202157

フェライト棒

8mm×160mm 4本束

1次コイル:32回

2次コイル:5回

268μH

2石ストレートラジオの製作

同調回路(選局)のしくみ

 少年時代に夢中になったラジオの製作、再びのワクワクとドキドキを楽しんでいます。前回は大きなループアンテナで方鉛鉱を検波に使った鉱石ラジオを作りましたが、電波状況の悪い当地では充分な感度が得られず、結果として高周波信号を増幅したストレートラジオとなりました。 今回は大きなフェライト棒を4本束ねたバーアンテナで高感度化と受信安定化を狙った2石ストレートラジオを作ります。さらに、電力増幅ICでスピーカとダイナミック(マグネチック)イヤホンの接続も可能とします。 図1に完成したストレートラジオの様子を示します。

バーアンテナは水平位置で放

送塔の直角方向が最大感度

自作バーアンテナ使用時の受信音声波形

 p-p 電圧:600㎷ 

*スイッチは、テストの為にラジオ本体と電力増幅ICの電圧を

  分離する為のもの。

フェライト棒4本の

バーアンテナ

市販バーアンテナの受信音声波形

 p-p で電圧 :200㎷

図3. 2石ストレートラジオ回路図

電力増幅IC

2石ストレート方式

 図4の共振回路の共振周波数はバリコンの静電容量とコイルのインダクタンスが下記関係式で示されます。共振回路に使用するバリコンとコイルは、放送局毎に割り振られた搬送波周波数(首都圏のAM放送は図4の周波数)で共振する必要があります。その為、バリコンは上記共振周波数をカバーする容量変化が必要ですが、市販のAM用バリコンを利用すればカバーできます。私はジャンク屋さんで購入した可変範囲が20pF350pF(実測値)の2連バリコンを使用しました。

電波

 バーアンテナではフェライトコイルの断面積が大きく、コイルの長さが長いほど感度が大となります。実際の受信テストでは明確な感度差があらわれました。

今回製作した自作バーアンテナコイルの受信音声波形と、市販されている小型バーアンテナコイルの受信音声波形を比較しました。 測定結果では自作バーアンテナ接続時の出力音声は p-pの電圧は約600㎜V、小型市販バーアンテナ接続時の音声は p-pの電圧は約200Vという結果で、最良受信状態では両者の感度は3倍程度の差が生じています。また、小型バーアンテナでは受信できない局があったことを付け加えておきます。

自作バーアンテナ使用

時の受信音声

市販バーアンテナ使用

時の受信音声

今回、工作を楽にする為にスピーカを直接基板に実装しましたが、やはり音質は物足りない結果となりました。なお、電力増幅部は3Vで駆動しましたがパワー不足で、駆動電圧は9Vは必要かと思います。完成したラジオの様子を図7、図8に示します。

ラジオ本体の製作

このコイルの巻き数を調整

使用フェライト棒

10mm×160mm 4本束

自作バーアンテナ:

 1次コイル:32回

 2次コイル: 5回

0.6Φポリウレタン

(参考)

市販バーアンテナ

6mm×30mm

フェライト棒

 次のステップは、このインダクタンス( 268μH)を実現するコイルの巻き数の計算です。バーアンテナのインダクタンスはコイルの巻き数、コイルの断面積、コイルの長さ、真空中の透磁率、フェライトの比透磁率、長岡係数の関数となり、計算はかなり面倒です。 

参考になるデータが無いかとインターネットを探した結果、フェライトコアに実際に導線を巻いてインダクタンスの実測した方の情報がWebに載っており、このデータを有難く使わせて頂きました。 Webによると、私のフェライトに近い条件では、巻き数は40回とのことでした。 試作は多めに50回巻き、放送を受信しながらコイルをほどいていき、最適な巻き数に調整しました。つまり作製時の巻き数はいい加減でよいことになります。

 

最終的なバーアンテナは、共振に必要な1次コイルは32回、放送信号を取り出す2次コイルは、5回巻きました(図3参照)。また、コイルに巻く導線は直径0.6mmのポリウレタン線を使用しました。完成したフェライトバーアンテナと比較の為に市販バーアンテナを図5に示します。

 コイルは低い周波数でNHK第1が、高い周波数でラジオ日本が共振できることが必要です。計算では余裕をもたせて、520KHzから共振可能範囲に入るインダクタンスを算出します。具体的には、上記の関係式の「C」にバリコンの最大容量(350pF)を、共振周波数には520KHzを代入し、「」を未知数として、この方程式を解くとコイルのインダクタンスが求められます。なお、インターネットにはバリコンの容量と共振周波数を入力するとインダクタンスが計算できる、便利なWebが掲載されています。計算結果ではコイルのインダクタンスは268μH となりました。 また、市販AMバリコン使用を前提にすれば、268μHのコイルで高い放送局の共振周波数も可変範囲内に収まるので、ラジオ日本まで受信できるはずです。 

AM局をカバーするインダクタンスの計算

 空中を飛んでいる電波の中から、聞きたい電波を選択する機能が同調回路です。放送を運ぶ搬送波の周波数が共振回路のバリコンの静電容量とコイルのインダクタンスが、ある関係式が成立するとコイルに発生する電圧は高くなります。これが共振現象ですが、この現象を利用して特定の周波数の放送信号を選択することが出来ます。首都圏のAM放送局と共振のイメージを図4に示します。

共振回路コイルのインダクタンス

共振周波数(KHz)=

L:コイルのインダクタンス(μH:マイクロヘンリ)

C:バリコンの静電容量(pF:ピコファラド)

π

・上記電圧波形は受信音声の増幅後波形(同ス一ケール)の出力比較を示しています。 

スピーカ

バリコン20p~350㎊ 

ブレッドボード

パターン基板

フェライト棒

図7 完成した2石ストレートラジオ内部

図8 完成した2石ストレートラジオ外観

ストレートラジオの問題としてスーパーヘテロダイン方式に比べて分離の悪さが指摘されていますが、指向性を考慮して最適な方向に向けて受信すれば、混信は気になることはありません。これなら、簡単なストレート方式でも実用的なラジオになると考えています。バーアンテナラジオの最大感度位置を図9に示します。

 今回のラジオ製作は大型のフェライト棒を使って、高感度と指向性に対する安定受信がテーマでした。 結果、耳で聞いた受信感度は明確に向上しました。バーアンテナラジオは指向性の為、アンテナの向きを変えると受信状態が変化します。特に、小型のバーアンテナでは、わずかな方向変化で音量が大きく変わります。 今回の自作バーアンテナではアンテナを動かしても受信状態の変化も少なく、安定性も感じられます。また、このバーアンテナは感度も高いことから、電波状況の悪い当地でもゲルマニウムラジオで実用音量で聞こえるかもしれないと、テストしましたが残念ながら実用レベルの受信はできませんでした。しかし、簡単な2石のストレートラジオ方式でも、NHK第一からニッポン放送まで充分な音量で聞くことができました。

大型バーアンテナの効果

 ラジオ本体は高周波増幅、検波回路と低周電圧増幅の2石のトランジスタが搭載された本体ボードとスピーカを駆動する電力増幅ボードから構成されています。なお、本体ボードだけでもセラミックイヤホンで受信音声を聞くことが出来ます。このラジオは部品数が少ないので、一般的な汎用基板で出来ますが、図に示すブレッドボードと同じパターンの基盤を利用するとらくにボードを組み立てられます。

調整ではバリコンの軸を左いっぱいの位置でNHK第1が受信できるように、右いっぱいの位置でラジオ日本が受信できるようにします。ただし、ラジオ日本は送信電力が小さいので、地域によっては受信できないかもしれません。

図6 コイルの巻き数調整の様子 

セラミックイヤホン

バリコン

回路図

端子ラジオボード 

三端子ラジオIC 

バリコン

20350
バーアンテナコイル

コイルの巻き数調整

 コイルの巻き数は、Web情報を参考に50回巻きましたが、最終的には実際にラジオを受信して決定します。 電波が強ければ、コイルにバリコンとダイオードとセラミックイヤホンを接続すれば聞こえるかもしれませんが、当地は電波状況が悪い為、通称「三端子ラジオIC UTC7642」を使用してラジオを作り、完成したバーアンテナを接続してコイルの巻き数を調整しました。図6にテスト中の様子と三端子ラジオICを使ったラジオの回路図を示します。

図5 自作バーアンテナと市販バーアンテナ

インダクタンスを実現するコイルの巻き数

バリコンの静電容量を変化していくと下記の6つの周波数で共振が発生し、コイルに誘起される電圧が高くなります。この高くなった電圧を放送信号として取り込みます。   

大型バーアンテナと市販小型バアンテナの受信比較

放送局アンテナ

中波電波塔

図4.共振現象と選局の仕組み

バリコン

コイル

フェライトバーアンテナ

NHK第1

594kH

NHK2

693kH

TBS

954kH

文化

1134kH

ニッポン

1242kH

ラジオ日本

1422kH

静電容量小

静電容量大

バリコン回転軸

共振周波数

放送信号

電圧

誘起電圧

共振回路(同調回路)

共振回路

高周波増幅

検波

低周波増幅

電力増幅

スピーカ

スピーカを駆動する音声信号

増幅

増幅

音声

音声

音声

放送信号

AM変調

音声を運ぶ搬送波 例えばNHK1594kHz

1. シンプルな2石ストレートラジオ

図9 コイル断面積の違いによるコイル感度の比較 

ラジオバーアンテナ

アンテナの方向

ブロック構成

図9 バーアンテナの最大感度

水平位置

 ラジオ少年にとって、ストレートラジオはゲルマニウムラジオ製作の次のステップにあたります。このラジオは受信した周波数のまま高周波増幅、検波と低周波増幅するシンプルな回路方式です。図2に今回作るラジオのブロック構成を図3に回路図を示します。

2. 製作するストレートラジオの構成