スコッチヨーク蒸気エンジン#6  その1 概要

クランクの動きとピストンの動き

クランクピン
排気蒸気が通るミゾ(フライス盤で加工) 加工後上から板で塞ぐ   
スコッチヨーク機構フレーム
サイドスラスト
シリンダー/ピストン
シリンダー/ピストン

スコッチヨーク機構単気筒蒸気エンジン#6  製作

パワーピストン

バルブ

中間位置
上死点
バルブシリンダ

「スコッチヨーク機構」と回転軸とのリンク

「スコッチヨーク機構」とは

ガイド軸の平行性とスリーブとの適度な遊びが重要  

 完成した#6スコッチヨーク機構エンジンとこれまで作成した単気筒複動式エンジンとの比較を図9に示しています。 スコッチヨークエンジンはクランク機構エンジンと比較すると、2/3程度にコンパクト化されていることが分かります。 #6エンジンの性能として、電気ボイラー#2を接続しての回転数は1320回転/分を示しました。 トルクの測定は体感で測るのが一番近いということで、これまで製作した中で一番パワーのある、ロス機構を採用した#4エンジンと比較してみました。 #4エンジンのパワーは4mmの回転軸を指でつまんでも止められない力ですが、指でつまんで相対比較した結果、#4エンジンのトルクを1とすると今回の#6エンジンは体感的に0.8程度といまいちの結果となりました。

 この要因は工作精度によるもので、ピストン軸とヨークガイド軸(ヨークの運動軸)の精度が充分ではないことが機械損失となり、そのまま結果に現れているものと思われます。 また、エンジンの振動は、やはりこれまでのエンジンの中では最も振動が多いように感じています。 今回、ヨークは真鍮で作りましたが、その重さが要因して振動が多いのかもしれません。
4mm
バルブピストン
23mm
13mm
排気口
パワーシリンダ
クランクディスク

バルブ

中間位置

バルブ

最上位置

バルブ

最下位置
ピストン動作
 パワーピストンとバルブ(弁)ピストンとの動きを図4に示します。 動きのポイントはパワーピストンの動きがバルブピストンの動きより90°先行しているということです。 状態1ではメインピストンは最上位の位置にありますが、バルブピストンは最上位の90°前にあります。 状態1から2に移るタイミングでシリンダ上部口から蒸気が供給され、下部口からは蒸気が排出されてピストン下向きにパワーが発生します。 状態3でパワーピストンは最下位の位置、バルブピストンは最下位の90°前の位置となり、蒸気供給は停止します。 状態3から状態4に移ると蒸気はシリンダ下部口から供給され、上部口から蒸気が排出され、ピストン上向きにパワーが発生することになります。
17mm
パワーシリンダ

コンロッド長はクランク

半径の4〜5倍程度
1気筒蒸気エンジン#6 仕様

運転状況の動画 

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回転軸
図7 回転軸とピストンのリンクの様子
40mm
バルブピストン
バルブピストン
バルブピストン
パワーピストン
パワーピストン
図3 #6エンジンのスコッチヨーク構成
クランクピンがヨークの中を左右にスライド
 蒸気エンジンでは、ピストンの往復運動を効率よく回転運動に変換する機構がコンパクト化へのキーワードとなっています。 コンパクト化については、#4蒸気エンジンで採用した「ロス機構」もそのアプローチのひとつですが、今回は「スコッチヨーク機構」を採ることで、クランク部分の高さを抑えたコンパクトエンジンに挑戦します。 スコッチヨーク機構による蒸気エンジンはあまり目にしないのですが、どんな特質があるのかを体感することも工作の狙いとしています。#6蒸気エンジンはこれまでのエンジンと比較出来るように、ボア13mm、ストローク14mmの単気筒複動式、バルブ制御はピストンバルブ方式を採用することとします。 図1に完成した#6エンジンの外観図と仕様を示します。
バルブシリンダーは

内径5mmパイプ

パワーシリンダーは

内径13mmのパイプ

ピストン軸とヨーク運動軸(ガイド軸)を一致させることが重要。

パワー

ストローク

14mm  

 完成したエンジンの動きを下記動画でご覧ください。 この動画はヨークの動きが分かるように、エアの庄力を下げてスロー運転している様子です。

図9 単気筒複動式エンジンとの比較
#2クランク機構エンジン
#6スコッチヨーク機構エンジン
#4ロス機構エンジン

製作結果

42mm
バルブピストンヨーク
偏芯カム
バルブピストンヨーク
図8 エンジンヘッドの構造
潤滑油
オイル混入蒸気
蒸気

蒸気にオイルが混じる

給油器
3mmφ
3mmφ
4mm

両シリンダー間の蒸気

通路。加工後ネジで塞ぐ
23mm
給気
排気

シリンダ内長

26mm 
給気口
側面断面図

排気蒸気をミゾに導く穴

ネジ
給気口
バルブシリンダ
上部断面図
パワーピストンヨーク
図6 スコッチヨークの基本構造
パワーピストンヨーク

 スコッチヨーク機構ではクランクピンが回転に応じて、ヨークの中を左右にスライドしつつ、ヨーク自身が上下方向にスライドする仕組みです。 ピストン軸はヨークに直結しており、ヨークの上下運動がピストンの往復運動となっています。 ヨークのガイド軸にはサイドへの力はかかりますがピストンのサイドスラストは発生しないことになります。 基本的に、往復運動を回転運動に変換するリンク機構部の高さはピストンのストロークの分だけあればよく、エンジン高を低くすることが出来ます。 図2参照

図5 スコッチヨーク機構を使用した蒸気エンジン#6 外観図
85mm
66mm
45mm
32mm
100mm
54mm
66mm
38mm
下死点
パワーピストン
バルブピストン
給気

 工作上のポイントはリンク機構です。 回転運動と往復運動の変換の際にでヨークガイド軸に横方向の力がかかりますが、ガイド軸の平行性を確保し上下運動がスムースに行えることがポイントのひとつとなります。 また、ピストンとヨークが一体の為、ピストンの往復軸とヨークの上下運動軸の方向が基本的に一致していることが二つめのポイントとなります。 ピストン軸とヨーク部分の運動軸が一致しないと、大きな機械損失となりエンジン性能に大きく影響することになります。 実際にはピストン軸とヨーク軸と正確に一致させることは難しい為、ヨークガイド軸とスリーブの遊びで対応することになりますが、この部分の工作精度もポイントとなります。 なお、エンジンヘッド(パワーシリンダーとバルブシリンダーとのリンク)についてはいつもの工法、すなわち、両シリンダーとなる真鍮パイプをブロックに半田付け接続し、両シリンダー間の蒸気パイプをドリル穴で接続するという工法で製作します。 #6蒸気エンジンの外観図を図5に、図6にスコッチヨークのフレーム構造、図7に回転軸とピストンのリンクの様子を、図8にエンジンヘッドの構造を示します。

蒸気エンジン#6の構成ポイント

図4 #6スコッチヨークエンジン遷移図
排気
ピストン動作
排気
給気
パワーピストン
36mm
32mm
バルブシリンダ ヨーク
パワーシリンダ ヨーク
ガイド軸スリーブ
7mm

バルブ

 ストローク:8mm
ヨークガイド軸
偏芯カム
クランクピン
クランクディスク
ヨーク
クランクピン
偏芯カム
クランクピン
フライホイール

 今回のエンジン構成では回転軸とパワーピストンとバルブピストンとのリンクをはかる必要があります。 パワーピストンは回転軸の先端に配置でき、クランクピンがスライドできればよい為、ヨークを小さくすることが出来ますが、バルブピストンは回転軸の中間にある為、偏芯カムがヨーク内をスライドする必要があり、ヨークそのものが大きくなってしまいます。 スコッチヨーク機構ではピストンとともにヨーク自身も上下運動することから、ヨークの重さの為に、一般クランク機構エンジンよりも振動が多いとされています。 スコッチヨーク機構と回転軸のリンクの様子を図3 に示します。

図2 一般的なクランク機構とスコッチヨーク機構

一般クランク機構

クランクピン
スコッチヨーク 機構で短縮

スコッチヨーク機構

ヨークが上下方向にスライド

ヨーク

ガイド軸
ヨーク

 ピストン運動を回転運動に変換する一般的な方法は、図2に示すような「クランク機構」が使われています。 クランク機構ではピストンの動きと直角方向に力がかかり機械損失の要因となります(サイドスラスト)。 この損失を低減する為にはコンロッドの長さを大きくする必要があり(一般的にコンロッドの長さはクランク半径の4〜5倍とされています)、どうしてもエンジンが高くなるという問題があります。この高さを抑えるリンク機構のひとつが「スコッチヨーク機構」です。 図2参照。

図1 スコッチヨーク機構を使用した蒸気エンジン#6 外観図
縦85mm×横66mm×高さ100mm
ピストンバルブ方式
スコッチヨーク機構
ボア:13mm ストローク:14mm
1気筒複動式
外形寸法
バルブ(弁)方式
リンク機構
シリンダー構成
76mm
125mm
166mm
蒸気調整バルブ
圧力計
41mm
85mm