完成シリーズに臨むにあたって(大受生向け)

目標=入試問題を自力で解く
ここで大事なのは,世界中の誰も解けていない「数学の未解決問題」ではなく,「大学入試合否判定用に作られた問題」,つまりすでに「誰か」が解いてしまっている,解けるように作られている問題を解けばよいという事実です.つまり「入試問題を解く」とは
 作問者と同じ考えを共有すること
なのです.(この部分は,昔お世話になった先生のまねっこです)
その「誰か」とは・・・言うもでもなくその問題の作成者です.そしてその「作成者」が,「高校入試」までの「教育者」から,「大学入試」では「学者さん」に変わります.ここが「大学入試」のポイントです.
「受験生」と「学者さん」が共有できるものって何でしょう?もちろんそれは“受験のための解法テクニック”などであるはずがなく,知性ある人間の多くが興味を抱く数学的現象とか,数学における何らかの基本原理しかありません.だから,受験生のとるべき態度も自ずと決まってきますね.
 あるがままの現象をまっすぐに見つめよう.
 基本にさかのぼって考えよう.
要するに,目標は
 基礎シリーズ:基本原理の理解
     ↓
 完成シリーズ:入試問題を解く
と変化しますが,数学に臨むスタンス:
 基本原理←(往復運動)→問題演習
は何も変わりません.変わっちゃいけません.“例の”基本事項プリントをつねに頭の中に思い浮かべて,それがまだ無理な人はつねにそれを座右において,テキストの問題中に現れる現象と向き合って行きましょう.そして「基本」と「現象」が結びついたそのときが,「解けたな」と感じる瞬間です.
予習
自力で解けるようにするのが目標ですから,必ず全問題予習すること.だらだらやらずに,入試本番を意識していちおう時間を区切り,自身を「問題に取り組む場」へと追い込んでください.
4題100分くらいが相場と思いますが,120分とって粘り強く考え抜くトレーニングをしたい人はそれでもよいし,80分にしてスピードトレーニングしようというやり方もあります.そして,制限時間が終わったところでいったん切り,その上で「まだ頑張れそうだ.もっと考え抜いてみたい」と感じる問題があれば延長しましょう.
なお,どうにもこうにも予習で自分ひとりでは解けないという人も,「解けないので予習はしません.その分復習しっかりやればいいですよね」では完成シリーズはまったく無意味!!毎週次回のための「ヒント」をプリントで渡しますので,それを見てもいいから絶対に予習すること.(たいしたヒントじゃありません・・・)
また,当該分野の1学期テキストを軽~く復習してから2学期テキストの予習に挑むというのもありです.あくまでも,「軽~く」ですが.
予習をするタイミングとしては,その講の解説授業に近いほど良い. 自分が解いた時の印象が鮮明に残った状態で授業を受けた方が,授業から得られるインパクトは大きいはず.で,その最たるものが「テストゼミ形式」.
もちろん,(1回目の)復習も,授業からあまり間を開けずに行うのがよい. ただし,あくまでも「基本に戻りながら」が必須. 授業からの時間が短かすぎると,解答のホンの上っ面だけ“サルマネ”して満足しちゃう困ったちゃんもいる.要注意.

授業
「どうだ.うまいだろう!」という解法より,生徒さんの視点に立って,現実に試験場で再現可能と思われる解法を重んじるつもり(なるべくですが・・・).前述した「現象を見つめる」「基本にさかのぼる」を私自身肝に銘じながら予習し,授業をせねばと考えています.(もちろん,ほぼ無意識にそれが実行できます)
完成シリーズの授業では,「板書をノートに写して保管しておく」という作業の重要性は,基礎シリーズより薄れます.基礎シリーズのノートは,それ以降の様々な「学習のベース」となる,いわば「自筆の参考書」的な役割がありましたが,完成シリーズでは個々の問題を自力で解くこと自体がテーマとなるので,板書を写すより授業で私が実際に問題を解く様子を観察することに力点をおいてください.くれぐれも「“きれいなノート”を作って自己満足」なんてことにならないように.
なお,各問題ごとに,それが解けるか否かの最大のポイントと思われる箇所に「☆」マークを付けることにします.また,解説の最後にまとめとして,以下の4つを明記します.
 数学的主要テーマ
 前述の☆を一言で
 難易度
 基礎シリーズ参照問題
また,そのまま覚えておいて欲しい典型問題・有名問題には「○典」印を付を付けておきます.復習の際の参考にしてください.(ときどき,いや,しょっちゅう忘れるので,その際には「先生ポイント言ってません」と突っ込んでにゃ)
(難易度:Level 1(易) 2(やや易) 3(標準) 4(やや難) 5(難)・・・「ヒント」を見た場合は1ランクdown.)
たとえ予習時に解けなかったとしても,それが結果として「Level 5」だったならば心配は要らないということ.予習時に,各問題の「難易度が見抜けたかどうか」も非常に重要です.
復習
あたりまえなことがふつうにできれば4題中2.5題くらいは解けるはず.(そして,大学にも受かる.)なのに,なぜか予習では解けない.で,授業聞いたら「あっ,そうか」.これは,頭のほんの上っ面でだけわかっていて,まだ身に付いていない段階で起こる典型的症状.基本へさかのぼりながら復習して,あたりまえなことを繰り返して身に付けるのみ!
ただ,予習に時間をかける分,復習はやや軽めにならざるを得ません.解けなかった問題,あるいは授業と違う解法で解いていた問題を中心として,紙に“殴り書き”し,書いた紙は即座に資源ゴミに出す.その際,「らくがき」「着眼」「方針」なども念頭におき,
 解法の必然性
を味わいながらやるように.
基礎シリーズよりは,“ハリ”=“ベース”としての機能・反復すべき回数は相対的に低下する.とはいえ,予習時に自分で解いた問題の解説が,時間を空けずにプロ講師によってなされるのですから,完全に“メリ”として流してしまうなんてもったいない! 全ての学習に対して言えることですが,完全メリ=0,完全ハリ=1として,その両極端“だけ”しかないのは余りに単細胞的.
例えば・・・ 予習段階では0.5 授業受けて復習する際には0.8 (ただし志望に対して難し過ぎると感じたら0.2) ・・・・・ のように,自分で塩梅しながら使ってね.
最後にキーワード(口癖)の確認
 基本へさかのぼろう.
 あるがままの現象をまっすぐに見つめよう.
 あたりまえなことを繰り返して身に付けよう.

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