02.痛みを伴う予感 「そういえば、拓磨の初恋って誰?」 穏やかに太陽の日差しが差し込んでくる時。 何故か自宅でゴロゴロしながらも唸ってパズル雑誌と睨めっこをしている守護者に珠紀は問うた。 何もいきなり「初恋って?」と思いついたのではなく、自分が読んでいるファッション雑誌に「バレンタイン特集」で 恋愛関係の記事が並び、初恋は何歳というアンケートグラフまで載っているからだ。 世間は甘いチョコで一杯。鬼斬丸だ鏡だと荒々しい事は本当に終わって、女子高生らしいドキドキを 味わってみたいのだ。 が 当の相手は恋愛には疎く、あろう事か恥ずかしがって嫌がりそうだ。 何より、この村へ来るまで“美鶴ちゃん”という可愛らしい女の子がいたのだ。 しかも、明らかに自分より女の子扱いを未だにされている。 『彼女』としては非常に面白くない。 「おっおまえなぁ」 さっきまで睨んでいたパズル雑誌は見事にグシャっとなっていた。 結局の所、誰の名前が出ようと自分でない限り傷つくのだ。例え美鶴で『可愛すぎるし、女の子らしいモンね。仕方ない』等と 正当化しようとズキズキと心は痛むのだ。 それでも聞かずにはいられないのは女の性分だろうか。 「いいじゃない。誰?」 「あーいや、何だ。そのぉー…あ”−」 嘘でも私だと言ってくれれば、この場は丸く収まるというのに。なんて不器用な人。 「あー…子供の頃は、まぁ、運命を受け入れるだけで精一杯でだな」 ゴモゴモ、しどろもどろながら言葉を選び拓磨は話す。紡ぎ出す言葉は珠紀を思いやっての遠回しな言葉。 確かに恋愛どころではなかったのだろう。それでも惹かれてしまう恋心が、拓磨に自覚があろうとなかろうと、あったのだろうと 伝わってきて、チクリと珠紀の心にキズがついた。 「俺のことより、お前はどうなんだよ?」 「え!?」 まさか聞き返されるとは思わなかった珠紀は妙に動揺した声を上げてしまった。 「えっと、幼稚園の時の子かな…?名前は忘れちゃったけど」 やましい事があるわけではないのでサラっと言ってみた。やんちゃで明るく、誰にでも親しげだった。と、覚えている 印象を並べた。 どうやら、それが面白くなかったのか 「ふーん」 不機嫌さが明らかに現れ、そっぽを向いて拓磨は返事を返す。 「でも、今は拓磨しかいないよ」 頬杖を着いていた体勢から、拓磨は顔を上げて珠紀を見た。 あ、ようやく私を見た。パズルでも外の景色でもなく、私を見てくれた。 これだけで満たされるのだから恋する自分は単純だ。 「俺もお前だけだ」 小さくって聞こえるか分からない程の囁きだけれど、珠紀にはしっかり届いて それから自然に互いの身体か近づいて、キスをした。 もう何度目か分からないキスは先程痛みを訴えた心を癒やし愛されている実感を互いに与えた。 甘く幸せな空気が2人を包む。 今後も痛みを伴いながら、2人で未来を紡いでいくのだろうか。それはカミサマにすら分からないけれど… うん。なんだ。中途半端というか消化不良というか。 脳内では拓珠で溢れていて勢いに乗ってみても、手が追いつかなかった。 2010/01/31 |