MS-1106  171A single mini-Watter stereo power amplifier

 ぺるけさんが提唱されているmini-Watterのうち、特に興味を惹かれたのが171Aによる作品でした。Arizonaの店で中古管を買ったのが1989年、$12でした(当時の為替rateでは1,700円ほどだったことになります)。もとより、71Aとは1970年代からのつきあいで、学生時代はEF86で駆動するampをしばらく愛用していました。当時は、馬力はないが美しい音だと思っていたところに、案外元気な音がすると言うぺるけさんの記事を見て、いつか鳴らそうと思っていた171Aを引っ張り出す決心をしました。
 増幅系の基本回路はlinkしているpageそのままで一部手持ち部品の都合から複数の抵抗を組み合わせたりしているだけです。半導体も手持ち品の活用。2SK30Aは秋月でまとめ買いしたなかから結構な確率で適切な電流値のものが拾えました。電源系は171A/71Aへの思い入れを反映した安定化電源になっています。
 信号系のLoftin-Whiteは想い出のある回路方式で、これまでに6G-A4, 2A3, 6B4G, VT-52などを手がけました。
シャーシはすでに穴がいくつか開いていた手持ち品で、大穴の位置の都合から、最適な部品配置になっていない部分があります。出力トランスは一次側の端子が上部にむきだしになるため、100円の木製coasterを乗せて感電防止としました。
シャーシの背面は結構混雑しています。ここも既存の穴を流用したために、多少無理な部品配置を強いられました。
 最初の画像は裏蓋を装着した状態の最終形です。すでに試運転期間に埃がたまり、シャーシ上面が汚れています。単純明快なので、操作部の表示は省略しました。

 回路図はこちら。
 
 増幅部の基板です。出力管とシャーシの縁との間隔が十分確保できず、平ラグを置くのは無理でした。それに横方向にも余裕がなく、平ラグでは端子数が足りません。
写真の左半分は極力部品を詰め込んで実装したため、トランジスタと抵抗が接近しすぎています。右半分は、その反省から少し余裕を持たせて組み上げました。
位相補償の1,500pFのコンデンサは妙に高級品ですが、手持ちがあっただけのことです。トランジスタもF packageの品種で、これは電圧checkに便利だと屁理屈をつけておきます(剥き出しのcollectorが出力管のgridと同じ電位)。
 こちらはA電源。フィラメントは直流点火しています。ここもシャーシ背面に実装した部品との間隔が厳しく、現物合わせで部品配置を決めました。6.3Vを整流して安定化した5Vを作っていますが、ICのばらつきで実測では4.90-4.95Vが出ています。適度に低めならよかろうと思うし、何より低雑音の電源が実現したので満足です。
Low drop outの三端子regulatorはF packageのしか手持ちがなく、さすがに放熱が厳しそうだったので、65×10mmの銅板をはんだづけしています。周囲の部品に接触しないようにくねくね曲げておきました。
 Pilot lampの白色LEDもここから点火しています。
 電源トランスとシャーシ前縁との間に押し込んだB電源の安定化回路です。いつものMOS-FET方式で、290Vを得ています。
初段に電源を供給するdecoupling回路もこの基板に実装しました。
 立ラグで組んだ出力管のバイアス抵抗が左に、電源の整流部(ダイオードと平滑コンデンサ)が右に見えています。平滑コンデンサは容量が大きめですが、例によって手持ちの都合です。
 整流出力電圧が高めに出たこともあり、ダイオードには100Ωを直列に入れて、多少の電圧降下と電源投入時のrush電流防止をはかりました。
 健康診断に相当する基礎dataを取りました。機材は、低周波発振器がKenwood AG-204, 歪率計がKenwood HM-250, True RMS VoltmeterがHP 3403Cです。下は8Ωに1Vを出力しているときの周波数特性です。
 次は歪率特性。TektronixのAA5001も持っているのですが、震災の後遺症で簡単に引っ張り出せないところに鎮座しているため、安直な機材選定になりました。
 当初はゲッタが管壁全体に飛んでいる球を二本並べる計画でした。一本が猛烈なhumを出すことがわかって、仕方なく中の見える球を片側に入れています。これはこれで見る楽しみがあると自分を納得させました。もう一本の予備球はRCA製で、管頂にlogoが入っている以外、中を見るのに障害になるものがありません。
 S管が寿命を全うするときが来たら、STの71Aの出番です。類似のLS8も持っていますがUF socketへの変更が必要で、すぐには代替が効きません。










[余談]
 これらの球を供給してくれたAES社を2000年に訪問しました。下の写真はそのときのものです。"いつも日本からやっかいな要求をしてくるのはお前だったのか"と言われながらも、せっかくの機会だから棚をくまなく見て回ったらと親切なお誘いを受けました。出張の合間で、持ちにくい荷物を増やせる状況になかったため、断らざるを得ませんでしたが。

 その後の改造と測定  April, 2013
 このアンプ製作のきっかけをくれたぺるけさんがクロストーク改善策を発表されました。ちょうど171Aの片側が劣化したのを契機に追試をすることにしました。造後の回路図はこちら。なお、OrCADの操作ミスで元の回路図のdataをなくしてしまいました。記録の意味で、改造前の回路図も上に残してあります。改造後、crosstalk特性を測定した結果が以下です。改造前のdataがないので、比較はできません。
8Ω負荷に片側は1Vを出力し、被測定channelに現れる漏れ信号をミリバル(HP 400E)で測定しました。測定時はST管の71Aを実装しています。

表題の写真の手前に写っている球が劣化しました。この写真は、とっておきのRCA製が代役として右側にいます。S管の在庫はこれで最後です。
 これでしばらく運用し、次の段階は71Aの登場になります。
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