一番最初に見つけた、仲間。
逢った時から、まるで気心の知れた奴みたいに。
言葉にしなくても。目を合わせなくても。
肩を並べられた。
安心して隣に居られた。
野望があって。それに向かって躊躇なくて。
すっげェ格好良い奴。
おれの一番の仲間。      それが、ゾロ。



「…フィ。……おい、ルフィ!」
「…ほへ?」
「ほへ、じゃねェよ!おい、食いながら寝てんのか?早くそれ口に入れるなら入れろ。ハチミツただ流れだぞ」
「お、おぉぉぉ?!いつの間に!!」



サンジに注意されて、フォークに刺さった平たいケーキを見れば。
たっぷり掛けたハチミツがダラダラと流れている。
おれは慌てて、刺したケーキを口に入れる。



「ほら、これで零れたハチミツ拭け。…って、あ〜、服もベトベトじゃねェか。ついでに着替えて来い」
「く、食ってからで良いか?」
「…誰もてめェの分取ったりしねェつうの。つか、膝にも零してんじゃねェか。お子様か」
「う〜…か、考え事してたんだよ!!」
「考え事!…は〜、お前がねぇ」



サンジ。その反応はちょっとムっとするぞ。
おれだって考え事ぐらいするっての!



「な、何だよ!おれが考え事してちゃおかしいってのか?!」
「別におかしいとは言っちゃいねェよ。ただな〜ん〜…」
「?何だよ」
「今日の飯は肉じゃねェぞ」
「肉じゃねェのか?!」
「肉ばっか食ってちゃ栄養偏るだろうが」
「そうだけどよ〜肉食わねェと力が……ってそうじゃねェよ!」
「ぁれ?違ったか」
「違うわ!!」



お前おれを何だと思ってんだよ!!
おれがプクっと頬を膨らますと、サンジがプカっと煙草の煙を吐き出して。



「あぁ、解ってる解ってる。…ゾロん事だろ?」
「へ?何で解んだ?お前エスパーか??」



ズバリ言い当てられて、ビックリした。
何でだ?何でサンジはおれの考えてる事解ったんだ??



「そりゃぁお前…さっきのツラ見ればな」
「ツラ?何かあったのか?」
「あったのかって…そりゃぁお前達だろうが。…さっき。ゾロ呼びに行った時、何かあったんだろ?」
「…………………………………………」



言われた言葉に、思わず絶句してしまう。
一旦視線をサンジから外して、俯く。
ベタベタに濡れた、ハチミツまみれのおれの膝。



「…んなひでェ顔してた?」
「……驚くくらいに」



その言葉に顔を上げる。



「…嘘。安心しろ。おれしか見ちゃいねェよ」



よほど悲惨な顔したのか、サンジは小さく「…悪ぃ。言っちゃ不味かったか?」と言った。
おれはその言葉に小さく首を左右に振って見せた。
そしたら、サンジはおれの頭をポンっと撫でて。



「…ナミさんもウソップもチョッパーも見ちゃいねェよ。大丈夫だ」



その言葉に一気に安堵する。
良かった…。



「で?何で、んなツラしてたんだ?言ったら、少しは楽になんじゃねェのか?」
「…………………………………………」



一瞬。
言おうかどうしようか、迷った。
正直、おれにだって、よく解らない。
解らないけど、検討はついてた。
多分、きっと原因はあれ。
でも。きっと、それは何気ない事なんだろうと思う。
それをひどく気にするおれが馬鹿なんじゃないかって思って。
でも、それから。



「……払われたんだ」



ツキンと痛んだ。
ジクジクと痛みを生む胸が。
少しでも助けて欲しいと、言葉が口から出てた。



「払われた?」
「手。…払われたんだ。触ろうとしたら」
「…ゾロに?」
「…………………………………………」



サンジの言葉にコックリと頷く。
あの時。
咄嗟に払われた手。
それはまるで。
おれを。
おれ全部を。
…拒絶してるみたいだった。



「ゾロは何て?」
「…今、汗臭いからって」
「…ふ〜ん」



それだけ言って、サンジは黙ってしまう。
その沈黙が。おれには耐えられなくて。
ギュっとフォークを握ったままの手を膝に下ろして、ただ俯く。



「…じゃぁ」
「?」



不意に上がったサンジの声。
それに顔を上げると。
サンジはニっと笑って。



「今なら風呂入って、汗もさっぱりしてるだろうから。…触りに行ったら?」



まるで何でもない事のように言うから。
おれはしばらくポカンとして。
それから、パっと気持ちが浮上した。



「そうだよな!…うん、触りに行く!」
「待て待て。いきなり触りに来ましたじゃ、奴もビックリするだろ。まずおれが行くよ」
「おぉ。サンジも触るか?」
「女性なら喜んでと言いたいが、誰が好き好んで野郎に障るか」
「ゾロの身体、綺麗だぞ?」
「興味ねェ」



きっぱり言い放つサンジに、おれは笑いが零れる。
そうだよ。
グチグチ考えるなんて、おれらしくねェよな!
そうと決めたら、善は急げだ!!



「行くぞ、サンジ!!」
「はいはい、その前に膝のハチミツ拭いてな」
「ぁ、そうだった!…何か、サンジってお母さんみたいだな」
「言うに事欠いて、お母さんとは何だ、お母さんとは!このクソゴム!!!」
「シシシ」



コツンと叩かれた頭。
でも全然痛くねェ。
こう言うのって良いよな。おれ、すっげー好きだ!
…サンジに膝を拭いてもらって、2人で風呂場に。
そしたら、丁度ゾロが出て来て。



「っ、…2人で何だよ。風呂場に用か?」
「…否、ちょっとお前に用事がな」
「おれに?」



スっと伸ばされたサンジの手。
それはゾロの肩に触れて。
…何だよ、サンジだってやっぱ触りたかったんじゃん。
なんて、おれが思ったら。



「ばっ…!お前水浴びたのか?!すっげー冷てェぞ!!」
「…うるせェ。耳元で怒鳴んな」
「だからってお前…!幾らお前が馬鹿でも、風邪ひくぜ?!」
「…良いんだ。頭冷やしてたから」
「頭?」
「………んでもねェよ。んで?おれに用ってのは何だ?」



サンジの怒鳴り声。
ゾロの言葉に目をパチクリさせたら。
鬱陶しいとばかりにゾロの続きざまの言葉。
おれは今日そんなに暑かったか?
なんて思ってたら、今度はサンジがゾロに近づいて、ボソボソ話。
んん?聞こえねェぞ??
おれが近づこうとしたら、サンジがスっとゾロから離れて。



「…じゃぁ、お2人さん。邪魔者は去るぜ」
「…?おう!サンキューなサンジ」



ポンとおれの肩を叩いて、サンジはその場を後にした。
おれはサンジに手を振って、振り返ると。



「…ゾロ?」



そこには硬直してる、ゾロの姿。
ん?何だ、どうした?



「ど、どうしたんだ、ゾロ?何かあったのか??」



あまりにもすんごい壮絶な顔してるから、おれが近づいたら。



「………くな」
「は?」



ボソボソっと、ゾロの声。
何だ?聞こえねェぞ??
そしたら。
ゾロはやっぱすんげェ顔して。



「おれに、近づくな!!!!!!!!!」



…は?



「…っっ…」



意味が解らないおれを押し退けて。
バタンと扉が閉じた音がした。
…今、何て言った?
何て言われた?



「…ど、して?」



おれ、ゾロに何かしたか?
おれ、ゾロの気に障る事したか?
強張った足は、動きそうになくて。
いつもは踏ん張れた足は。今は心元なくて。
ただ、おれは。
そのまま座り込んで。
言われた言葉の意味を探した。






2008/06/21UP