2022628

シンプルな2石ストレートラジオ製作

 音声の聞き易さを考えるとイヤホンはセラミック型ではなく、マグネチック型を接続したいところです。試験的に低周波増幅段に出力トランスを接続してインピーダンスを整合しましたが、電波状況の悪い放送局の受信時は充分な音量が得られず、やむなく、セラミックイヤホン接続としました。やはり,2石のストレート構成では増幅度に無理があるようで、もう1段の低周波増幅が必要かと思われます。なお、これまで、実用ラジオを求めて色々なラジオを製作してきましたが、製作が簡単で質的に最高な構成は「ICTA7792P)を利用したストレートラジオ」、「ICTA7792P)を利用したスーパヘテロダインラジオ」が私の中では最高と感じています。

高周波増幅

 

  AM放送は放送音声の波形に応じて、搬送波信号の振幅の変化で音声波形が伝送されます(AM変調)。 受信側のラジオでは、この搬送波信号の周波数との共振現象を利用して聞きたい放送信号を取り出しますが、電波は受信地の地形影響、放送塔との距離、他の放送局の送信電力の影響を受けて誘起電圧が変化しますが、ラジオの受信感度の向上の為には、同調回路で取り込んだ放送信号を増幅する必要があります。今回の回路では2つのトランジスタで信号を増幅しますが、1段目のトランジスタで高周波信号を、2段目のトランジスタで低周波である音声を増幅します。

作製するストレートラジオの各ブロック動作を説明します。

 作製する同調コイルとバリコンの静電容量の変化で、首都圏では図4に示す、6つの共振を発生する必要があります。巻き数の計算はフェライトコアの断面積、使用するフェライトの比透磁率、真空中の透磁率、長岡係数塔の情報等が必要でかなり面倒ですが、あまり難しいことは考えずに、Web情報やこれまでの情報を参考に、多めにコイルを巻き、実際に受信しながら巻き数を増減することで最適な巻き数を決めればよく、難しく考えることはありません。私の場合は、図7に示すデータで1次コイルはとりあえず80回巻き、受信しながら巻き数を増減、最適な巻き数61を決定しました。

製作する2石ストレートラジオの構成

 少年時代に夢中になったラジオの製作、再びのワクワクとドキドキを楽しんでいます。今回はラジオ少年の入門機ともなっている、シンプルな2石ストレートラジオを製作します。ストレート方式のラジオとしてはレフレックスラジオが部品数が少なく、しかも高感度であることを前回の製作で体感しました。今回は初歩に戻ってシンプルな2石構成のストレート方式で実用ラジオが出来るかを体感します。図1に完成した2石ストレートラジオの外観を示します。

検波回路/低周波増幅回路

 

 放送信号の波形は図5に示すように、搬送波信号の振幅変化で音声波形を運んでいます。すなわち、搬送波信号の包絡線が音声波形となっています。また、音声は正側と負側に信号が表れ、どちらかの信号を取り出せば音声となります。受信した放送信号から音声波形を取り出すことが検波回路の機能です。検波はトランジスタの働きとして片方の信号を取り出し、さらにコンデンサで搬送波の高周波成分を取り除くことで音声を取り出します。今回の回路では、2段目のトランジスタで検波と低周波増幅を実現しています。

 千葉県我孫子市の当地では、電波状況の良いNHK第一と第二は過大な音量となるのでボリュームを絞りますが、電波状況の悪いTBSやニッポン放送、文化放送はボリュームを上げないと最適な音量で聞くことは出来ず、選局に応じて最適な音量調節が必要です。但し、さらに電波状況の悪い、ラジオ日本は受信はできませんでした。 なお、外部アンテナ無しで上記放送は受信できますが、電波塔の方向によっては、電波の指向性が影響して、ラジオの向きを調整する必要があります。 やはり、AGC(自動利得制御)機能が欲しいところです。また、混信問題に関しては当然ながら、スーパヘテロダイン方式とは比較になりませんが、バーアンテナの指向性をうまく利用すれば、混信はそれほど気になりません。なお、最大感度で受信する為には、ラジオを水平位置で電波塔の方向をコイルと直角方向とします。(図11参照)

製作する2石ストレートラジオ回路

5. 検波回路の機能

11 電波塔の方向とバーアンテナ位置

 製作するラジオの回路構成は、前回のレフレックスラジオと性能比較する目的で、同じトランジスタを使用した2石構成としました。1段目のトランジスタでAM変調された高周波信号を増幅します。1段目の負荷抵抗は一般的な抵抗負荷ではなく、コイル負荷(4.7mH インダクタ)としました。放送信号から音声を取り出す検波回路は2段目のトランジスタを利用した、トランジスタ検波方式です。図6に回路構成を示します。

1. 完成した2石ストレートラジオ

 電波の中から聞きたい放送を取り出す働きが同調回路です。同調回路はバリコンとコイルの共振回路で出来ています。共振回路はバリコンの静電容量とコイルのインダクタンスが、ある関係式(図4参照)を満たすとコイルに発生する誘起電圧が高くなります。この共振現象を利用して選局機能を実現します。すなわち、バリコンの静電容量を変えていくと、図4に示す周波数で誘起電圧(放送信号)が最大となります。さらにバリコンを回していくと図に示す周波数位置で次の共振が発生し、複数の放送信号を捉えることができます。また、誘起電圧はコイルのコアとなるフェライト棒が大きいほど電圧が高くなり、受信感度が上がります。つまり、大きめなコアに導線を巻くことで、高感度なバーアンテナを構成することが出来ます。

同調回路 

まとめ

9 回路基板の様子

 実装は透明アクリル板をスペーサで挟んだ形体です(図8参照)。ポリバリコン、ボリューム、イヤホンジャックは、L字型の板に実装して、アクリル板に取り付けます。なお、ポリバリコンの軸は短い為、いっしょに市販されている延長軸を利用しました。但し、この延長軸は回転するとガタが生じる為、エポキシ系接着剤ですきまを埋めることが必要です。(下図参照)。

実装

同調コイル(バーアンテナ)の作製

2. 製作するストレートラジオの構成

 今回のラジオは同調回路で聞きたい放送を選局し、高周波の放送信号を増幅し、検波回路で高周波信号から音声を取り出し、音声を増幅するシンプルな構成です。図1に今回製作するストレート方式のブロック図を示します。

4. 同調回路の動作イメージ

10 回路基板との接続

 回路基板は5cm×8cmのブレッドボード型の汎用基板を利用すると配線が楽です。

電源スイッチ、乾電池ボックスは基板実装用を使用するとスマートに出来上がります。但し、電池の接続の為には基板の配線パターンの一部を切断する必要がありますので注意願います。完成した回路基板を図8に示します。

回路基板

8. 実装の様子

図7.バーアンテナのコイルデータと使用バリコン

図6. 製作するストレートラジオ回路図

各ブロックの動作