2023125

同調コイルと再生コイル構成

再生方式1石ラジオの製作

図7. 正帰還量と高周波信号波形(ニッポン放送)

2)電波状況の悪い放送局の受信

基板表面(2

基板表面(1

 実装ケースは透明アクリル板をスペーサで挟んだ形体で、回路主要部は汎用基板を使っています。バーアンテナ、同調バリコン、再生バリコン、可変抵抗、イヤホンジャック等はL型に折り曲げた真鍮板を介してケースに実装しています。また、回路基板と周辺部品とはとの接続はピンヘッダとコネクタピンで接続しました。図5に実装ケースと接続の様子を示します。

 バーアンテナは、長めのフェライト棒に同調コイル(1次コイル)、2次コイル、再生コイルの3つのコイルが巻かれています。いつものように自作しますが、これまで作った実績あるバーアンテナに再生コイルを巻きしました。但し、再生コイルの磁磁界と2次コイル磁界は信号の位相を合わせる為に同じ方向に巻きます。また。コイルと回路基板の接続は、基板とコイルとの接続は接続ピンをフェライト棒に接着剤で固定しました。自作したバーアンテナを図4に示します。

少年時代に夢中になったラジオの製作、再びのワクワクとドキドキを楽しんでいます。今回は「再生方式ラジオ」をトランジスタ1石で構成します。再生方式は、増幅した高周波信号を入力側に戻して放送信号に加えることで、受信感度を上げる方式です。信号レベルの低い放送も受信できることから、電波状況が悪い当地でもトランジスタ1個で東京圏の全放送を受信出来るかもしれないと考え、製作に至りました。図1に完成した再生方式1石ラジオをの外観を示します。

(3)雑感

2. 製作するストレートラジオの構成

 再生方式は混信特性が良いとされています。その概略は図9のイメージでしょうか。放送電波は同調バリコンと共振コイルの共振現象で、2次コイルに発生した誘起電圧を増幅回路が受信信号を取り込み再生コイルに戻されます。再生コイルで誘導された磁界とバーアンテナで発生した放送信号磁界が結合して、放送信号が増加することで混信特性が向上します。ちょうど、同調コイルの[Q」が上がった形になり、混信特性が向上することになります。これまで製作した簡易ラジオでは、強い電波の放送局の影響を受けて混信することがありましたが、今回の再生方式ラジオでは混信は感じられず、再生方式の混信性の良さを実感することができました。

 図7は当地での受信状態が一番悪い、ニッポン放送の信号波形です。帰還をかけない状態では音声は認識できませんが、正帰還をかければ、ニッポン放送はかなり小さいですが音声を聞くことができます。なお、放送電力の小さいラジオ日本は正帰還をかけても音声は認識できませんでした。 TBS、文化放送は、正帰還をかければ音量は小さいですがラジオとして聞くことはできました。

図6. 正帰還量と高周波信号波形(NHK第一放送)

1)音質と音量

 再生方式ラジオは正帰還の量で音質と音量が大きく変わります。音量と音質は実感しないと分かりませんが、受信時の信号波形から作製した再生方式ラジオの音質(波形の歪)と音量(波形の高さ)を想像下さい。図6~図8に帰還量に応じた高周波信号波形を示します。なお、受信波形には人の声と音楽が合成されているので、きれいな正弦波形にはなりません。

回路基板との接続

実装ケース

同調コイルは、これまでの動作実績のあるバーアンテナに、再生コイルを新たに巻き足したものです。再生信号と受信信号が同位相となるよう、再生コイルと2次コイルの巻き方向は同じにすることがポイントです。再生コイルの最適な巻数はが分からない為、出来上がってから調整することを前提にとりあえず15回としました。なお、結果的にはいい感じで再生が掛かるようなので、巻き線数の15回は変えていません。

 これまでいくつかの種類のラジオを製作してきましたが、それぞれの方式比較できるように基本部品は極力同じものを使用しました。今回も、増幅素子はトランジスタ2SC1815Yを、高周波信号の負荷はコイル(マイクロインダクタ)を使っています。また、ポイントとなる同調コイル(バーアンテナ)は長さ135×直径10㎜のフェライト棒にポリウレタン線を巻いて自作しました。

 再生方式ラジオは受信信号を入力側(再生コイル)に戻して、共振コイル(2次コイル)の磁界と再生コイルの帰還信号磁界を結合加算して受信信号のレベルを高める方式です。図2参照、再生コイルに戻す信号は放送信号と同位相の必要があります。その為にはコイル作製時に、「再生コイル」と「2次コイル」の巻き線は同じ向きとします。こうすることで、放送信号の磁界と帰還信号の磁界を結合して放送信号を高めることが出来ます。なお、放送電波は同調バリコンと共振コイルの共振現象を利用して、飛んでいる電波から電磁誘導で電気信号を取りします。但し、取り出された信号は電波と同じで搬送波成分と音声成分からなる変調信号のままです。音声を取り出すには、この信号を「ダイオード検波回路」で変換します。

製作する再生方式ラジオの構成

 これまで作製した簡易ストレートラジオで、特に電波状況の悪い地域における受信感度と混信特性が大きな問題を感じていましたが、再生方式ラジオがこれらの問題を解決できるかもしれないということで今回の製作に至りました。今回のラジオはトランジスタがたった1石ながら、音量は小さいのですが、東京圏主要全局が受信できました。今回の工作で「再生方式ラジオ」の感度向上と混信向上を実感し、あらためて再生方式の技術にはビックリしています。また、今回の「再生式1石ラジオ」に低周波増幅を1段追加することで、実用レベルのラジオが出来るかもしれないと感じています。 今回の工作では、選局と正帰還の微調整に苦労しましたが、電波の弱いラジオを聴取する「BCL受信」を思い出し、充分楽しむことが出来ました。

図9. 放送信号レベルの増加はこんなイメージでしょうか

各ブロックの動作

2. 再生方式ラジオ ブロック構成

(3)混信特性

8. 受信波形観測の様子

 下記は当地での受信状態が最良である、NHK第一放送を受信状態で、帰還量に応じた音量と音質の信号波形を観測したものです(図6参照)。なお、出力信号の波形と回路図上の観測点を図8に示しています。受信状態はバーアンテナの向きで大きく変わりますが、波形は最良の音量状態で測定したものです。

製作まとめ

図5. 実装の様子

基板裏面(配線面)

実装

図4. バーアンテナのコイル構成

図3. 回路図

受信した変調信号を音声に変換する検波回路は、ゲルマニュウム(1N60)を2個使用した倍電圧検波で構成しています(検波回路は1個構成でも問題ありません)。また、再生バリコンはスーパヘテロダインラジオで使われる2連ポリバリコンの小さい方のバリコン(75PF)を利用しました。作製する再生方式のラジオの回路図を図3に示します。

回路構成

1. 完成した再生方式1石ラジオ

外観

内部構成