「香穂ちゃんも可愛いよ」


なんて言われて嬉しくないわけないでしょう?女の子だし。まして・・・
火原先輩に言われてしまったのだから。




「合宿以来ドキドキされっぱなしだなぁ〜」
一人、練習室でつぶやいた。思わず声が出てしまったというところか。
誰かが入ってくるわけでもないので独り言には最適であろう練習室。まさか自分が入り浸ることに なるとは思わなかった。

「ひのかほこっ」
「リリ・・・どうかした?」
お前の音がしたから来てみたのだっ!と陽気に答えた。成長しただの今の部分はもっと練習しろ だの言ってくれる。分かっているけど頭はそれどころじゃない。火原先輩でいっぱいになりそうなんだから。


「でもお前の音は綺麗になっているのだ」
一通り注意された後、リリが言った。
「そうかな?」
深みが増したのだ。きっと音楽という新しいモノに触れて、参加者達と関わって経験していくことで
成長しているのだ!と嬉しそうに言い残し姿を消した。


・・・経験・・・ね。合宿は経験しすぎたと思うけど。だって意識せずにはいられない。

コンコンとノック音が響き、香穂子はドアを開けた。
「香穂ちゃん!ごめん、練習の邪魔しちゃったかな?」
噂をすれば何とやら。火原先輩が立っていた。ここで練習してるって聞いて合奏に誘おうと
思ってと言った。
「時間も少ないから少ししかできないけど・・・」
「良いですよ、やりましょう♪」
合奏といえば・・・上手く弾かなきゃと行き詰まった時、先輩に助けてもらって、対決の時は
助けてもらったなぁ。合奏があんな楽しいとは思わなかったのだ。またやってみたいと思っていたから
この誘いは嬉しかった。






「今日は誘ってくださってありがとうございます」
「ううん!こちらこそ一緒に合奏してくれてありがとう」
夕日に照らされて少し紅い、オレンジ色の火原先輩の笑顔。見ただけでドキッとしてしまう。
今はセレクションのこと考えなきゃいけないのにな・・・。どうして、いつもドキドキするのは
火原先輩なのかな・・・?




「香穂ちゃん、今日は遅いし一緒に帰ろ?家まで送っていくよ」
「えっでも悪いですし」
ブンブン手を振って断った。
「い〜の!危ないし。俺が香穂ちゃんと一緒に帰りたいんだっ!ダメかな?」
しゅんと耳を垂らして窺っているような先輩に思わず可愛いなんて思いながら

「じゃあ一緒に帰りましょうか」
「やった♪・・じゃあ帰ろうか」
「はい!」



ドキドキするんです。先輩にだけ。ただの知り合いってわけでなくて、ただの先輩って
存在でもない。じゃあ特別かと言われたら分からないけれど・・・。

ねえ、この気持ちはなんて名前?





後書き
香穂は別に自分の気持ちに疎いんじゃなくて、まだ気づいていない設定でお願いします
・・なんて言い訳からしてみたり。まあ、どちらかと言ったら疎そうに解釈してますが
わたしの場合。設定はちょうどコミック4巻で。文章書くの久々で言葉って何だってくらい
悩みました。だからヤバイです。