MS-126 Thermin [May, 2009]

 これは受注案件です。当初の計画より一カ月以上遅れてしまいましたが、やっと調整を完了しました。設計の詳細は、全面的に参考にしたpageにあります。MS-126の型番も、原形に由来します。
Special thanks to Mr. Arthur Harrison for offering detailed information on his 126 Theremin project.
 
完成品の前面です。操作部は、左から音量のzero点調整、音質調整、音階のzero点調整。
シャーシはLead P-12で、250x60x150mmのものです。
背面。電源入力と出力端子を設けています。
シャーシ上面のpin jackは、音量zero調整時に電圧計をつなぐ端子です。
 内部の様子。最終調整の一歩手前段階のため、最終形では部品の追加・変更があります。回路図が最終形です。回路図は、こちら
 バーニアダイアルは片方が中古。後ろにつながっているバリコンも中古で、シャフトの長さが異なるため、固定位置が違っています。回路構成上、原形と大きく違うのは、455kHzのフィルタと、電源部です。
 前者は部品調達の都合で、比較的広帯域のフィルタを代替に使いました。特性は下にまとめています。slope部に発振器の周波数を持ってくる必要があるので、事前に通過特性を測定しておくべきでした。組んでから周波数を調整するのは手間が掛かりすぎます。カウンタやオシロのプローブをあてると発振周波数が動いてしまうので、cut and tryは非効率です。
 電源部は+Bが約50Vと低いこと、同じ球を6本使うので、heaterの直並列点火が可能なことから、24V 0.8Aの巻線で両者をまかなっています。これは後付の理屈で、手許にあって長いこと使い道のなかったトランスを活用したまでです。定格より負荷が軽く、電圧が高めに出たため、heaterには直列抵抗を追加。+Bは、JA9TTT/1 omの回路を応用したMOS-FET式の安定化電源になっています。


 質問のあった点について、補足します。
  • アースは真空管ソケットの周辺にあるラグ板の固定電極などにそれぞれに落としています。一点アースではありません。バリコンとコイルで構成される共振回路などは、なるべくループが小さく閉じるように配慮してアース線を引き回しています。
  • Heaterと+B電源をトランスの同じ巻き線からとっているため、heaterの接地はやっていません(巻き線の片側を接地すると、+B回路が成立しません)。倍圧整流回路を介して、交流的には接地されています。
  • 写真の通り、真空管ソケットは二種類を使い分けています。shieldのついたものは発振回路に使用し、多少なりとも遮蔽効果に期待するとともに球の固定を狙いました。最近のはcaseがアルミなので、磁気shieldにはなりません。もう一つの袴だけ見えているものは、適合するcaseを持っていないので、このままの姿で使っています。おまけに、このsocketはcenter pinがついていなくて、高周波には向きません。さらに、固定ビスの穴径が中途半端で、M3のビスが通りませんでした。drillで穴をさらってM3が通るようにしてから使っています。何とも中途半端な製品です。だから、今回惜しげもなく使ったと言うことにもなるのですが。
 電源トランスの銘板。測定器から取り外したものを再塗装しています。50年とあるのは、昭和です。  +B電源部。MOS-FETの放熱板はほとんど熱くなりませんが、基板への固定強度を上げるためにつけています。完成した基板はシャーシ側面に固定しています。
階調整のアンテナ。音量用も同じ材料です。100円ショップで売っていたオーブントースタ用トレイですが、2/3くらいの大きさの方が原設計に近いと思います。  音量調整回路の要になるフィルタの特性。信号源はSSGですが、ちゃんとしたlevel meterを持っていないのと、impedanceをきちんと整合していないので、振幅方向は相対値とご理解ください。ここのzero調整の追い込みは、耳で聞いただけでは無理な感じがしたので、電圧計をつなげるように端子を設けました。これで、電圧が最低になる点を探せば、zero調整ができたことになります。
 真空管式のThereminは、これが二台目です。一号機は1970年の作品で、今は跡形もありません。このときのスーパーラジオの部品を組み合わせる回路に比べて、126式の方が安定度に優れると判断して採用しました。+B電圧が低いのは、部品調達が楽な反面、あちこちで無理が利かない感じがします。やはり200V以上掛けて、おおらかな動作をさせるのが真空管式の本筋かも知れないと感じました。
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