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塾コア 先生・生徒列伝⑦　T君

　絵の教室、小5のT君が教室に来て「先生、ミヤモトの前で猫が倒れている」というが、当時我家にはすでに10匹以上の猫がおり、もう勘弁という状況だった。聞かなかったふりをしていると「先生はいつも命は大切にしろ」なんて言ってるのに、猫が死にかけているのだよ」とくる。痛いところをつかれて、しょうがなく家人に言うと娘と二人で出かけていった。そこは近くのドラッグストアでお店の前の人通りの多いところで猫は横たわって居り、死にそうな様子にもかかわらず、お父さんと子供の二人連れが猫に触っていたり、抱っこしたりしている。家につれてかえって飼ってくれるのかと思っていると、ぽいと棄てて行ってしまったらしい。それで、つい家につれてきてしまった。長い野良の生活はしているが、元は誰かの飼い猫であったらしい。その猫のことを教えた生徒の名前から○くみ、○くみ、○くみ、”くみた”となって名前が決まった。さて、その猫を病院に連れていくと、お腹に虫がいっぱいいて、猫エイズにかかっていて、その他の猫と一緒にすることができなかった。一階の教室の一角に2階建てのゲージを買って飼うことにした。2週間ほどは寝てばかりいたが、3週間目から胴輪をつけて散歩に出た。よく歩くのである。２ｋｍでも３ｋｍでもどんどん先に立っていく。ひょっとすると元の飼い主の家に帰るのかと思っていたが、どの方面に向いて行っても、ひたすらによく歩いた。1時間ほど歩いて、帰ろうと捕まえると手に噛み付くこともあったが、そんな時はすぐに耳を伏せて、眼を細めるくせは以前叩かれたことがあることが思われた。その後、”くみた”は軽井沢で出奔して行方不明になるも、我が家の娘によって見つけ出される。などの大冒険もあったが、いつのまにか、ちょっとしたドアの開け閉めの隙間から家を飛び出し、それ以後戻ってこない。なんだか猫列伝になってしまったが、T君も中学生になって絵の教室を卒業した。

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