2022131

IC利用のスーパヘテロダインラジオ#2の製作

 放送信号は放送局毎に割り振られた周波数の搬送波で運ばれます。ラジオは同調回路で搬送波周波数に同調して希望する放送信号を取り出します。スーパヘテロダインは局毎に異なる受信信号を同じ中間周波数(455KHz)に変換して処理しますが、この変換処理が受信感度、混信(選択制)などのラジオの高性能化をもたらします。図2参照。

スーパヘテロダインの調整

 少年時代に夢中になったラジオの製作、再びのワクワクとドキドキを楽しんでいます。今回はIC「東芝TA7792」と「東芝TA7368」を使用したスーパヘテロダインラジオを作製します。このICは局部発信コイル、IFTコイル、2連バリコン、フィルタ等を付加することで簡単にスーパヘテロダインラジオが出来ます。#1は音声に雑音が乗る問題と周波数の高いニッポン放送が受信できない問題が生じました。雑音問題は小さな基板に高周波部分も低周波部分も無理やり詰め込んだことが原因と思われ、今回は基板を付加して余裕のある構成とします。また、選局の微調整が容易なバーニヤダイヤルを実装し、前回と同じ回路構成で#2ラジオに挑戦します。 製作結果は、同調コイルの巻数を調整した結果、NHK第一からニッポン放送まで首都圏の放送をすべて受信でき、スーパヘテロダイン品質の受信感度、選択性、音質、受信安定性(AGC)が発揮されたラジオが出来上がりました。完成したAMラジオの外観を図1に示します。

まとめ

 前回製作したスーパラジオでは音声に雑音が乗る問題と周波数の高い放送は文化放送までしか受信できない結果でしたが、今回は基板を追加し余裕のある実装とした為、雑音は無くなりました。また、前回は周波数の高い放送はTBSまで受信できませんでしたが、同調コイルの巻き数を10回減らして72回とした結果、ニッポン放送まで受信できるようになり、受信感度、選択性、音質、受信安定性(AGC)など、さすがス-パヘテロダインの品質であることを実感しました。 このラジオはTA7792P(チューナ部)とTA7368P(電力増幅部)のたった2個のICに、IFTコイルとOSCコイル、2連バリコンを付加することで市販ラジオ相当のラジオが出来上がりました。

 完成後、配線をチェックして電源をいれたところ、首都圏のAM放送局(NHK第一から、ニッポン放送ま)は同調がとれました。ダイヤルの目盛り位置と受信周波数位置の対応を気にしなければ、高感度で混信もなくクリアな音声で受信出来ました。

但し、ニッポン放送は当地我孫子市からは電波状況が悪い為、バーアンテナの向きを動かし(バーアンテナは水平位置で、放送塔とは直角方向が最大感度です)て受信しています。なお、送信塔が神奈川にあるラジオ日本は受信出来ませんでした。 

充分なトラッキング調整もなく、ほとんど無調整で満足な結果が得られたことを付け加えておきます。

1)周波数の低い局(NHK第一)を選局した状態で、OSCコイル(赤コイル)の調

   整ネジを回して音量最大に設定。

2)周波数の高い局(ニッポん放送)を選局して、バリコンのOSC側のトリマー

   コンデンサを回して音量最大に設定。

3)上記(1)(2)を繰り返して最適な状態にする。

4)バリコンのアンテナ側のトリマーコンデンサを回して音量最大に設定。

5IFT(黒コイル)を回して音量最大とする。

OSCコイルは2連バリコンのOSC側(60pF)に接続され、受信信号周波数に応じた正弦波を発生します。なお、OSCコイルもスーパ用の2連ポリバリコンに調整されていますので、一般的には調整する必要は無いと思います。

3 オッシレータ(OSC)コイルの調整

2 IFTコイルの調整

1.局部発信周波数の調整

下記図(A)はアンテナ受信周波数と局部発信周波数の関係をバリコンの回転を横軸に示した図です。局部発信では受信信号より455Khz高い信号の作成が必要ですが、実際は両信号は同じように変化しません。「トリマ」はアンテナ受信信号の変化と局部発信信号の変化を合わせる容量調整です。この調整をトラッキング調整と呼ばれますが、ダイヤル目盛りと受信周波との微調整を行います。なお、このラジオでは目盛りと受信周波数の対応は無視しています。

 スーパヘテロダインの調整はラジオの性能を大きく左右しますが、ポイントは放送信号を中間周波数(455Khz)に変換の為の局部信号発振と変換された信号の共振回路の調整がポイントです。以下にスーパヘテロダインの調整箇所を示します。図10参照。

8. 同調コイルの構成

 同調コイルの巻き数は共振回路を構成するバリコンの容量で異なります。今回入手した2連バリコンの容量はアンテナ側が(160pF)、OSC側が(60pF)です。同調コイルの巻き数は2連バリコンのアンテナ側(160pF)との共振回路を構成しますが、NHK第一からラジオ日本までカバーできるインダクタンスが必要です。巻き数の計算は面倒なので、前回作製したコイルデータを参考にとりあえず巻いて、実際に放送を受信しながら最適な巻き数を決定しました。最終的な同調コイルのデータを図8に示します。

バーニヤダイヤル

 つまみを360度回すと軸は

 90度回転します

7. 回路基板構成

 前回の製作したラジオでは音声に雑音が乗るという問題が発生しましたが、要因は小型汎用基板(8×5㎝)に高周波部分も低周波部分も詰め込んだことが原因と考へ、高周波部分の基盤と低周波部分を分離して余裕の配線としました。なお、追加基板は市販アンプキット(3×4㎝)を利用しました。回路基板の構成は図7参照。

製作のポイント

3.スーパヘテロダイン動作フロー

スーパーヘテロダイン方式のポイント

 ラジオの性能は、受信感度、混信(選択度)、音質、受信安定度等が指標とされていますが、スーパヘテロダイン方式は感度向上と混信問題の解決手段とされています。ストレートラジオは放送周波数のままで増幅と検波の一連処理を行ないますがスーパヘテロダインは受信した放送信号の周波数とは別の中間周波数に変換する為、増幅を重ねても信号の回り込みも無く、増幅度を上げることが可能となります。さらに、放送局毎に異なる放送信号を同一の中間周波数に変換することで、混信信号のフィルタリング除去が容易となり混信問題の解決を図ります。 図2にスーパヘテロダイン方式のブロック構成図を示します。 


11. スーパヘテロダインラジオ#2とスピーカ

中間周波数に変換された受信信号は共振回路で構成されたIFTコイルで増幅を行います。調整はIFTに455Khz信号を入力しレベルが最大となるようコア(黒色)でコイルの容量の容量を調整します。なお、市販されているIFTは出荷時に455Khzで共振するように調整されていますので、一般的には調整する必要は無いと思います。

9. 基板と実装部品のソケット接続

2. スーパヘテロダイン方式のブロック構成図

1. ICを利用したスーパヘテロダインラジオ#2

調整が必要な場合の具体的調整手順(私の場合は調整不要でした)

スーパヘテロダインラジオ 調整のポイント

 セラミックフィルタは圧電効果を利用したフィルタです。中心周波数が455Khzの信号を通過させるフィルタを使用して混信の原因となる455Khz以外の信号を除去します。ここではムラタ製 SFU455Bを使用しました。参考に回路記号と部品のピン対応を図6に示します。

 IFTコイルとOSCコイルの取り付けピンは回路基板の穴位置と異なる為、回路基板を多少の加工が必要です(図5参照)。 両コイルは回路基板の中央部実装しますが、コイルの2ピン位置に23㎜程のバカ穴をあけて取り付けます。また、4角の1346ピンも穴位置が少し異なる為、コイルのピンを外方向に広げて挿入します。

 スーパラジオの調整はテストオッシレータ等のテスト信号発生装置が必要となりますが私にはこれらの機器が無い為、放送信号を受信しながら音声を頼りに調整します。但し、IFTコイルとOSCコイルは部品単体で調整済で出荷時にされており、2連バリコンはトラッキングレスバリコンと言われるものを使用することで、調整する必要は無いかもしれません。むしろ調整済の部品を使用することで調整の簡易化、あるいは調整不要を体感することが今回の目的でもあります。

セラミックフィルタ

IC利用スーパーヘテロダインラジオ#2 回路図

スーパーヘテロダイン方式の流れ

10. スーパヘテロダイン調整のポイント

6. セラミックフィルタ

5. 回路基板の加工

IFTコイルとOSCコイルの外観    

バーアンテナ

OSCコイルとIFTコイルの実装

図4 IC使用 スーパヘテロダインAMラジオ 回路図