MS-1111  6BX7 Parallel Loftin-White stereo power amplifier

 大昔、PC-VANはなやかなりし時代にPC通信を介して共同でアンプを作ろうという企画がありました。そのとき、原型機を予め組み上げて対応したのです。シャーシと主要部品はその後、別の実験機に流用・改造され、結局現役にならないまま棚に眠っていました。棚の片隅から発掘したのを機会に、もう一度6BX7 parallel single amplifierとして復活させたのが本機です。
 せっかくですから、元の回路をそのまま復元するのは止めて、初段管もGTにして見栄えを整えました。回路もSRPPの直結に改め、Loftin-White式を採用しています。今年は171A, 1626と続くMini-Watterで半導体と真空管の混成回路によるLoftin-Whiteを手がけました。学生時代、6B4G, 2A3, 6GA4, VT-52など盛んに作っていたall球の回路に回帰したかったとも言えます。
お断り: このpageは工作の記録を残すのが主目的のため、pageの幅が他のpageより広いままです。
(1) 電源回路
 まだ手許に残っていた6BX7を再利用しようと元の部品と組合せることを考え始めたのはいいのですが、電源トランスのヒータ巻線の容量不足を以前から抱えていました。原回路は6.3V 3Aのトランスを内蔵するというまっとうな対策を取りましたが、もはやそのトランスは他に使ってしまって手許にありません。代案として、中途半端な電圧の巻線を持ったトランスを活用し、DC-DC converterで6.3Vに変換することにしました。
 今はモジュール化されたconverterが安価に調達できるので、簡単に実験できます。本機では10V 2.5Aを整流して電圧変換し、6.3Vを取り出しました。6BX7の片側と、初段管二本をまとめて直流点火しています。これで、6SL7や6SN7のようにheater humを引きがちな球も安心して使えるというものです。H-K間の耐圧に配慮して、直流点火する球も出力管のcathodeにつなぎ、biasを掛けています。




 回路図はこちら。
 高圧電源はLoftin-Whiteにつきもので、初段管と出力管を直結する関係で安定な電源が求められます。例によってMOS-FETによる安定化電源を採用し、初段管に供給するための降圧回路もFETとtransistorで安定化しました。これで、従来は図体の大きな抵抗を取っ替え引き替えしていた直結部の電圧調整が簡単になりました。電圧を決めた後は、固定抵抗に置き換えてしまいます。Choke-coilを省いた代わりにheater用に別のトランスを追加したため、軽量化にはつながりませんでした。実のところはこのトランス、高圧の電圧が不足する事態も想定して、30Vほどの電圧かさ上げにも使おうと考えていました。組み上がった結果は、電源トランスだけで必要十分な電圧が得られ、これ以上安定化回路の入力電圧を上げても熱になるだけと結論して、巻線を遊ばせています。
 高圧用の電解コンデンサは原回路のままで使っていますが、通電前に再化成し、leak電流も異常ないことを確認しています。そのうちに劣化するでしょうが、そのときはあっさり新品に交換することにします。

(2) 信号系
 直結回路ですから、信号系と言っても大した規模ではありません。

 6SL7をSRPPで使い、上下の球の中間から出力管のgridに直結する方式です。Gainが少し余り気味でもあり、6dBの負帰還を32Ω端子から掛けました。Mini-Watterに比べると出力トランスがそれなりの品質のものですから、負帰還を掛けても変なpeakが出ることもなく、格の違いを感じるところです。


以下は2012年3月 追記
 しばらく慣らし運転しているうちに、問題に気づきました。球が暖まり、ampとして動作が始まる頃、L-channelだけボコッという雑音を出すのです。初段と出力管のwarm-up時間の違いによる過渡現象だろうと見当をつけたものの、対応策がことごとく外れました。

(1) 初段の+B電源供給を遅らせて見ました。過渡現象が起きるtimingが変わるだけで、雑音は消えません。

(2) L-channelは初段がDC-DC converterを介したDC点火、出力段は電源トランスの巻線でAC点火になっているため、heaterの暖まり具合に差が出ると推定。初段管も出力段と同じ巻線から取ってAC点火にしてみました。これでも過渡現象は防げず。

(3) 芸のない話ですが、雑音がおさまってからspeakerをつなぐmuting回路を付加。過渡現象は起きるものの、雑音としては聞こえません。
 
 石のampでよく使っていた回路を組み込みました。この回路の電源は、電源トランスの5V巻線を倍圧整流して作っています。relayの駆動電圧が12V弱となって、適切な電圧配分になりました。
 

 このアンプはJune, 92と書いてある原形時代から結構発熱が大きいのです。真空管周辺と半導体につけた放熱板の直下に当たる部分の裏蓋に通気孔を設けました。裏蓋の固定ビスが前縁はM3、後縁はM4になっているのは、これまでいろんな回路の試作を繰り返した間にこのシャーシがいろいろ苦労したことを物語っています。
 通風を考えて高めの脚をつけてみました。
 健康診断の結果です。mini Watterとは出力トランスの素性が違うのが見て取れます。機材は、低周波発振器がKenwood AG-204, 歪率計がKenwood HM-250, True RMS VoltmeterがHP 3403Cです。下は8Ω負荷に750mWを出力しているときの周波数特性です。
 次は歪率特性です。6dBの負帰還を掛けたので低歪になりました。

Mini-Watterの場合全部の楽器が鳴っているような局面で厳しいものがあったのに対し、本機は十分な余裕を感じさせます。
 245でも引っ張り出してLoftin-Whiteを組んでみたくなりました。
これまでVT-52は愛用したことがありますが、245/45は実績がありません。
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