彼女は絶対いる。待ち合わせの時間より早く。 僕を待っている。 『ヒメゴト』 僕だって遅刻なんて無粋な真似はしない。いや、ワザと遅れて 少し寂しがらせたりなんて他の子にはした事も あったけど。 からかって遊ぶなんて彼女には出来ない。 でも同じかな?早く来ている姿を見る為に早く来て待っている。なんて。 でも待っている間の彼女は本当に可愛いんだ。 鏡を見て手直しして、 周りのカップルらしき2人を見ては羨ましそうに、でも微笑ましい笑顔を見せて。 ちょっとだけ頬を赤らめて見てる。 そして「僕が居ない」事を寂しがる様に少し俯いて。 そんな仕種1つ1つが愛おしい。 さて、待たせても可哀想だ。そう思い直してイッキは「彼女」に向かって足を進めた。 待ち合わせは公園、時計塔の下。イッキの居たベンチからは曲がればすぐ目の前である。 緑が多いお陰か、時計塔からは死角となっている為彼女にはまだ見つかっていない。 まもなく時計の針は11時25分を示す。待ち合わせの5分前。つい先日、お昼を食べて出かけようと 予定を立てた。 イッキ行きつけのカフェで、コーヒーはおいしいし、ランチメニューも取り扱っているから。 と、話がまとまった。 「ごめん、おまたせ」 「イッキさん!いいえ、今来た所なので」 いつもの遣り取り。ほっと安心したように微笑んで。「気にしないで下さい」と手を左右に揺らす。 「今日も可愛いね。そのワンピース、前に一緒に買い物した時のだよね?似合ってる」 気候もようやく落ち着きを取り戻し、時季相応の温度となった。 今日は小花柄で細かいプリーツのボルドー色ワンピに白のカーティガン、ファーティペットを合わせている。 イッキはというと、細身のカーキのジャケットにシャツ、黒のパンツと普段よりもラフにまとめている。 サングラスはしていない。 デートでこんなにラフなのは初めてかもしれない。これまでの燕尾ジャケットはいわば武装だ。自分を保つ為の。 気を許せるって凄く体が軽い。手を抜いたわけじゃないのに。他のどんな事よりも緊張の面持ちで選んだのに。 心地の良い緊張感だ。 「あ、ありがとうございます。イッキさんも普段と違う格好ですね。そういうのも似合ってます」 でも、買った物までよく覚えてますね。とぽそっと言った。イッキを見る目は「他の子にもそーやってきたんですか?」 と、訴えているようだ。 「そりゃそうだよ。僕は君しか見てないもの」 他の子と同じに扱っているんじゃない。君の事だから覚えている。 「ごめんなさい。ただのヤキモチです」 どんな時もイッキさんは相手に対して向き合ってましたから。不真面目だけど、不誠実でない。ちゃんと知ったから 好きになった。 「あんまり可愛い事言うと我慢きかないよ?僕」 おどけて言ってみたけど、かなり本気だ。顔を真っ赤にする君。手を繋ぐだけじゃ足りない。 強く、強く抱きしめたい。息が出来なくなる程キスしたい。 でも、いきなりは困るだろうから。 こんなにも君を求めている事はもう少し秘密にしておこうかな 「お昼の後は、君が僕の家へ来てから必要になりそうな物、この前見切れなかった物見に行こうか」 「はい!!」 彼女が家に来て、秘密を少しずつなくしていく。そんな日まであと少し。 end スキャナが壊れて、漫画描いても読み込めないので小説で消化したアムネシアへの愛。 小説っていうよりイッキの独白ですが。ピクシブにもupさせて頂きました。 書いてから日にち経ってのupですが、未だに冷めないアムネ熱。FDも発売決定やっふい♪ 2011/12/04 |