仕方がないから、拉致られたまま、ジーっとコートを見る。
あぁ、本当なら火神っちに人型にしてもらって、オレも練習に混じってるトコなのに。
つうか、何スか。
オレが居ればシュート落ちないとか、マジ意味解んないっス。
オレが居てシュートが落ちないなら、…………ぁれ。
でもオレシュート殆ど落とした事ないし。
火神っちもあんま……ゃ、アイツ、遠くからのシュート下手だ。
やっぱオレ関係ねーじゃん。
ふと顔を上げて、オレを拉致った人を見れば。


「……………」
「……………」


黙々とシュートを打ってる。


「絶好調じゃん、真ちゃーん」
「当たり前だ。オレは人事を尽くしている」


…あれ、マジでシュート落ちてねーんスけど。


「ぁれ、終わり?」
「違う。距離を伸ばすだけだ。誠凛はオレのシュートレンジを知ってるからな」
「あー、なーる」


ガラガラとボールの入ったカゴ動かして。
え、ちょっ、そこコートの半分なんスけど。


「……………」
「……わふ」


…すっげー…一個もゴール外してないっスよ。
茫然としながら、それを見てたら。


「お、ワンコも解るかー?どーだ、すっげーだろ。緑間のシュートレンジはコート全部なんだぜ」
「ワフ?!」


コート全部?!
コート全部って事は、コートの何処に居てもシュート打てるって事じゃないっスか!!
ぅわ、マジっスか、マジなんスか!!!
すっげーすっげー!!!


「そうかそうか、解るかー」
「ワン!!!」


変人、とか思ってごめんっス、緑間っち!!!
…でも。


「…くぅん」


そうなると俄然バスケがやりたくなる訳で。


「あれ?どったの?急に元気がなくなっちまったなー?」
「…きゃぅん…」


やりてーなー、バスケ。


「ん〜……ちょっと飼い主んトコ、戻るか?」
「きゃいん?!」


え、マジで?!
そしたら隙を見て、人型んなれるかも!!!


「ワンワン!!!」
「お、元気になった。そっかそっかー、やっぱ飼い主の近くが安心するかー」


……飼い主じゃねーっスけどね。まぁ、安心?はするよーなしないよーな。
でも今はとにかく、早く人型になりたいっス!!!
火神っちのトコに連れてってくれようとしたら。


「…おい、高尾」
「ん?なぁに、真ちゃん」
「オレのラッキーアイテムを何処に連れてく気だ」
「何処って…火神のトコ?」
「余計な事をするな!!今日一日、その犬は借りたのだよ!」
「えー?だってワンちゃん元気なくなっちゃったし」
「大人しくて良いではないか」
「そんな意地悪な事言うなよ。それに試合中とか、いっつもラッキーアイテム持ってないっしょー?」
「当たり前だ」
「それと一緒じゃん。今だって持ってる訳じゃないんだからさー、体育館の中のどっかに居ればラッキーアイテムの役割果たしてくれるって。な?」
「ワン!!」


よく解んないけど、取り敢えず返事した。
そしたら。


「…ムっ、だが」
「それに逃げ出そうとしても、オレの鷹の目ホークアイで解るしさ。ね?」
「……はぁ、解ったのだよ。勝手にしろ」
「やったー!さっすが真ちゃん、話わっかるー。良かったな、ワンちゃん」
「ワンワン!!」


アンタ、結構良い奴っスね!
オレはその言葉に返事をして、その人と共に火神っちの所へ行く。


「火神ー!」
「え?高尾……ひっ!!
「へ?何、どったの?」
「ちょっちょっ…なん、何で黄瀬が?!!」
「黄瀬?あぁ、このワンちゃん?てか、このワンちゃん、火神の犬っしょ?」
「そ、そうだけど……わ、マジ待て、黄瀬!!それ以上近寄るな!!!
「ちょっ、意味解んないんだけど。何で、んなに怯えてんの?」
「火神君は犬が苦手なんです」
「ますます意味解るんね。じゃぁ何で犬飼ってんのさ」
「雨の中捨てられてて、見過ごせなかったみたいです」
「何それ!外見とのギャップ、ちょーすげーんですけど!!やば、ウケる」


逃げる火神っちを追い掛ける。
ちょっ、何で逃げ……ゃ、アンタが犬の姿のオレを苦手なのは知ってるっスけど!
今はそれ所じゃなくて!!


「ワンワン!!!」
「ぅわっ……わる、悪かったって!!悪かったから、追い掛けて来んな!!!」


へ?
何で謝ってんスか?
オレは解んなくなって、ゆっくり足を止まれば。


「どうやら緑間君から助けなかった事を謝ってるみたいですよ」
「……わふ」


丁度黒子っちの傍で足を止めたらしく。
不思議そうにしてるオレに黒子っちが説明してくれた。
…あぁ、なるほど。
オレはへたり込んでる火神っちの傍にゆっくりと近づいて。


「…わん」
「ひっ…!!」
「…くぅん」


ある程度距離をとって、足を止める。
すると最初は怯えていた火神っちも、慣れて来たのか、ゆっくり笑って。


「…もう怒ってねーのか?」
「…わふ」


元々怒ってねーっス。
ゆっくり近づくオレに、火神っちも、ちょっと顔を強張らせながら。
でも、逃げないで。


「きゅいん…」
「はは、んだよ、くすぐってーよ」


ペロって顔を舐めれば。
…ちょっとしょっぱい。汗かな。
あ、このまま勝手にちゅーしちゃおうかな。
そっとしようとしたら。


ガッッッ!!!!!


「?!」
「…ってお前、何どさくさに紛れてキスしよーとしてんだよ…!」
「グルルルルっ……!」
「ほんっと、油断も隙もねー奴だな!!こんなトコでしたら、大騒ぎになるって解んねーのか、この馬鹿犬!!!!


鼻っ先を、ガシっと掴まれて。
さっきの穏やかな雰囲気は何処へやら、押し合いが始まる。
チっ、後もうちょっとだったんスけど…!


「…えーっと。苦手なの?苦手じゃないの、どっちなの」
「普段は逃げ回ってるんですけどね。不意にあぁやってジャレ合ってます」
「とてもジャレ合ってるようには見えねーんだけど」
「ジャレ合ってるじゃないですか。ほら、あんなに」
「真剣白刃取りならぬ、犬の鼻先取り、だな。そしてメッチャ力篭ってるな」
「そうですね。仲睦まじいです」
「え、ええぇぇー?」


黒子っち達がそんな話をしてるなんて、オレ達はこれっぽちも知らないで。
攻防を繰り返している。


「グルルルルっっ!!!」
「っ、ち・きしょっ、ポジションの関係で分が悪ぃ……!」


オレが火神っちを押し倒す形なので、オレは自分の体重を掛ければ良いだけ。
対する火神っちは押し返す形だから、どうしたってオレの方が有利だ。
これならっ…!


「ま、待て待て!!おま、ほんとにこんな場所でするつもりか!!!バレたら困るの、テメーだって何度言やぁ理解すんだ!!!!」
「……くぅん?」
最悪解剖だぞ!!…(人間に)なりたいなら、ココ離れてからだ!!!」


その言葉に、あぁそうだ、ここ誠凛さんの体育館で、他校の人も居んだ、と理解して。
オレは掛けてた力を抜いた。


「…お、解ったか?」
「……わん」
「ハァーっ、ったく、テメーは本当に馬鹿だな」


…火神っちにそれ言われるの、かなり不服なんスけど。
でもまぁ、今回はオレが悪かったって事で。


「…くぅん」
「……バーカ、何甘えてんだよ」


スリっと手にすり寄る。
そうすると、火神っちの手が優しくオレの頭を撫でた。
ちょっと乱暴だけど、でも優しくて暖かい手。


「…よし、んじゃ、行くか」
「ワン!」


火神っちに促されて、体育館を出ようとする。
すると。


バァァァンっっっ!!!!!!!



「…は?」
「ワ、フ?」


真横を通り抜けた、剛速球。
へ?何?何が起こったんスか?


「た〜か〜お〜」

「え?オレ??」
「犬を体育館から出すなと言っただろう!!!」
「あ、ごめん。すっかり忘れてた」
「た〜か〜お〜」
「にゃははは。…悪ぃ、真ちゃん」


どうやらボールを投げたのは緑間っちだったらしい。
何やら揉めてる、と思ったら、ズンズンとこっちに歩いて来て。


「何処へ行くのだよ」
「あ、あ〜…ちょっと水飲みに?」
「飲み物ならオレが持っている!それを飲むのだよ!!
「い?!あ、あ〜……タオル忘れたから、部室に取りに?」
「それなら黄瀬を連れて行く必要はないのだよ!!」
「そ、そうだけど。…コイツも行きたがった、から?」
「なら、オレも行くのだよ!!!」
「え、えぇぇ!?!」
「キャイン?!」


ちょっ、アンタも一緒に来ちゃ、意味ないっス!!!


「今日一日、オレは黄瀬から離れないのだよ!!!」



何言ってるんスか!!!
ちょっ、冗談も程々にして欲しいんスけど!!!!


「…黄瀬君、諦めた方が良いですよ。緑間君は本気です」
「ワフ?!」
「君も覚悟して下さい。緑間君のラッキーアイテムになったからには


嫌々!!!
オレその、ラッキーアイテムになった覚えないんスけど!!!
黒子っちもサラっと恐ろしい事言わないで欲しいっス!!!


「あー…黄瀬?」
「…ワン」


何スか、火神っち。
何か打開策でも見つかったんスか。


「………悪い。諦めろ。オレに緑間は止められねェ」
「さぁ行くぞ、黄瀬。練習するのだよ」
「キャインキャイン!!」



やっぱこの人。
…苦手!!!!!




・END・
2012/11/17UP