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生徒列伝⑨　Yちゃん

　境界線域と言う言葉があって、小学校に入学するとき試験があるそうだ。その時、特別学級と普通学級に振り分けられる。Yちゃんはその時、特別学級に行くように勧められたが、お母さんがどうしても普通学級でお願いと頑張ったという女の子が来ました。
　もちろん勉強が遅れているから来たわけだけれど、体育もできなかった。ちょうどその時、コアには全国で8位と言う中間距離走の先生が来ていて、スタートを見てもらった。指導されると早くなる。小学校ではリレーの選手にノミネートされたが、いよいよ選手を決める走りの時に実力を出せなかった。プールも家族で行くとすいすい泳げるのだが、学校のプールでは3mも泳げない。何だか変だと思って聞いてみると、どうもみんなの前だとやっちゃいけないと思っているみたいだった。そう体に刷り込まれていて、体が動かないということが分かった。カウンセリングや話をした。ケーキを作るのが好きだったので、私とケーキ対決をした。それぞれ得意なケーキを焼いて来て、皆にどちらが美味しいかを決めてもらう。私はバタークッキーを焼いた。Yちゃんは本格的なパウンドケーキを持ってきた。もちろんYちゃんの勝ちであった。
　高校では料理科のある学校へ塾推薦で入ることができた。それから彼女にミラクルが起きるのである。自信を持った彼女は成績もどんどん上がってきて、四年制大学に入学した。卒業後彼氏もでき、結婚して子供もいると言う。それまでのお母さんの心配と言うか努力には頭が下がるが、本人もよく頑張ったと思う。
　その後、境界線域の子供たちを何人か勉強を見る機会があったが、頭は良いのに生活習慣ができていない子や、小中高校時代を特別支援学校で過ごすと、そこから抜け出せない子もいて、この問題はなかなか大変なものであるとも思われる。

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