「………………………………」



本日の天気は快晴。
波も穏やかで、航海は至って順調。
クルー達も各々の自由な時間を満喫している訳だが…。



「……ふぅ〜」



青い空の下。
おれは黙々と作業を続けている。
何って、夕飯の下ごしらえだ。
ずっと下を向き続けていたから、肩がこる。
コキコキと首を回しながらも、また食材に手を伸ばす。



「は〜…さやえんどうって栄養豊富なのは良いけど、この筋取りが面倒だよな…」



ごねても量は減らねェんだけど、どーにも独り黙々と作業してるとついつい口が出てしまう。
さやえんどうの栄養分。
ビタミンC・55mg、ビタミンB1・0.15mg、ビタミンB2・0.13mgビタミンE・0.6mg、カリウム・220mg。
便秘解消、美肌効果あり、高血圧にも良いし、風邪予防にもばっちし。
季節の変わり目だからな、栄養分としては文句ねェ。
最初はキッチンで作業してたが、どうにも静か過ぎて。
少し陽に当たりながらやるかと、甲板に出たが。
…何だよ、誰も居ねェのかよ。
いっつも騒いでる、ルフィやウソップ、それにチョッパーはどうしたんだ?
自分の手で肩を揉みながら、キョロキョロとしてると。
…なるほど。
このポカポカ陽気に中てられたのか、スヤスヤ寝てやがる。



「…ん?」



ゴロンと眠る、その中に。
とある人物が居ないのに気がついた。



「…ルフィは何処行ったんだ?」



あの元気有り余ってる、ルフィが居ない。
何処行ったんだ?
もしかしてキッチンにつまみ食い……ってそりゃぁねェな。
おれがキッチン出て、ここに来るまで。
誰にも会わなかったし、ここはキッチンの出入り口が見える場所だ。
おれの目を潜り抜けてキッチンに入るなんて不可能だし。



「んじゃ何処に…?」



おれが首を傾げていたら。
…お、居た。
下の部屋に居たのか、甲板の板を開けてルフィが出て来た。



「何だよ、ルフィは昼寝しないのか?」
「ん?あぁ、別に眠くね」
「そっか」



おれが声を掛けると、サラリと返して。
よいしょとルフィが甲板に降り立つ。
そして。



「コイツら、このままじゃ風邪引くからな。毛布、持って来た」
「そりゃエライ」



バサバサと甲板に寝転んでる連中に毛布を掛けてやる。



「ナミさんは?」
「部屋で今までの海図まとめてる。煩くしたら海に沈めるってよ」
「…了解」



お茶を持って行こうかと思ったが、集中してんなら邪魔しねェ方が得策だな。
戻って来た時にでもお出しするか。
おれがそんな事を考えていたら。



「サンジは何してんだ?」
「夕飯の下ごしらえ」
「何だ、それ?」
「さやえんどうだよ」
「さやえんどう?それ、どうすんだ?」
「煮物にでもしようと思ってな。筋取ってんだ」
「筋?」
「そっ。ほれ、ここのヘタを切って、こう引っ張ると…」
「おぉ〜!すっげェな、面白そう!」
「そうか?」



んな感動するもんでもねェと思うが…。



「おれもやりてェ!」
「そりゃ助かる」



キラキラとした目で言われて。
そりゃ結構な量あるから、手伝ってもらえりゃぁ助かるけど…。



「助かるけど…お前に出来んのか?」
「失礼だな、お前。これくらいならおれだって出来る!」
「…そうか」



思わずバラティエで手伝ってもらってた事を思い出す。
…引き千切ったりしねェよなぁ?



「んじゃま、試しに1つやってみろ」
「おぉ!」



1つ渡すと、ルフィはそれを受け取って、恐る恐るヘタを摘む。



「そうそう。んで、それを下に引いて…」
「……むむむっ……」



無言でそっと下に引く。
元々筋ってのは頑丈に出来てるもんだから、んな慎重にならなくても良いと思うんだが…まぁコイツの力加減じゃぁそっとの方が良いか。



「…おっ、出来たぞ、サンジ!これで良いんだよな!!」



嬉しそうに取れた筋と、さやえんどうをおれに見せて。
こんな事で一喜一憂するなんて、何つうか…。



「はいはい、よく出来ました。けど、それ1つじゃねェんだぞ〜」
「おう!じゃんじゃん持って来てくれ!」



おれがそう言うと、ルフィは嬉しそうに渡した奴の筋取りに没頭する。
しっかし危ない手付きだな〜んなにガチガチんなってやると肩こるぞ。
…すぐに飽きるだろうと思ってた作業だったが、意外な事にルフィは没頭してやった。
何が奴の気を引いたのか解らなかったが、こっちとしては非常に助かる。



「…なぁ、サンジ」
「あ〜?」



ふと。
ルフィが作業しながら声を掛けて来た。
おれは作業しながら、返事をする。



「おれさぁ」
「あぁ」
「今まで食うだけだったけど」
「あぁ」
「料理作るってすっげー大変なのな」
「…は?」



意外な言葉に思わずルフィを見ると。
ルフィはニッコーと笑って。



「こんな手間が掛かるなんて知らなかった!おれ、これからはもっと味わって、サンジの事思いながら食うな!!」



おれの顔見ながら言うもんだから、おれは思わず咥えていた煙草をポロリと落として。



「あちちちち!!」
「さ、サンジ?!何やってんだ、おめー」
「うっせ、この馬鹿ゴム!お前が変な事言うからだろうが!!」
「お、おれかぁ?!おれのせいか??」
「そうだよ!!」



膝に落ちた煙草を払って、もみ消した。
…くっそ〜、こんの天然ゴムが!



「んん?サンジ、お前、顔赤くねェか?」
「うるせェ!!黙って筋取ってやがれ、このクソゴム!!!」





・END・
2008/03/31UP