「適当に座ってて。今飲み物持って来るっスから」
「はい」
久々の逢瀬。
デートしようって黒子っちに言ったら。
『君と出掛けると目立つので嫌です』とはっきり拒絶されて。
『じゃぁお家デートは?と聞いたら。『家なら良いですよ』と承諾の言葉。
じゃ家にご招待するっス!と気分も上々に今日は黒子っちとお家デートっス!
「お待たせっス」
「有難うございます」
飲み物を持って自室へ。
ベットを背に、ちょこんと座ってる黒子っちが可愛い。
「えーっと、ご両親は…?」
「仕事っス」
「休日なのに、ですか?」
「んー、大抵休日でも仕事っスね。あの人達殆ど家には居ないっス」
「そう、ですか」
「っス。なんで、気楽にしてて」
「…はい」
オレの言葉にコクンと頷いて。
テーブルに置かれたジュースを両手で持って、コクコク飲んでる。
あー、マジ可愛いなぁ。
「…黄瀬君」
「え?!な、何スか?!」
ジっと見てたのバレた?!
急に呼び掛けられて、ドキドキしてたら、黒子っちはジっとオレとは反対側をジっと見ていて。
「これ、アルバム…ですか?」
「あ、あぁ…色々溜まったから整理してたんス。仕舞うの忘れてた」
積み上げられたアルバム。
それを見つけた黒子っちがジっとそれを見て。
「ぁの、見ても良いですか?」
「あ、どぞどぞ。つっても何も面白れーのなんてないと思うっスけど」
頷いて見せると、黒子っちは一番上のアルバムを手に取り、パラっと捲り始める。
オレも黒子っちに近づき、黒子っちが見てるアルバムを覗き込む。
「これ…モデルの時の写真、ですか?」
「あー、それは撮影で使わなかったポラっスね」
「使わなかったの持って帰るんですか?」
「時々ね。一応、親に見せたり。結構な量撮ったりするんで、全部破棄すんのは勿体ないからって」
言葉は交わすが、黒子っちの顔はアルバムに向いたままだ。
ジっと見られる事にちょっと照れが生じるが、アルバムを見つめる黒子っちの横顔をオレは見続ける。
「これは素に近いですね」
「そっスね。撮影の合間じゃないっスかね」
パラパラと捲り、最後のページも見終わり、終わりかな、と思ったら。
見終わったアルバムを脇に置き、まだ見ていないアルバムへ黒子っちは手を伸ばす。
あれ…もしかして積んであるアルバム全部見る気っスか。
「えーっと黒子っち?」
「はい」
「アルバム 全部見る気っスか?」
「はい」
「え゛」
「駄目…ですか?」
「否、駄目じゃないっスけど…」
「けど?」
「せっかく一緒に居るんスから、もっと違う事しよーよ」
「例えば?」
「えーっと、えーっと、一緒に…」
「一緒に?」
「一緒にぃ〜…」
「一緒に黄瀬君のアルバム見ましょうか」
「えー!それって今と変わんないじゃないっスか!つまんないっスよ!!」
「ボクは楽しいです」
「たの、しいんスか…?」
「えぇ。ボクの知らない黄瀬君を見るのは、楽しいです」
「うー…ズルいっス、黒子っち!んな事言われたら、駄目って言えないじゃん!!」
「じゃぁ良いですね」
「黒子っちー!!」
「うるさいです、黄瀬君」
うぅ…せっかく2人っきりなのに…。
仕方ないのでアルバムを見る黒子っちをジっと見る。
食い入るようにアルバムを見る黒子っちに。
写真じゃなくて、本物がココに居るのになーと思いながら。
「黒子っちー、暇っス」
「そうですか」
「そうですかって…写真じゃなくて、オレ見てよ。写真より実物の方が良いっしょ?」
「そうですか」
「…聞いてないっスね」
ハァ、と溜め息を吐いて、ジュースを手に取る。
「あ」
「…あ?」
パラっとページを捲りながら、黒子っちが小さく呟いた。
その言葉に反応して、視線を黒子っちからアルバムへと移す。
いつの間にか結構な冊数を重ねて居て。冊数を重ねる事に『昔』のオレの写真になる。
今丁度、中学くらいか。
黒子っちと出会った頃のオレと出会う前のオレ。
その両方がそのアルバムには納まってる。
「…ボクの知ってる黄瀬君です」
「そっスね。って、今までだって黒子っちの知ってるオレっスよ?」
「そうですけど…モデルの時の黄瀬君は、何だか知らない人みたいで」
「えぇ?!何スか、それぇ?!!」
「まぁ、さっき見たのは殆ど素の黄瀬君…って、ぁれ、こんな写真撮った事ありましたっけ?」
「あぁ、それは…」
そこには、キセキの世代と呼ばれる皆が、写ってる写真だった。
赤司っちに緑間っち、青峰っちに紫原っち。そしてオレに…黒子っち。
誰もカメラ目線じゃないけど、自然な姿がそこに写ってる。
楽しそうに、バスケをしている姿。
「ファンの子が撮ったみたいっス。良く撮れたってくれて。オレのお気に入りの一枚っス」
「良いですね、ボクも欲しいです」
「んー…誰からもらったか覚えてないから、焼き増しは難しいっスねー」
「…残念です」
シュンとする黒子っちにその写真をあげたい気持ちになるが。
オレも気に入ってる写真だし。
でも…。
「…大丈夫、ですよ?」
「え…?」
「君、ボクにこの写真をくれようとしてくれてるでしょ?でも、大丈夫です。君が持ってて下さい」
「い、いーっスよ?近々データ化してもらっうっス。そしたらこの写真、黒子っちにあげるっス」
「本当に結構です。それに。…君が持っててくれた方が良いと思いますから」
「ど、どうしてっスか?」
「その方が良いからです。…きっと」
「?よく、解んないっス」
オレが首を捻ると、黒子っちは小さく微笑んで。
「…君はそのままで居て下さいね」
「ま、ますます意味解んねっス!」
「ふふ、…あ、これ中学に上がった頃ですかね?」
「え?あ、あぁ…そうっスね」
「やっぱり、幼いですね」
「まぁ中1なんて、小坊みたいなもんスからね」
「可愛いです」
「か!?か、可愛いっスか…」
「はい」
何か…微妙。と言うか、複雑。
やっぱ好きな子には「可愛い」より「格好良い」って言われた方が嬉しい訳で。
「じゃぁ、黒子っち。今のオレは?」
「はぃ?」
「今のオレは、黒子っちから見て、どうっスか?」
あの時より成長したオレは。
黒子っちの目にはどう映ってるんだろう。
ドキドキしながら、空色の瞳を見つめれば。
ジっとオレを見て。
「今の黄瀬君は…」
「……………」
「…美人さんですね」
「び!!?」
美人?!
「美人って何スか??それって女の子に言う台詞じゃないっスか?!」
「違いますよ。容姿の美しい人の事です」
「否、それでも…!!」
「男女共通の誉め言葉ですよ」
「誉め言葉、っスか…」
そりゃ一応モデルの仕事してるくらいだから。
それなりに気を使ってはいるけど。
だけど。
「う〜…」
「不満そうですね」
「不満って言うか。…どっちかって言うと「格好良い」とか「男らしい」とかの方が嬉しいっス」
「黄瀬君は「男らしい」とかと、ちょっと違う気がします」
「え゛…じゃ、じゃぁ黒子っちが思う男らしいってどんなっスか?!」
「どんな、と言われましても」
「じゃぁ!どんな奴を格好良いと思うっスか?身近な奴で、誰っスか?!」
「身近、ですか…そうですね、青峰君や火神君ですかね」
「!?青峰っちは解る気がするけど…火神っちもっスか?!」
思いっきり身近だ。や、確かに身近で、とは言ったけれど。
身近過ぎて、軽く凹む…。
ともかく、言われた2人の事を思い浮かべて。
「黒子っちはワイルド系を格好良いと思うんスねぇ…。黒子っち、ワイルド系が好みなんスか?」
「好みと言われましても…まぁ、理想形としてはそう言うタイプなのかも知れません」
「理想形?!やっぱ黒子っち、ワイルド系が好みなんスか?!」
「あの…ボクは別にどんなタイプでも男は好きじゃないです。理想形は、と言う意味です」
「え・じゃぁ、オレは?!」
「いや、あの…」
「黒子っち、オレの事好きじゃないんスかぁ?!」
「…じゃぁ、聞きますけど。黄瀬君はどんな男が好きですか?」
「オレは男は好きじゃないっス!!」
「ボク、男ですけど」
「黒子っちは特別っス!!!」
「……ボクも一緒ですよ。同じです」
ポツリと呟かれたその言葉にパァっと幸せな気持ちに包まれる。
「つまり…そう言う事なんです」
「うー、解ったような、誤魔化されたような」
「誤魔化してませんよ。失礼ですね」
って黒子っちが、ちょっと拗ねたような言い方をするから。
あー、やっぱ可愛いなぁ、とか。
あー、やっぱ好きだな、とか思いながら。
「オレも昔の黒子っちのアルバム見たいなー」
「じゃぁ、今度ボクの家で見ますか?黄瀬君みたいに見応えはないと思いますが」
「本当っスか?!絶対っスよ!!」
「はい」
頷く黒子っちを抱き締めて。
オレを知らない黒子っちを見るのも、楽しいかも知れない。
オレが知らない黒子っちが居るのは、何だか複雑だけど。
あー、青峰っちともっと早く出逢ってたら!!
それか、バスケ部の試合とか、見に行ってたら!!
そしたら黒子っちのバスケも知って、出会った当初あんな失礼な態度取んなかったのに!!
「…黒子っちぃ〜」
「はい?何ですか、黄瀬君」
「今度、さ。写真撮ろ?」
「え、何の、ですか?」
「オレ達の」
「ボク達の?」
「そっ。んで、オレ達のアルバム作ろう」
「ボク達の…」
「うん。んで、いっぱいいっぱい思い出作ろう?そんでさ、おじーちゃんになったら2人で見るの」
「…そんな歳取るまで一緒に居るんですか?」
「え、オレ、これから先、それこそ一生黒子っちと一緒に居る気なんスけど?!黒子っちは違うの?!!」
「否………そう、ですね。そうなれたら、…幸せですね」
「うん。絶対、ぜーったい、幸せにするからね?黒子っち」
「はい。…ボクも幸せにします」
そんな風に笑いながら。
今度カメラを用意しよう、と。
オレは黒子っちと顔を見合わせながら、笑った。
・END・
2013/01/22UP