こっくり、こっくり…。
お、そろそろ2回目か?
こっくり、こっくり…ごつん!
…はぃ、2回目。
「お〜い、ルフィ。んなに眠いならそろそろ部屋に戻ったらどうだ?」
「…ん…」
赤くなった額を手で撫でながら夢見心地の返事。
はぁ…何だってんだよ。
「ルフィ、お前今日不寝番じゃねェだろうが。…あぁ、ほらまたテーブルに頭ぶつけんぞ」
「…ん…」
テーブルを挟んで向かい合わせに座っていたが、おれはやれやれとルフィの隣に座る。
「あんだよ。このままここに居たって夜食なんか出ねェぞ」
「…ん…」
「ルーフィー?」
「…ん…」
「…はぁ」
呼び掛けても生返事。
漕いだ船は漕ぎっ放し。
おれは溜め息を一つ吐いて。
本当は外に出た時に使おうと思ってた毛布を取り出す。
それをルフィの身体に巻きつけて。
「ほれ、ルフィ」
「…んぁ?」
「おれに寄っ掛かって良いから。これ以上テーブルに頭ぶつけて、悪い頭を余計悪くすんな」
「?」
「あぁ、解んねェなら考えなくて良いから。ほれ、頭寄越せ」
グイッと引っ張って、ルフィの頭をおれの肩に。
きょとんとしてたルフィだが、すぐにすやすやと寝息が聞こえて来た。
…ったく。いつもは9時には寝てるお子様がどーしたってんだよ。
「…ん」
「…あ?」
そう思ったら。
こっくりとルフィの頭がおれの肩からずれて。
ごつん!!
…はい、本日3度目。
「…あのなぁ。おれの善意を無にするような事をするんじゃねェよ」
「いってー!!おれんせいじゃねェよ!!」
あ〜ぁ。
こりゃ明日にはたんこぶになってんな。
真っ赤んなってんじゃねーか。
…この時間じゃチョッパーも寝てるだろうしなぁ。
まぁ放っといてもコイツなら大丈夫か?
つか、ゴムなら跳ねるくらいの気合見せろよ。
「あ〜…、もー部屋戻れ。眠いんだろ?」
「ん〜…」
渋るルフィにおれは本日2度目の溜め息を吐いて。
「はぁ…わーたよ。しょうがねェから膝貸してやるよ。何がしてェのか知らねェけど、納得したら男部屋戻れよ」
ポンと膝を叩いて言うと。
「…え」
今まで寝ぼけ眼だった目がパチクリと瞬いた。
「んだよ。野郎の膝枕じゃ不満てか?おれだって野郎じゃなくて可愛い女の子に、どっちかてーと膝枕されてェよ」
「や、す、すげェ有り難いんだけど…その、い、良いのか?」
「ぁん?」
「サンジの足は…その、大切なもので。その…」
「………………………」
…へぇ。
思わず感心。
コイツにも、んな概念あんだ。
おれが手を大事にしてるように。
戦うコックさんとして。
足も同じくらい大事にしてるって事。
「…まっ、今日は出血大サービスだ。12時を超えたらおれは甲板に出るから起こすぞ。それまでな」
「おう、サンキュー、サンジ!」
おれがそう言うとルフィはニッコーと笑って、おれの膝にダイブ。
…おい、コラ。
足は丁重に扱えってんだ。
「…すぅすぅ」
静かなキッチンにルフィの規則正しい寝息が響く。
ちらりと時計を見ると12時前。
…あぁ、そうか。
「…おい。……ルフィ?」
「…ん」
真っ黒な。
癖のない髪を一房持って。
優しく引っ張れば。
…夢見心地の瞳が。
見つめる。
おれを。
「…サン、ジ?」
「…おめでとーさん」
「…ぇ?」
「誕生日。“今日”だろ?」
「……………………………」
大きな瞳が。
輝く。
どんな綺麗な海より。
眩しい太陽より。
瞬く満天の星より。
綺麗で眩しい。
笑顔が開く。
「…もっかい」
「…誕生日。おめでとう、ルフィ」
「サンキュー、サンジ。…おれ、サンジに一番最初に言ってもらいたかったんだ!」
…知ってるよ、馬ぁ鹿。
普段9時には就寝のお子様が。
我慢して頑張って。
だからここに居たんだろ?
だったら。
「あぁ。おれも一番に言いたかったぜ、クソ野郎?」
それに応えなきゃ、男が廃るってもんだろ?
「…それにしても。大概鈍いな、お前は」
「ん?」
何でこの日に。
おれが不寝番なんてやってると思ってんだよ。
朝飯の匂いで誰よりも早起きすんのは誰かって。
しっかり覚えてろっての。
まぁ、それでも。
「飛び切り気合入れて、おもてなしするから。…覚悟しろよ?未来の海賊王」
こんな事やらかすてめェが、クソ可愛いなんて。
おれもヤキが回ったか?
・END・
2011/05/07UP