流した涙の数だけ。

人は幸せになれるだろうか?

例えそれが…。

――――――――――――人でないモノでも?











Life goes on
〜生きていく為に〜













望んだのは。

ただ『生きる』事。

けど、それすら。

神様は許してはくれなかった。






































「生きてェよっ……!!」





































拳を叩きつけ、泣き崩れるコンに、浦原は何も出来ずに居た。

ただ。

自分の無力さを呪うしかなかった。

愛しい人が泣いているのに。

生きたいと叫んでいるのに。

その身体に腕を回してあげる事も。

望む生を与えてやる事も出来なかった。



































いつだって笑顔で居た。

辛い過去も。

生まれた意味も。

彼に取っては望む事ではなかった。

それでも笑顔で居たコンに。

いつしか惹かれていった。

彼が健やかにあるよう。

願っては。

出来る、自分に出来る精一杯を与えた。

彼が笑顔で在るよう。

彼の笑顔が枯れぬよう。

ただ、ただ。願い、護り続けた。

―――――危ない事に巻き込まれないよう。

ただ。包むそうに、優しく……。

それなのに。



































「…ごめんなさい、コン君」








































それなのに。

護れなかった。

望むのはただ。

『たった一人の』アナタが生きてくれると言う、自分勝手な事。

…それだけ。




















































「だったら生きれば良いだろうが、この馬鹿野郎っっっ!!!!!!!!」













































「……一護?」

「…………黒崎さん………」




「ウダウダウダウダ。こっちはずっと外で待ってたんだぞ、このボケ共がっっ!!!」




「…アナタ、今の空気読めないんですか。アタシとコン君は……」

「うるせェっ!!!もう30分切ってんだぞ、30分!!解ってんのか、このクソ下駄っ!!!…………おい、コンっ!!!!」

「うわぁっ?!!!ななななななな何だよっ!!!!」

「メソメソ泣いてんじゃねェっ!おらっ!さっさと義魂丸の治療、始めっぞ!!」

「い、嫌だつってんだろー!!俺は忘れたくねェだ!!!それなら死んだ方がマシだって、さっきから…!!!」

「てっめェっ…!!…おい、コン、よく聞けよ!!!」





































「勝手にてめェの命、てめェだけのモンだと思ってんじゃねェぞ?!」






































「自由に生きて、自由に死ぬだと?!…ふざけんな!!人はなぁ、てめェ独りで生きてんじゃねェぞ?!」








































「生きた分だけ知り合った人と命共有してんだ!てめェの勝手で死ねると思うなよ?!!!」









































言われた言葉に、コンの流れ出ていた涙がピタリと止まる。



「命…共有…?」



「そうだっ!そりゃぁ不慮の事故で死んじまう奴だって居るけどなぁ、生きれる奴は生きる分だけ、お互いに支え合って生きてんだ!」



「………………………………」



「てめェ勝手に、生きて死んでなんてなぁ、自分勝手な奴がする事だ!てめェ、んな奴じゃねェだろうが!!」



「……ぁ、当たり前だろっ!!」



「だったら、ちゃんと生きろっ!!死ぬなんてほざける奴なんてこの世に居やしねェんだ!!生きれるなら、生きろっ!!!」



「でも!!」



「あぁ?!」



「でも俺、治したら覚えてねェんだ…!大事な…大事な共有すべき人達を……!!!」










































「…だったら。
―――――――――――――忘れなきゃ良いじゃねェか」









































「え?」



「ちょ、ちょっと黒崎さん…アナタ言ってる事無茶苦茶ですよ?」



「例え忘れたとしても。また思い出せば良いじゃねェかよ」



「………………………」



「………………………」



「魂は一緒なんだろ?…だったら。」




















































魂に刻み込めよ、忘れたくねェ人達をよ。



















































「忘れねェって、根性見せろよ。…お前なら出来るだろ?コン」



「…………………………………………………うんっ!」






拡がる笑顔に。






「やっぱり。黒崎さんには敵いませんね」






「あ?」





「いえいえ、何でもありません。こっちの話です」

「??」

「…まぁ、幾ら黒崎さんでも。コン君はあげませんけどね?」

「はぁ??」

「いえいえ、またこっちの話」

「??何だってんだよ?」





「…じゃぁコン君。義魂丸の治療、させてくれますか?」

「………うん。ぉ願ぃ……」














































「黒崎さん」

「あ?」

「アナタに、お願いがあります」

「お願い?…あぁ、もしかして義骸に入った後のコンの事?…それなら任せとけよ。大体は俺の責任で……」

「知ってましたか」

「さっき、ジン太って奴に聞いた。…で?新しいコンの義骸は一体…」

「コレです」

「コ、コレは…っ!!!」

「…アタシはね。彼に普通の人間として暮らして欲しいんです。でもそれには色々不安要素が多過ぎる。だから…」

「だからって……」

「無理なお願いなのは解ってます。でも、どうか…アタシの我侭に、付き合ってくれませんかね…?」

「……あ―…あ―っ!もぅ解った解った!!もう何でも良いやっ!」

「黒崎さん…」

「色んな雑用はアンタがやってくれるんだろ??なら良いや。それに…コンも幸せだろうしな」

「…重ね重ね、有難うございます」

「………べ、別に!今更礼なんて………」

「それと……………」







































「…怖いですか?」

「………ちょっと。…でも、アナタだから信用するよ」

「それは嬉しいっスね」

「………………なぁ、浦原さん」

「はい?」

「俺、アンタの事、魂に刻むよ」

「……………………」

「すぐには思い出さねェかも知れないけど。でもきっと。思い出すから。…それまで。……待っててくれる……?」

「…………くす」

「な、何だよ」

「何だか随分素直になっちゃったんスね」

「おっ…俺は最初から素直だっつうの…」

「そうでしたかね〜?アタシ、随分と遠回りしていたように思えるんですけど?」

「ぐっ…!ちゃ、茶化してねェで、ちゃんと答えろっ!!」

「……………待ってますよ」

「……本当?」

「……えぇ。伊達に長生きはしてませんからね。コン君が来るまで。ずーっとずーっと。ココで待ってますよ」

「…………有難う」

「…じゃぁ、コン君。目を閉じて。
――――――――――――テッサイ、雨、ジン太。行くよ」

「はい!」

「……はぃ……」

「おっしゃぁー!任せとけ!!」










































「コン
―――――――――――っ!!早く来いよ、置いて行くぞ!!」




「わっわっ、ちょっと待てよ、一護!!…げっ、本当に置いて行こうとするなよっ!!」



「おめェが遅いからじゃねェかよ」



「〜っ、しょうがねェだろ!遊子が本当に大丈夫かって、しつけェんだもん!」



「遊子は心配性だからな」



「俺全然ピンピンしてんのにな。…な、一護、学校まで競争しね?」

「やーだね。ぜってェお前の方が早ェに決まってんだろ。…ってか、お前兄貴を呼び捨てにすんな」

「あーっ!また兄貴面する!双子に兄貴も弟もねェつうの!」

「あんの。お前弟、俺兄貴」

「大体理不尽だよな〜。同じツラ、同じ髪の色。ぜーんぶ一緒なのに、一護が兄貴なんて納得行かないっ!!」

「お前が納得しなくても、兄貴は兄貴。敬え。そして鞄を持て」

「それ兄貴関係ねェっ!!」

「早く来いよ、コンっ!」

「〜っっ!兄貴なら、記憶喪失の弟を置いて、さっさと行こうとするなっ!!」



記憶を失ったままのコン。

それでも一護は何も話そうとはしなかった。

浦原が用意した義骸。

一護そっくりなそれ。

普通の高校生。

一護の双子の弟として。

今も一護と共に。

今日もコンは笑ってる。






『カラン』







「!」



下駄の音に一護が顔を上げると、そこには浦原が立っていた。



「ぅ…」



一護が声を発しようとすると、浦原は人差し指を唇に着けて。



『シーっ』



それは約束。







































『それと…………………』

『まだ何かあんのかよ?!』

『コン君が思い出さなくても、何も話さないで下さい』

『え…?』

『一度だけ、アタシが様子を見に行きますが、知らぬ存ぜぬで居て下さい』

『アンタ…それで良いのか?!』

『…良いんです』

『アンタ……』

『アタシはただ、彼の笑顔を見て居たいんですよ。それにアタシと関わってると、またトラブルに巻き込まれますからね』

『……俺はもぅ良いのかよ』

『だって黒崎さんは先に朽木さんと知り合ってから巻き込まれたんですから。アタシのせいじゃありません

『………………………』







































結ばれるだけが幸せではなくて。

相手の笑顔の為に。

苦しまないで。

ただ、笑っていて。




































『カラン』







































「………っ………」







































『待っててくれる?』







































「…コン?」






































「え?……ぁっ………!」









































すれ違う瞬間。

手に握られた、半纏の裾。







































「ごめっ…!あ、ぃや、…す、スイマセンっ……!!」



「……いいえ」







































『俺、アンタの事、魂に刻むよ』







































忘れないから…。

止まった時間が……。

また………。

ゆっくりと動き出す。



「…なぁにやってんだよ、コン!!」

「わっかんねェよ…。何か、気づいてたら握ってて……」












































『…………待ってますよ』



















・END・