電気式ボイラー

 電気ヒータ方式ではボイラー本体はそれほど高温にはならないと想定し、今回は簡単に作ることを重視して、強度には問題がありそうですが半田付けで組み上げることとしました。 また、作りやすさから箱型としていますが、側面が平面となる為、圧力で膨らむことが気になります。 ボイラー内部にはヒータを取り付けますが、ボイラー上板に取付け口が必要となる為、ヒーター実装後に天板をビス止めで取り付け口を塞ぎ、ボイラー内の機密をはかる必要があります。 製作上、半田付けの熱で上板(天板取り付け部)が歪みで曲がらないよう、慎重な半田付けが必要です。 なお、上板と天板の密着性を高めるため、厚さ1mmのシリコンゴムをパッキンとして使用しています。 

栓を回すハンドル

ヒータ取付け口

ボイラー側板

天板を取り付ける雌ネジブロック

電気式ボイラーを試作しました
バルブシリンダー 

天板取付ネジ

図3 ボイラー本体部品

ワッシャ

回転軸からの蒸気漏れを押える

Oリングとワシャ

6mmΦネジ

パッキングとワッシャーを押さえる

ナット状の押さえ(六角棒から自作)

蒸気口を塞ぐ円錐状の栓

うずまき外径:56mm高さ:40mm

図4 ボイラー本体組立

スイッチ等の防滴フード

  水

(約500cc)
90m
104mm
104mm
電気式ボイラー 仕様

 手軽に蒸気エンジンの運転が楽しめるようにと電気式ボイラーを試作しました。 電気式では発生する蒸気圧が低いこと、必要な蒸気圧を得るまで時間を要するという懸念がありますが、取り扱いが容易で気軽に使えることに魅力があり、今回はその能力を知ることを主目的に製作したものです。 ボイラーの仕様は、熱源となるヒータは500W、連続運転は20分程度を想定して水容量約500CCとしました。 試作した電気式ボイラーの外観を図1に、外形図を図2に示します。

 次に、さらに蒸気が必要な2気筒のエンジンで同様な測定をしてみました。 エンジンは「2気筒複動式エンジン#3(ボア12mm、ストローク12mm)」を使用しましたが、最大回転時に0.7気圧を示しており、回転状態を見る限り、2気筒エンジンに対しても充分な蒸気を供給できる能力があることを示しています。

また、ボイラーに何も接続しない状態(内径2mmΦのパイプを介して蒸気排出状態)、いわば無負荷状態では0.7気圧の蒸気圧を示しました。 電気式ボイラーは当初、そのパワーに懐疑的でしたが、テストしてみると、小型エンジンにおいては充分なパワーを発揮することがわかり、気軽に蒸気エンジンの運転を楽しむ環境として最適であると考えています。

 完成した電気式ボイラーの能力を調べるにあたって「単気筒複動式エンジン#4(ボア12mmストローク14mm)」を接続し、最大回転時の蒸気圧を計測しました(図14参照)。 ボイラーに約500ccの水を注入して運転を開始すると4分程度で沸騰音が聞こえ、バルブを開けるとエンジンは回転を開始、この時の蒸気圧は0.2気圧を示していました。 間もなく蒸気圧は0.7気圧に上昇し回転は最大となり、圧力は飽和状態となりました。 この時は回転軸を指でつまんでも止められない程の充分な力が発生しているようでした。 

 過去に製作したアルコール式ボイラー(#5エンジン用ボイラー)で同等仕様のエンジンを接続した時には蒸気圧が0.3気圧であったことを考えると、今回の電気式ボイラーではその倍以上の蒸気量を発生していることになり、体感的にも充分な蒸気パワーを有していることが感じられました。

 今回は電気式ボイラーの試作ということで、ボイラー本体を半田付けで製作しましたが、やはり、水量が減少した空焚き状態では懸念した通り、天板の蒸気調整バルブの半田部分の溶融が発生し、熱と強度面に問題があることが顕在化しました。 安全のためにバイメタルのサーモスタットを付けていましたが、残念ながら働くことはありませんでした。 もくろみではボイラー内温度が120度で切断するはずでしたが、サーモスタットの取り付け位置が悪かったのではないかと思っています。 空焚きの防止については電気式の利点を生かし、タイマーで電源を切るという方法も考えられます。 これでボイラーは電気式であっても主要構造物は銀ロウ付けをすることは必須であることが明確となりました。 また、試作では簡単に作ることを重視しハコ型としましたが、平面部分は圧力に弱い為、円筒型にすべきであったと考えています。

運転状況の動画 

クリックすると動画サイトにジャンプします
完成した電気式ボイラーの外観を図13に示します。
製作結果

ネオン管

ヒューズ(7A)

ヒータ(500W)

収縮チューブ

 ボイラー下部が電気系統の部品実装と配線スペースとなっています。 部品と線材はボイラー空焚きによる温度上昇を考慮し、熱に強いものを選択する必要があります。 特に側面に触れても熱で融けない絶縁材やプラスティック材であることが必要です。 ボイラーが過熱しすぎない対策として、バイメタルによるサーモスタットを使い、側面温度が120度に達すると電気を切断する仕掛けを組み込みました。 また、当然ながら使用する線材と電源コードは充分な電流容量(7A程度)を有することが必要となります。 ボイラー下部から見た配線の状況を図13に示します。 

電気系統

蒸気口

Oリング

ナット

図8 蒸気調整バルブ断面

パッキング(シリコンゴム)

栓が回転する6mmΦネジ

8mmΦネジ

蒸気入口

蒸気パイプを押えるナット

状の押さえ(六角棒から自作)

蒸気出口

安全バルブ

蒸気圧計

 安全バルブはボイラー内の蒸気圧が過剰に上昇しないように、ある圧力に達した時に蒸気を排出するものです。 構造は図12に示すように、蒸気口をボールベアリングをバネの力で押える構造になっており、蒸気圧がバネの力より勝るとボールベアリングが持ち上げられ、蒸気口より蒸気が排出される構造です。 安全バルブの構成部品を図11に示します。

 ボイラー上部(天板)の実装を図7に示します。 蒸気調整バルブは図8に示すよう、上部のハンドルで円錐状の栓を動かし、蒸気口を塞ぐ構造となっています。 ハンドルを回した時、回転する軸のすきまから蒸気漏れが無いよう、ナット状の押さえ金具でOリングを押さえています。 なお、バルブを閉めると蒸気の排出が抑えられ、ボイラー内の気圧は上昇するので扱いには注意を要します。 調整バルブの主要部品を図9に、組み上がった調整バルブの外観を図10示します。
蒸気調整バルブ、安全バルブ、蒸気圧計

底板取付けリベット

上板取付けリベット

圧力計等を取り付ける天板

ボイラー上板(ヒータ取付け口)

ボイラー底板

構成
蒸気調整バルブ
圧力計
50mm
ヒータ(500W)
70mm
Lump
Fuse
SW
35mm
93mm
安全バルブ
蒸気口
90mm
500W うずまき型シースヒータ
図1 電気式ボイラー外観
縦90mm×横90mm×高さ130mm
外形寸法
熱源
567cc
ボイラー容量

問題点

単気筒複動式エンジン#4の運転状況の動画を下記サイトでご覧ください。

図14 #4単気筒複動式エンジン 運転の様子
図13 試作したボイラー外観
図13 ボイラー上部の様子

スイッチ

サーモスタット

図11 安全バルブ部品
図12 安全バルブ断面

蒸気

8mmΦネジ

8mmΦネジ

6mmボールベアリング

スプリング

図10 蒸気調整バルブ外観
図9 蒸気調整バルブ部品

パッキング(シリコンゴム)

図7 ボイラー上部の実装状況

蒸気調整バルブ

水注入口

図5 シースヒータ(500w)
図6 ボイラー内部
 ヒータは水加熱用の500Wのシ−スヒータを使用しました(秋葉原坂口電熱で購入)。 このヒータはそのまま水中に取り付けることが出来る為、簡単で効率の良いボイラーを構成できます。 使用したヒータの外観を図5に、ヒータを取り付けた様子を図6に示します。

スイッチ等の取付け穴

 ボイラーの主要材料は0.5mm真鍮板(天板は1mm真鍮板)を使用、側面に底板と上板をリベット止めし、その上から半田を流します。 また、電気部品は底板下部に実装しますが、部品取り付けの隙間から水滴が入ることが考えられる為、操作部には防滴のフードを設けています。 また、ボイラーの熱を逃がさない為に、および半田付けでボコボコになった側板を隠す為に外側を板で囲います。 ボイラーの主要部品を図3に、ボイラー本体を組立て後の外観を図4に示します。

図2 電気式ボイラー外形図
(側面)
(正面)
(上面)
圧力計
水注入口
蒸気調整バルブ
90mm
104mm
36mm
パワーシリンダー
76mm 
調整バルブ
70mm
36mm
クランク軸
34mm
113mm
フライホイール
50mm
85mm