すべては突然やって Everything Comes Suddenly

ごあいさつ

毎回、公演に向かうときは、なんらかの高揚感が生まれてくる。今回はふと気づくと、2002年にドイツ公演(カンプナーゲル・サマーフェスティバル、ハンブルグ)に向かっていった時のそれとよく似ている。あのとき、前年の「9.11」を目の当たりにした底知れぬ無力感の中、表現をするという行為自体を自ら切り崩しながら、“今、ここ、に居続けること”だけを動機にもがいていたように思う。そして今、5年前の東日本大震災とそれに引き続く福島原発事故。原発建屋からもくもくと上がる黒煙・白煙。起こるはずがなかった「煙」、あのときも感じていた起こるはずない「煙」。その「煙」が火種は違えど今世界中のあちこちで上げられはじめているのだ。そんな今、舞台の立ち位置をどこに定めればいいのか? そう強く問われている。あのときは、ただもがくしかできなかったわれわれにも10数年がたった。無数の「煙」の息苦しさとともに“今、ここ”を見つめる覚悟が少しずつ出来てきたように思う。とりわけ今回は、韓国からの他者を迎えることで、今、ここ、という「現在」が決して一つでないことがより鮮明に意識される。刻々と進む時間の流れの中、遠近の無名の生に焦点が合うもズレるも、それもひっくるめて多様な「現在」が見えてくればいい―――

作業をともに続けてきた出演者たち、今回くしくも劇団創立30年を迎えかけつけてくれた旧メンバー、新たな空間を用意してくれたスタッフ、そして最後の仕上げになる公演会場にお越しいただいた観客の皆様全員に感謝しつつ、舞台を迎えます。

公演後、会場にて短い時間ではありますが、お客様からのご意見、ご質問などお聞かせ頂けましたら幸いです。是非お残りいただき、アフタートークにご参加くださいますようお願い申し上げます。

劇団DAM 代表 大橋宏

 

    舞台内容----
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  前景  中島彰宏・原田拓巳・小椎尾久美子・백대현 Baek,Dae Hyun・최세희 Choi,Se Hee・곽민아 Kwak,Mina

1 いま、ここ、いま、あそこ/だまる、だまらない、だまれない、だまる
2 脱色した風景の中で
3 意地と恥さらし/踊らされてやる
   ※使用言語 テレビCMより/“ラブミーテンダー”の本人替え歌
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  後景 1 サキ 引用テキスト本人構成

・ 李静和『つぶやきの政治思想/求められるまなざし・かなしみへの、そして秘められたものへの』より抜粋の一節
・ Archana Kumar (ダンサー、バングラデシュ) から寄せられた本人テキスト「女の声、インドにて」
・ 石原吉郎詩集から抜粋の一文
・ 早稲田「新」劇場座付作家、吉井仁志の私信から抜粋の一文
・ ベケット『ゴドーを待ちながら』から抜粋の一文
・ 他、本人構成
Motif 1 “I”

2 渡部美保 使用テキストは本人構成

Motif 1  また朝がくる Get up
Motif 2  振動する Beat (Run away from Iron gate)
Word 1  思い出す Rememberingー匂いの記憶 Memories of smell

3 홍승이 Hong SeungYi  使用テキストは本人構成

Motif 1  Wing 故郷の記憶「渡り鳥」
Motif 2  Mama 世界大戦と戒厳令時代を生きながら私を育ててくれた祖母と母の記憶
Word 1  大病の後の「日記」から
Word 2  祖母の葬式の記憶と心の中での母との対話「感謝とお詫び」