いつだって大切にしたい。
いつだって傍に居たい。
けれど時間は限られてて。
その中でやりたい事をやっていたらどうしたって時間は足りなくなって。
…あぁ、何で違う学校なんだろう、って。
そんな話をしてたら。
「違う学校だから良いんですよ」
「え〜…オレはいつだって黒子っちの一番傍に居たいのにぃ〜」
「…例えばですが。もし黄瀬君とボクが同じ学校に進学したとしたら」
「したら?」
「今の関係はなかったと思います」
「え?!な、何でっスか?」
「近過ぎると、解らない事ってあると思いますから」
「と言う事は、離れて解る事があるって事っスか?」
「はい。だから別々の学校で良かったと思います」
そう言われてしまえば、別々の学校で良かったかぁ、と納得するやらしないやら。
何か上手い事誤魔化されてる気もしなくもないから。
「でもそのせいでこうやって会えるの、時々じゃないっスか」
「時々で良いんですよ」
「何でっスか?!オレはイヤっスよ!」
「あまり会わない方が飽きが来ないじゃないですか」
「それっていっぱい会ってたらオレに飽きるって事っスか?!」
「そうは言ってません」
「じゃぁ、どう言う意味っスか?」
「そのままの意味です」
「イミフっス〜…」
「?何ですか、それ」
「意味不明の略っス」
「“めい”しか略されてないじゃないですか…」
君は時々訳の解らない日本語を使いますね、と黒子っち。
オレにしてみたら、黒子っちの方が訳が解らない。
時々オレに会うだけで良いって言う、黒子っち。
オレは毎日だって会いたい。
中学の時みたいに、休み時間とか部活以外でも。
どうして時々で良いの?って聞けば、飽きるから、と言う。
オレに?って聞けば、違うと言い、じゃぁ何にって言えば、言葉通りと言う。
「…やっぱイミフっス…」
「解らなくて良いですよ」
「ヤっス…オレ、黒子っちの事なら何でも知りたいし解りたいのに…」
「それは無理ですよ。違う人間を完璧に理解するなんて不可能だとボクは思います」
「うぅ…黒子っちが辛辣だ」
「真実を述べただけです。…それより辛辣なんて言葉よく知ってましたね」
…黒子っちの中のオレって、何処まで馬鹿なんだろう。
「…オレだってたまには難しい言葉くらい使うっス」
「あぁ、すみません。そう言う意味で言ったんじゃありません」
「へ?」
「“いみふ”なんて言葉を言った後で、“辛辣”なんて言葉が出たものですから。ギャップがちょっと」
可笑しくて、と黒子っち。
…あぁ、こう言う表情が日常に潜んでると思うと、やっぱ同じ学校が良かったなぁって思う。
傍に居たい。出来るだけ、黒子っちの傍に居たい。
ふんわりした空気が好き。
静かで優しい、黒子っちの空間が好き。
「黒子っち」
「はい、何ですか」
「大好きっス」
「…突然ですね」
「惚れ直したトコっス」
「……………」
「ぁ、ほっぺ赤くなってるっス」
「わざわざ言わなくて良いです」
ちょっと拗ねたように。
プクっとした頬がまだちょっと赤い。
「黒子っち可愛い」
「もう黄瀬君は黙ってて下さい」
「えー、何で?」
「君は黙ってれば格好良いのに、しゃべると本当残念ですね」
「黒子っちに格好良いって言ってもらっちゃった」
「都合の良い言葉だけ捉えないで下さい」
「えへへ〜」
「もう…しょうがない人ですね」
そう言って、柔らかい笑みを浮かべる黒子っち。
…君が好き。
何遍言っても全然足りない。
どのくらい、この言葉を伝えれば、この気持ち全部伝わるんだろう。
後何回、オレは君に恋をするんだろう。
「…こう言う、さ」
「?」
「照れた顔とか笑った顔とか。オレは時々じゃなくて毎日見たいっス」
「…そんなの」
「ん?」
「そんなの…きっとすぐ。……飽きてしまいますよ」
「え、ちょっ…!もしかしてさっきのもそう言う意味だったんスか?!」
「……………」
黙り込み黒子っちに、オレは微かにムっとなって。
「飽きないっスよ!黒子っちの照れた顔も笑った顔も。何度見てもオレ、飽きる所か胸が前よりずーっとドキドキしてんスから!!」
「黄瀬君…」
「何年黒子っちに片想いしてると思ってるんスか〜」
「…それって胸張って言える事なんですか?」
「自分で言ってても、ちょっと悲しかったっス」
ガックリと項垂れて見せるオレに、黒子っちは苦笑しながらオレを見る。
「…君は馬鹿ですね」
「馬鹿でも良いっス!…それで黒子っちが笑ってくれるならね?」
パチっとウィンクして見せたら。
ハァっと黒子っちは溜め息を吐く。
…ぁれ?今のトコって溜め息吐くトコ?
ここはほら、「黄瀬君…」ってなってキュンとするトコじゃないっスかね?
「さっきの台詞、撤回したら許しませんからね?」
「…ぇ…」
「…“飽きない”って」
「あ、飽きないっスよ!もー出来る事ならオレの胸開いて、黒子っちの事想ってるか見せたいくらいっス」
「クス、胸を開いたら、それが解るんですか?」
「黒子っちへの愛が詰まってるっス」
エッヘンと胸を張れば。
君は本当に面白いですねって黒子っち。
本当なのになぁ。
どうやったらこの想いを黒子っちに伝えられるんだろう。
一緒に居たい。
いつも。出来るだけ。
黒子っちの笑った顔が好き。
黒子っちの照れた顔が好き。
黒子っちの顔に似合わず、頑固な所が好き。
静かで、力強くて、真っ直ぐで。
柔らかく、優しい、黒子っちの空間が好き。全てが好き。
どうやったらこの気持ちが伝わるんだろう。
どうしたら、この想いが届くだろう。
「さっき、さ」
「はい?」
「黒子っちが『違う人間を完璧に理解するなんて不可能だ』って言ったじゃないっスか」
「はい。言いました」
「オレもその意見には賛成っス。…でも」
「でも?」
「理解する事は出来なくても。理解しようとする事は出来ると思うっス」
「…はい」
「だからオレも。黒子っちの事、少しでも多く理解したいと思うっス。そんで」
「?」
「ちょっとの事でも。理解出来たら、理解し合えたら、すンげー嬉しくないっスかね?」
「……………」
オレがそう言うと。
黒子っちはちょっとポカンとした顔をして。
それから。
「…さっきの」
「?」
「さっきの君の言葉をお借りします」
「へ?」
「…惚れ、直しました」
「え?!」
突然の黒子っちの言葉に、オレは今だ嘗てなく動揺。
はへ?今何つった、黒子っち?!
惚れ…惚れ直したぁ?!!惚れ直したつったよね、今?!!
「え…え?!黒子っち、今何って?!てか、もう一回!もう一回言って!!」
「何度も言ったりしません。…と言うか聞こえてたでしょ、黄瀬君顔真っ赤です」
「う…!く、黒子っちだってほっぺ赤いっス!!」
「う、うるさいです!」
「く、黒子っちが変な事言うから!!」
「へ、変な事ってなんですか!!大体先に言ったのは黄瀬君じゃないですか!!」
「そ、そうっスけど!つうか、何でオレ等言い合いしてんスか?!」
「知りません!!黄瀬君のせいです!!」
「お、オレのせいっスかぁ?!」
「そうです!!」
きっぱりすっぱり言いきる黒子っちには、さっきの甘い雰囲気なんて微塵もない。
何処で間違えたぁ?!
ホントもう、オレ泣きそうなんスけど!!
「と言うか、前言撤回です!もう黄瀬君なんか知りません!!」
「え、ちょっ、それあんまりじゃないっスか、黒子っち!!」
ホントもう泣きそうなんですけど!!!
・END・
2012/08/19UP