「土方君、お誕生日おめでとう。あの、これ…良かったら」



窓から見える情景をぼんやりと眺めてた。
時々見る告白の風景。
でもそれが相手の誕生日だとそれは格好の餌みたいで。
いつもは話し掛け辛いコイツに。
今日は想いの丈を伝える。
…プレゼントと言う名の、気持ちを込めて。



「あ、あの…それで、私っ……!」



グラウンド近くの…ココ、喫煙室以外からは死角になるであろう、大きな木の下で。
俺は何度目かの想い人が想いを告げる現場を目撃する。



「はぁ〜…青春だねぇ…」



煙る紫煙の向こうで、俺は静かに喫煙室のカーテンを閉じた。
学生ならでは。
好きだの恋しただの、…誕生日だの。



「あ〜…ゴールデンウィーク中ってので油断してたぜ」



カーテンを閉めたせいで薄暗くなった喫煙室で俺は独りごねる。



「そうだそうだ…部活があったんだね、部活が」



一人納得したように呟いて。
まだ半分も吸っていない煙草を灰皿に押し付けた。
…あぁ、もう。勿体ねェけど、何だか美味しくないし、落ち着かないし。
…何か…イライラ、する…?


(あぁ、もう何だってんだよ!)


はぁと溜め息を吐いて。
近くにあったソファーに深く身を預けると、黄色く汚れた天井を見る。



「先生」
「んぁ?…はぃはぃ?銀八先生に何が御用……」



不意に呼ばれて。
今の雰囲気を吹き飛ばすかのように明るめに振り返ってみれば。



「え?あ…?ひじ、かた…?」



振り返った先に見えたモノ。
それはさっきまで窓の向こうに居た人物だった。



「何だよ、サボり中か?」
「…休憩中だよ」
「ふぅ〜ん…ってか。アンタ何で休み中に学校来てんだ?」
「お前等生徒がお休み中でも俺等教師は休みじゃねェ場合もあんの。やる事は山ほどあんの。別にゴールデンウィーク忘れてた訳じゃありませんから」
「そうは言ってねェだろうが」
「つうか。お前こそサボってんな。休みにわざわざ部活しに来てんだからしっかり活動しやがれ」
「…えらく不機嫌だな」
「そう言うお前はえらく上機嫌だな、おぃ」
「…んな事ねェ、けど、よ」
「まぁどっちでも良いけどね。良いから早くグラウンド戻りんなさい。こんなトコで油売ってる暇ないでしょ?」
「そうだけどよぉ」
「何?俺に用?用がないならさっさと立ち去んなさい。俺も忙しいの」
「……んだよ」
「何よ?」



シッシッと手を払われて。
土方の眉間に皺が刻まれる。
…あ〜ぁ、色男が台無し。
……そんなツラさせてるのは俺なんだろうけど。
でも…今はちょっと無理。
早く立ち去って欲しいのに。
ボソボソと土方が何か話して来る。



「……なんだけど」
「あぁ?何?聞こえない」
「…だから。俺、…今日誕生日、なんだけど」



しかし土方が呟いた言葉は。
自身の誕生日を告げる言葉。
小さくて。聞き取るのもやっとのそれは。
最初、俺をちょっと驚いたけど…。


(まったく…)


次には笑みを呼び寄せた。


(あれだけ女子に祝われて)



「…ふぅ〜ん」



(まだ祝われたい訳?)


俺は懐から煙草を取り出すと、それに火を着けて。
ゆっくりと口に含む。
下を向いたままの土方には見えない。
小さな笑みが浮かぶ、口元。



「…ぉい」
「ん?」
「『ふぅ〜ん』で終わり、かよ」
「んん?他に何か言う事ある?」
「っっ」



俺の言葉に土方はギュっと拳を握って。



「…解ったよ!邪魔して悪かった!!」



そう吐くと、クルリと踵を返す。
それに俺もちょっと慌てて。



「…まぁまぁ、待ちなさい。もぉ〜若いなぁ、土方君は」
「あぁ?!」



(大概、俺も意地が悪いよな)



「…お祝いされたいの?『俺』に」
「…っから、そう言ってんだろうが、よぉ…」
「ふぅ〜ん。…あんなに女子にお祝いされてるのに?」
「!…てめ、っ、み、見てたのかよ」
「見たくなくても、丁度ココのソファーに座ると、視線上、窓の外が見えるのよ」
「チっ。……でも……居る、とは思わなかった」
「ん?」



クルリと背を向けていた土方が、俺と向き合って。
お?と思った次の瞬間には、ギュっと抱き締められてた。



「ぉ、っと…」
「…今日…会えない、と思ってた」
「ん?んん?」
「部活…あって良かった」



呟かれた言葉に。
心の中でそっと、謝る。
意地悪でごめんね、大人気なくてごめんね。



「ったくよぉ〜んな大袈裟な言い方すんなつうの。…ほら、部活途中なんでしょ?行きなさいって」
「なっ…!だ、だってよぉ…」
「だってもさってもないの。ほ〜ら、離れて離れて。見つかったら問題でしょ?」
「俺は…別にそれでも……」
「良くないの。…ほら、先生は逃げも隠れもしないから。部活終わってから来なさい」
「……待ってて…くれる、のか?」
「誕生日なんでしょ?…ちゃんとお祝いしてあげるから」
「お、祝い…?」
「どっかで食事、とかそう言うのは、誰かに見つかったらヤバいから。家で、だけどな」
「家って……」
「俺ンチ以外ねェだろう。言っとくけど、あんま綺麗じゃねェぞ」
「……………………」
「あ、それともアレか?家族で誕生日かぃ、ぃぃ…!?」



俺が言い終わる前に、またガバっと抱き着いて来て。
な、何?!何だぁ??!



「ちょ、おまっ、何…?!」
「嬉しい」
「は、はぁ??」
「マジ、嬉しいんだけど」
「おまっ、お子ちゃまだな〜、んなに誕生日祝われるのが嬉し…」
「そうじゃねェよ」
「ん?」
「…アンタん家で、その…」
「ん、んん??」
「…まっ、良いや」
「?ちょ、土方?」



スっと土方が俺から離れて。
喫煙室から出て行こうとする。



「取り合えず部活頑張って来る」
「お?お、おぉ。頑張って来い」
「あ」
「?」



出て行った、と思ったら、急に何か思い出したのか、戻って来る。



「?何だよ。忘れモンか?」
「なぁ、先生」
「ん?」
「アンタが不機嫌だったのってさぁ」
「?」
「俺が、誕生日プレゼント貰って告白されてたからか?」
「!!!」
「アンタも可愛いトコあんだな」
「ち、違ェよ!だ、誰が、んな、や、ヤキモチなんか…!!」
「ちゃんと断ったからな。…念の為」
「だ、だから!ひ、人の話を聞けって…!!」



バタバタと言いたい事を言って。
土方が去る。



「…最後まで人の話を聞けっての…」



あぁ、何だか顔が熱い。
それと言うもの土方が変な事言うからだ。
…ヤキモチ?
んな思春期のガキみたいな…。



「…………………馬ぁ鹿」



気づかない振りしてたんだから、わざわざ指摘すんなよな。



「…ガキ」



…だな。本当。
どっちが、とは言えねェけど。
























































「早く開けろよ」
「解ってるって。鍵鍵…っと」
「早く」
「解ったから急かすなって!つうか何でそんなにワクワクしてるんですか?!」
「だって初めてじゃんか」
「初めてって…別に特別なモンがある訳じゃないぞ?」
「でも、アンタが生活してる空間だろ?」
「そ、だけど…」
「その空間に入れんのが嬉しいんだって」
「………っっ……」



土方が部活を終えて。
買い物を済ませて俺ん家に向かった。
買い物袋下げて、俺の部屋の前に着くと。
早く開けろと土方が喚き始めた。
何でそんなにウキウキしてんだ、と問えば。
然も当たり前と言わんばかりの回答。



「……………………」
「…?何だよ?手ェ止まってんぞ?」
「…そう言う事は言わないで置きなさい。クソ子供ガキ君」
「痛っ!おい、子供扱いすんな!!」
「はぃはぃ、今日メデタクお年を召したもんね〜」
「…っ、そうだよ!……お前に近づいたんだからな」
「メデタク棺桶に近づいたね〜」
「そう言う言い方をするな!!」



ガチャと戸を開ければ。
怒鳴ってた土方が押し黙る。



「……………………」
「ほれ、早く入れ」
「あ、あぁ…」



先に入って靴を脱いで。
片手に持ってた土方の買い物袋を奪う。



「て、手伝うよ」
「良いよ。今日はお前の誕生日なんだから、リビングでTVでも見てろ」
「………………………」



パチっと部屋に電気を点ければ。
キョロキョロと辺りを見る土方。



「…あのなぁ。お前はあんま人の部屋でキョロキョロしない。珍しいモンなんかねェだろ?」
「…結構広いんだな」
「そ?…まぁ駅から結構あるし、家賃安い割に部屋はあるからな。ほれ、リモコン」
「わっ、な、投げんなよ」
「野球部だろ。んなのも受け取れねェでやってけねェぞ?」
「……………………」



そう言ってやれば。
何処かムクたように。
ムスっとしたままTVを付ける。
俺は台所に立って、料理を作り始める。
そう言えば。
自分じゃない誰か人の気配が部屋にするのは久し振り。
そして。
誰かに飯を作るのも久々だな、なんて俺はちょっと笑った。
…何だろ。
何かくすぐったいよな。



「何ニヤニヤしてんだよ?」
「ぅわっっ!な、何だよ…て、TVはもう良いのかよ…!」
「別に見てェTVもねェし、つうかTV見に来た訳じゃねェし」
「あ、そ、そう…」
「……………………」
「つうかね。土方君?そんなジロジロ見られると、非常にやり難いんですが?」
「じゃぁ…手伝うよ」
「は、はぁ?だから良いつってだろうが」
「手伝わせてくれよ」
「はぁぁ??何だよ?お前そんなに手伝い屋さんだったっけか?」
「そ、そうじゃねェけど…」
「?」
「い、良いから手伝わせろって!ほら!何すりゃぁ良いんだよ?!」
「逆キレ?逆キレですかぁ?!」
「…早く!!」
「解った!解りましたよ!!んじゃ、コレ。サラダ作っから、洗って」
「おぅ」



レタスとかトマトを渡すと、土方は素直に返事をして、それを洗ってる。
…ったく、何だってんだ?
最近の子の考えてる事ぁ解んねェなぁ…。
…あ、ダメだそれ。
親父発言だよ…。



「…嫌々。銀八先生はいつでもね、若いから…」
「…?何ブツブツ言ってんだよ?洗い終わったんだけど…」
「え?!あ、あぁ…そっ、そう?」
「次は…?」
「次は〜次はね〜…土方君、包丁使えるっけ?」
「…多分」
「多分?うぅ〜ん…不安だなぁ…つうか、土方アレだぞ?」
「?」
「男も包丁の1本や2本使えるようにならんと。将来困るぞ」
「……………………」
「一人暮らしするようになったら、ぜってェ困るの…」
「…良い」
「へ?」
「だから。良い」
「な、何が…?」
「包丁使えなくても良いつってんだよ」
「何でよ。本当に困るんだからな。いっつも外食って訳に…」
「アンタが料理出来るなら問題ねェじゃん」
「は……はぃ?」
「アンタが出来るなら問題ねェだろ?俺ぁ困らねェよ」



………………。
ちょ、ちょっと待て。



「ちょっと待てぃ!何で俺が料理出来んのと、ちょ、おま…それは関係なくないか?!」
「関係あんだろ。どーせ将来一人暮らしつうより、アンタと暮らすつもりだし」
「待て待て待て!んなプラン聞いてねェんですけど?!」
「今話した」
「そう言う問題でもねェっ!!」
「…サラダ作んだよな。じゃぁ、キュウリとか切って良いんだよな」
「コラコラコラっ!話終わってねェし!!」
「…別に。アンタの意見なんか最初から聞いてねェし。そん時んなったらアンタ攫えば良いだけだし」
「さらっ…!」
「アンタの「NO」は聞き飽きた」
「ぐっ…!」



…この野郎。



「…図太くなってんじゃねェよ…」
「赤い顔で言っても説得力ねェぜ?先・生」



気が付きゃ何だか顔、熱いし…。
あ〜ぁ、もう普通の会話も出来やしねェ…。
あぁ〜もう。人参でも切ってよ。
動いてれば会話しなくて済むだろうしな。
料理に集中!!



「そうだそうだ…これで一緒に料理してっからって…つっ!」
「銀八?!」
「だ、大丈夫大丈夫」



しまった…!
余所見つうか、考え事してて、包丁で指切っちゃったよ…。
罰当たっちゃったかな…変な事考えてる俺に。



「見せろよ!」
「だ、大丈夫だって、ちょっと切っちゃっただけ」
「…血がっ、何してんだよ!料理得意なんじゃ…」
「得意って訳で…って、何してんの?!」



チュっと指先にキスする土方が視界に広がって。
俺は慌てて指を引っ込まそうとするんだけど…!
コイツ…馬鹿力で全然動かない、んですけどっ…!!



「離せって!」
「痛ェか…?」
「い、痛くはねェけど…!!」



チュっと音が聞こえて、何だか恥ずかしくなって。



「…止まった、か?」
「んな深くねェっての…」
「…アンタ、傷つくの見たくない」
「だ、だから…そ、な深く…な…ぃ…」



ギュって手を握られて。
何でか見つめ合って。
ドンドン土方の顔が近づく。


(ちょっ…こんな少女マンガみたいな展開有り?)


そう思ってるのに。
そう思ってるのに、身体が・動か、なぃ…。



「銀八…」
「…っ…」



優しく呟かれて。
ピクって身体が反応してる。
思わずギュっと目を閉じてしまって。
これって…ヤバ、くないか…?



ピーピーピー



「っ!!」
「な、何だ…?」
「あ、そうだそうだ。レンジにね、掛けてたモノがあったんだ。そうだそうだ」
「ぁ、てめっ…!」
「それに絆創膏も貼らなきゃね〜。ってな訳で土方、サラダの盛り付け宜しく」
「あ、おいっ!!!」



バタバタと台所から出る。
あぁ、もぅ。
顔が熱い。
動悸が煩い。
年甲斐もない自分の行動・気持ちに追い着けない。
一緒にご飯作って。
何だか「新婚さん」みたいなんて。
俺、どうしちまったんだよ?!

























































「はぁ〜食った食った」
「…食い過ぎだっつうの」



一通り料理を出すと、土方は、んな細い身体の何処に入るんだってくらい食った。



「普通だって」
「普通じゃねェよ」
「アンタが食わなさ過ぎなんだろ」
「俺が普通なの」
「よく言うぜ。甘いモンなら死ぬ程食うくせに、何で普通の食事はあんな少食なんだか…」
「甘いモンは別腹なの」
「女かよ?!」



土方の突っ込みにゲラゲラ笑う。
…良かった。
何だかいつもの俺達に戻ったんじゃねェか?



「…もう、こんな時間なんだな」
「え?あ、あぁ、そう…だな」
「ちょっと待ってろ、土方。帰る前に渡してェモンが…」
「え?ちょっ、おぃ…」



バタバタと冷蔵庫に向かって。



「コレコレ。誕生日つったらやっぱこれっしょ♪」
「コレ…」
「プレートとかないけど、それは勘弁な」



取り出したのはケーキ。



「いつの間に…」
「へへ、まぁな」



パコっと箱を外す。
出て来たのは…。



「…おぃ。1ホールも食えねェぞ」
「残った分は俺が食うから良いんだよ♪」



ウキウキしながらフォークを差し出す。



「お前に合わせて甘くねェから安心しろ」
「って、おぃ。アンタが作ったのか?」
「ん?ん、んん…まぁ、そう…ね。そうかもね」
「え?それじゃぁ、コレ…」
「ん?」
「…前から作ってたのか?」
「え…?」
「だってさっきコレ作ってる様子なかったよなぁ?」



土方の言葉に固まる。
う゛…変なトコで目聡いヤツ。



「って事は…俺の誕生日、知ってたんだ」
「…まぁ、俺の生徒、ですから…」



し、しまった!
こっそりサプライズのつもりが、何か変な流れに?!



「…俺が今日部活だってのも」
「あ、それは偶然」
「じゃぁ後で連絡くれるつもりだった…?」
「…ぅ…」



本当は。
連絡なんか取るつもりもなかった。
何かの拍子で。
こうやって一緒に過ごせたら、とか。
何かのきっかけで。
こうやって祝えたら。
…渡そうと思ってた。
手製の、甘くないバースディ・ケーキ。
……何だよ。
俺、結構前から乙女気分だったんじゃねェか。
ケーキ作って。
あわよくば祝おうとしてた。
…こうやって。



「…本当はな」



お前と。



「連絡とかもするつもりもなかったんだ」
「…え?」



過ごしたかったんじゃねェか。



「ただ…ただ過ごせたら良いなぁ、とか」



大人の意地とか、俺は先生だから、とか。



「何かの拍子で知るきっかけつうか…ぅん、コレ渡せる機会があれば、と思って…作った」



そんな理由で気づかない振りしてたけど。
本当は。



「…お前が部活動してて良かった」
「…うん」
「…過ごせて良かった」
「…あぁ」
「誕生日…おめでとう。土方」
「サンキュ」



そう言って、土方が笑う。
…あぁ、言えて良かった。
一緒に…過ごせて良かった。



「…意地ばっか張ってるのもダメだな」
「そうだよ。アンタは意地ばっか張ってて。たまには素直になりやがれ」
「…うっさい。言われると何かムカつく」



得意そうに言う土方にムカついて。
俺はケーキをフォークに刺すと、それを土方の口に押し込む。



「むがっ!だ、ほっ…」


突然の事でモゴモゴしながら何か言う土方に俺は笑う。
そして。



「…ん?」
「ん?どしたよ?」
「おい、ケーキに何か入ってんぞ。甘味好きが聞いて呆れ…」



モグモグとケーキを食べていた土方が、不意に口の中に異物感を覚え、それを吐き出す。
…しまった。すっかり忘れてた…!!



「……………おい。何だ、コレ」
「え、え〜っと…その、プ、プレゼント?」



吐き出したそれを凝視して、土方が固まる。
つうか俺も固まってるつうの。



「お、おい、もしかしてコレ………」
「うん…そぅ…」



それは鍵。
土方の手の中で鈍く光るそれ。



「…学校の資料室の鍵」
「し、資料室のかよ!!!」



苦し紛れにそう言えば。
土方は思わずガックリし、そして叫んだ。
あ〜もぅ…しょうがねェなぁ。
…まっ、今日は素直になるって思ったし。
…良いか。



「…馬ぁ鹿。幾ら俺でも資料室の合鍵なんか持ってっかよ」
「…あ?」



ガックリを頭を垂れる土方に。
コツンと頭を叩いて。



「ご想像通り俺ん家の鍵だよ。…冗談で入れてみたの、すっかり忘れてた」
「…………マジかよ…………」



マジマジと手の中にある鍵を見て。
嬉しそうに土方が微笑む。



「出来れば返して欲しいんだけど?」
「ヤだね。貰ったモン返さない主義なんで」
「…ふぅん。じゃぁ、女子から貰ったプレゼントもご丁寧に貰った訳ね」
「…あ?」
「な、何でもねェよ!!!」
「何だよ。やっぱ妬いてたんじゃねェかよ」
「誰が妬くかよ!!これは妬いてるんじゃありません!!」
「じゃぁ何だよ」
「貰ったんなら、俺が使えるモンもあるかも知れねェじゃねェか。…どれどれ〜♪」
「あ、コラ!勝手に人の荷物漁るんじゃねェっ!!」
「あ、何だよ。ケチケチすんなよな。いーじゃねェか、プレゼントあげたんだから」
「どんな理屈だ!つうか、アンタ誕生日でも何でもねェだろ」
「え?何何?じゃぁ俺の誕生日には、土方君、何かくれるの?」
「…あぁ。とっておきのをやるよ」
「え?何何??」
「…俺のこれから」
「…え?」
「俺のこれから。未来も、何も。…全部アンタにやるよ」
「んなっっ…!!」
「嬉しいだろ?」
「い、要りませんから!そんな重いの!!!」
「はぁ?!何処が重いってんだよ!!」
「人1人の未来なんて、そんなん貰える程、俺は達観出来てねェんだよ!!」
「じゃぁアンタの未来、俺にくれよ」
「プ、プレゼントはもうあげただろ?!!」
「俺は…鍵だけじゃなくて、アンタの全部が欲しいんだって」
「おまっ、言ってて恥ずかしくないんですか、このヤロー!!」
「だって本当の事だもんよ。…何だよ?顔赤いけど照れてんのか?」
「照れてません!これは…そう!部屋が暑いから!!」
「じゃぁ脱げば…」
「だぁぁぁっ!!子供じゃないんで、一人で脱げっ、ば、馬鹿!脱がそうとすんなぁぁぁ!!!!」
「まぁまぁ。折角の誕生日なんだから…」
「な、何がまぁまぁだよ!ちょっ、乗っかんな!!も、良いからお前もぅ帰れ!!」
「はぁ?帰る訳ねェじゃん。夜はこれから、なぁ、銀八?」
「か…
帰れぇぇぇっっ!!」



やっぱ。
素直になんかなれない。





・END・
2006/05/05UP