飾りの舵輪

船外機#5搭載の船体製作 その2

 今回の試運転で体感した改善点はいくつか挙げられます。 ひとつはエンジンパワーの点です。 エンジン単体でのエアテストでは、まずまずの回転数とトルクが得られたのですが、ボイラー蒸気ではエアテストでの性能は出なかったという点です。 船外機としての小型化を重視した結果、ボイラーの煙管数を4本(8mmパイプ)としたことで熱効率が充分ではなかったいうことです。 やはり、煙管は9本程度は必要だったかなと考えています。 二つ目は、ボイラーの外気温と風に対する対策です。 特に船外機のボイラーが船の高さより突出していることで、直接外気にさらされ、ボイラー温度が下がり、蒸気圧が下がることです。 三つ目は、走行上の点ですが、船外機はボイラー一体の為、重量が重く、重心が高いという構造的な問題があります。 すなわち、ラダーを切るたびにエンジン重心の位置が変わる為、船がゆらぐことです。 これは、船外機の宿命でもありますが、ボイラーを分離することで軽量化が必要となります。 なお、ラダー制御の仕組みとしてラックとピニオン機構を使用したこと、大きな歯車を使用したことについては、当初心配したような動作上の問題は生じませんでした。 四つ目は、予想外に全体重量が大きく、走りに影響があったということです。 これは重い船外機が船尾に設置される為、前後のバランスをとる必要があり、結構なおもりを船首に載せていることが要因で全体重量がかさんでしまったことが挙げられます。 
図8 アンテナ支柱

アンテナ支柱先端

コードを絡める

バネで抑える

図2 エンジン取り付け(1)

エンジン支柱軸受け:ボールベアリングを挿入

蒸気エンジンとラダー機構

 試運転の結果は、船外機は軽快なエンジン音を発しているものの、ゆったりした走りです。試運転の様子を下記動画サイトをご覧ください。

 船はオープンボートということで特に飾りはありませんが、4cmほどの舵輪をつけてみました。 図10〜 完成写真を掲載します。

船外機 #5単気筒蒸気エンジン

 船体が出来たところで蒸気エンジン、ラダー機構、ラジコン装置等を実装していきます。蒸気エンジンは船外機として自作した、ボア12mm、ストローク14mmの1気筒複動式ですが、自作した模型ボートに搭載するとどんな走行性となるか体感しようとするものです。

試運転状況の動画 

クリックすると動画サイトにジャンプします

考察

図14 完成図(5)
210mm
605mm

完成

図9 バラストとテストの様子

エンジン重量:1064g

船体重量:936g

バラスト重量:1400g
バラスト 1400g

 蒸気エンジンの重量は1064gあり、船尾に実装されていることから、前後のバランスをとる必要があり、バラストとして船首に1400gの鉛板を実装しています。 おもりは、つり用の鉛重りを購入、サンマ蒲焼の空き缶(アルミ製)に溶かし成型したものを船底に配置、その上に板で止めています。 図9にバラストと風呂場でのテスト状況を示します。

アンテナ支柱

ネジで脱着

図7 ラジコン装置の実装

電池

スイッチ

 今回の製作は操作を楽しむことより蒸気エンジンボートの自作体感が目的の為、ラダー制御のみの機能とし、低価格なRC受信機(Futaba T2ER)とサーボーモータ(S3003)を選択しました。 実装の様子を図7に示します。 アンテナは持ち運びを考慮し、支柱をネジで受信機ボックスにネジ止めする形とし、支柱先端にはアンテナコードを引っ掛ける金具を付けています(図8参照)。

ラジコン装置

ラックにピンをはんだ付

図4 ラックとピニオン機構

平歯車のボスにサーボの軸を3方向から止める為のネジを切る

軽くする為、片面を旋盤で切削

サーボの軸(6mm)を歯車のボスに直接挿入。

平歯車の取り付け:

ラック歯車 :協育歯車工業

RK75B 2−0308

 ラダー角度を20度とすると、支点と作用点の距離を考慮すると平歯車の直径は70mmとする必要があり、重量も結構あります。 歯車の重さによる慣性力を少しでも減少させたく、旋盤を使って歯車の不要部分を削り、半分程度の重さにしました。 歯車へのサーボ軸の固定は、たまたま歯車のボスの内径は6mmとサーボモータの軸(6mm)と同じで、都合よく、そのまま使えましたが、歯車のボスには軸を止めるネジは1箇所しかない為、重い歯車を支えるには不十分と考え、ネジをもう1箇所追加しました。 図4ラックとピニオン機構参照。

ラダー作用点

熱遮蔽板

 蒸気エンジンは船尾側面に取り付けた軸受けにラダー軸(8mm)を単に差し込んだだけです。 エンジン重量は約1Kgある為、サーボモータの負荷がかかることを考慮し、軸と軸受けの間に図2に示すボールベアリングを挿入しています。

 また、燃料のアルコールがこぼれ、船が火事になることを配慮し、蒸気の凝結した水を溜める為にも受け皿を設置しています。 さらに、バーナーの熱が船の側板に直接あたらないよう、アルミ板で遮蔽しています(図2エンジン取り付け(1)(2)参照)。

70mm
図13 完成図(4)

スクリュー直径35mm

図12 完成図(3)
図11 完成図(2)
図10 完成図(1

バラスト

平歯車 :協育歯車工業

S75B 95B+0306

サーボモータ

蒸気エンジンとサーボとのリンク

燃料漏れ、凝結の為のトレー

蒸気エンジンの取り付け

図1 蒸気エンジンとラダー機構

サーボ

  モータ
ラダー作用点
 ラダーの仕組みはエンジンを支える支点を中心に、スクリューの方向を制御することで行います。 スクリュー軸の方向変化を左右各20度を確保することを考えると、作用点では各28mm(左右では52mm)のストロークが必要となりますが、RCセットに添付されているサーボホーンでは直線長として12mm程度のストロークが一杯です。 そこで、サーボモータの回転運動(左右45度)を無駄なく直線運動に変換できる手段としてラックとピニオンの機構を利用することとしました。 すなわち、図1に示すよう、サーボモーター軸に平歯車を取り付け、ラック歯車にはエンジンとのリンクをとるピンを立て、この直線運動でエンジンの方向を制御するものです。 ここでの問題は,必要なストロークを確保する為に直径70mmの大きな平歯車を使う必要があることです。 直径が大きいことから歯車の材質は真鍮製で重量があり、動作時の慣性力も大きくなります。 その為、モータにかかる負荷が気がかりなところです(図1 蒸気エンジンとラダー機構参照)。
 今回は蒸気エンジンとして単に面白そうだという理由で、船外機を製作しましたが、船に搭載してみるといろいろな問題点がわかりました。 ボイラーの熱効率を高めること、ボイラーとエンジンを分離することで船外機の軽量化をはかり、バランスのとれた実装を行うことで、さらなるコンパクトなボートができそうです。

Futaba S3003

図15 完成図(6)
風呂でのテスト

RC受信機

ラダー用サーボモータ

図6 ラックとピニオン機構(2

ストローク28mm

ラダー20度

ベアリングをビスで固定、

その上にラック歯車を置きバネで挟む

 ラック歯車の支持の方法は図5に示すように、ベースとなるアルミ板にビスでボールベアリングを止め、その上にラック歯車を載せています。 また、ラック歯車の中心部に3mmのピンをハンダ付けし、このピンを作用点としてエンジンの方向制御をおこなう仕組みとなっています。 図6はラダーを右いっぱいに切った時のリンクの様子です、ラック歯車はニュートラルの位置から約28mm移動し、その結果、エンジンは約20度方向が変わります。
図3 エンジン取り付け(2)

取り付け支柱(ラダー支点)

船体
ラダー支点
ラダー支点
ラック歯車

ピニオン(平歯車)

サーボモータ
ラダー機構
図2 船体図面
船外機 #5エンジン(1064g)

風呂でのテスト

図5 ラックとピニオン機構(1
クランク軸
バルブシリンダー 
RC受信機 電池
バラスト(1425g
サーボモータ
図7 直線部の側板貼り
バーナー
船体重量(936g)
605mm (最大幅 210mm
110mm
53mm 
排気パイプ
55mm
36mm
パワーシリンダー
76mm 
150mm 
スクリュ−(直径35mm
図2 船外機 蒸気エンジン#5 外観図
160mm
134mm
70mm
36mm
60mm
100mm
113mm
フライホイール
給油器
50mm
85mm