・・・図々しい女ね・・・ラミ=サロメ・・・








・・・これまで・・・さんざん・・・





・・・何度も・・・何度も・・・







・・・あんなこと・・・繰り返してきたくせに・・・














・・・そんな女が・・・


・・・この期に及んで・・・


・・・何を・・・夢・・・見ているの・・・?










彼の家がやってる洋服屋さんに・・・


・・・放課後・・・一緒に・・・


・・・服を買いに行く・・・・ですって?





















・・・図々しい女ね・・・ラミ=サロメ・・・




























慟哭するタルタル少年、ヘヴィル=メタル。










絶叫するタルタル教師、ゴルト=エイト。










そんな2人のタルタルを・・・








地面の上に転がされている、

生首と成り果てた機械少女の瞳が、

ただじっと見つめていた。





























人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人

================================================================================



T. T. T. T. T!!


Tamanegi  TaruTaru Toroublemaker

            

      THE   TWINS!!


         

                        〜クリスタルに愛された天才〜





人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人

================================================================================











第20話 

       

「 F I N A L B A T T L E 


C L I M A X  B E Y O N D

               

         中 編














〜〜〜〜〜 バス学 グラウンド 〜〜〜〜〜





PM 18:38







歌が 止んだ。



バス学にとって、最後の逆転の兆しとなっていた、

マミーラ=サドンデスの呪歌≠ェ、ピタッと止まった。



何をおいても最優先で守らなければならなかった、

最重要たる反撃の基点が、あっけなく潰されてしまった。




・・・もちろんバス学の生徒たちは、ちゃんと理解はしていた。


なぜマミーラが吟遊詩人の能力を持っていたのか、それはわからないが、

ともかくそれによって、自分たちが一時的に圧倒的な力を得たことを、すぐに理解した。


よって、自分たちの周辺にいる無京たちやアンデッド・バグベアたちを、

絶対にマミーラに近づけてはならないということも、強く念頭に置いていた。



・・・だが、それを強く意識しすぎていたあまり・・・


改獣アリあげクンによる、

超長距離からの狙撃に気が回らなかった。


・・・いや、もはや生徒たちには、そこまで考えるほどの余裕が無かった。

歴戦の冒険者ならば、瞬時にそこまで考えるのであろうが、

バス学に入学してまだ三ヶ月の新兵である上に、

休憩無しで6時間もぶっ続けで戦って、すでに疲労困憊であった彼らに、

そこまで求めるのは酷であった。


そして、何よりも・・・


これまでずっと、

アリあげクンを完璧に抑えていたメイドリアン=キュアノスが、

ここで急に倒されるとは思っていなかったのが大きい。



・・・機械には、吟遊詩人の呪歌≠フ効果が適用されない。

マミーラの、ラミの歌≠ノよる強化は、メイドリアンには反映されていなかった。

・・・バス学側は、誰もそのことに気づいていなかった。


クラスの一員であるメイドリアンのことを、

誰も機械だと思っていなかったことが、

逆に仇となってしまった。




マミーラの歌で自分たちの能力が大幅に上がったことによって、

メイドリアンもその恩恵を受け、猛反撃しているはずだ、と

思い込んでしまっていたのだ。




その結果、改獣アリあげクンの手によって、

メイドリアンとマミーラが、ほぼ同時に撃破されてしまった。





手痛いミス≠ネどと呼べるものではない。

致命的大失敗≠ナも、まだ言葉が足りない。

もしかしたら、敗因≠ニいう言葉が一番しっくりくるのかもしれない。




きっと、もうバス学に勝ち目は残っていないから。











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「うわああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああっ!!!」






さっきまで寝ていた馬鹿野郎が、絶叫する。




「うわああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああっ!!!」



何も出来ない、役立たずのダメタルが、

泣きながら絶叫する。




「うわああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああっ!!!」




じわじわと地面に広がっていく、赤い水溜りを目にしながら、

どうしようもないクソバカ役立たずダメタル野郎が絶叫する。






・・・ヘヴィル=メタルは、泣きながらふらふらとその場から前進し、

首元から血を流して倒れこんでいるマミーラに近寄っていく。



「どけえええええええええっ!!!」



クラスで1番おとなしく、決して声を荒げたりはしないセージ=クーシーが、

憤怒の表情で絶叫し、ヘビメタを突き飛ばしてマミーラへと駆け寄った。



「・・・ふざけんなよっ! ここで・・・マミーラさんを助けられなかったら・・!!」

セージは目を見開き、天に向かって吠えた。


「もう二度と、あんたに祈ったりしねぇ! 

教会の像も磨かねぇからな、女神アルタナァァァ!!」



マミーラの喉に突き刺さった矢をむんずと掴み、

セージは天に向かって吠えながら、矢を思いっきり引き抜いた。



ぶしゅううううっ!!!



おびただしい量の鮮血が、噴水のごとく立ち上る。

地面に横たわるマミーラの体が、びくん!と跳ねる。


「何の手助けもしてくれないあんたを、

私は毎日毎日、欠かさず拝んで来たでしょうが!

だからせめて、今日くらいは助けて下さいよおおおっ!!」



マミーラの喉元から吹き出た鮮血を全身に浴びながら、

セージは歯を食いしばり、回復魔法を唱え始める。




・・・もちろんセージは、メイドリアンの状況も理解している。

だが、あちらはもう絶望的すぎて、どうしようもない。


なにせ、生首が地面に転がっているのである。


・・・あちらは、誰がどう見ても、もう蘇生は不可能だ。

だからこそセージは、自分の目の前に横たわっているマミーラだけは、

何とか助けなければならないと、あえてメイドリアンのことを思考から除外した。


「くそっ・・・! くそっ・・・! くそおっ・・・!!」

ボロボロと涙を流しながら、セージはマミーラにケアルを唱える。


メイドリアンほどではないが、

喉を射抜かれているマミーラも、かなり危険な状態である。

いや、もはや絶望的であることを、頭の中でうっすらと理解しているからこそ、

セージの両目からは涙が溢れている。



・・・絶望的なことは、他にもまだある。



マミーラの歌が途絶えてしまった瞬間、

もはや1−Bの他の生徒たちは、

無京やアンデッド・バグベアに対抗する手段を失った。




・・・あとはもう、完全にサンドバッグ状態。

一方的にやられるのみ。

GEマントの回復効果など、焼け石に水≠ヌころか、炉心溶融に雨粒≠ナある。



・・・それでもセージは、他の生徒たちよりも、マミーラの回復を優先せざるを得ない。

まずマミーラが復帰しなければ、夜間で強化された無京たちや、

アンデッド・バグベアたちを押し返すことが出来ないから。



だが、多分もう間に合わない。



マミーラを回復させる前に、1−Bの生徒たちは、みんなやられるであろう。

そしてケアルを唱えているセージにも、すぐに無京たちの魔手が迫るであろう。


いや、それ以前に・・・


アリあげクンの次の狙撃目標は、恐らくセージであろう。





もう次の瞬間にも、セージは射抜かれるかもしれない。

回復役からつぶす≠ヘ、戦闘において、ほぼ鉄則と言えるセオリーであるから。


いや、まずは1−Bの作戦参謀であるシンクから狙うだろうか?

それとも、1−Bで最高のリーダーシップを持つリアから狙うだろうか?

唯一、歌無しでも単独でバグベアと戦えるポテンシャルを持つサララちゃんであろうか?




・・・なんにせよ・・・


全ては、アリあげクンの気分次第。



・・・1−Bの生徒たちは、

もはや完全にサンドバッグ状態。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









「ヒッヒッヒッヒッヒッヒ」





ものすごく陰険でタチの悪い改獣アリあげクンが、

ものすごく陰険でタチの悪い笑い声を放つ。



先ほどメイドリアンの首をハネ飛ばした、キラリと光る鋭いカギ爪をペロリと舐め、

マミーラの狙撃に成功した愉悦に浸りつつ、アリあげクンは嘲笑(わら)い続ける。



「ヒッヒッヒッヒッヒッヒ」



さあ、次は誰を狙おうか?



やはりここは、あの包帯少女を治療しようとしている白魔導士からか?

いや、まずは作戦参謀であるらしい、あのメガネの男からか?

それとも、必死に仲間たちを鼓舞し続けている、両手斧の女からか?

いやいや、白夜の黒い雨≠フ娘であるらしい、あのタルが最初か?





背中の矢筒から、新たな矢を一本取り出し、弓につがえる。

きりきりきり・・・と、アリあげクンは弓の弦を引き絞る。



忍者、ナイトは、一発じゃ倒せないかもしれないから、後回しだ。

シーフもすばしっこいから、避けるかもしれない。

ここはひとつ、トントントンと、気持ちよく連続撃破していきたいところだなあ。

ぶっちゃけ白夜の黒い雨≠竍月下の騎士≠ネどの、大物を狙いたいところだが、

自分が宗匠から与えられた命令は生徒を狙え≠セから、それはダメだ。

となると、さて、一番あいつらに絶望を与えるために、ここで誰を狙うべきか?

裏切り者の二京≠狙うのも面白いかもしれないな。

ちょっと前まで、あの学生ども、必死に二京を守ってたことだし、

ここで二京がやられたら、はたしてどんな顔するかな?

生徒を狙え≠ニいう命令だから、命令違反にもならないし。

・・・と見せかけて、やっぱり白魔道士からが王道かな?

敵の回復役から潰す、ってのはRPGの常套手段だし。

・・・いや、でも、男子生徒を倒しても、あんまり悲劇色が出ないな。

どうせ狙うなら、やっぱり女子からの方が絵になるよな・・・



「ヒッヒッヒッヒッヒッヒ」



色々と楽しそうな光景を思い浮かべて、

アリあげクンはサディスティックに笑った。




誰を狙っても、楽しくなりそうだ!!

獲物がよりどりみどり・・・!!


今までずっと、

メイドロボに邪魔されまくっていた鬱憤を、

思いっきり晴らしてやる!!










・・・アリあげクンの標的が決まった。






次に狙うターゲットは、ズバリ・・・!!




今この場で、一番どうでもいい存在、ヘヴィル=メタル!!




・・・なぜ真っ先に戦力外のタルを狙うのか?



その方がアリあげクンにとって、長く楽しめそうだから。



あんなどうでもいいヤツを、なんで真っ先に狙うんだ?と、

生徒たちが困惑する表情が見れるだろうから・・・!!





「ヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!」



アリあげクンは、地面にへたり込んで泣き喚いているヘヴィル=メタルを狙い、

今まさに矢を放とうとした。




「随分と楽しそうであるな、虫よ」







知らぬ間に、何者かに背後を取られていたという事実によって、

アリあげクンの顔から笑みが消えた。


「!?」




高速で背後へと振り返るアリあげクン。






はっきりとわかる非常事態≠ェ、

そこに存在していた。
















改獣≠ナあるはずのアリあげクンの額に、はっきりと大粒の汗が浮かび上がった。




黒いマント。

白いスーツ。

銀のステッキ。

白髪の老人。







この風貌で、弱いワケがない。








「・・・礼を・・・せねばならんな・・・」




約束された強者の老人≠ェ、静かに言葉を紡いだ。



「・・・娘が・・・世話になった・・・礼をな・・・」







アリあげクンに、生徒を狙う余裕はなくなった。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









・・・まだ、気づいていない。

まだ京一門は、かつての同門である捷京≠フ出現に気づいてはいない。



その非常事態≠ノ気づいていないからこそ、

四京<`ェーンソーおばちゃんは、声高らかに勝ち誇る。



「あらやだぁ! 

おばちゃんの言ったとおりになったようだねぇ!!

おばちゃん、さっきあんたに言っただろう? 

これから生徒たちが一人ずつ、

どんどん倒れて行くよってねぇ!」



ニヤリと笑い、巨大チェーンソー機械剣≠振り上げるおばちゃん。




「・・・ああ。 おいらのせいだ。」

恐ろしく冷めた口調で、ゴルトはぽつりとつぶやいた。

「・・・開戦前に、マリっぺが言ってた通りになっちまったよ。

未熟な生徒を戦場に出せば、真っ先に倒されちまうぞ、って。」

「あらやだ、後悔先に立たずってやつだねぇ。 可愛そうな生徒たちだよ。」

「・・・間違いなく、おいらのせいだよ。

・・・マミーラとメイドリアンがやられたのは、おいらのせいだ。

・・・だが、おいらのせいである前に・・・」

ふらり、とおばちゃんに一歩近寄るゴルト。


「まず、お前らの存在そのものが、一番悪いよな?

お前らが地下の球っころなんかに固執してるから、

あいつらが痛い思いをしちまったんだよな?」



「そんなことをおばちゃんに聞かれても困るねぇ。 

おばちゃんたちは、宗匠さんを信じてついていくだけだからねぇ。

宗匠さんが地下の球が必要だってんなら、必要なんだろうさ。」

「・・・そうだな。 お前らは門弟っていうより、ただの道具≠セもんな。

自分の意志なんてまったく無い、ただの道具≠セもんな。」


不意にゴルトは、にへら〜っと、薄笑みを浮かべた。





「だったら、簡単な話じゃねえか・・・

道具≠ネら・・・意志の無い物質≠ネら・・・」






ぼああああああっ!!!




突然、おばちゃんの両足が、

激しく燃え盛る業火に包まれた!!





「あらやだぁ!? な、なんだいこれは!?」



両目を見開き、驚愕するおばちゃん。


「ま、魔法!? まさか、精霊魔法を使ったのかい!?

だけど、確かあんたは魔法を一切使えないって聞いたよ!?

それにジョッシュ式魔導服≠着ているおばちゃんには、

生半可な魔法なんて通用しないはずだよ!?」




「・・・うひゃひゃひゃひゃ・・・なんだぁ、おい?

物質≠フくせに、いっちょまえに言葉を喋ってんじゃねえよ。」

うつろな表情で、ゴルトは自虐的に笑う。




「考えてみりゃ、実に簡単な話だったぜ。

物質≠ネら、クリスタル合成で好き放題できる。

おいらを誰だと思ってやがるんだ?

世界で唯一、教授≠フ称号を持ってる男だぜ?

物質≠自由自在、好きな形にいじれるんだぜ?」






























人体へのクリスタル合成!!





不可能である。


通常、ヴァナ・ディールにおいて、それは適用されない



魚であろうが鳥であろうが豚であろうが牛であろうが、

生命体≠ノは、クリスタル合成は適用されない。




命を失った後の魚肉、鶏肉、豚肉、牛肉でないと、

クリスタル合成で調理することは出来ない。

地面に生えている樹木を、直接クリスタル合成で切り倒すことも出来ない。

生命体≠ニして大地に根を張っている樹木を、

まず斧やナタを使って人力で切り倒し、一度木材≠ノしてからでないと、

クリスタル合成による加工は行えないのである。


同様に、無京≠竍改獣≠含むアンデッド・モンスターたちも、

死者の魂≠ニいう仮の生命を与えられている状態であるので、

やはりクリスタル合成で攻撃するということも出来ない。



大前提として、そこに生命≠ェ宿っている物体に対しては、

クリスタル合成は発動しないのである。




・・・そう・・・普通は出来ない・・・はずである。




だが、クリスタルに愛された天才

ゴルト=エイトならば、話は別!!





ゴルト=エイトの肉体には、越えてはならぬ一線を、

すんなりと越えてしまう能力が存在しているのだ。






それは原初のクリスタル=E・・!!



文字通り、一番最初のクリスタル=E・・


ヴァナ・ディールという世界を産んだ、8つの水晶・・・

世界の森羅万象を司る、8つの原初のクリスタル=E・・


現在、世界のあらゆるところに流通している8属性のクリスタル。

その8属性の各種クリスタルの、最初に存在していたひとつ目=E・・


言わばクリスタルの祖先とでも言うべき、8つの原初のクリスタル=E・・



ヴァナ・ディールという世界を産み出した、

8つの原初のクリスタル=I!




発端の爆炎

創造の大地

生命の羊水

進化の颶風(ぐふう)

支配の氷結

破壊の雷光

再生の陽光

終焉の宵闇(よいやみ)




炎の原初、ビッグバン。

地の原初、惑星の誕生。

水の原初、生命の誕生。

風の原初、生命の進化。

氷の原初、生存競争の勃発。

雷の原初、文明の破壊。

光の原初、文明の再生。

闇の原初、全ての終焉。







その8つの原初のクリスタル≠フ中のひとつ、

創造の大地≠ェ、ゴルトの中に存在する!!



8つの原初のクリスタル≠ヘ、ヴァナ・ディールという世界を創造した後、

更にそこに5種族の人間≠生み出した。


そして8つのクリスタルは、数多く生み出したその人間たち≠フ中から一人を選び、

その選ばれた者の体内に、原初の力≠宿らせた。


そしてその選択者≠ェ生命を終えると、

また次の一人を選び、原初の力≠移動させた。

原初のクリスタル≠ヘ、現代へと至るまで、それを幾千回、幾万回と繰り返した。


ヴァナ・ディールの創世から現在に至るまで、

8つの原初のクリスタル≠フ力は、

まるでリレーのバトンのごとく、

人の身から人の身へと受け継がれていったのだ。



ゴルトが人知を越えたクリスタル合成術を行使できるのは、

原初のクリスタルのひとつである創造の大地≠、

生まれつきその身に宿していたからなのである。




・・・無論、世界に生きる現世人たちは、そのようなことを知る由も無い。


滅亡したとされる古代種ジラート族≠フ中ですら、

ごくごく一部の限られた者しか知り及ばぬ事柄、

それが世界を司る原初のクリスタル≠ニいう存在である。



・・・そのようなモノを、その身に宿しているからこそ・・・



人体へのクリスタル合成術という禁忌も、

ゴルト=エイトならば可能なのだ・・・!!





ぼああああああっ!!!

ぼああああああっ!!!




おばちゃんの両足が、巨大な火柱に包まれる。


「ク、クリスタル合成!? そんな話ってあるかい!?

あんた、炎のクリスタルで、おばちゃんを直接燃やしてるっていうのかい!?」


「うひゃひゃひゃ、しぶとい物質≠セな。

とっとと燃え尽きちまえばいいのによ!」




(H2O) 35g

炭素(C) 20kg

アンモニア(NH3) 4g

石灰(CaO) 1.5kg

リン(P) 800g

塩素(Cl) 250g

硝石(KNO3) 100g

硫黄(S) 80g

フッ素(F) 7.5g

(Fe) g

ケイ素(Si) g

カリウム(K) 少量

マグネシウム(Mg) 少量

ナトリウム(Na) 少量

セレン(Se) 少量

ヨウ素(I) 少量

亜鉛(Zn) 少量

(Cu) 少量

ニッケル(Ni) 少量

コバルト(Co) 少量

マンガン(Mn) 少量

クロム(Cr) 少量

モリブデン(Mo) 少量





今のゴルトにとって、目の前にいる四京という存在は、

上記の元素が組み合わさっているだけの物≠ナあった。



「おらぁ、とっとと崩れ落ちちまえよ!

おばちゃんの形をした物質≠ェぁ!

おいらにゃ他にも壊さないといけねぇ物質≠ェ、

あちこちにたくさんあるんだからよぉ!」








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「やめんかぁぁぁ!! バカタレがああぁぁぁ!!!」





ゴルトの師コル=モルが、対峙している亀平そっちのけで、

額に血管を浮かべながら絶叫した。




「ゴルトォォォォ!! ただちに中止しろぉぉぉ!!!

どんな理由があろうと、それだけはやっちゃいかん!!」












「・・・ひゃひゃひゃ・・・別にいいじゃねえか・・・どうせコイツ敵なんだし・・・」



その表情こそ笑ってはいるが、完全に自分を見失っているゴルト。


「事件が表に出てないだけで、どうせこのおばちゃんも、

水晶大戦の時代から、何百人と人を殺してきたんだろ?

だったらいいじゃん! 世のために、ここで処刑しとこうぜ!」




「人体へのクリスタル合成が、どれだけ危険かわからんのか!?

それこそ、他でもないおんしが一番良くわかっとるはずじゃ!!」


「うるせぇな! 今さらぬるい事言うんじゃねえ!

だるまから出てきた時、あんた自身が言っただろ!

どんな手を使ってでも、悪は迷わずぶっ倒せってよぉ!」


「バカタレぇぇ!! 人体へのクリスタル合成なんぞ行ったら、

発動したクリスタルの力は、まず最初に、

お前自身の肉体に影響を及ぼすはずじゃ!

こんな簡単なことを、お前がわかっとらんワケないじゃろ!!」






現在、おばちゃんの両足を覆い尽くしている、炎のクリスタルの火柱・・・



その炎のクリスタルの燃焼≠フ効果は、

おばちゃんを燃やすよりも前に、

クリスタルを発動したゴルト自身の両手を

ドス黒い消し炭にしつつあった。




「ただちに合成を中止しろ、ゴルト! おんしの両手が燃え尽きるぞ!!」


「うひゃひゃひゃ・・・大丈夫だよ、おいらは合成の天才だからな。」

ニヤリ、と唇の端を吊り上げるゴルト。



「右手で発動した炎のクリスタルで

おばちゃんを燃やすのと同時に、

左手で発動した光のクリスタルで、

おいらは自分の両手だけを再生≠ウせてんだよ。

先に燃え尽きるのはおばちゃんの方さ・・・!」


「おんし、自分の肉体すら物質≠ニ見なしとるのか!

それはクリスタルの暗黒面=iダークサイド)じゃ!!

森羅万象を司る、万物の力であるクリスタルを、

そのような悪しき使い方をしてしまうと、

おんしの肉体も精神も、もつワケがない!!」


「別にいいよ! なんであろうと、もう勝てりゃいい!

こいつらを倒せるなら、なんでもいいんだよ!!」


「クリスタルに愛されている≠ニまで称された、

今までおんしが培ってきた素晴らしい合成スキルが、

悪しき合成の発動によって、どんどん失われていっとるはずじゃ!!

合成スキルが下がる≠フではなく、失われる≠じゃ!

合成の能力自体が、おんしの中から永久に消え失せるぞ!」


「いいんだよ! たとえおいらが死のうとも、廃人になろうとも、

クリスタル合成の力を、全て失ってしまおうとも!!

こいつらは絶対にぶっ殺してやると決めたんだ!!

メイドリアンとマミーラの無念を晴らしてやる!!」


「父アモウ=カモウがおんしに遺したクリスタル合成は、

そんな悪しき力ではなかろうがああああっ!!

おんし、水晶大戦時代からまだ成長しとらんのかあ!?」


「やらなきゃ、やられちまうんだよおっ!!

どんな手段を使おうが、こいつらをやっちまわねえと、

ほかの生徒までどんどんやられていくんだよおっ!!

もし別のいい手があるんだったら、教えてくれよ!!

ねえだろうが!? もう、他に手はねえだろうがぁ!?」








「くっ・・・!!」

ぎりっ、と奥歯を噛み締めるコルモル。


自クラスの生徒、メイドリアンとマミーラを同時に失い、

ゴルトは完全に暴走状態になってしまっている。

コルモルの説得を、まったく耳に入れようともしない。



「・・・いよいよ・・・バス学は、もう立て直せんかもしれんぞ・・・!!」



コルモルは脂汗を流しつつ、戦場を大きく見渡す。


「・・・一番ヤバいのは、アリ改獣の狙撃手だが・・・

それはさっき現れた、ショーン=マツシマがなんとかしてくれるじゃろ・・・!」



こんなギリギリの状況でも、コルモルは抜け目無く、

先ほどひっそりと参戦した鬼神博士≠フ存在を把握していた。




「・・・しかし・・・たとえショーンが、アリの狙撃手を抑えたとしても・・・!」




マミーラの歌が停止してしまった影響で、

バス学勢のあちこちが崩壊しつつあった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





戦場に落ちていたGEマントを拾い、

スティー=ディランに届けようとしていた、

フェルツマン学園長は・・・




全身に無京の放った鉄のツメ≠受け、

血まみれになって、マントを右手に握り締めたまま

運動場の真ん中付近に崩れ落ちていた。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






マミーラの歌を受け、戦闘力を更に倍増させ、

猛攻撃を開始して、オクスケを追い詰めつつあったタルヤ=クルンヤは・・・



歌の効果が切れたため、あと一歩のところで、

オクスケにとどめを刺すことが出来なかった。



「あ、あぶなかったなぁ・・・今の吟遊詩人の呪歌≠ヘ・・・!」


ぜぇぜぇと呼吸を荒げ、オクスケがほっと息をつく。


「もし、あなたがブラック・レイン化≠オていたら・・・

今の猛攻で、負けていたかもしれないなぁ・・・!

もったいぶって、温存してくれて助かったなぁ!」



「・・・でやんでぇ・・・!」

眉根を寄せ、手首で鼻を持ち上げる仕草をしながら舌打ちするタルヤ。



・・・別に・・・もったいぶってなんかねぇ・・・!!


・・・俺っちだって・・・思ったさ・・・!

・・・もう、おやっさんとの約束がどうこう言ってる場合じゃねえ・・・!

・・・顔に包帯巻いた、あの吟遊詩人のねえちゃんみてぇによぉ・・・

隠してる力≠、すぐに解放すべきじゃねえか・・・ってよお・・・!




でもよぉ・・・!


・・・今ここで、もう一人の俺っち≠表に出しちまったら・・・


・・・もう二度と、今の俺っちに戻れない可能性がある・・・!





・・・俺っちにしろ、他の世界にいる特異点≠スちにしろ、

元々は、ダークロード闇の王≠倒すためだけに生まれた存在・・・


俺っちは20年前の大戦で、もうそいつを倒しちまってるんだ・・・


だから、本来なら俺っちは、

とっくの昔に、この世界から存在が消えてるはずなんだ!!



・・・こないだ、夢の中の人形の世界≠ナ出会った、別の世界の特異点=E・・

・・・マリン=カリリン≠チてヤツが、そうだったらしいからな・・・


・・・恐らく、俺っちが今もまだ消えていない最大の理由は、

俺っちの中で眠っているブラック・レイン≠フ自我よりも、

今のタルヤ=クルンヤ≠ニしての自我の方が、でっけえからだ。


額に巻いたねじりはちまきが、

ブラック・レイン≠ニしての自分を、

きつく締め付けているからだ・・・!!


・・・言ってみれば、おやっさんと交わした約束が、今の俺っちを守ってくれてる・・・!


・・・だから、今ここでねじりはちまきを解いて、ブラック・レインを表に出しちまうと、

長年押さえつけてきたブラック・レインの自我が、マグマみてぇに吹き上がって、

もう二度と、今のタルヤ=クルンヤに戻れねえかもしれねえ・・・!!

そしてこの戦闘が終わった後、今度こそこの世界から

俺っちの存在そのものが、ブラック・レインごと消えちまうかもしれねえ!




俺っちだって、今ここでブラック・レイン≠解放し、

圧倒的な力でこいつらを倒してやりてえのは、やまやまなんだ!!



だが、ルナナやサララを残して、

俺っちだけ世界から消えちまうなんて、

そんなことできるワケねえんだよ・・・!!




・・・せめて・・・サララが成人する頃くらいまでは・・・

・・・居酒屋の親父として、健在でいてやりてぇじゃねえか・・・!


・・・だけど・・・

そいつぁ、いてぇほどわかっているけど・・・


それでも、やっぱりしのびねえ・・・!


1−Bの生徒たちが倒れていくのを見るのは、やっぱりしのびねえよ・・・!


いったい俺っちは、ここでどうすべきなんだ、トラのおやっさんよぉ・・・!


ゴルトみてぇに、どんな手を使ってでもこいつらを倒すべきなのか!?

それとも、今のまま、たる屋の大将≠ニして戦い続けるべきなのか!?




トラのおやっさん! 俺っちには、わかんねえ・・・!!







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









一方、月下の騎士ルナナ。


切り札ざんてつけん≠ェ使えない彼女は、

現在徒手近接白兵戦法=iクラヴ・マガ)のみで三京と戦っているのであるが、

それでも元々の地力だけで、三京を押していた。


そこにマミーラの歌の効果が上乗せされたため、

ついさっきまでのルナナは、あと一歩で三京を倒す寸前であった。


・・・だが、いくらバケモノレベルのルナナでも、やはり素手では限界がある。

巨大な刀斬ギガス刀≠携え、ジョッシュ式魔導服≠纏い、

さらに歴戦の侍である巨漢・三京が相手では、

さしものクラヴ・マガでも、とどめを刺すまでには至らなかった。


もしマミーラの歌の効果が、あとほんの数分続いていれば、

あるいは三京を打ち倒していたかもしれないのだが・・・


その数分間は、アリあげクンの狙撃によって打ち消されてしまった。




「・・・耐え・・・しのいだぜぇ・・・!!」



ゴリラ顔エルヴァーンが、ニタァ、と笑った。



「・・・素手のタル相手に、マジで撲殺されそうだったぜぇ・・・!

アンタは本当に、紛うことなき完璧なバケモン≠セよ・・・!!

だが、呪歌≠ノよるアンタの猛攻、何とか耐えしのいだ!

正直、あの包帯少女の歌がやんで、マジでホッとしてるわ・・・!!」

「・・・ちっ・・・決め切れなかったか・・・」

「・・・知ってるかい? ピンチの後にチャンスあり・・・ってなぁ!!

もうそろそろ、俺もいいとこ見せてやらないといけねえよなぁ!!」

「・・・・・・」




・・・早くこいつを倒して、生徒たちの救援に行かねばならない・・・!


でないと、サララも危ない・・・!!


・・・ねじりはちまき角刈り野郎は、本来の力を解放できないはず・・・

・・・だから、やはり私が生徒たちの救援に駆けつけるしかない・・・


だというのに、このゴリラ顔、しぶとい!!







パーフェクト・タルが、初めてその顔にあせり≠フ表情を浮かべた。




『・・・月さえ・・・夜空に、月さえ見えれば・・・!!』












こんな説がある。


古代、恐竜の時代に、地球に巨大な隕石が衝突した。


隕石衝突の衝撃で、地球の地表が破壊され、

その際に発生した膨大な塵や灰が成層圏まで舞い上がり、

地球全体を覆いつくし、太陽光を遮るフィルターと化したため、

地球に氷河期が訪れた。

その氷河期の大寒波の影響で、恐竜は絶滅したという。



その地球に衝突した隕石というのは、

月≠ネのではないか、という説がある。



地球と衝突して後方に跳ね返った月≠ヘ、現在の位置まで移動した後、

衝突の際の勢いを失いつつ、そのまま地球の引力に引かれ、

摩擦というものの無い宇宙空間において、

地球の自転に引かれながら、その周囲を公転する衛星≠ニなったのである。



・・・ここからが本題であるが・・・



月がぶつかった場所、つまり地球との衝突地点・・・

その地球上の衝突地点には、とある古代文明の遺跡が存在していたという。



地球と衝突した月が跳ね返って

宇宙空間に飛ばされた際、

月の持つ引力が、

衝突地点の古代遺跡を丸ごと全部吸い寄せて、

そのまま宇宙に持って行ってしまった。




つまり、現在夜空に浮かぶ月の表面には、

遥か古代の地球の遺跡が、

今でもへばりついているのではないか、

という珍説が存在している。





・・・あやしさ満点の、しかしロマン溢れるトンデモ説である。


このトンデモ説を、当作品に持ち込むと、以下のようになる。




月の表面に吸い寄せられ、宇宙に持って行かれてしまった、

地球の古代文明遺跡・・・



その遺跡には、星の精霊が眠っている。


そして、その星の精霊の力を体内に取り込み、

自由自在に行使することが出来る選ばれし者は、

夜空に月が浮かんでいる時に限り、

星霊の力を、一振りの剣として召喚することが出来る。





その星霊の剣≠アそが、

謎の多い古代文明OTZ(オーバー・テクノロジー・ジラート)、

その中に鎮座する、究極の武器≠フひとつ・・・





      ざん       てつ      けん

斬 徹 剣 ≠ナある。













巨大刀を構える三京を睨みつつ、ルナナはもう一度、心の中でそう呟いた。




『・・・月さえ・・・夜空に、月さえ見えれば・・・!!』








・・・しかし、今宵は新月・・・

・・・夜空に月は浮かばない・・・









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









「くまーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」














「・・・よし、あそこは大丈夫。 まったく深刻な空気が無い。」






コルモルは、次の戦場へと視線を移した。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「・・・ぐううっ・・・!!」



ずずっ・・・ずずっ・・・と足を引きずり、マリ先生がゆっくりと歩く。




目指すは、キョウノスケとタンバルが戦っている地点。




「・・・ぐふっ・・・敵の・・・頭さえ・・・つぶして・・・しまえば・・・!!」



ほんの少し前、キョウノスケの放った八極拳の技猛虎硬爬山≠受け、

半日は動けないだろうという大ダメージを負ったマリ先生。


マミーラの歌の効果のおかげで、なんとか立ち上がることは出来たものの・・・


歌が切れた瞬間、腹部に受けた大ダメージが、

またすぐにぶり返してきたのである。




「・・・あううっ・・・!!」


タンバルの助太刀をしようと、必死にキョウノスケを目指して進んでいたが、

不意にがくり、と足の力が抜け、その場に崩れ落ちるマリ先生。


一般的に、腹部に受けたダメージというものは、

いつまで経ってもなかなか抜けない、と言われている。

呼吸を司る人体器官である肺や、全身への血流を司る心臓を筆頭に、

腹部には様々な器官が詰め込まれているため、

それらに複合的にダメージを負った場合、非常に回復が遅れるのだ。


弱い打撃でも、何度も積み重ねていけば、

ボディブローは徐々に効いてくるというのは、

人体の様々な内臓器官に複合的にダメージを与え、

かつその回復が、非常に遅いからなのである。



「・・・立たなきゃ・・・敵の・・・頭を・・・倒しに・・・行かなきゃ・・・」


ずずっ、ずずっ、と、まるでイモムシのごとく、

地面を這って前進するマリ先生。

目や口の中にグラウンドの土がどんどん入り込んでくるが、

そんなもの一切気にせず、マリ先生は這い続ける。


「・・・よくも・・・よくも・・・

・・・メイちゃんと・・・マミーラちゃんを・・・!!」



ぼろぼろ、ぼろぼろと、泣きながら地面を這うマリ先生。




「・・・ぐずっ・・・ゆる・・・さない・・・!!

・・・ひっぐ・・・ひっく・・・

・・・ぜったい・・・に・・・ゆる・・・さない・・・!!」





マリ先生を突き動かすものは、

ゴルトと同等か、それ以上の激しい怒りであった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









「は、離して下さいっ!! スティー理事っ!!

私は学園長に命じられたんですっ!!

何が何でも、マントをあなたに届けろとっ!!」


「・・・いけませんっ・・・!! いけませんっ・・・!!」


倒れたフェルツマンの元へ向かおうとするサトウ教頭の腕を掴み、

必死にその場に静止するスティー。


「サトウ教頭! あなたには、別の役があるんですっ!!

あなたをここで死なすワケにはいかないのですっ・・・!!」

「こ、このワタシに、いまさら何の役があるとおっしゃるんですか!?」

「・・・交渉役です・・・! 降伏の際の・・・相手との・・・交渉・・・役ですっ・・・!!

・・・降伏後の・・・こちらの・・・身の安全の保証を・・・交渉していただきます・・・!!」

「こ、降伏ですと!? ば、馬鹿な!? 何を言い出すのです、理事!?」

「・・・このまま・・・みんな・・・殺されるよりは・・・ましでしょうっ・・・!!」

「あ、あいつらは、どっちにしろこちらを皆殺しにする気だって、

ゴルト教授もコルモル博士も、理事自身も、散々言ってたじゃありませんか!?

今さら降伏の交渉なんて、出来るはずがないし、する意味もない!!」

「生徒までがやられているんですっ!! もうこれ以上、交戦はできません!!」

「あいつらがマトモな人間ならば、交渉の余地もあるでしょう!!

ですが、彼らに降伏したところで、無抵抗で殺されるだけですっ!!

あのサウザンドA≠ニやらを出してきた時点で、それは明白じゃないですか!

いったいどうなさったんですか、スティー理事!? 

普段のあなたならば、そんなこと言い出すはずが・・・!!」

「・・・ううっ・・・ううっ・・・!!」

「・・・り、理事・・・!!」


スティーの両目から、涙が溢れていた。



フェルツマンという男の存在が、

スティーの中でそれほどまで大きかったということを、

佐藤勝利はこの時、初めて知り及んだ。













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「・・・ちっ・・・スティーまでもが・・・あのザマかいな・・・」



一通り戦場を見渡し、コルモルはため息をついた。


「・・・生徒たちは、もうサンドバッグ状態。

一京をひたすら足止めしている、ゲイシャと保健のねーちゃんも、

もはや時間稼ぎ自体に、何の意味も無くなってしまっとる・・・

ポロロとオークマ先生の鬼門封じ≠焉A歌の効果が消えた今となっては、

いつまでサウザンド・Aを封じられるかわからん。」

真ん丸いアゴに手を当て、眉間にしわを寄せるコルモル。

「・・・まともに戦っとるのは、たる屋夫婦とボルタ、タンバル・・・

・・・せっかくの鬼神博士の参戦も、ちと遅すぎたな・・・

もはやただのその場しのぎにしかなりゃせんな・・・

ほんでもって、ゴルトは暴走状態で、暗黒面に落ちつつある。

おばちゃんを一方的に燃やして、一見優勢に見えるが、

あいつもいつパンクしてしまうか、わかったもんじゃないわな・・・

・・・わしの最後の秘密兵器魔法連弾砲身≠焉A

どうやらアプルルのやつが、生体動力炉≠フ起動に手間どっとるようじゃし・・・

こりゃどうも間に合いそうにないのう・・・」




メイドリアンとマミーラの撃沈から、

まだわずか5分足らず。


たった5分で、この有様であった。





「・・・こりゃ・・・ひょっとしたら・・・終わったかもな・・・」



フッ、と自嘲気味に笑い、コルモルは肩をすくめつつ、

ポロロちゃんの背後のオークマ=シゲクマの幻影へと視線を向けた。


「・・・こうなったら、もはや希望が持てるのは、あなただけですわオークマ閣下。

・・・小僧だったころのわしを救って下さったあの日のように、

この学園の若い連中を、何とか救ってもらえるよう、祈るくらいしかないですのう。

もはや神頼みというか、くま頼みというか、ともかくあなただけが頼り・・・」


・・・と、自分で言って、コルモルはふと気づいた。


「・・・あれ?  ・・・オークマ閣下・・・だけ?」


コルモルの脳裏に、幼少期の、あの日の記憶が蘇る。


「・・・いや・・・違う・・・

・・・あの日、わしを救ってくれたのは・・・

・・・確か・・・もう一人・・・青年がいた・・・」



・・・そのもう一人の青年≠ゥら、

別れ際に言われた言葉を、コルモルは鮮明に思い出す。












『あるいは、わしの因果律と、キミの因果律・・・

いつの日か、またどこかで結びつくかもしれないペコ^^』











「・・・フフフ・・・もしその日が、今日ならば・・・

・・・わしゃこの上なく、嬉しいんですがのう・・・」


ひょっとしたら、あるかもしれない最後の希望・・・




「・・・願わくば、奇跡を起こして欲しいもんじゃ・・・!

地中に眠る、巨大な因果律統合球さんよ・・・!!」








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

























「・・・うああああ・・・・ううぇえああああああ・・・・ああ・・・あああああっ・・・・」




自分と全然関係ないところで、話はどんどん進んで行っている。














殺人鬼のような顔でおばちゃんを燃やすゴルト。


地面に転がっているメイドリアンの首。


イモムシのように地べたを這いずるマリ先生。


全身に鉄のツメを打ち込まれて倒れているフェルツマン。


無京やバグベアにボコボコにされているクラスメートたち。

 

自分の目の前で、生気の無い顔で横たわっているマミーラ。


あちこちから聞こえてくる、誰かの悲鳴と怒号。






「・・・うああああ・・・・ううぇえああああああ・・・・ああ・・・あああああっ・・・・」




日常≠ェ壊されていく光景を前に、ただ泣くことしかできない。



どうしようもない役立たずのダメタル。























〜〜〜〜〜 バストゥーク港区 洋服のロック=ロールク=@〜〜〜〜〜



PM 18:44








「ピーピー泣いとるヒマがあったら、

敵を一発でも殴りに行かんかあああああ!!」










クリスタルに映っている、あまりにも不甲斐ない孫の姿を見て、

タルタルのばばあが絶叫する。



「それでも軍神<^イガ=オウガの孫かええぇぇぇぇっ!!

それでもこの炎の薙刀使い<泣oバの孫かえぇぇっ!!」




軍へ入隊した初日の初陣で、40匹以上のクゥダフのクビを一人で叩き落し、

塩漬けにしたそのクビをリアカーに乗せて持ち帰ってきたという、

伝説級の戦歴を持つタルばばあが絶叫する。



「おのれぇぇぇ!! このババが、あと10歳若ければ・・・!!

今すぐこの学校に乗り込んで行って、

こやつら全員、一人で叩き潰してくれるものをぉぉぉ・・・!!」




ヘヴィル=メタルの祖母、ルババ。

現在、齢(よわい)七十を越えている。


たとえこのタルばばあが10歳若くても、60代。

さすがに京一門を全滅させるのは無理であろう。




いくらこのルババが薙刀の達人でも、せいぜい改獣を2体倒すのが関の山であろうと思われる。



いや、60代のばあさんが改獣2体倒せるんかい。





・・・ともかく、そんなタルばばあからすれば、

映像上のヘヴィルの不甲斐なさが、

口惜しくてしょうがないのも無理はなかった。


また、祖母のみならず、父親の方も・・・


「・・・バカ息子が・・・! お前、いったい何しに学校に戻ったんだ!!」


ヘヴィルの父親ロック=ロールクも、ばあさんと同様に、

クリスタルを握り締め、映像上のヘヴィルに歯軋りする。


「軍人だった親父やおふくろとは違って、俺はただの街の洋服屋だ・・・!

だがその俺にだって、男が命がけで戦わなきゃいけない場面くらいわかる!!

ヘヴィル、お前、今戦わないと、もう二度と戦えなくなっちまうぞ・・・!!

どうせ出来ないなら、最初から何もしない方がいいと考える癖がついちまうぞ!

自分でもそれがわかってたからこそ、お前は学校に戻ったんじゃないのか・・・!!」


「・・・ふん。 ロックや、お前もちいとはわかっとるな。

お前には、ちったぁじいさんの虎≠フ血が受け継がれとるわい。」

「・・・一時的とはいえ、俺は一国の女王を嫁にした男だぞ。

じいさんほどじゃないが、タルは気合≠フ意味を、少しは理解してるつもりだ。」

「・・・そうじゃ! 気合≠ウえ爆発させれば、こやつも虎≠ノなれるんじゃ! 

じいさんやお前と同様に、ヘヴィルも猛々しい虎≠ネんじゃ!!

なのにこのバカ孫め、すっかり臆病風に吹かれてしまいおってぇぇ・・・!!」

「・・・こいつは今、檻に閉じ込められてるんだよ。 

・・・自分自身で作っちまった、心の檻の中に。」


「バカ孫があ!! 何が心の檻じゃああああ!!

自分のまわりを見んかあああああっ!!

友人たちが、死に物狂いで戦っとるんじゃぞおぉぉ!!」


「・・・ヘヴィル!! はやく立ち上がらないと、檻はどんどん狭まっていくぞ!!」




ロックとルババ、2人が見つめるクリスタルの映像上に、

視聴者たちのコメントが、大量に流れていく。







竹ぼうきタル目覚めたけど ダメすぎワロタwwwww

   コイツひどすぎ ワロえない・・・

         バス学もうオワタ

           マジコイツなにしに来たのw

       どうもあいつ、ストーリーに関係なかったようですwww

                  逆にオモロイわwwww

   てかゴルトがすげくね!? おばちゃんにクリスタル合成てwwww

 クリスタルって武器になるのかよ!!

            さすがコルモルの教え子w 無茶苦茶しやがるww

   誰もいらないんなら メイド少女の首はぼくがもらいますね^^

      あーあ 京一門の勝ちかよ すっきりしねえな

       もっかいLAMIが復活すりゃ まだわからんけど・・・

                   たぶん無理ぽ 

 

















〜〜〜〜〜 バス学 グラウンド 〜〜〜〜〜





PM 1847







「・・・うわああああああ!! ぇあぁぁあああああああああ!!」






・・・役立たずタルは、とうとう本格的にクズ≠フ領域に足を踏み入れつつあった。


・・・父親ロック=ロールクの言うとおりであった。


完全に自分で作った心の檻≠ノ囚われてしまった彼は・・・


目の前の現実を、もうこれ以上見たくない、と・・・






ずるずると地面を這って、運動場の外へと逃げ出した。




「・・・うわああああああーーーん!!

・・・ぇあぁぁああああああーーーん!!」





敵に背を向けた。

必死に戦っているバス学の教師たちにも、背を向けた。

サンドバッグにされているクラスメートたちにも、背を向けた。



地面に横たわり、

静かに目を閉じているマミーラにさえ、

我が身可愛さに背を向けた。





何もかも、全て置き去りにして・・・


もうこれ以上、現実を見たくないと、

ヘヴィル=メタルは

地面を這いずって逃げ出した。





「・・・うわああああああーーーん!!

・・・ぇあぁぁああああああーーーん!!」





クズ。


完全なる クズ。


どうしようもない クズ。


醜悪なる クズ。


最悪の クズ・・・!!


卑劣なクズ、卑怯なクズ・・・!!



クズは心の中で、ただただ言い訳のみを繰り返す!!








・・・だって、ギターに弦が張ってないから・・・!!


・・・おれがここにいても、歌なんて唄えない・・・!!


・・・ここにずっといたところで、どうせ殺されるだけだ・・・!!


そもそも、その場の勢いだけで、

こんなところに来たのが間違いだったんだ!!


たまねぎ先生の言うとおりだったんだ!!


おれなんかが戦場≠ノ入ってきちゃいけなかったんだ!


ごめんよ、クラスのみんな!!


おれ、もう邪魔しないから!!


おれ、これからはもう、なるべく何もしないようにするから!!


・・・だから・・・おれは、ここから離脱する・・・!!


ごめんよお、ごめんよお、ごめんよお・・・!!












クズは心の中で必死に言い訳をしながら、運動場の外へと這っていく。


























・・・そんなクズを・・・


・・・なんとか自分だけ助かろうと、逃げていくクズを・・・














誰かが通せんぼした。


クズの逃げ道を、塞いだ者がいた。
























「・・・あ・・・あう・・・あああ・・・・・」





ありえない光景だった。


彼女がそこにいるはずが無かった。



だって、あっちの方に、

思いっきり彼女の首が転がっているのに。











「あああううあああぇぇえわあああああ

うああぶああわああああああああああ

うわああぁぁあえううぇああああうぶうぇ

あふわああああああああああああぁぁぁ・・・」



大きく開いた両目から、ボロボロと涙を流しつつ、

ヘヴィルは目の前に浮かびあがった、少女の幻影を見つめる。








・・・覚醒は・・・もう・・・すぐそこだよ・・・






少女の幻影が、語りかけてきた。





・・・キミの中の・・・すごい力が・・・目覚めかけてる・・・




「あああううあああぇぇえわあああああ

うああぶああわああああああああああ

うわああぁぁあえううぇああああうぶうぇ

あふわああああああああああああぁぁぁ・・・」






泣きながら、金魚のように口をぱくぱくと開閉するヘヴィル。






・・・すごい力が・・・目覚めかけてるから・・


・・・キミは・・・今こうして・・・私と話が出来ている・・・







「あああううあああぇぇえわあああああ

うああぶああわああああああああああ

うわああぁぁあえううぇああああうぶうぇ

あふわああああああああああああぁぁぁ・・・」






・・・前にも・・・一度だけ・・・キミは・・・

・・・その力を・・・使ったことがあるんだよ・・・







「あああううあああぇぇえわあああああ

うああぶああわああああああああああ

うわああぁぁあえううぇああああうぶうぇ

あふわああああああああああああぁぁぁ・・・」






・・・わたしは・・・機械≠セから・・・


・・・だから・・・キミの持つすごい力≠ノ・・・感応できる・・・





「あああううあああぇぇえわあああああ

うああぶああわああああああああああ

うわああぁぁあえううぇああああうぶうぇ

あふわああああああああああああぁぁぁ・・・」








・・・キミの・・・その力≠ナ・・・


・・・クラスのみんなと・・・たまねぎ先生と・・・


・・・バス学の・・・みんなを・・・


・・・どうか・・・助けてあげて・・・













それは、極限の恐怖心が生み出した幻覚にすぎないのか・・・


それとも、別の何かなのだろうか・・・







ともかく、クズの逃走はいったんその場でストップした。


運動場の出入り口で、クズは幻影の少女と向き合った。





















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


















亀平の戦闘力が、日中の倍以上に上昇している。



夜間を迎えたことにより、アンデッドを素体とする改獣≠フ戦闘力は、

HP、MP、各種ステータス数値、その全てが1.5倍〜2倍の値にまで増大していた。


もはやコルモルにはコルモル式古代魔法≠ナ応戦する余裕もなく、

ただひたすらデジョネイター・ザ・ラクーン≠ナ攻撃を回避し続けることしか出来ずにいた。





「そぉ〜れぇ! そぉ〜れぇ! どうだぁ〜〜!!」



がしゃーん! がしゃーん! がしゃーん!



矢継ぎ早に繰り出される亀平の花沢不動剣≠ェ、

次々と信楽焼きのタヌキの置物を破壊していく。




「・・・ちいっ・・・!」

なぜか万歩計の形をしている、タヌキ装置の起動リモコンに視線をやるコルモル。

「・・・さすがにそろそろ、エネルギー残量が心もとなくなってきたわい・・・!

丸一日はもつじゃろうと思うとったのに、まさかほんの6時間ちょいで、

わしのタヌキ装置の使用回数をここまで減らすとはのう・・・!!」

ふざけた見た目とは裏腹な亀平の能力の高さを、改めて再認識するコルモル。


サウザンド・Aやアリあげクンも恐ろしいが、

やはり5体の改獣≠フリーダー格は、

この亀平で間違いない。



「・・・これまでの間、コルモル式古代魔法≠これでもかと浴びせてやったのに、

そのダメージなんて、まったくと言っていいほど蓄積されてはおらん・・・!!

さらに攻撃の速度や精度も、時間とともにどんどん鋭さを増してきとる・・・!!

この亀平さんという改獣は、防御型≠ニいうよりも、総合型≠ニ呼ぶ方がしっくりくるわい!」

「ばっかもーん! 今頃気づいたのかぁ! とんでもないやつだな、まったく!」


ヤグオさんは、ボルタによって多少ダメージを受けている。

オクスケも、タルヤに何度もぶっ飛ばされている。

アリあげクンはメイドリアンに首元を切り裂かれたし、

サウザンド・Aはポロロちゃんに身動きを封じられている。


だがこの亀平だけは、正真正銘、

まったくのノーダメージなのである。



もちろん、コルモルが今まで遊んでいたから、という理由ではない。



今までずっと遊んでいたように思えるコルモルも、

実はこれまでの戦闘の間に、

レベル99の黒魔道士が唱える古代魔法に相当する攻撃を、

何百発も亀平に撃ち込んできたのである。





それなのに、ノーダメージ。



コルモルに限らず、バス学勢の他の誰であろうとも、

この総合型改獣°T平にダメージを負わすことは難しいであろう。

たとえタルヤ=クルンヤやルナナであっても、である。


むしろ、魔導工学の第一人者異常天才<Rルモルだからこそ、

何とか亀平に倒されずにいられている、というべきである。





「こりゃいよいよもってシャレにならん状況になってきたわい・・・!

バス学全体の敗北色が濃厚な上、このわしまでも勝ち目が見出せんとは・・・!」

「ばかもーーーん! さっき言っただろうが! 

大事な家族や、町内のご近所のみなさんが見ておる前で、

この磯野亀平、決して不覚をとるわけにはいかんのだぁ!!」

「・・・まだか・・・! アプルルよ、もう限界が近いぞ!! 急がんか・・・!!」



現状における、コルモルの唯一の勝算・・・




未完の魔導兵器、魔法連弾砲身=I!





「もはや亀平さんの重厚な装甲を打ち崩す手段は、アレしかないんじゃ!

早く生体動力炉≠起動せんかい、アプルル・・・!!」



・・・と、悲痛な声を口から漏らす、コルモルの上着のポケットの中から・・・






「コルモル博士!! 応答願います! 

コルモル博士!! こちら手の院のアプルルです!!」





待ちに待っていた、リンクパール通信の声が聞こえてきた!!




1も2も無く、歓喜の表情で、

大急ぎでポッケからリンクパールを引っ張り出すコルモル。


「おうアプルル!! 生体動力炉≠フ起動、成功したか!?」

「たった今、赤くて丸いしっぽの部分を引っ張って、電源を入れました!!

ですが、近くの端末のモニターに、起動用のパスワードを入力しろって表示されたので・・・!」

「ええい、わしと何年付き合っとるんじゃ! そんくらい見当つくじゃろ!!

パスワードは F.F A&F=@に決まっとる! A先生とF先生へのリスペクトを込めてな!」

「いや、根本的になにを言ってるかわかりません><」

「ええからはよ入力せい! こっちは一刻一秒を争う状況なんじゃ!!」

「だったら最初からパスワードを伝えとけー、ばか博士ー!!

え、えっと、パスワード・・・ F.Fの、 A&F・・・と!!」

「どうじゃ!? 動いたか!? 起動したか!?」

「なんか、モニターによくわかんないゲージがいっぱい出て、色んな数字が表示されて・・・

あっ! 目が光りました!! そ、そして・・・!!」





・・・次の瞬間、コルモルが持つリンクパールから、

アプルルとは別の何者かの声が聞こえてきた。




「こんにちわコルモル博士っ! ぼく、生体動力炉ですっ!」


















はきはきとして小切れの良い、

明るく元気な少年の声であった。





「や、やった・・・! コルモル博士、成功したようですよ!!」

アプルルの嬉しげな声が響く。

「大成功ですよ!! 生体動力炉=A見事に起動成功です! 

コルモル博士はやっぱり天才です! 異常だけど!!」



「博士っ! 何でもご命令下さい! ぼく、がんばりますっ!!」


生体動力炉≠フものだと思われる、はきはきとした声がパールに響く。




・・・だが・・・!!




コルモルの表情が、驚愕に染まっていた。






「・・・ち、ちがう・・・」

リンクパールを握るコルモルの右腕が、ぶるぶると小刻みに震える。

「え? コルモル博士、どうされたんですかぁ?」

「・・・バ、バカな・・・いったいどこをどう間違えてしまったんじゃ・・・?

・・・いったい、どうしてこんなことに・・・!!」

「博士!? どうしたんですか!? なにをおっしゃってるんです!?」

「・・・違う・・・ちがうんじゃ・・・!!」

「なにがですか!? なにを言ってるんですか!?

生体動力炉、ちゃんと動いてますよ!? 起動に成功しましたよ!?」





「・・・違うんじゃ!! 全然違うんじゃ!!

わしが想定していた声と、全然違う!!」




「はあああ!? こ、声ぇぇぇ!? 声が違う!?」

パール越しにでも、アプルルの呆れ顔が容易に想像できた。

「いや、コルモル博士! 今は一刻一秒を争う状況なんでしょ!?

こんな時に、何をくだらない冗談を言ってるの!?」

「ちがうんじゃああ!! そんなはきはきとした、元気の良い喋り方ではないんじゃああ!!

わしがそやつに設定しておいた人工音声は、もっとこう、なんていうか、

間延びしてるというか、のんびりしてるというか・・・そう、もっと能天気な声だったはずじゃ!!」

「そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! あんた、ホントにバカなんじゃないの!?

今はそんなことよりも、はやく魔法連弾砲身≠転送させないと・・・!!」

「その通りですっ! さあ博士っ、ぼくに指令を与えて下さいっ!」

「ち、違う! やはり違う!! これは生体動力炉≠フ声ではない!!

わしの予定では、んも〜、しょ〜がないなぁ、博士くんはぁ〜≠ニか言いながらだな・・・!」

「だ・か・ら! 今のこの切羽詰った状況で、声なんてどうでもいいでしょー!!」 

「博士っ! アプルル院長っ! この声こそが、紛れも無くぼくの声なんですっ!」

「だめじゃああああ! その声じゃ、ダメなんじゃああああ!!」





・・・この期に及んで、コルモルは何を馬鹿馬鹿しいことを言っているのだろうか。

アプルルの言うように、今はそんな状況ではないはずである。






だがしかし、クリスタル・テレビジョンの視聴者たちには、

今のコルモルの気持ちが、痛いほど伝わっていた・・・・!!









ちがう!! この声じゃねえ!!

  ああ! こいつの声は、断じてこれじゃねえ!!!

      ありえない! こいつの声は、アレ以外にありえない!!

  ふざけんな! こいつの声は、絶対にアレだろうが!!

初めてコルモルに同意する! このはきはき声は、どうしても違和感があるんだ!

  たとえ何年たっても、何十年たっても、やはり俺たちはあの声じゃないとダメなんだ!!

 この鼻にツンとくるような、言わばわさび≠フような声じゃダメなんだよ!!

     そうだ! こいつだけは、絶対にはきはきと喋っちゃダメなんだ!

 懐古主義と笑わば笑え!! だが、これだけは譲れねえ!!

   俺たちは、もうDNAに刷り込まれちまってるんだ!!

 能天気に、かつ、正確にひとつずつ壁を壊すアルカノイドのような声でないと!

            ああ! 大きな山のように、間延びしたあの声を!!

  そうだ!! 大きな 山のように のびる 声だ よ!!

    大きな 山のように のびる よ!!

    大きな 山のように のびる よ!!

    大きな 山のように のびる よ!!

  大! 山! のびる! よ!! 

            大! 山! のびる! よ!!

    大 山 のびる よ!! 大 山 のびる よ!!

             大 山 のびる よ!! 大 山 のびる よ!!

 大 山 のびる よ!! 大 山 のびる よ!!

                     大 山 のびる よ!! 大 山 のびる よ!!









クリスタル・テレビジョンにコメントをしているのは、

主に30〜40代の者たちであった。









「おお・・・わかるか・・・! わかってくれるか、おんしら・・・!!」



コルモルの瞳に、じわりと涙がにじんだ。


「やはりおんしらも、わしと同じ気持ちかあああぁぁぁ!!」





そんなことやってる場合ではないはずなのに、

それでもコルモルは、映像上のコメントに涙した。





「も、もうあんなバカタレどもは無視よ!!

生体動力炉くん、とっとと魔法連弾砲身≠転送しちゃって!!」

アプルル院長が、リンクパールの向こうで金切り声をあげた。

「はいっ! わかりました、アプルル院長っ!!」

はきはきとした声でそう言うと、生体動力炉≠ヘすうっ、と大きく息を吸い込み、

続けてひときわ大きな声で叫んだ。



「魔法連弾砲身っ! 転送っ!!」








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







「さ、さあ、コルモル博士っ! そっちに魔法連弾砲身≠ェ転送されたでしょうか!!?」

「・・・いんや? 来とらんぞい?」

「ええっ!? いや、だって今、生体動力炉くんが転送させたはずですよ!?」

「おんしもクリスタル・テレビジョンで、こっちの様子を見とるんじゃろ?

ほれ、この通りじゃ、わしゃ完全に手ぶらじゃぞ。」

ぶらんぶらんと両手を振って見せるコルモル。

「あ・・・; ほ、ほんとだ; ちょ、ちょっと、生体動力炉くん! どういうこと!?」

「ぼくはあらかじめ設定されていた通りに、正確に転送プログラムを実行したんですが、

何らかの予期せぬエラーが発生したものと思われますっ!」

生体動力炉の、違和感のあるはきはきとした声がパールから響き渡る。

「エラーの原因だと思われる不正な挙動を、ログとして出力しますっ!!

E_NOTIMPL -2147467263 0x80004001 実装されていません

E_OUTOFMEMORY -2147024882 0x8007000E

この操作を完了するのに十分な記憶域がありません。

E_INVALIDARG -2147024809 0x80070057

パラメータが間違っています。

E_NOINTERFACE -2147467262 0x80004002

インターフェイスがサポートされていません

E_POINTER -2147467261 0x80004003 ポインタが無効です

E_HANDLE -2147024890 0x80070006 ハンドルが無効です。

E_ABORT -2147467260 0x80004004 操作は中断されました

E_FAIL -2147467259 0x80004005 エラーを特定できません

E_ACCESSDENIED -2147024891 0x80070005 アクセスが拒否されました。

E_NOTIMPL -2147467263 0x80004001 実装されていません

E_OUTOFMEMORY -2147024882 0x8007000E

この操作を完了するのに十分な記憶域がありません。

E_INVALIDARG -2147024809 0x80070057 パラメータが間違っています。

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インターフェイスがサポートされていません

E_POINTER -2147467261 0x80004003 ポインタが無効です

E_HANDLE -2147024890 0x80070006 ハンドルが無効です。

E_ABORT -2147467260 0x80004004 操作は中断されました

E_FAIL -2147467259 0x80004005 エラーを特定できません

E_ACCESSDENIED -2147024891 0x80070005 アクセスが拒否されました。

E_PENDING -2147483638 0x8000000A

この操作を完了するのに必要なデータは、まだ利用できません。

CO_E_INIT_TLS -2147467258 0x80004006 スレッドローカル記憶域のエラーです

CO_E_INIT_SHARED_ALLOCATOR -2147467257 0x80004007

共有メモリ アロケータの取得に失敗しました」



「コ、コルモル博士ぇぇ!! なんかわからんけど、

どうやらドえらいことになってるみたいですぅ><」





CO_E_INIT_CLASS_CACHE -2147467255 0x80004009

クラス キャッシュを初期化できません

CO_E_INIT_RPC_CHANNEL -2147467254 0x8000400A

RPC サービスを初期化できません

CO_E_INIT_TLS_SET_CHANNEL_CONTROL -2147467253 0x8000400B

スレッド ローカル記憶域チャネル制御を設定できません

CO_E_INIT_TLS_CHANNEL_CONTROL -2147467252 0x8000400C

スレッド ローカル記憶域チャネル制御を割り当てることができませんでした

CO_E_INIT_UNACCEPTED_USER_ALLOCATOR -2147467251 0x8000400D

ユーザーが提供したメモリ アロケータを受け入れることができません

CO_E_INIT_SCM_MUTEX_EXISTS -2147467250 0x8000400E

OLE サービスのミューテックスが既に存在します

CO_E_INIT_SCM_FILE_MAPPING_EXISTS -2147467249 0x8000400F

OLE サービスのファイル マッピングが既に存在します

CO_E_INIT_SCM_MAP_VIEW_OF_FILE -2147467248 0x80004010

OLE サービスに対するファイルの表示をマップできません

CO_E_INIT_SCM_EXEC_FAILURE -2147467247 0x80004011

OLE サービスの起動に失敗しました

CO_E_INIT_ONLY_SINGLE_THREADED -2147467246 0x80004012

シングル スレッドで、CoInitialize 2 回目の呼び出しを実行しようとしました

CO_E_CANT_REMOTE -2147467245 0x80004013

リモートからのアクティブ化が必要でしたが、許可されませんでした

CO_E_BAD_SERVER_NAME -2147467244 0x80004014

リモートからのアクティブ化が必要でしたが、指定されたサーバー名が無効でした

CO_E_WRONG_SERVER_IDENTITY -2147467243 0x80004015

呼び出し元とは別のセキュリティ ID で実行するように、クラスが構成されています

CO_E_OLE1DDE_DISABLED -2147467242 0x80004016

DDE ウィンドウを必要とする OLE1 サービスを利用できません

CO_E_RUNAS_SYNTAX -2147467241 0x80004017

RunAs の指定形式は <ドメイン名>\<ユーザー名> または <ユーザー名> でなければなりません

CO_E_CREATEPROCESS_FAILURE -2147467240 0x80004018

サーバー プロセスを開始できませんでした。パス名が間違っている可能性があります。

_PERMSSION_DENIED -2147467237 0x8000401B

クライアントはこのサーバーの起動を許可されていません。

CO_E_START_SERVICE_FAILURE -2147467236 0x8000401C

このサーバーを提供するサービスを開始できませんでした。」






「・・・マジで本格的に・・・お先真っ暗になってきたわい・・・!!」

つうっ、とコルモルの頬に冷や汗が伝った。


「・・・とっておきの魔法連弾砲身まで、使用不可かいな!!」









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「非常事態 発生  脅威を排除 脅威を排除」





すばやく弓に矢をつがえ、続けざまに3発、高速で矢を射るアリあげクン。


ばしゅっ! ばしゅっ! ばしゅっ!




「・・・・・・」


ばしっ! ばしっ! ばしっ!



右手に持った銀のステッキを軽く上下に振り、

アリあげクンの放った高速の矢を、

いとも簡単に地面に叩き落す鬼神博士。




「・・・夜間になると戦闘力が増すのは、お前たちだけではない」



かつて京一門に在籍していた男は、恐ろしい言葉を吐き出した。



今の言葉は、

自分の肉体には、アンデッド処理を施してある

と言ったのと同じであった。







「非常事態 非常事態 非常事態」


感情の無い声を放ち続けるアリあげクン。



これを出川風に言うと、

「ヤバいよ ヤバいよ なんか急にヤバいの来たよ」

という感じに変換される。






「・・・・・・」


しかし当の鬼神博士は、目の前のアリあげクンを、

ろくに視界にさえ入れていなかった。



「・・・・・・」


彼が見つめているのは、無残にも地面に転がっている、己が娘≠フ生首であった。




「・・・あのエノキ茸のような頭部の少年を・・・

・・・この学園の守護方陣の中へと・・・招き入れたために・・・

・・・私がここに到着するのが、だいぶ遅れてしまった・・・」


ぽつり・・・と、黒マントの老人は独り言をつぶやきはじめる。


「・・・かの少年の・・・祖父への・・・恩返しをしたつもりだったのだが・・・

・・・その結果が・・・地面に転がされる・・・娘の生首、か・・・」

アリあげクンに負けず劣らずの、極めて感情の無い口調であった。


「・・・あんな少年・・・相手にせずに・・・さっさとここに来ていれば・・・

・・・お前を・・・そんな目に合わさずに・・・済んだかもしれぬな・・・」


・・・そう言って、鬼神博士は・・・



次の瞬間、優しげに、にっこりと微笑んだ。





「・・・だが・・・首を飛ばされ、地面に転がされているというのに・・・

・・・それでも・・・お前の目は、なおも・・・

・・・あの少年や、クラスメートたちの方を見つめているな・・・」


老人の目から、ぽろり、と水滴がこぼれ落ちた。




「・・・入学前、スティー=ディランが言っていたとおり・・・

・・・お前はこの学園で見つけることが出来たんだな・・・

・・・自分の意思で、護りたい≠ニ思える対象を・・・」










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜













・・・わたし、死ぬのは今日で二回目なんだよ・・・






運動場の出入り口付近で、メイドリアンの幻影が、

目の前にいるクズタルに向かって微笑みかける。











一度目は・・・アトルガンにいたとき。

市街戦ビシージ≠チていうのに、巻き込まれちゃって・・・

ワケもわからない内に、何かの攻撃を受けて、大怪我しちゃったんだ・・・






「・・・・・・」



何をするでもなく、ただ押し黙って、メイドリアンの声を聞いているヘビメタ。






・・・それを、今のお父さんが助けてくれたんだ。

・・・なんかあちこち、色々と改造されて、

意識を取り戻した時には、ロボットになっちゃってたんだけど・・・






「・・・・・・」




本当の、人間としてのわたしは・・・

多分その時に、もう死んじゃったんだろうね。

・・・でもって、今日がわたしの二回目の死=E・・



「・・・・・・」



・・・でもね。 今日の死≠ヘ、一回目の時ほど怖くなかったよ。




「・・・・・・」




一回目の時は・・・何がなんだかわからなくて・・・

・・・だけど、はっきりとわかってたことが、ひとつあって・・・



「・・・・・・」


わたし、まだ何にもしてないのに、死ぬんだなぁ・・・って感覚。

何にも抵抗できないまま、まるで虫みたいに、一方的に殺されたの・・・

だから、すごく怖くて、悔しくて、悲しくて・・・


「・・・・・・」


だけど、今日は違ったよ。

わたしなりに精一杯、最後の最後まで、全力で戦ったもん。

そりゃもちろん、出来れば勝ってみんなを護りたかったんだけど・・・

だけど、自分の意思で、みんなの仲間として戦うことができたから。

だから、気が付けば死に掛けてた一回目の時と違って、

今日はあんまり怖くなかったんだよ。


「・・・・・・」



・・・だから・・・怖いだろうけど、戦おうよ、ヘビメタくんも^^


「・・・だけ・・・ど・・・」



ガチガチガチ・・・と、歯と歯を打ち鳴らしつつ、

クズタルは辛うじて、震え声を絞り出す。



「・・・だけど・・・おれ・・・

・・・もう、何をすればいいのか、全然わからねえんだぁぁ・・・」



・・・ヘビメタくんは、何かやるために、学校に戻ってきたんでしょ?



「そうだけど・・・! だって、持ってきたギターには、弦が張ってねえし・・・!

・・・マミーラは、目の前で矢で撃たれて、血をいっぱい流して倒れてるし・・・!!

メイドリアン、お前だって、首を飛ばされて地面に転がされてるし・・・!

他のみんなだって、もう殺される寸前みたいになってるし・・・!!

こんなヤバい状況になってるなら、おれなんてもう、

余計なことしないで、せめて邪魔しないでいたほうがいいだろ!?」



・・・ヘビメタくんには、すごい力があるんだよ。

そのすごい力が、あともう少しで目覚めそうなんだよ。



「・・・だけど・・・だけど・・・!!」


ヘビメタくんが戦わなきゃ、みんな負けちゃうよ。



「おれに・・・俺に何ができるってんだよおぉぉ・・・!!

おれはみんなと違って、本当に何もできないヤツなんだよぉぉ!!

気合で何かやろうと思って、勢いで学校に戻ってきたけど、

こんな土壇場で、いったい何をやりゃいいかわかんねえんだよおお!」




ボロボロと涙を流し、クズタルは叫んだ。


「やっぱりおれなんて、B組にいちゃいけない、

どうしようもない完全なクズなんだよおおお!!

本物ぞろいのB組で、おれだけがニセモノなんだよおぉぉ!!」







「こらー! しっかりしないか、ヘヴィル=メタル!!」





メイドリアンの幻影が、眉を吊り上げて、

ヘビメタの頭をぽかり!と叩いた。






「マミーラさんが倒れた時・・・!!

キミの方に、必死に手を伸ばしてた理由が、わからないのか!」


「・・・!?」


「喉に矢が突き刺さったんだぞぉ・・・! 

この先、もう声も出せないかもしれないんだぞ!

それどころか、もう命も助からないかもしれない!!

そんな彼女が・・・最後になぜ・・・

キミの方に手を伸ばしたと思ってるんだぁ!」


「・・・っ!!」




「バトンタッチ≠セよっ・・・!!

後はお願いっていう意味だったんだよ!

それ以外に考えられないだろぉ!!」


「な・・・・・・」


「キミに唄え≠チて言ってるんだ!

こないだの中間試験の時みたいに、

なりふり構わず、全力で唄え≠チて!!」


「・・・・・・!!」


「ギターが無い!? 自分は本物じゃない!?

それがどうしたんだー!!

音楽が無いなら、アカペラで唄えばいい!!

自分がニセモノだっていうんなら、

自分はニセモノだぞ!って、大声で叫べー!」



がしっ!と、メイドリアンの幻影は、両手でヘヴィルの右手を握り締めた。



「タルは気合だぞっ! ヘヴィル=メタル!!」




「・・・ううっ・・・うううっ・・・!!」



ボロボロと、ヘヴィルの両目から、涙が溢れ出る。


「うううっ・・・・!!」



溢れ出る涙と同時に・・・



クズの顔に、心に、だんだん気合≠ェみなぎってくる。




心の奥底の、虫のようなちっぽけな勇気≠ェ、

機械のメイド少女の幻影によって掘り起こされる!!





・・・大丈夫・・・ヘビメタくんの力≠フ覚醒は、もう目の前だよ^^





メイドリアンの幻影が、少しずつ、少しずつ薄くなり、その場から消えていく。





・・・機械≠フわたしだから、感応できる・・・

・・・ヘビメタくんの中に眠る、すごい力=E・・





「・・・うう・・・ううううっ・・・・うわああああっ・・・・!!」





くるり、と身を翻し、

ヘビメタは運動場の方へと体を向けた。




「うわあああああああああっ!!!

あああああああああああああああ

あああああああああああああああ

あああああああああああああっ!!」








・・・もしかしたら・・・

・・・たまねぎ先生にも匹敵するかもしれない・・・

・・・ヘビメタくんだけが持っている、すごい力=E・・





戦地へと身を向けたヘヴィルの背を見守りつつ、にっこりと微笑むメイドリアン。





・・・武器や道具(アイテム)が秘めている・・・

・・・真の力≠・・・引き出す能力・・・






メイドリアンの幻影は、その言葉とともに消失した。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜











・・・そして・・・


・・・ギリギリのところでクズ≠フ領域から脱出した少年は・・・




クズ≠ゥらバカ≠ノなった!!









そしてバカ≠ヘ、懲りずにもう一度、

朝礼台の上に仁王立ちした!!

















クリスタル・テレビジョンの視聴者たちが、


コメントを爆発させた!!








      キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタ━━━ヽ(∀)(゚∀゚)( ゚∀)(∀)(゚∀゚)( ゚∀)ノ━━━!!!!

キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚ )━(∀)━(゚∀゚)━━━!!

キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡(゚∀゚≡(゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)アァ( )ァア( )ァァ()アア)ァア(*´Д)アァン

                       キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタタタタタタタ━━━((((((((((゚゚∀∀゚゚))))))))))━━━!!!!!!

     キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━)━━!!!!

キタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!

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キタ━━━( ゚∀゚ )━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━( ゚∀゚ )━━━!!!!

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キタ━━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━(  ゚)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゚  )━(∀)ノ━ヽ(゚∀゚)ノ ━━━!!!!

        キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタ━ヾ(  )ノ゛ヾ( ゚д)ノ゛ヾ(д)ノ゛ヾ゚ )ノ゛ヾ(  )ノ゛━━!!

キ…(-_-)(_- )!(-  )キッ!(   )キタ(  ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━!!

キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!

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キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( )━( )━( )━()━(A。 )━(。A。)━━━!!!!

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キタ━━━( ´∀`)ω) Д)゚∀゚)・∀・) ̄ー ̄)´_`)−_)゚∋゚)´Д)゚ー゚)━━━!!!!

  キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタ━━( ´∀`)゚∀゚)*゚ー゚)ω) Д`)・∀・) ̄ー ̄)´_`)`Д´)´Д)丶`∀´>━━!!

キタ━━ヽ( `ω)( ^ω^)( Д)(´∀)(・∀・ )(゚∀゚ )(^Д^ )ノ━━!!













朝礼台に立っただけで、

もはや祭りのごとき大騒ぎ!!









・・・そのほとんどが、好奇心のコメント。

・・・そのほとんどが、からかい半分のコメント。

・・・そのほとんどが、笑えるネタ目当てのコメント。





・・・だが!!


だが、しかし!!



ごく一部、ごくごくわずかに、

コメントに変化が生じていた!!








お前ギター持ってんだから、いい加減に歌えよ おらああああ!!

          今度こそ! 今度こそ、やれえええええ!!

  いけええええ!! お前はなんかやりそうだああああ!!

                クズ野郎!! もうボケるんじゃねえぞ!!

   ネタはもういいからな! てめぇ、今度こそ決めろよ!!

      見せてくれ!! 「何か」を見せてくれぇぇ!!

         バス学はもう後がねえぞ!! わかってんな、竹ぼうき!!

   もうなんでもいいから、とにかくやれ! やっちまえええ!!

            これでダメだったら、てめぇは本当にただのクズだからな!!

もうバス学の負けだと諦めてたが、それでも俺はお前を待っていた!!











・・・それは確かに、後押しの声・・・!!


ダメなタルタル、ヘヴィル=メタルを応援するコメント!!






嘲笑の対象にすぎなかった竹ぼうき頭のタルを、


いつしかマジで応援している視聴者たちの声!!








・・・そして、バカの再登場に大盛り上がりの、無数のコメントの中に混じって・・・


・・・目立たぬように、ひっそりと・・・







某国の女王、そして同国の幼き姫の声があった!!






『そうです! 今こそ唄いなさい!! 

あなたの父、ロック=ロールクのように!!

恐れずに前に突き進みなさい、ヘヴィルっ・・・!!』



『こっからだぞー!! みんな、よーくみとけええーーー!!

いっけええええ!! 正義の味方、いっけえええーー><』








さらに、港区の洋服屋の店主と、

炎のタルばばあの声も、

同じようにコメントとして流れた!!





『そうだヘヴィル!! 思うがまま、感じるままに叫べぇぇ!!

お前は今、かつての俺の魂が篭った服を着ている!!

その服を着ている以上、お前も一匹の虎≠ネんだああ!!』



『行きんしゃい!! 無茶でもなんでも、とにかく行きんしゃい!!

無茶≠ェどうしたぁ! そんな言葉を恐れるなああああ!!

茶が無いくらいで、人は死にゃせんわあああ!!』

























「うわあああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああっ!!!!!!」






様々な者たちの声援を、一身に受け・・・




朝礼台の上のバカは、全身全霊で絶叫した!!





「うわあああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああっ!!!!!!」






バチィン! バチィン! バチィン! バチィン! バチィン!




楽器の秘宝=iレリック)、BUG−DIG・・・!!



弦が一本も張っていなかったギターネックに、

突如として光の弦≠ェ出現した!!





「うわあああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああっ!!!!!!」




BUG−DIGの光の弦≠ノ、

ヘヴィルはギターピックを叩き付けた!!






ギャギャアアアァァァァァーーーーーーーンッ!!!





鳴らないはずのギターが、

まるで永い眠りから目覚めたかのごとく、

高らかな雄たけびをあげた!!






















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





・・・もしかしたら・・・

・・・たまねぎ先生にも匹敵するかもしれない・・・

・・・ヘビメタくんだけが持っている、すごい力=E・・




・・・武器や道具(アイテム)が秘めている・・・

・・・真の力≠・・・引き出す能力・・・




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







メイドリアンは、

前にも一度、ヘヴィルはその力を使ったことがある

と言っていた。




・・・それは、かつての遠足の日・・・


ゼーガムの丘へ、リージョン学級≠ノ向かった日のこと・・・










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


大絶叫とともに、呪符リレイズを握り締めたヘヴィル。

死にたくない、生き残りたい。

ただただ一心不乱にそう念じ、握り締めた呪符リレイズを頭上高く掲げ、

ヘヴィル=メタルは(別に誰も危害を加えようとしてないのに)更なる大絶叫をあげた。



「ぅうわぁあああああああああああああ

いやああああああああああああああああああああ!!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおああああああああああああああ!!」



―――次の瞬間。



握り締めた呪符リレイズが発動し、

尋常ならざる凄まじい閃光を放った・・・!


ただ周囲を歩いていただけの、全然関係ない人を10人くらい巻き込んで、

その全ての人々に、蘇生魔法リレイズの効果が与えられるほどであった・・・!

(T5 第6話より)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜














 ア イ テ ム ・ エ ク ス テ ン ド

武具性能拡張能力!!







アイテムの持つ性能を限界突破させ、

その潜在能力を引っ張り出す能力!!








機械の少女の幻影が、

ヘヴィル=メタルの心の檻≠破壊して、

尋常ならざる能力を目覚めさせた!!







そして・・・!!



包帯で素顔を隠した少女が、

最後に差し伸べたバトン≠、

ヘヴィル=メタルは今、しっかりと握り締めた!!






「おれはみんなと違って、何もできないニセモノだぁぁ!!

どう逆立ちしても本物≠ノはなれそうにねえ!!

だったらもう、ニセモノのまんま突っ走ってやるぅ!!

おれみたいなニセモノには、魔法もスキルも、何もねぇ!!

どうしようもない、バカで役立たずなニセモノだけど、

せめて・・・それでもせめて、気合≠ョらいは・・・!!」








自分をクズ≠ゥら救ってくれた2人の少女に向かって、

バカ≠ノなったヘヴィルは絶叫した・・・!!



「メイドリアァァァァァン!! マミーラァァァァァァァ!!

見ててくれえええええええぇぇぇぇぇっっっ!!

ヘヴィル=メタルが、バカな歌を唄うぞおおおおっ!!」







『そうだペコ!! 今こそ虎となり、叫ぶのだペコ!!

2人の少女に、級友たちに、教師たちに!

父に、母に、祖母に、妹に、全世界に向けて!!』





「うおおおおおおおおおおおっ!!!



おれは ここに 



いるぞおおおおおお



おおおぉぉぉぉっ!!」














〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





・・・ほら・・・


・・・やっぱり・・・来てくれた・・・



・・・いつかのタルタル少年≠ヘ・・・


・・・こんな・・・図々しい女でも・・・


・・・ちゃんと・・・助けに・・・来てくれるの・・・







地面に倒れ込み、朦朧とする意識の中、


ラミ=サロメは 少しだけ微笑んだ。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






















原曲 黒夢「FAKE STAR」





http://www.youtube.com/watch?v=6QFszgq6_E8







「FAKE TARU」






目障りな ラノベが 溢れ放題 shut down !!

無気力 主役が 幅利かせて proud face !!


Break out, too Burst !! 染まる前に

Get out, Get up !! 執筆するゥゥアアァァ!!


ふざけた注目度 萌えが全ての クソストーリー !!


Break out, too Burst !! 独自キャラで

Get out, Get up !! 天を狙えぇぇぇぇェェェェ!!


おっ おっ おいィ!!


狂ったラブコメ 気が触れそうさァァ!!

僕はニセモノ 不敵な FAKE TARU!!

ゆる系アニメが ホンモノならァァァ!!

僕は偽りだらけの FAKE TARU!!


I'm a fake !!



You just true man !! 猿真似だけ

You are YESMAN !! 無様にやれぇぇぇェェェェァァァ!!


おっ おっ おいィ!!


イケメン クールが 本物ならァァァ!!

僕はニセモノ 不評な FAKE TARU!!

ヒロイン まみれが 優秀ならァァァ!!

僕は偽りだらけの FAKE TARU!!



狂った虚像 ヘラヘラするなアアァァァァ!!

僕はニセモノ シュールな FAKE TARU!!


FAKE TARU!!

I'm just Vana'deal FAKE TARU !! YES !!




くぁわあああす!!

う゛ぁあえぇぃ!!

うぇえあああう!

ぁぁああああっ!!








あああああああああああああああああああああ

いやあああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああ

ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ












うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうぅ


けあああああっ!!














〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜










・・・カーシャ=ポニーや、ラミ=サロメの唄う呪歌≠ヘ、

それを聴く全ての味方の肉体の潜在能力を呼び覚まし、

戦闘能力を大きく上昇させる効力を持っている。




・・・ヘヴィル=メタルの歌≠ノは、そのような効果はまったく無かった。


ヘヴィルの歌を聴いても、バス学勢の身体能力は、

まるっきりビタ一文として上昇しなかった。







・・・だが!!



だが、しかし!!






それぞれが装備していた武器が、防具が、

突如として、数倍以上の性能アップを果たした!!

















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「馬鹿な! こんなことが起こりうるのか・・・!!」





自軍、敵軍含め、一番最初に驚愕したのは、

校舎の屋上で観戦に徹していた、ドナオル=オオマであった。




「・・・未来永劫(グーゴルプレックス)の時を生きる、この余をして・・・!!

・・・このようなレアケースは、初めて目にするっ・・・!!」



愕然とした表情で、ドナオルは屋上のフェンスに駆け寄って、

グラウンドの方へと視線を向け、目をぱちくりとさせた。



「あの少年にも、原初のクリスタル≠ェ宿っているっ!!

同じ場所に、原初のクリスタル≠ェ2つ揃うだと・・・!?」




屋上のフェンスを握り締めるドナオルの両手が、ぶるぶると激しく震えた。




「あらゆるものを自由自在に生み出す創造の大地=I!

あらゆる武具の潜在能力を喚起する進化の颶風=iぐふう)!!

世界創造の水晶の力が、同所に2つ・・・!!

幾千年に一度、いや、幾万年に一度の奇跡だ・・・!!」




いくらこの学園の地下に、巨大な因果律統合球≠ェ埋まっているとしても、

それでもまず考えられないほどの奇跡=E・・!!



・・・なぜならば・・・



8つの原初のクリスタル≠ヘ、32の並列世界、

全てのヴァナ・ディールを合わせた上で、

それでも8つしか存在していないからである。



並列世界、それぞれに8つずつ存在しているのではない。

32の並列世界に、8つのクリスタルはバラバラに散っているのである。



つまりドナオルは、原初のクリスタルが

同じ世界の、同じ場所に、2つ存在している≠アとに

驚愕しているのだ・・・!!




「こ、このようなこと・・・過去に前例があるのか・・・!?」


ドナオルは上着のポッケの中から、薄く小さな四角形の小型端末を取り出して、

その表面のディスプレイの上に指先を滑らせる。

古代ジラート族の、1万年にも及ぶ歴史の中に記録されている、

様々な過去の事象を検索する小型端末、その名もジラート・ホストコンピュータ。


通称ジラホ≠ナある。




「・・・『原初のクリスタル 揃う 同一世界』・・・!!」


ジラホの画面に表示された検索エンジンに、ワードを入力するドナオル。

ジラート族1万年の歴史上の記録を、ジラホが素早く検索をかける。


だがやはり、「俺、原初のクリスタルを8つ全部持ってるけど質問ある?w」や、

「うちの家族だけで原初のクリスタルが4つ揃ってる件www」などと言った、

ふざけたタイトルの個人の日記くらいしかヒットしなかった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







・・・ヘヴィル=メタルは、一曲を唄い終えた。



ラミの呪歌≠フ時ほど、一気に劇的な変化は訪れなかった。

ラミの時のように、それぞれの肉体の能力が急上昇したワケではないので、

戦局が一気にひっくり返るということは無かった。




・・・しかし!!


確かに、そこに変化はあった!!



一人、また一人と、徐々に徐々にバス学勢は変化≠ノ気づき始める!!






なんか、武器がとんでもない威力になっている!!


なんか、防具がとんでもない強度になっている!!







「ヘビメタアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



両手斧を振りかぶり、リア=サーベルが叫ぶ。



「お前の歌かああっ!? お前が唄ったおかげなのかあぁっ!!」



リアの叫びに、叫びで返答するヘビメタ。


「リアァァ!! なにがだああああああっ!?」


「なんか、急にマントがものすごい防御力になったんだよお!!

時間ごとの自動回復量も、めっちゃ上がってる!!

斧の方も、ものすごい威力になってるぞ!!

これ、お前が唄ったおかげなのかああぁぁぁーーーっ!?」


「しらねえ! おれの歌で何が起きたのか、わからねえ!!」


「いや、しらねえって、お前がやったんじゃねえのかよ!!」


「もしみんなに、何かの力が沸いてきたんなら・・・!!

それはきっと、メイドリアンとマミーラのおかげだ!!

2人がみんなを助けてくれてるんだぁぁぁーーーっ!!」


「そうか! わかった!! もうそれでいい!

とにかく、お前は唄いまくれえぇぇーーーっ!!」






叫びながら、リアは振りかぶった斧を、思いっきり前方に振るった。





どごごごごぉぉぉおおおおおおおおおーーーーーん!!!!!




リアのアクスの刃先が、とんでもない威力の火柱を噴出し、

前方に迫ってきていたアンデッド・バグベアを、

5匹くらいまとめて消し飛ばした!!




「真・世界最強アクスが、更にパワーアップしてやがる!!

これぞまさしく宇宙最強アクス≠セああああああっ!!!」





「だったら・・・俺のは・・・!!」



ずざざざざざざざっ!! ざくざくざくざくざくっ!!



ライアスタットのダガーが、アンデッド・バグベアの巨体を、

一瞬にして無数のサイコロステーキに変えた!!





「超・神の短剣≠チてなもんで、どうよ!!」



にかっと微笑み、立てた親指をヘビメタに突き出すライア。


「ヘビメタ! やっぱお前は、1日1回、必ず奇跡を起こすな!

今日の分の1回を、よくぞここで出してくれたもんだ!!」



「奇跡を起こすなら、もっと早くやればいいのです! 

あとで絶対殴ってやるのです、ぷんぷん!!」


叫びながらランスを振るい、その一撃で

バグベアの上半身を破裂させるサララちゃん。






「みんなああぁぁーーーっ!!

何が起きてるのかはまったくわからないが、

恐らくこれがラストチャンスだっ!!」


メガネをずり落としながら、シンクが叫ぶ。


「絶対にヘビメタくんをやられないようにするんだ!!

彼が最後の希望、最後の反撃の基点だああーっ!!」




「「「「おおおおおおおおおおっ!!!!」」」」




言われるまでもない!とばかりに、朝礼台のヘビメタを中心に、

素早くフォーメーションを組む1−Bの生徒たち。



もう、マミーラの時と同じミスを繰り返すワケにはいかない・・・!!



シンクの言うとおり、もはやヘビメタは、

バス学勢にとっての最後の希望!!






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「ゴルトォ!! すぐに暗黒のクリスタル合成≠やめい!!」



白衣の第2ボタンから、コルモルの声が響き渡る。



「あれを見てみい! 生徒たちは、諦めずに戦っとるぞ!!

お前が悪しきクリスタル合成≠ノ手を染めたのに対して、

あやつらはズタボロになりながらも、まだ自分たちの力で戦っとるぞ!!

あんな健気な教え子たちの前で、合成術の暗黒面なんぞ見せていいのか!?」



「・・・そ、そんな・・・まさか・・・あのヘビメタが・・・? 

ダントツで成績悪くて、何をやっても必ず失敗する、戦力外のあのヘビメタが・・・?」


チェーンソーおばちゃんを燃やし続けていたクリスタルの発動を中止して、

大きく見開いた目を生徒たちの方へと向けるゴルト。



「・・・あまりにも役に立ちそうにないから、戦闘開始前に生徒手帳を取り上げて、

おいらが学園の外に追い出したあいつが・・・?

・・・そんなどうしようもないヤツが、みんなを救ってる・・・だと!?

そんなバカな!? そんなこと、絶対にありえない・・・!!」


「バカはおんしじゃ! 現に崩壊寸前じゃった生徒たちが、態勢を立て直しとるじゃろ!!

あれを見て、ありえないなどと言うおんしの方がありえんわい!!」


「だ、だって・・・だっておいらは、あいつに戦力外通告を出したんだぞ!?

どうせあいつは役に立たないからと、GEシリーズも与えなかったんだぞ!!

GEマントも、あいつの分は作らず、その材料でパトリシアのケープを優先した!!

そんなあいつが、何をどうやったらみんなを救ったり出来るんだよ!?

おいらの武器も、防具も装備してないあいつが、なんでだよ!?」



「簡単じゃ! おんしの出した数々の試練を、

あいつは全部乗り越えてきたってことじゃ!!」


「!?!?!?」


「無論、色んな者に助けられて、のことじゃろうがな!!

経緯はどうあれ、あの竹ぼうきタルは、おんしの予想を遥かに超えて、

この戦場に戻ってきて、必死に戦っておるってことじゃ!!

そしてその結果、あやつは武具拡張能力≠ニでも呼ぶべき力に辿りついた!!」


「・・・うそだ・・・あいつが・・・あのダメタルが・・・

みんなを助けるために、自分の力だけで必死に戦ってるだと・・・!?」


「おい! おんしさっきから、

みんなを助ける、みんなを助ける言うとるが、

あの竹ぼうきタルに一番助けられたのは、

他でもないおんしじゃぞ!!」



「なっ!? なんだと!?」


「おんし、たとえクリスタル合成の能力を失ってでも、

絶対に敵を倒す、などと言っておったがな!!

そうなると、この学園の教師でいられなくなるところだったんじゃ!!

合成が出来ない合成教授が、生徒に何を教えるっちゅうんじゃ!!」



「っ・・・!!」


「良かったのう! あいつのおかげで、合成の能力と、職を失わずに済んだぞ、おんし!!」


「・・・この・・・おいらが・・・ヘビメタに・・・助けられた・・・?;」



「ふん、ひとつ勉強になったじゃろ!!

どうしようもない劣等生だと思うとったヤツが、

いきなりとんでもない成長を遂げることもある!!

教師をやっとると、たまにそういう場面に遭遇するんじゃ!!」



「・・・ううっ・・・!!」



・・・いまいち納得のいかない表情で、唇を噛み締めるゴルト。



・・・だが、そんな表情ながらも・・・




ゴルトのその内心に、何とも言えない、

妙な嬉しさがこみ上げてきていた。





・・・それは本来、教員職を何年間か務めないと得られない喜び。




頭の悪いダメ生徒が、どうにかこうにか学校を卒業し、

社会に出たそいつが会社勤めで立派に成長し、

先生、お世話になりました!≠ニ、

お菓子を持って学校に遊びに来てくれた時の喜び





そんな喜びを、まさにゴルトは今、ヘビメタによって経験させられていた。







「敗れ去った包帯少女とメイド少女が、クラスメートや教員たち、

そして何よりも、担任のおんしを助けるために、あの竹ぼうきに力を貸したんじゃ!!

どんな劣等生でも、そらさすがに成長するわい!!

教師として、可愛い教え子たちに応えたいと思うなら、

もうクリスタルの暗黒面は解放するな!」


「ぐううっ・・・!!」


「それでもまだおんしが、あのヘビメタの事が信用できんっちゅうんなら、

わしゃもう何も言わん! 好きにやって、合成の力を失えばいいわい!

そしてあの生徒たちの担任の座を、自ら捨ててしまえ!!」



「うわああああああっ!! うるせえええええっ!!」



固く目を閉じ、コルモルに対して絶叫しつつ、

白衣の内ポッケに手を突っ込んだゴルトは・・・



「あんたに言われなくてもなああぁぁぁぁっ!!

1−Bのことは、おいらが一番良くわかってんだよおっ!!」




ゴルトはポッケからタオルのようなものを取り出すと、

それを左袖の無限マジックハンド≠フ先端に絡ませ、

おもむろにヘビメタの方へと射出した!!




「ヘビメタアアアアァァァァ!! 受け取れええぇぇぇぇ!!」




シャシャシャシャシャーーーー!!と、マジックハンドが伸びていく。




「た、たまねぎ先生っ!? こ、これはっ!?」



ゴルトが射出したマジックハンドの先端に括り付けられた、

黒いタオルのようなものを、ばしっ、と手で掴みとるヘビメタ。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





1−Bの生徒たちが装備しているGEマント=E・・

その素材である高機能魔導繊維≠ヘ、極めて入手困難な希少品である。


ゴルトは決戦前に知り合った謎の男THE BEAT≠ゥら、

ダンボール一箱分にも及ぶ大量の高機能魔導繊維≠、

無料で譲ってもらったのであるが・・・


そのTHE BEATと出会う直前に、

ゴルトはアカシア防具店の店主アカシア=マットから、

店の戸棚の奥にタオル一枚分だけ残っていた高機能魔導繊維≠、

アカシアの粋な計らいで、2000ギルという安値で売ってもらったのである。




そのタオル一枚分の高機能魔導繊維≠焉A

ゴルトは無駄にはしていなかった・・・!!






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「お前の分だああっ!! 受け取れえぇぇ!!」




「うおおおおおっ!! たまねぎ先生えええっっっ!!」




ぶわっ!と、ヘビメタの目から涙が溢れ出る。





やはりゴルトは、ヘビメタの分も用意してくれていた!!





「ヘビメタ!! しっかり唄いやがれ!! 

メイドリアンとマミーラの無念を晴らすために、

お前の力をおいらに貸せええぇぇぇっ!!」


「言われなくても、おれはもう突き進むしかねえんだ!」


「よおおおしっ!! 

だったら急いで、そいつを頭に巻けえぇぇ!!」


ヘビメタを指差し、ゴルトは叫んだ。





「お前だきゃあ、何をやらかすかわからねえからな!

万が一に備え、最後の最後に造っておいた!!

その名もGEバンダナ≠セぁぁぁ!!」


「うおおおおおおおおおっっっっ!!!」




ゴルトから渡されたバンダナを、ヘビメタはぎゅっ!と額に巻いた!!










「それ装備しても、歌スキルにはまったく関係ねえけど、

んなこたどうでもいい! やってやれヘビメタァァァァ!! 

ここぞとばかりに、無茶苦茶やってやれえぇぇ!!」



「うおおおおおっ!! いくぞBUG−DIGゥゥゥ!!

2曲目だあああぁぁぁぁぁっ!!!」













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原曲 「BAD SPEED PLAY



https://www.youtube.com/watch?v=hqOuQF2QK0M






BAD TARUTARU PLAY 」







うざくクールなイケメンたち

チャラい主役がモテまくる

ダサい話を書きたくねえ

思い詰めたら 妄想! 妄想!


萌えと美形の繰り返し

笑えないから無視してる

そんな風には書きたくねえ

新種 妄想! 妄想! 妄想!


BAD TARUTARU PLAY

(BAD TARU PLAY)

BAD TARUTARU PLAY

(BAD TARU PLAY)

BAD TARUTARU PLAY

(BAD TARU PLAY)


BAD TARUTARU BOW WOW WOW WOW!




口説きが上手い主人公

何回も見たキミの個性

節穴オタク絶賛した

ラノベ作者の 商法! 商法!


遠吠えクズや お人形に

嫌われるよう 妄想! 妄想!


BAD TARUTARU PLAY

(BAD TARU PLAY)

BAD TARUTARU PLAY

(BAD TARU PLAY)

BAD TARUTARU PLAY

(BAD TARU PLAY)


BAD TARUTARU BOW WOW WOW WOW!






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








ぶっちゃけ、歌はあんまり関係なかった。



多分、他の方法でも、

ヘビメタの能力は発動すると思われる。




・・・しかし、今は他の発動方法を探している場合ではない。



今はとにかく武具性能拡張能力=iアイテム・エクステンド)が、

味方全体に行き渡ることが、何よりも重要!!






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜










「・・・思い・・・出します・・・なあ・・・」





ぐぐぐぐ・・・!と、全身に力を込める。




「・・・私も・・・かつて・・・」




握り締めているGEマント≠ゥら、

数倍に増幅されたHP回復効果が流れ込んでくる。




「・・・ああして・・・唄いながら・・・

・・・全世界の・・・戦災孤児たちを・・・

・・・救助して・・・おりましたな・・・!!」



倒れていた巨漢が、ゆらりと立ち上がる!!










スティー=ディランの両目から、熱い涙が溢れ出て・・・


それと同時に・・・



バス学勢が、一人、また一人と復活し始めた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「や、八咫鏡≠ェ・・・!!」





ルル先生の頭上に浮かんでいる、

浮遊型魔法照射装置八咫鏡≠ェ、

眩いほどの黄金の閃光を放つ!!




「こ、こんな機能があるなんて、説明書には書いてなかった・・・!!」





八咫鏡から放たれる黄金の光が、

戦場全体の味方の体力を回復させる!




「わ、私が唱えるケアルよりも強い回復魔法を、

八咫鏡が勝手に唱えてくれている!?

しかも、運動場全体に及ぶほどの広範囲っ!!」




ルル先生の一番近くにいるジェニーが、

真っ先に八咫鏡≠フ効果によって体力を回復させる。

「・・・ルルセンセ! これもヘビメタはんの歌の効果ですのん!?」

「わ、わからないわ! でも、多分そうだと思う!」

「し、信じられまへんわ! あの子の力は一体!?」

「さっきコルモル先生が武具拡張能力≠チて言ってたけど・・・

もしそんな力が、本当に存在するのであれば・・・!」

ごくり、と固唾を呑みつつ、ルル先生は叫んだ。



「あらゆるアイテムを、自由自在に生み出すゴルト先生!!

そのゴルト先生の能力を、誰よりも活かすことが出来るのが、

ヘビメタくんの能力だってことよ・・・!!」




「・・・なんや、つまり、ウチはたまねぎセンセに見破られなくても、

どの道スパイ活動失敗しとったんどすな・・・」

ニヤリ、とジェニーは微笑んだ。


「あんなすごい能力の持ち主を見落としとったなんて、

ウチはスパイとしてあるまじき無能どすわ^^」






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「うおおおお〜〜〜〜! す、すげえ〜〜〜〜!!

すげえぞヘビメタ〜〜〜〜!!」




ボルタの持つ番傘が、七色の閃光を放つ!!




「ぼくの傘が、なんか物凄い勢いで、

色んな属性の魔法に包まれてるぞ〜〜!!

エンファイア、エンブリザド、エンエアロ、エンストーンと、

ものすごい速さで属性が切り替わってる!!」






『おいおいおい!? 俺らの傘に、いつの間にそんな機能が!?』

『な、なんと面妖な! その傘は、拙者らの交代≠ノ合わせ、

それぞれの得意武器に変形する機能しか無かったはずで御座るぞ!?』

『んなこと言ったって、現に傘がピカピカ光ってるじゃねえか!!』

『・・・ねえマーリン、良かったらこの現象の説明を願えるかい?』


『と、とりあえず、あの竹ぼうきタルを解剖してみたい!!』


『・・・と、このように、マーリン爺ちゃんも困惑してるようだよ。』




脳内に響くメモリーズ≠スちの声に耳を傾けながら、

ボルタは7色の光に包まれた番傘を、ぶぉん!と頭上に掲げた。


「ヘビメタ自身が言ってたように、これはきっと、

メイドの女の子と包帯の女の子のおかげだ〜〜!!

あの2人が、学園のみんなを守るために、

このすごい力を貸してくれてるんだ〜〜!!」





『い、いや、坊よ、しかしじゃな、

ワシとて心情的には、あの2人の少女の無念は理解しとるけども、

じゃからといって、吟遊詩人の呪歌≠受けただけで

武具の性能が急に変わるなど、そんな現象が起こるはずがない・・・!

こういう時こそ、冷静な検証作業が必要じゃぞ・・・!!』

『はっ! この際、こまけぇことはどうでもいいんだよ、じじぃ!

何か知らんけど強くなった≠ナいいじゃねえか!!』

『うむ、拙者も同意で御座る! 今は考えるよりも先に・・・!!』

『・・・うん、可憐な女の子たちの受けた痛みを、たっぷりとお返しするのが先だね。』

『おうボルタァァァ!! 俺に代われぇぇ! そのパワーアップ傘を試してやらぁ!』

『否、ここは拙者で御座る! 打ち直された刀の切れ味を振ってみたいで御座る!』

『いや、悪いけど、女の子たちの仇を討つ適任者は、どう考えてもボクでしょ。』

『ワシじゃああ! 坊、ワシに代われぇぇ! 

武具拡張能力≠ニやら、冷静に検証する必要がある!!

はようワシに代わらんかああああ!!』

『いや、お前、全然冷静じゃねえぞ、じじぃ!!』








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武具拡張能力≠受けたルル先生の八咫鏡≠ェ放つ光によって、

地面に倒れていた女教師の体力が、少しずつ回復していく。




「・・・そう・・・よね・・・そりゃそうよね・・・」



全身をぶるぶると震わせ、マリ先生がゆっくりと立ち上がる。



「・・・土壇場の・・・この場面で・・・

メイちゃんとマミーラちゃんの想いに応えなきゃ・・・

・・・男じゃないってもんよね、ヘヴィルくん・・・!!」



泥だらけ、涙まみれだった顔を、作務衣の袖でぐいっと拭い、

マリ先生は両目から鋭い眼光を放った。





「そして・・・!!

ここで生徒たちの想いに応えなきゃ、

私は教師じゃないわ!!」






















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「・・・あいつ・・・だけはっ・・・!!」





ものすごく悲しそうな顔で、キョウノスケが絶叫した。





「あの竹ぼうきタルだけは、

絶対に覚醒したりしないはずだと、

信じておったのにィィィィィィィ!!」





心から信じていたタルにまで裏切られ、じじい号泣!!





「よくもだましたアアアアアアアアアア!!!!!

だましてくれたなアアアアアアアアアアアアア!!」








「ブオッフォッフォッフォッフォッフォ!!

キョウノスケよ、ここで再び言わせてもらおうか!」




ハサミの先端でキョウノスケを指差し、タンバルは叫ぶ。



「正義側は、どれほど危機に陥ろうとも・・・

いや、むしろ危機になればなるほどに、

思わぬ助っ人が現れるものだよ!!」






「うるさぁい! バァァーーーカ!!

ワガハイ、あの竹ぼうきタルだけは、

ホントに好きになれそうだったのにィィィ!!」













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「・・・サララは・・・学生たちは、絶体絶命の窮地を乗り越えた・・・!」



ギラリ!と三京を睨みつけるルナナ!!


「次はお前が窮地に陥る番だ、堕ちた剣士よ!!

キサマらはバス学には勝てんということを、

この月下の騎士≠ェその身に教えてやる!」



「絶対斬り伏せる! 絶対斬り伏せる! 絶対斬り伏せる!

絶対斬り伏せる! 絶対斬り伏せる! 絶対斬り伏せる!

絶対斬り伏せる! 絶対斬り伏せる! 絶対斬り伏せるゥゥゥ!」



興奮の極みに達した表情で、三京はゲラゲラと笑った。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「人の心のつながりgkpihbajymh@じゃsv3、

みなごk@fbk@mb足腰たたない6jhpbtn

これこそが絆と呼ばhd6@hぼk@kがあああああ!!

白夜wk、yV黒いc:mbpぶげべばああああ!!」






何と言ってるのかわからない絶叫とともに、

泣きながらオクスケをぶん殴るちっちゃいおっさん!!










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「くまああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああ!!!」










ポロロちゃんの背後のクマの幻影が、

更にまたでっかくなった!!













ポロロちゃんのボーナスタイム、再延長!!









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







〜〜〜〜〜 ウィンダス森の区 ホームポイント・クリスタル周辺 〜〜〜〜〜







PM 19:08






午後7時をすぎ、とうに日の落ちたウィンダス共和国。

いつもであれば、そろそろ人々は帰路へとつき、

夕食や入浴等、余暇の時間を過ごしている頃であるが・・・


ウィンダス森の区のホームポイント・クリスタルの周辺には、

クリスタル上に映し出される映像をみなで観戦しようと、

大勢の人ごみで溢れ返っていた。




「よっしゃああ!! ついにあのタルの少年も活躍したぞぉ!!」

「あのバス学ってところには、すごいタルが大勢いるなあ!!」

「白夜の黒い雨≠ニ月下の騎士≠筆頭に、

タルタルの底力が、全世界に知れ渡っているぞぉぉぉぉ!!」



ウィンダスに住むタルタルたちが、クリスタル・テレビジョンを見て、

同族たちの活躍に感極まって、大きな歓声を上げた。


「すごい合成の力を持ってるのに、その力を国に貸さないどころか、

ちっともウィンに戻ってきもしないゴルト教授にはムカつくけど、

あいつもがんばって学園のために戦ってるみたいだぞー!」

「天気予報LSのリーダーのポロロちゃんも、大活躍してるねー^^」

「いっつも三輪車に乗ってアメ舐めてるあの子が、

実はあんなにすごかったとは知らなかったなあ!!」

「トラさんのところの1人息子のボルタも、結構目立ってるなあ!」

「ああ! 改獣≠ニかいうバケモンと、ずっと戦い続けてるぞ!!」


ウィンダスのタルタルたちが、クリスタル上の映像を夢中で見守っている中・・・



そんなタルばかりの人ごみの中に、

薄手のカーディガンを羽織った、1人の若い女タルがいた。


「・・・なにを・・・ちんたらやってんだか・・・」




カーディガンのタルは、

映像上で戦っているボルタの姿を見て、

ぼそり・・・と静かに独り言を呟いた。




「・・・相手はヤグなのか人間なのか知らないけど・・・

・・・そんなカラス一羽くらい、とっととやっつけろよ。」



「おや? おじょうさん、あんたボルタの知り合いなのかね?」

カーディガンのタルの、隣にいたタルのおっちゃんが問いかけてくる。

「・・・ううん・・・私、今日ウィンダスに引っ越してきたばかりだから・・・

・・・あんなヤツ、全然知らないけど・・・」

カーディガンのタルは、ポッケからチョコバーを取り出すと、

それをかじりながら、吐き捨てるように言った。


「・・・見てたら、なんかイライラする。

あいつ、多分ホントはもっと強いのに、

後のこと考えて、力を温存してるっぽいから。」










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




〜〜〜〜〜 バストゥーク共和国 商業区 裏路地 〜〜〜〜〜











持ち駒の無京を全て破壊された、京一門の門弟の1人、十京は、

ボコボコに打ちのめされ、地面に横たわったまま、

恨みがましい表情で異国語を吐き出した。



What is the big idea..............

You guys are all morons Fuckin Hume !!


どがあっ!!


その顔面を、思いっきり蹴り上げるTHE BEAT!!



「ぐはあああっ!!」


「・・・ファッキンヒュームくらいわかるよ バカヤロー。」













倒れたまま気を失った十京にペッ!とツバを吐きかけつつ、

THE BEATは懐からリンクパールを引っ張り出す。


「・・・おい、アカシアこの野郎、返事しろバカヤロー!」

「はいはい、こちらアカシアでっけど、どなたさんでっかww」

「どうもこんにちわ、私がドローンを官邸に飛ばした犯人です。」

「ファーwww おっさん、そういうのはやめなはれwww」

「放射性物質なんか積んじゃったりしてね、こう、20キロ分ね」

「やめやww せめてFFに関係ある話をせえww

BEATさん、いったいなんでんねんな、こっちはまだ戦闘中でっせアンタ!」

「いつまでやってやがんだバカヤロー! こっちはもう終わったぞコノヤロー!」

「そらそっちは大量のオートマトンが味方やから、はよ済むわいや!

こっちは戦闘なんか久々の、おっさんおばはんの集団でっせ!

すぐボケようとするさかい、指示を出すにも一苦労してまんねや! 

ほら、せやからアダモちゃん! そっちやなくて、あっちを先に攻撃せんかいな!」

「ペイッ!?」

「ペイッ!やあらへんがな! さっきも言うたやろ! わかっとるんかい、ホンマ!

ショージはお前、盾役のくせして、何を無京の残骸ばっか拾っとんねんな!」

「どぅーん! 機械部品、店売りでひとつ15ギルくらいになりますねん!」

「アホぉww 戦闘中やぞ、そんなんしとる場合かww

ほんでオクレ! お前は何をリアカーまで持ち出しとんねん!」

「・・・兄さん・・・バファリンで空腹をしのいだこと・・・ありまっか?」

「ないわいwww」

「・・・三日目くらいから、笑い止まらんようなりまっせ・・・」

「ファーwwwww」

「こいつマジやからな。 しかしアカシアよ、薬だけのディナーも、ある意味素敵やん?」

「どこがやwww ええからシンスケ、お前もはよ敵倒せww」


リンクパールから響く会話を聞く限り、

遊んでいるようにしか思えないHYOUKIN−ZOKU。


「バカヤロー! お前らこんな時に、何をふざけてやがんだ!

クリスタルの映像を見てみろバカヤロー!!

学生たちが息絶え絶えで、やっとこさ反撃し始めたところだぞコノヤロー!

生きるか死ぬかの瀬戸際のこういう場面で、

いきなりこう、ドローンなんか飛ばしちゃったりしてね」

「やめやwww あんたが一番ふざけとるやないかwww」

「冗〜談じゃないよ。 そんなこと言ってる場合じゃねえんだコノヤロー!

さっき倒したこの十京とかいうやつが、戦闘不能になる前に、

別のヤツにリンクパールで連絡をとってたんだよコノヤロー!!」

「ファーww ウソでっしゃろww まさか十京、十五京以外にも、

まだ別の門弟がバスの街中に潜んどるって言うんでっかww」

「さすがに無京はだいぶ潰してやったから、

多分もう街中に出せる余裕はねえはずだよバカヤロー!!

この先、こいつらが何か出すとしたら、このアンデッドのバグベアだよコノヤロー!」

「ファーww そらちょっとマズいでんなw 

ボクらもこれまでの戦闘で結構疲れとるっちゅうのに、

ここに来て更に夜のアンデッド軍団を相手にせなアカンのでっかw

カンニンしてぇな、ボクらはゴルト教授が造った

強力な武器なんてもんは、装備してないんでっせw」

「そうだよバカヤロー! だからお前ら、急いでそっちの無京と、

それを操ってる十五京ってのを倒せよコノヤロー!

その間、オイラはあいつ≠ノ念を送って、

すぐに応援に来てくれって頼んでおくよバカヤロー!」

「・・・そうでんな。 ここはやっぱ、あの人にお願いするしかありまへんな。」

「・・・アンデッドを相手にするなら、あいつを呼ぶしかねえってんだ、バカヤロー。」









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜















〜〜〜〜〜 サンドリア居住区 広場 〜〜〜〜〜








「・・・あー・・・はいはい・・・うん、そうだね。

・・・うん、そうそう、俺もお客さんたちと一緒にクリスタルの映像見てたから、

そっちの状況は大体わかってるよ。

・・・まいったなぁ、アカちゃんとたけちゃんに頼まれちゃ、

いくら俺でも、嫌とは言えないよね。」





お笑い寄席ヴァナっていいとも≠フステージ上で、

会場の観覧客とともにずっとクリスタル・テレビジョンを見ていた、

ブラック・サングラス・ミステリアス・ストーリーテラーこと、

伝説のお笑い司会者ティア=モーリィは、

ステージ上に用意されていたパイプイスから、

不意にすくっ!と立ち上がった。







BGM: https://www.youtube.com/watch?v=jsta3tEY43s





「えー、ご来場のみなさん方。

申し訳ないですが、たった今しがた、

助力を求める友人の念≠ェ頭の中に届いたので、

私はこの辺で席を外させてもらって、

これからちょっとバストゥークに行ってきます。」










ティア=モーリィの突然のそんな言葉を聞き、

ステージの客席に集う大勢の観客たちは、ぽかーんと口を開けた。






ヴァナっていいとも≠フステージの脇で、

ずっと待機していたアフロの若手芸人パスター=マットも、

ティア=モーリィの言い放った言葉に、自分の耳を疑った。






「それではみなさん、あしたもまた、来てくれるかなー?」





ティア=モーリィのお決まりの言葉に、観客たちは動揺しつつも、

笑顔でマイクを客席に向けているティア=モーリィに対して、

とりあえずいつもの合いの手を返すしかなかった。



「「い、いいともー!!」」



「・・・では、また明日。」


キラリ、とグラサンを輝かせ・・・


ニヤリ、と不気味に笑い・・・




ティア=モーリィは、

自分の足元に出来た自分の影の中へ、

当たり前のように、ずぶずぶと身を沈めていった。



「バストゥークかぁ・・・サンドリアからだと、5分くらいかかるなぁ・・・

アカちゃんもたけちゃんも、ホントに毎度毎度、急に呼びつけるんだから。

前もって言っとけっての、まったくもう。」





大勢の観客たち、及び若手芸人パスターの、

愕然とした表情をその場に置いてけぼりにして、

ティア=モーリィは己の影の中に、その姿を消した。











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








〜〜〜〜〜 バス学 グラウンド 〜〜〜〜〜





PM 19:15







ばばっ! ばばっ!

ばばっ! ばばっ!





バス学のグラウンドを取り囲む、ナイター用の夜間電灯が、一斉に灯される。

ウィンダスで照明として使用されている魔光草≠応用したものである。

言うまでも無く、もちろんコルモル博士が今日の夜戦を見越し、

事前にゴルトと共に製造して、あらかじめグラウンド周辺に設置しておいたものだった。



そんなナイター照明に照らされながら、1−Bの生徒たちは

ヘビメタの武具拡張能力≠ノよって戦闘力を急上昇させ、

迫り来る無京やバグベアたちに、猛反撃を開始した。



そんな中、白魔道士の男子生徒セージ=クーシーは、

攻撃には参加せず、必死にマミーラへの回復魔法を唱え続けていた。



「・・・だ、だめだ! やはりマミーラさんは、目を覚まさない・・・!!」


ヘビメタの歌によって、自動回復能力が上昇しているGEマント、

そしてルル先生の八咫鏡が放つ黄金の光、更にセージのケアル、

それら全てを受け続けているのに、マミーラは倒れたまま起き上がらない。



「どういうことだ!? リジェネやケアルじゃダメなのか!? 

し、しかし、私はさっきレイズも唱えてみたはずなのに、

それでも目を覚まさないなんて・・・!!」

だん!と地面を強く殴りつけるセージ。

「・・・うそだ・・・うそだ・・・こんなの、うそだ・・・!!」


・・・リジェネ、ケアル、レイズ、どの回復魔法も受け付けない・・・


・・・それが指し示す事実は、ただひとつ・・・



戦闘不能状態≠通り越し、

死亡した≠ニいうことに他ならない。






「・・・そ、そんな・・・あんまりではありませんか!!

女神よ、なぜ私たちにこのような仕打ちをなさる!?

必死に祈ったのに! 必死に魔法を唱えたのに!!」



だん!だん!だん!と地面を殴り続けるセージ。


「みなを救う歌を唄ったがために、喉を射抜かれて死ぬなんて!!

こんなのが、マミーラさんの運命だとおっしゃるかぁぁ!!」



「その者を救いたくば、そこをどけ少年」





「・・・!?」



突然、であった。


耳ではなく、直接セージの脳裏に、

何者かの声が響き渡った





背後に気配を感じたセージが、慌てて振り返ってみると・・・









なんか 全体的に 青っぽい人が 立っていた。


















「・・・2つの原初のクリスタル≠ェ揃いし、歴史上類を見ない学園・・・

・・・天は、この学園の生徒の命を救うことを選択した・・・

・・・少なくとも、余はそう理解した。」


「・・・め・・・め・・・め・・・」


顔中を汗だくにして、全身をがくがくと震わせながら、セージは呟いた。




「・・・女神・・・アルタナ・・・さま・・・?」



突然セージの背後に現れたドナオル=オオマは、

スゥーッ・・・と空中を滑るように移動して、

倒れているマミーラの近くに、すっ・・・としゃがみ込んだ。


「・・・余は観測者≠艪ヲ、その方らの戦闘を手伝うことは出来んが・・・

・・・この少女の生きようとする意志≠フ、後押しくらいはしてやろうぞ。」





あの移動の仕方に、青っぽい容姿に、この服装に、この喋り方!



これもう 絶対 女神アルタナや! 

とセージは思った。



「・・・ついに・・・届いた・・・」


セージの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


「私の祈りが・・・ついに・・・天に届いた。゜゜(´□`。゜。」





そら確かに、クマよりこっちの方がだいぶ神っぽいが、

残念ながら完全なる勘違いである。





「・・・気道が血の凝固で塞がれ、窒息しかけておる。

これではリジェネもケアルも、効果があるまいよ。

しかもあのアリの改獣、御丁寧にもアシッドボルト≠ナ狙撃したようだ。

射られた瞬間、鏃(やじり)から酸が放出され、喉の内部を溶かしている。」

ドナオルは、倒れているマミーラの顔を青い指先で何度か撫でつけ、

即座に状態を把握した。

「・・・魔法だけでは治療できぬ。 人工呼吸器のようなものが必要だな。 

それを直接喉に通し、充分な呼吸を確保せねばなるまい・・・」

「め、女神さま! こ、呼吸器ならば、マミーラさんはいつも持ち歩いているはずです!」

完全にドナオルを女神だと勘違いしているセージが、興奮気味に進言する。

「少年、余は女神アルタナではない。 なにせほんの1万年程度しか生きておらぬゆえ。」

「め、女神だ! 間違いなく女神さまだ!」

「・・・して、その呼吸器とやらはいずこだ?」

「は、はい、かなり小型なものですので、恐らく制服のポッケの中にでもあるのでは・・・」

「・・・うむ、これだな。 なるほど、なかなかよく出来ている。 

現世に生きる人間が作った物にしては、割と精巧だ。」

「め、女神だ! このセリフからして、もう絶対女神だ!」

「・・・よし、この小型呼吸器を使って、緊急手術を行うとしようぞ。」

ドナオルは、手に持ったジラホ≠ピピッと操作して、

なんかもうセージには全然理解出来ない画面を呼び出す。

「・・・簡易的なバイオ・リレーション処置を患部に施すと同時に、

この人工呼吸器で気道を確保しつつ、更に魔法で体力を回復させる。

少年よ、その方にも回復魔法で手伝ってもらうぞ。

・・・さて、まずは自宅のメインPCにネット経由でアクセスして、

バイオ・リレーションのプログラムを、ジラホの方にダウンロードして・・・」

「め、女神だ! 意味不明の単語の数々は、恐らく神々の古代言語だ!」





・・・と、そんな感じでマミーラの治療を開始したドナオルとセージ。

セージは完全にドナオルを女神アルタナだと思い込んでいるが、

1−Bの他の生徒たちは違った。



「ちょ!??? な、なんかすごいのが

マミーラさんの近くにいるケドナー!!」


「オーマイガアアア!! 新たな改獣デスカー!?」


「い、今までの中で一番強そうアルー><」


「い、いつの間にあんな近くに移動してきただ!?

全然気がつかなかったっぺ><」





そんな級友たちに、セージがブチ切れる。


「みんな、無礼だぞおおぉぉぉっ!!

女神アルタナさまに対して、なんて口の利き方だっ!!

慈悲深い女神さまが、マミーラさんを助けるために、

わざわざこうして天界から降りてきて下さったんだ!」




「ほ、本当か、セージィィィィィィ!!!

うおおおおおおおおおおおおおっ!!!

め、女神さまあ、マミーラを助けてやってくれえええ!!」




バカのヘビメタは、何の疑いも無く信じた。




「・・・助かるか、助からぬかは、この少女次第・・・」

すっ・・・と目を伏せ、ドナオルは静かに言った。


「だが・・・余のもてる限りの力は尽くそう。

その方らの想い、この少女に届けてつかわそうぞ。」





そのしゃべり方、その雰囲気で、

全員がこらもう女神やわ≠ニ信じた。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「・・・よし! 風がバス学に吹いてきたわい・・・!!」



ニイッ!と笑うコルモル。



「とはいえ、絶体絶命の崖っぷちから、ちょいと前進したという程度・・・!!

ポロロのビヨンド化≠ニ同じく、ヘビメタの武具拡張能力≠セって、

果たしていつまで続けられるものなのか、何の保証も無い代物じゃ・・・!!」


握り拳をパァン!と手の平に叩き付け、コルモルは闘志を燃やす。


「今の内に、やれるだけやっとかんといかん!!

というより、ここでなんとしても決定打を入れとかんと、

恐らくもう次のチャンスなんてもんは無い!!」



コルモルはリンクパールを引っ張り出し、

パールの向こうにいるアプルルに対して、大声で叫んだ。

「アプルルゥゥゥ! 生体動力炉≠ヘどんな按配じゃ!?

全然魔法連弾砲身≠ェ転送されてこんが、まだダメか!?」


パールから、すぐに返事が返ってくる。

「だ、だめです、博士ぇぇ><

生体動力炉くん、さっきから何度も転送プログラム≠チてやつを

実行し続けてるみたいなんですけど、全然成功しないんですぅ><」

アプルルの声に続き、はきはきとした生体動力炉≠フ声もパールに響く。

「申し訳ありません、博士っ! 原因が特定できなくて、

どうしても不明なエラーを克服できませんっ!」


「ぐぬぬぬ・・・! やはりわしの想定してた声じゃないから、

なんか妙な不具合が出てしまっとるみたいじゃな・・・!!」

ぎりり、と歯を噛み締めるコルモル。


「コルモル博士ぇ! 博士の方で、なんか原因に予想がつきませんかぁ!?

ひょっとしたら、ソフト的なエラーじゃなく、ハード的なエラーなのかも!?」

「いや、ハード的なエラーと言われてものう・・・

もともとそいつはまだ未完成なんじゃし、不具合の要因に

いくらでも心当たりがあるんじゃよなあ・・・」

「じゃあもう無理ですよ>< 100%きっちり完成させないと、

正しく動作するはずないですよ!」

「いや、しかしじゃな、わしの予想では、

何度も繰り返し使うのは無理でも、たったの一度くらいなら、

ちゃんと魔法連弾砲身≠使うことが出来るはずなんじゃ!

だからこそわしは、おんしにそいつを起動するよう頼んだんじゃ!」

「だって、現に何度やってもそっちに転送しないじゃないですかあ!

たぶん博士の予想が間違ってたんですよ! どっかでミスっちゃったんですよ!」

「・・・いや、しかし、この天才のわしが、些細なミスなんぞするはずが・・・」

「じゃあでっかいミスをどっかでやらかしてるんですよっ!」

「・・・でっかい・・・ミス・・・じゃと?」


はっ!と、コルモルは大きく目を見開いた!!




「・・・ま、まさか・・・アレか!? アレが原因なのか!?」

「ほうら! やっぱり! なんかミスってた箇所を思い出したんでしょ!?」

「いや・・・まあ・・・ミスというか、何というか・・・

一箇所だけ、当初の設計図から、大幅に変更した箇所があるんじゃ!」

「じゃあ、それが原因なんですよ!!」

「いや、だがしかし、それによって性能が大きく向上するはずなんじゃ!

あらゆる動作を実行する際、全ての処理を瞬時に最適化(デフラグ)し、

プログラムの実行速度を最大限に強化するために、

極めて高性能な演算処理エンジンを追加で搭載したんじゃよ!」

「そ、そうなんですかぁ!? じゃあ、それは原因じゃないのかも;」

「・・・いや! やはりどう考えても、最初の設計通りでない部分は、

後から追加した、その演算処理エンジンだけじゃ!

不具合の原因であるバグが、最適化の際に生まれているのかもしれん!」

「そんなことないですよ博士っ! ぼくは何の問題も無く、正常稼動していますっ!」

「やかましい! そのはきはき声の時点で、わしの想定とは大きく違うんじゃ!

おいアプルル! そこら辺に、わしの工具が色々と転がっとるじゃろ!?」

「はい、なんか色々転がってますけど・・・

ここは手の院の倉庫なんですから、整理整頓して下さいよ博士!」

「ええい、そんな話は後じゃ! 

工具箱の近くに、高枝切りバサミよりもさらにでっかい、

巨大な工業用ペンチが置いてあるはずじゃ!」

「は、はい、ありますけど・・・!?」


「よし! アプルルよ、すぐにその巨大ペンチを使って、

生体動力炉≠フ耳を、二つともちぎり取るんじゃ!!」



「な、なんですってええぇぇぇ!??」



「さっき言った高性能演算処理エンジン≠ヘ、

生体動力炉≠フ頭部に生えている、耳の中に仕込んであるんじゃ!!

その耳をちぎり取ってしまえば、予期せぬバグが無くなって、

魔法連弾砲身≠フ転送が上手くいくかもしれん!!」

「そ、そんな無茶苦茶な>< 余計に動作が不安定になるんじゃないの!?」

「どうせ今のままじゃ、そやつは全然使い物にならんのじゃ! 

それならばいっそのこと、荒療治と行こうじゃないか!!」

「ううう; で、でもぉ、耳をちぎり取るだなんて、かわいそうですよぉ;」

「そうですっ! バカなことはやめて下さい、博士っ!

もっと論理的にエラーの原因を追究し、特定すべきですっ!」


「うるせえっ!! ゴタゴタ抜かすでないわああ!!!

わしらがこうしてしゃべっとる間にも、

また誰かが倒されるかもしれんのじゃあ!!

いいからとっとと耳をちぎり取ってしまええっっっ!!」


「ひいいいっ>< わ、わかりましたああ><

生体動力炉くん、ごめぇーん!!」

「ちょ、ちょっと、何をするんですかっ!

やめて下さいアプルルさんっ!! 痛いじゃないですかっ! 」

「え、えーいっ! このー、このー!!」


バチバチッ! バチバチッ!という音が、パールに響く。


「痛いですっ! 乱暴はやめて下さい、痛いですよっ!」

「ううぅーー! か、かたいなー! なかなかちぎれませんよ、博士!!」

「やるんじゃああ! 全身全霊の力を込めて引きちぎるんじゃ、アプルル!!」

「ふぬぬぬぬ・・・! うぬぬぬぬーーーっ!!」


バチバチッ! バチバチッ!


「や、やめて下さい! 痛いですっ! たまらなく痛いですっ!

耳の中の高性能演算処理エンジン≠ヘ、重要な回路なんですっ!

それをちぎったりしたら、ぼくは優秀な生体動力炉じゃなくなってしまいますっ!」


「ちぎれえええ! アプルルぅぅぅぅ!!

はやく耳をちぎり取れぇぇぇ!!」


「うぬぬぬぬーーっっ!! も、もう少しーーーっ!!」


バチバチッ! バチバチッ! バチバチッ! バチバチッ!


「やめて下さいっ! ぼくに不具合なんてありませんっ!!

今のぼくの声こそが、本当の生体動力炉≠フ声なんです!!

この声こそが、万人に受け入れられる生体動力炉≠フ声なんですっ!」



「耳をちぎり取れえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

アプルルゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアアアア!!」




「え、ええーーーーいっ!! とりゃあーーーーっ!!」





・・・次の瞬間、壮絶な音がリンクパールに鳴り響いた。



ぶっっっっ・・・ちぃぃーーーーーーーーん!!


ぶちぶちぶちぶちぶちいいいいいいっっ!!









「ふ、ふぎゃあああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」




・・・その悲鳴だけで、わかった。



生体動力炉≠フ声質の変化が、

誰の耳にもはっきりとわかった!!




「い〜〜た〜〜い〜〜よぉ〜〜〜!!

なぁ〜〜〜に、するんだよぉぉ〜〜!!

わぁぁ〜〜〜ん、あ〜〜〜んまりだぁ〜〜!!

ぼくの耳がぁ、なくなっちゃったよぉぉ〜〜!!

ふわぁああ〜〜〜ん、およよよよ〜〜〜!!」







「・・・そ・・・」


カッ!と、コルモルは目を見開いた。


「それじゃああああああああああああああ!!!」





「せ、生体動力炉くん! さあ、やってみて!!

痛いだろうけど、がんばって転送するのよ! 

魔法連弾砲身≠、コルモル先生の元へ!!」





・・・アプルルの命令を受け・・・


・・・生体動力炉≠ヘ、叫んだ・・・



「んも〜〜〜、まったくぅ〜〜!

しょうがないなぁ〜、コルモルくんはぁ〜〜!」








   ゴッドボイス

真の声≠取り戻した彼は、


妙に間延びしたダミ声で、思いっきり叫んだ!!










「まぁ〜ほぉ〜〜う〜〜の〜



てっぽぉぉ〜〜〜〜〜!!」

















コルモルも叫んだ!!






「その声じゃあああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああ!!!!!













クリスタル・テレビジョンの視聴者たちも、叫んだ!!











それだあああああああああああぁぁぁぁ!!

   うおおおおおおおおおおおおおお!! それだよおおお!!

       そうだよ、それだよおおおおおお!!!

     この声だああぁぁ! やっぱりこの声だああああああ!!

              それがお前の声だああああああ!!

  ゴッドボイスきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

      うわああああああ!! 涙出てきたああああああああ!!

 ハマッたあああああ!! パズルのピースがハマッたあああああ!!

 大きく伸びた! 声が大きく のびた=I!

   巨人のように、ジャイアント≠フように、力強い声が!!

         イメージの合わない声に、スネ≠ス時期もあったけど!

       納得のいかない声に、静か≠ノ耐えていたけれど!

  やはりあの声こそが、合いすぎ、ハマりすぎ、そして出来すぎ=I!

    わはははは、セワシ≠ネくコメントしてるな、お前らwww

  そらみたことか! どらみ≠スことか!!

            ↑さすがにそれはちょっと無理があるwww
















・・・さて、声の方はコルモルの想定通りに戻ったようだが・・・



肝心の魔法連弾砲身≠フ方は、どうなのか!?









・・・キュイン キュイン キュイン キュイン・・・


キュイン キュイン キュイン キュイン!


キュイイイィィィィィィィィィン・・・!!









コルモルの頭上に、謎の電磁波が集中していた。







「・・・ふふふ・・・当たり前だわな・・・」



真ん丸いアゴに手を当て、ニヤリと笑い・・・




「あの声で、失敗するはずがないわな・・・!!」













未完の魔導兵器は、


転送に成功した!!





・・・キュイン キュイン キュイン キュイン・・・


キュイン キュイン キュイン キュイン!


キュイイイィィィィィィィィィン・・・!!






・・・コルモルは、再び声高らかに叫んだ!!







「さあて、毎度おなじみ、コルモル先生vs亀平のコーナー!!

次回、いよいよ最終章突入!! 」










「これまで以上にド派手に行くので、

 お見逃しの無いようにぃ!!!」









to be continued.....!!