2022425 改版

 鉱石検波器は方鉛鉱や黄鉄鉱の結晶に金属針を接触すると生じる整流作用を利用しています。現在は鉱石に代わってゲルマニュームダイオード等が利用されますが、昔、主流だった鉱石検波器を体感する為に、方鉛鉱を利用した検波器を自作しました。

図6に、作製した検波器の断面図を、図7に完成した方鉛鉱検波器の外観を示します。

ループコイル枠

鉱石検波トランジスタラジオの製作

大型ループコイル(30cmスパイダコイル)の効果

 大型コイルを同調コイルに使用することで、電波状況の悪い当地でも増幅なしのゲルマニュウム検波でも受信できることをと期待しましたが、残念ながら音量は小さく実用ラジオには程遠い結果でした。それではと、高周波増幅を1段付加すると、電波の悪いニッポン放送も音量は若干低いものの実用レベルで受信できました。外部アンテナを接続せずに、首都圏の全放送局を受信出来たことは大型コイルの効果と思われます。出力の低いラジオ日本以外は受信出来ますが、ちょっと物足りない状況です。

ダイオード検波、2石トランジスタラジオの受信感度

 余裕の実用レベルとする為に、高周波1段増幅と低周波1段増幅の2石構成(図2参照)とすると充分な音量発揮できます。また、混信に関しては、聞きたい放送局のアンテナ方向にループコイルを向ける(図10参照)ことで、意図しない混信は減少し、気にならなくなり、実用ラジオとしても合格と思います。 但し、ラジオ日本は送信出力が低く聞くことが出来ません(市販のスーパラジオでも受信はできません)。


鉱石検波器の体感

 以上は検波器にゲルマニュウムを使用しての結果ですが、次に、2石トランジスタ構成で方鉛鉱検波器で受信テストを行いました。点接触する位置と力の加減で受信音量は異なりますが、ラジオ日本を除けば満足な音量で聞くことができました。 また、方鉛鉱検波器とゲルマニュウム検波の感度の差ですが、方鉛鉱検波器はゲルマ検波の2~3割ほどの音量は小さい気がします。但し、鉱石検波器はショックを与えると受信音量が変化すること、数日経過すると、鉱石面の接触状態が変化する等の受信安定性が問題です、やはり、ガラス封入されたゲルマダイオードは優れています。 

 構造上の配慮点は、針の点接触のスイートスポットが容易に探索出来ること、点接触の圧力は容易に調整できること、針の接触圧力は外部ショックに対して安定した力で接触出来ることが重要です。具体的には針は上下方向に移動し微調整が出来る構造で、平面方向は鉱石を左右に自在に移動でき、点接触の最良の点を探すことが出来ます。図6に断面構造を示します。

 巻き数算出は、受信する最低周波数、バリコンの最大容量、コイルの形状と寸法を入力します。具体的には、受信最小周波数を594KHzNHK第一)、バリコン最大容量を680pF(ジャンク屋さんで購入した2連バリコン)、コイル形状は30cmはの四角形を入力すると、計算結果は巻き数;28回が出力されました。この値は計算上なので実際とは多少異なります。コイル枠に多めに30回巻いて、実際に放送を聞きながら、巻き線を減少しながら、予定の放送局が受信できるかを確認して最終巻き数を決定します。なお、計算上は28回でしたが実際の受信結果から、17回がベストな巻き数となりました。 以上の巻き数は1次コイルの巻き数ですが、誘起電圧をインピーダンスの低いトランジスタで受ける為、1次コイルへの影響を考慮して2回巻いた2次コイルから高周波信号を取り出します(図3参照)。巻き線の様子を図5に示します。

 同調回路には、6つの共振周波数を(図2参照)カバーできる、バリコンの静電容量とループコイルのインダクタンスが必要です。 コイルに必要なインダクタンス値は面倒な計算が必要ですが、Webに掲載されているプログラムを利用すれば容易にコイルの巻き数が計算できます。今回も算出プログラムを利用させて頂きました。

 多くの電波を捉える為には、コイルの断面積が大きいことが有利となります。その為、30cm四方のコイル枠にします。また、スパイダーコイルにすることで、浮遊容量少なくすることが出来ます。コイル枠は厚さ7mmのシナベニアを利用して、板の周りに糸鋸でミゾを切り、このミゾに導線を巻きます。1周のミゾ数を奇数個にして、ミゾを2におきに導線を表と裏に交互に巻いていくと導線は蜜に隣りあうことなく、線間の浮遊容量を減らす効果があります。また、高周波電流は導線の表面を流れる性質がある為、太目の導線(0.6mmポリエレタン線)を使うと電流が流れる表面が広がる為、コイルの抵抗が減少します。図4に完成したスパイダーコイルを示します。

 電波状況の悪い地域や室内でも使えるようにした、鉱石(方鉛鉱、ゲルマニュムダイオード)検波方式の2石トランジスタラジオです。構成は、大型ループコイルの共振回路で発生した誘起電圧(音声が乗った高周波信号)は1段目のトランジスで増幅され、鉱石やゲルマニュームで構成された検波回路で音声が取り出され、2段目のトランジスタで充分な音量に増幅されます。図3に作製する鉱石検波トランジスタラジオ回路図を示します。

鉱石検波トランジスタラジオ回路図

 少年時代に夢中になったラジオの製作、再びのワクワクとドキドキを楽しんでいます。鉱石ラジオやゲルマニュムラジオは電波のエネルギーで、ラジオの電源が無くても放送を聞くことが出来ます。大型のループアンテナコイルを同調コイルに使うことで多くの電波を捉え、実用に耐えるラジオの完成を期待して、鉱石ラジオの製作を開始しました。しかし、電波状況の悪い地域では実用に耐える音量での受信は難しく、高周波信号を増幅せざるを得ず、出来上がったラジオは、「鉱石検波トランジスタラジオ」となりました。今回は、少年時代に経験できなかった、方鉛鉱を利用した鉱石検波を体感することも今回の大きなテーマです。図1に 完成した鉱石トランジスラジオの外観と自作した鉱石検波器を示します。

まとめ

図9. ループコイルに実装し回路基板

図8. 回路基板と鉱石検波器

 回路基板は5cm×cmブレッドボードと同じパターンの汎用基板を利用しました。図8に出来上がった回路基板を示します。ラジオの動作確認の過程で、検波素子として、鉱石検波器でもゲルマニュームでも容易に接続できるように、コネクタ接続しています。図8に完成した回路基板、図9に回路基板をループコイルに実装した様子を示します。

回路基板と実装

鉱石検波器

ループコイルの巻き数

図4. ループコイル枠の様子

コイルの角の様子

図3. 鉱石検波トランジスタラジオ回路図

 ラジオ受信の流れは、コイルに誘起される搬送波信号は増幅され、検波回路で搬送波信号から音声が取り出します。検波回路は鉱石やゲルマニュウムダイオードの持つ整流作用で半波信号に変換後、搬送波の高周波成分を除去すると音声成分を取り出すことが出来ます。この電圧でセラミックイヤホンの震動板を駆動することで音声に変換されます。(図2参照)

 電波を捉える仕組みは大型ループコイルとバリコンで構成される共振回路です。すなわち、バリコンの静電容量とコイルのインダクタンスが、ある関係式を満たすとコイルに発生する誘起電圧が高くなります。この共振現象を利用して聞きたい放送信号を選択します。 例えば、首都圏ではNHK第一は594KHzで共振が発生、さらにバリコンの容量を上げると、次は693KHzではNHK第二が共振します。ループコイルはこのように、6つの放送局の共振周波数をカバーするインダクタンスとバリコンの容量が必要となります(図2参照)。

鉱石検波トランジスタラジオの構成

1. 鉱石検波トランジスタラジオの外観

鉱石検波器

鉱石検波トランジスタラジオ

10 ループコイルの最大感度

図6. 鉱石検波器構造

図7. 鉱石検波器写真

図5. ループコイル枠と巻き線の様子

2. 鉱石検波トランジスタラジオの構成