う奴だな」

「それはお互い様でしょ」

「チっ!…何処が病人だよ、風邪だよ!全然元気じゃねェか…」

「でも真面目な話。土方君ちょっとは料理勉強しな?作れて損する事はないんだからさ」

「…。それって言外に作って欲しいって事か?」

「…いいや。俺まだ死にたくないし。ただ一般論」

「死ぬって…そこまで酷くねェよ!…まぁ2〜3日は寝込むかも知れねェけど」

「…どんな料理だよ」

「前に一回合宿先で作った時にゃぁ近藤さんが1日寝込んだな…。んで総悟にゃ……」

「…?沖田君には?」

「…すっげぇ憐れみを含んだ目で見られた」

「あはははっ!そりゃ気の毒!!」

「口で言われるよりムカついたぜ。アレは」

「ん?でも待てよ。って事は近藤は食ったんだよな?お前の手料理」

「え?あ、あぁ…他の奴らは見た目でギブアップしたからな」

「…ふ〜ん。………なぁ」

「あ?何だよ」

「やっぱ俺も今度食べたい。土方君の手料理。元気になってからで良いから作って」

「あ、あぁ…別に良いけどよぉ…」

「…ん?何?人の顔ジロジロ見て」

「…嫌、その…それって、さ」

「…?」

「ヤキ、モチ?」

「…………………」

「近藤さんが…先に俺の手料理食った…から…」

「…………………」

「どうなんだよ…?」

「……ぅんにゃ」

「…は?」

「ただ単に志村姉ちゃんのあの殺人的な料理食っても平気な奴が寝込む程の料理に興味あるだけ」

「……………あぁ、そうかよ!!」

「くっくっく。…土方君。俺を妬かそうなんて十年早いよ。
……まぁちょっとは妬けるけど

「あ?今最後に何かボソボソ言わなかったか?」

「なぁ〜んにも言ってないよ?ってかさ。まだぁ?お粥。レトルトも満足に作れませんか〜?」

「〜っっ!今皿に移してんだよ!!ぉら、出来たぞ!!」

「おぉ〜良い匂い♪」

「…熱いから気をつけろよ」

「うん。…はい」

「…はぃ?」

「あ〜ん」

「…はぃぃ??!」

「はぃ?じゃなくて。ほら、あ〜ん」

「嫌、あ〜んって、アンタ何してんの?!」

「何してんのって見て解んない?ほら、あ〜ん。…食べさせてよ」

「食べっ…?!ちょ、アンタ熱あるんじゃねェのか?!!」

「さっき計ったら36度でした。ってか何でよ」

「何でって…食べ、え、えぇ?!!」

「良いでしょ〜たまには甘えたいんだってば。…ほら、早く。あ〜ん」

「……………………」

「あ、ちゃんと「ふぅふぅ」してね。俺熱いのあんま得意じゃないから」

「……………………」

「ほら、早く」

「…………これ、すっげェ恥ずかしいんだけど」

「たまに恋人が甘えてんだから我慢しなさい。…ほら、折角温めてくれたのに冷めちゃうでしょ〜?」

「っっ!!わ、解ったよ!!……………ぁ、ぁ〜ん」

「あ〜ん」

「…………………………」

「んっ、おいし」

「っっ、あぁそうかよ、そりゃ良かったな!!」

「土方君顔真っ赤。土方君もお風邪ですかぁ〜?」

「!!う、うるせェっ!!良いから黙って食え!!!」

「はぃはぃ。…じゃぁ、ほら、次。…あ〜ん」

「っっ!!!」

「………………………」

「………………………」

「………………………」

「………………………」

「…はぁ〜!食った食った!お腹いっぱい!!」

「やっぱてめェは少食だよ。こんな袋1つのお粥で腹いっぱいになるんだから。俺じゃぁ絶対足りねェ」

「それは土方君が大食らいだからでしょ」

「甘いモンばっか食ってから、食事が少なくなるんだよ。それに、俺は至って普通だ」

「……………そんな事なもん」

「ぁ、そうだ」

「ん?何?」

「食欲なかった用にってプリン買って来たんだ。今腹いっぱいなら後で…」

「今食べる!!!」

「…ぁ、そっ。っと、そうだ。その前にコレ」

「……………………何コレ」

「見りゃぁ解んだろうが。薬だよ薬。さっき見たら食間って書いてあったから、丁度良いだろ」

「……………………………」

「水持って来るから、ちょっと…」

「ヤだ。飲まない」

「はぁ?!おま、何言って…!!」

「先生元気だもん。熱もないし。だから薬飲まない」

「はぁ?!何言ってんだよ!熱がなくたって、風邪の菌が死滅したとは限らないから飲めっ!!」

「ヤだ!」

「……お前、もしかして」

「(ギク)」

「…薬、苦くて嫌いとか言うんじゃないだろうな」

「(ギクギク)ぁ、あはは…な、何を言うかな、土方君は。ここここ子供じゃないんだからそんな理由…」

「じゃぁその台詞を俺の目を見てきっぱりはっきり言ってもらおうか」

「ぁ、あははは、疑り深くて困ったよ〜この子は」

「…図星かよ」

「…何の事だか先生さっぱり」

「…薬飲むまで、プリンはお預けだな」

「えぇぇ?!何で?!良いじゃん!先生元気なんだから要らないってば!!」

「元気でも菌死滅の為飲め。そしたらプリン食わせてやる」

「ヤダ!でもプリンは食うっ!!」

「子供の理屈か!!」

「子供でも良いもん!先生、心は永遠に少年ですから!!」

「少年が先生になれるか!大体少年ってのは年が少ないって書くから、30路みそじ手前のオッサンが少年の訳ねェだろうがぁぁ!!」

「ヤダヤダヤダ!!薬苦いから嫌い!!!」

「やっぱそれが本心なんじゃねェかぁっ!!」

「うっさい!ヤダつったらヤダ!ヤダヤダヤダ!!」

「………………………解った」

「ヤダヤダャ……ぇ、土方君、今何て……」

「ちょっと待ってろ」

「…………はぃ?………ぁれ?ちょっ…何処行くの?ぇ、何でお前が薬飲むの?ってか………ぇ?ぇ?ぇ?え?!」

「…………………………」

「…ちょっ、え?おま、ちょっ、何?!何す、ちょっ、まさ……っっ、んっ…!!」

「……………………………」

「ん、ん〜っ!!ん、…んっ、んっ…ん、ぁ…」

「…ぷはっ。……飲んだか?」

「プハッ!!ばっ、馬鹿ですか?!馬鹿ですか、お前はぁぁ?!!こ、こんな、い、今時口移しなんてベタな飲ませ方ありますかぁぁ?!!」

「と言う割りに顔赤いけどなぁ?苦さも感じなかっただろう?」

「っっ…!!」

「これでプリンも獲得だ。一石二鳥…否、三鳥か?…なぁ、銀八?」

「っっ、風邪移っても知らねェからな!!!」

「そん時ぁ、お前が薬飲ませてくれよ?後、看病も」

「馬鹿は風邪ひかないから、お前は風邪なんかひかねェよ!!」

「あ?お前知らねェのか?」

「は?」

「馬鹿『だから』風邪ひくんだぜ?」

「は??」

「体調管理も出来ねェってな」

「おまっ…治ったら覚えてろよ?!」

「残念。俺、記憶力悪ぃから」

「学年TOP3がよう言うわぁぁぁ!!!!」





・END・
2006/05/25UP