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仏教の世界

仏像の世界

      を中心に

思想と美の原点を

      追求します

 広隆寺 弥勒菩薩像(画:小松久子 日経新聞)



仏教の世界、仏像の世界、を中心としてそれに関連した

絵画・建築・庭園などの世界を通じて

日本人としての思想の原点、美の原点を探究していく

実物に接し、実際に体感することによりその本質を

見極めたいと願っています
                                     
                                                福井県  永平寺


京 へ の 散 歩 


        〜 吉 崎 瑞 光 〜

何度目の京都行きだろうか。意識的に数えたことはないが、かなりの回数になろう。
週末を利用し、心の安らぎを求めて京への旅。一人で歩き回るには、ちょうど手ごろな町である。

今回の京都行きは、二つの目的を持って出かけた。

私の人生に大きな転換をもたらした仏像の世界。
そのきっかけとなった広隆寺の弥勒菩薩との久しぶりの出会いを楽しみにしたものと、
狩野派400年の絵画史の一端を学ぶためのものである。

京都の町は自分の足で歩いてこそ、その良さが解ると言うもの。たった一輌で走る京福電鉄嵐山線。
その一駅一駅が京の風情を思わせる響きをもっており、徐々に楽しみを高めてくれる。

広隆寺は太秦駅の目の前に山門を構えている。境内に一歩入ると静寂そのもの、自然と歩幅が
ゆるやかとなり、ゆったりと歩を進める。

弥勒菩薩半跏思惟像は、
壁面、天井が総桐張りの霊宝殿の中に多くの国宝、重要文化財の仏像とともに安置されている。



   『美しくやさしい姿を、飛鳥の時代より今日まで伝え続けているのである。

   右の頬に軽く触れようとしている伸びやかな中指、そして軽く折り曲げた薬指。
   どの指からも神秘的な美しさを感じさせる。

   細い眼、はっきりした眉、通った鼻筋、唇の両端にやや力を込め微笑を含んでいる顔。
   心のバランスがなければ、この美しさは表現できないであろう。』


私はいつもこの像の前で足を止め、じっと見つめ、心の対面を試みる。時間の経過はわすれてしまう。
納得できるまでそこを動くことはない・・・・・。


もう一つの目的である、狩野派の絵画史。

『室町時代の狩野派』 としての特別展が京都国立博物館で開催されている。


狩野派の始祖にあたる正信、次代の元信を棟梁とする約100年に焦点が当てられ、
水墨画・仏画・肖像画など120点に及ぶ貴重なものが広範囲に集められている。

このような企画はこれまでにはなく、私にとっては好機であった。
実物を拝見することが何よりの勉強であり、原点である。

この特別展の準備を担当された研究官の講座も拝聴することができ、十分堪能することができた。


僅か二日間の駆け足の京への散歩であるが、私にとっては欠かせぬ心の洗濯となった。


        (1997年4月  東京武蔵野ロータリークラブ 40年史 記念誌への寄稿文より)