おれは時々、ゾロってずりぃと思うんだ。
だってさ。



「んだと、このクソ緑剣士ぃぃぃ!!」
「うっせェ、このグルグル黄色コックがぁぁ!!」




ゾロはいっつもサンジと喧嘩してる。
ゾロはおれとも喧嘩した事ある(まぁ原因はおれの勘違いだったけど)
ロビンが言ってたんだ。



「剣士さんとコックさんは本当に仲が良いのね」



おれはその言葉を聞いて、首を捻ったんだ。
だって喧嘩は仲の悪い証拠だって、ナミが言ってた。
ナミは…



「本当にあの2人、相性が悪いのね…」



相性って何だ、って聞いたら、



「簡単に言うと、仲が悪いって事よ」



って言ってた。
ナミはゾロとサンジは仲が悪いって言った。
でもロビンはゾロとサンジが仲が良いって。
全く違う言葉。正反対の言葉。
おれがそう言うと、ロビンはまた、楽しそうに笑って。



「喧嘩するほど仲が良いのよ?」



と言った。



「仲が良いなら喧嘩しねェんじゃねェのか?」



っておれが聞いたら。
ロビンは楽しそうにまた笑って。



「だって本当に仲が良くなきゃ、喧嘩なんか出来ないでしょ?」



ますますおれの頭には?の嵐。
そしたらロビンは。



「仲直り出来るって言う確証がなきゃ、気軽に喧嘩なんか出来ないでしょ?」



あぁ、そうか。
おれは納得してコクンと頷いた。
…それは解る。
前におれがゾロと喧嘩した時。
そん時は頭に血が上ってたってのもあったけど。
本当は。きっと。
何か理由があるんだって心のどっかで思ってた。
ゾロはそんな事する奴じゃないって。
でも頭に血が上ってて。
殺してやるって。…殴りかかった。
理由聞いて。納得出来たら。
そしたら仲直り出来るって思ってた。
…あぁ、そうだ。
おれはゾロを『信頼』してたんだ。
喧嘩しても。どっかで解ってた。解り合えるって。



「…うん」



おれがもう一度頷くと。



「ふふふ…だから。剣士さんとコックさんは仲が良いのねって思ったの」
「……うん」



楽しそうにもう一度、ロビンが笑って。
おれは視線をロビンから喧嘩してるゾロとサンジに移した。
それで思ったんだ。
…喧嘩なんて全然良いもんじゃねェと思う。けど。
……おれとゾロは本気の喧嘩をした事がある。
………ウソップとだってある。
じゃぁ……。



「…あれ?」



じゃぁ、サンジとは?
よく食べもん勝手に盗み食いして怒られた事はあるけど。
でもあれって『喧嘩』じゃねェよな?
ぁれ?



「ん?どうしたんだよ、ルフィ」
「…ウソップ…」
「な、何だよ、んな情けない顔して!どーしたんだよ!!」
「…ウソップ」
「ん?何だよ…」
「なぁ、ウソップ」
「だから何だよ!!」
「お前…サンジと喧嘩した事あるか?」
「は…?サンジと?……いいや、ねェ、けど…」
「だよな…」



ぁれ?
って事はサンジが喧嘩すんのはゾロとだけ、か?
それってずるくねェか?



「ったく、ぁのクソコックだきゃぁ許せねェ…」



喧嘩が一段落ついたのか。
いつもの定位置どっかりと腰を降ろしたゾロ。
そんなゾロに近寄って、おれは。



「ゾロ、ずりぃ!!」
「…は?」



きょとんとしたゾロにおれは続きざまに言葉を吐く。



「だってゾロばっかサンジと喧嘩してずりぃ!」
「…あのなぁ、ルフィ。おれだって好きでエロコックと喧嘩してんじゃねェ!!」
「それでもずりぃ!おれだってサンジと喧嘩してェ!!」



叫ぶおれにゾロは頭を抱えた。
何だよ、何か変な事言ったか、おれ??



「…んなにアホコックと喧嘩してェのかよ」
「してェ」
「…んで?」
「え?」
「何でアホコックと喧嘩なんかしてェんだよ。しねェ方が良いに決まってんだろうが」
「それは…」



えーっと、何だっけ?
あぁ、そうだ!



「信頼の証だ!!」
「…は?」
「喧嘩するほど仲が良いんだぞ!仲良くなる信頼の証だからな!!」



おれが胸を張って答えると、ゾロはしばらく黙っていたが、すぐに。



「あっほか!!おれとあいつは心の底から合わねェんだよ!仲良くねェし、信頼もしてねェっっ!!!」



力一杯叫ばれて、耳がキーンとした。
…んだよ。



「でも羨ましいんだー!おれだってサンジと喧嘩してェっっ!!」



ずりぃんだ!ずりぃんだ、ゾロ!!
独り占めなんてずりぃんだ!!



「…子供か、お前は」



ジタバタと両手両足を振り回しながら、おれが叫ぶとゾロははぁ…と溜息を吐いて。



「あぁ、解った。わーったよ。…んじゃ、耳貸せ、ルフィ」
「耳?」
「あぁ。…あのグル眉と喧嘩出来る呪文を教えてやる」
「マジで?!」
「あぁ。だから耳貸せ」
「おう!」



おれがゾロに近づいて、耳をゾロの口に近づける。
…ん?……んん??



「ん?んな言葉でサンジと喧嘩出来んのか?」
「あぁ、出来る出来る。おれぁいつもそれ言って喧嘩んなるからな」
「そっか!んじゃ、早速サンジに言って来る!」



立ち上がって、タっとキッチンへと足を向ける。
ゾロと喧嘩すると、サンジは決まってキッチンに向かうからな!



「サーンジ!!」
「あぁ?んだよ、クソゴム。飯ならまだだぞ」
「解ってるよ!今日はサンジに言いたい事があって来たんだ」
「おれに?何だよ?」
「えーっと…」



お、何だかドキドキして来たぞ。
サンジと喧嘩か〜…。
マジでやんないと蹴り飛ばされそうだな。



「ルフィ?」



ドキドキとする胸を押さえながら、息を大きく吸って。
…よし、言うぞ!



「…アホコック!」
「……………は?」
「…ぁれ?ぇっと、…ぁ、エロコック!ぇっとぇっと…
変態コック!グル眉!!
「………ぉぃ」
「それからそれから…ぁれ?後何だっけか……」
「…ルフィ」
「へぉ?!」
「…ちょっとお前、黙れ」
「は…?」



サンジはおれの肩に両手を掛けると、そのまま頭を下げた。
…ん?
これはあれか?所謂、『項垂れる』って奴か?
んん?
おかしくねェか?
ゾロとならここで『んだと、このクソ剣士!』って始まるは、ず…。



「…サンジ?」
「おま…ほんと、地味に凹むわ…」
「は?何で?」
「何でって……はぁ。……まぁ、取り合えず」
「あ、…サンジ?」



スっとおれから両手を離すと、サンジが出口に向かう。
あれ?喧嘩は?
おれとの喧嘩は?



「サン………」



「テんメ、このクソ腹巻緑侍っっ!ルフィに何つう事教え込んでんだ、オロスぞ、クソ野郎!!!」



バタンと扉を開け放って。
そう叫んだサンジと迎え撃ってんだろうゾロ。
ドタバタと聞こえる、騒音。



「…んだよ」



サンジと喧嘩出来なかったじゃんか。
ゾロの嘘吐き。



「…でも」



何でだろう。
もう羨ましいとか思わねェや。



「…?何でだろう」



『おま…ほんと、地味に凹むわ…』



ふと思い浮かぶ、項垂れたサンジの頭。
見えたつむじ。



「まっ、いっか!」



サンジのつむじ。
きっとゾロだって見た事ねェんだろうな!
それだけで今日は大収穫って事にしといてやろう!!





・END・
2008/03/30UP