「もしコイツがさぁ、浮気とかしたらお前どうする?」


突然言われた言葉に、黒子はシェイクのストローを口に銜えたまま、言った人物を凝視した。
そして。


「ちょっ、変な事言わないでくれるっスか、火神っち?!」
「黄瀬君うるさいです。静かにして下さい」
「だってぇ、黒子っち!!」


ガタンと音を立て、椅子から立ち上がった黄瀬が火神に向かって大声で怒鳴る。
それを静かに諌めながら、黒子が火神に問い掛ける。


「急にどうしたんですか、火神君」
「いやぁ、ふと思ってよぉ」


スっと黄瀬を指差して。


「今日もそうだったけどよぉ、コイツいっつも女共に囲まれて。言い方悪ぃけど、よりどりみどりだろ?」
「ほんとに言い方悪いっスね」
「うっせ。…だからもしコイツが浮気とかしたら、お前はどーすんのかなぁと思ってよぉ」
「だぁから!しないってば!!」
「仮定の話だろ?してねェなら、堂々と黙って黒子の答えでも聞とけ!」
「ぐっ…」
「そう、ですねぇ…」


黒子はふむっと顎に指を掛け、考える仕草をする。
それに黄瀬と火神は黙って黒子を見つめる。
そして微かな沈黙の後。


「…有り得ませんね」
「!…ほらぁ!聞いたっスか、火神っち!!オレは浮気なんかしないっスよ〜!!」


黒子の答えに、黄瀬は得意げな表情で、火神に告げる。
すると。


「…いえ、そうではなく」
「へ?」
「あ?」
「火神君はきっと、ボクがそう言う状況に置かれて取り乱したりするか否かを知りたいのでしょう?」
「お?おぉ…」
「だから。それは、有り得ません、と」
「ちょっ、何スか、それ!」
「黄瀬、お前うるさい」
「うるさくもなるっスよ!仮定でもぜっっっったいないっス!それこそ有り得ないっス!!」
「黄瀬君」
「黒子っち〜…」
「世の中、有り得ないなんて事は有り得ません」
「有り…もう何が何だか解んないんスけど?!」


ギャンギャンと騒ぐ黄瀬に、火神はハァっと溜め息を吐いて。


「じゃぁ、黒子。有り得ないなんて事は有り得ないなら、コイツが浮気しないのも有り得ない事じゃないだろ?」
「だからぁ…!!」
「…そうですね。ではその、有り得ない事が有り得たとして。考えてみましょう」
「……オレを無視して話を進めないで欲しいっス……」


怒鳴っても、騒いでも、嘆いても。
黒子と火神の会話は続く。
黄瀬はもう涙声を発しながら、テーブルに突っ伏す。


「…まぁ、在り来たりと言いますか。当然と言いますか。……別れます、かね」
「え?!」
「何焦ってんだよ。もしかしてお前…浮気してんのか?」
「してないっスよ!オレはいつだって黒子っち一す…」
「黄瀬君、ポテト余ってますよ。はい」
「え?!」
「…食べないんですか?」


黒子は黄瀬のトレーに残っていたポテトを取ると。
スッとそれを黄瀬に指し出す。
驚いて黒子を見る黄瀬に、首を傾げてそう言えば。
黄瀬はパァァっと表情を明るくし。


「た、食べるっス…!」
「じゃぁ、はい」
「あーん、パク」
「お前ら……」


目の前に広げられるカップル空気に、火神は呆れる。
一方的なように思える黄瀬と黒子も、2人っきりなら結構甘々な雰囲気でいるのかも、と思う。


「お前もそう言う事するんだな…」
「背に腹は変えられませんから」
「へ?」
「大声で変な事叫ばれるのは困りますから」
「…お前…」


サラリとそう告げる黒子に、火神は今度は違う意味で呆れながら。
チラリと黄瀬を見れば。


「黒子っちにあーんしてもらっちゃったっス」


うっとりと幸せそうに呟く黄瀬に。


「…幸せな奴」


ハァっと溜め息を吐きながら。
自分の残りのポテトをパクっと口に入れるのだった。



・END・
2012/08/19UP