イギリスのキングのバー《イリュージョン》に不知火舞がすごい勢いで飛び込んで来た。
舞 「キ、キングさん!大変です!!」
店じまいの準備をしていたキングは、その迫力に呆気に取られながらも言葉を返した。
キング 「い、いきなり何だい、舞!」
舞 「そ、それが・・・今回のキング・オブ・ファイターズのことなんですけど!ユリちゃんが一緒に組めなくなってしまって!」
キング 「えっ!?ユリが?」
舞 「そうなんですよ!ユリちゃんったらお父さんの策略にはまっちゃったみたいで、だから私達ユリちゃんの代わりを探さないと、大会に出場できないんです」
キング 「・・・そう、ちょうどよかったのかもね・・・」
舞 「え・・・?」
キング 「・・・舞。実はね、言いにくいことなんだけど・・・」
舞 「何ですか?」
キング 「今回の大会、私は出場を見合わせたいんだ」
舞 「えっ!?何ですって?」
舞は自分の耳を疑った。
キング 「・・・つい先日、弟が交通事故にあってね」
舞 「弟さんが!?」
キング 「ああ、大したことはないんだけれど、身内は私一人。あの子のそばにいてあげたいんだ。・・・だから、今回の大会はすまないけれど・・・」
舞 「え、ええ、分かります。弟さんが一日も早く回復するように祈ってます。キングさんも大変だろうけど、頑張って下さいね」
キング 「舞、悪いね。力になれなくって。あっ、そういえば舞の彼氏の・・・確か、アンディだったっけ。彼はどうなんだい?」
舞 「・・・アンディはいつもの三バカトリオで出場なんです・・・」
キング 「あっ・・・そう、そうなのか・・・。ど、どうだい、今晩はここに泊まっていくかい?」
舞 「・・・いえ。近くにホテル取ってるんで、気を使わないで下さい。じゃあ・・・!」
そう言うと、舞は店を飛び出した。
キング 「あっ、舞!」
舞は寂しそうに、街を歩いていた。
舞 「また、一人ぼっちになっちゃったなぁ・・・」
何だか自分がみじめで、ふいに目頭が熱くなる。
気が付くと、涙の雫がポタポタと落ちていた。
舞が出ていった後、イリュージョンで一人佇んでいるキング。
キング 「キング・オブ・ファイターズか・・・」
店のTVで放送している派手な大会の宣伝をキングが見つめていた。
翌日、舞は宿泊していたホテルから日本に帰るための準備をしていた。
舞 「ハア〜、他にもいろいろあたってみたけど・・・みんなダメだったし、今回は出場できないなぁ・・・」
そう言うと、舞は大きなため息をついた。
「ピンポーン」
ふと、玄関の呼び鈴が鳴った。
舞 「は−い。ボーイさんかしら?今出ま〜す!」
しかし、玄関を開けた瞬間、「ブオッ」と鋭い拳が舞の顔面めがけて飛んできた。
舞は、間一髪でそれをよけた。
舞 「な、何なのよ!」
舞は一瞬何が起こったか分からなかったが、どうやら相手は女であり、技は古武術のようであった。女は後退りする舞を押し、じりじりと廊下に上がってきた。
舞 「トウッ!」
気合いと共に、舞はキックを繰り出した。その攻撃を女はするりと避けた。
舞 「まだまだっ!」
舞はそこに、間髪を入れずに技を重ねた。
舞 「龍炎舞!」
炎が袴姿の女に襲いかかる。
この攻撃には虚を突かれたのか、袴姿の女はかろうじて防御したが、たじろいだ。
「今だわ!」
舞 「トオーッ!」
袴姿の女へ向けて舞が突進していく。
必殺忍蜂である。
「ガシイッ」
女は突進してくる舞をガードした。そして、舞を掴みかかりにきた。
その瞬間、
「はい、そこまで!」
二人はその声のした方を見た。玄関に一人の女性が立っていた。
舞 「キ、キングさん!」
キングの姿を見ると、袴姿の女は舞を掴んでいた手を離し、言葉を発した。
女 「手荒な真似をしてすみません。私、藤堂香澄といいます。キングさんに紹介していただいて舞さんに会いに来たんです」
舞 「え?キングさんが!?」
キング 「ああ、私が誘ったんだよ。チームメンバーにね」
香澄 「はい、私、キング・オブ・ファイターズに出場したかったんです。でも、私、それだけじゃなくて、出場するなら勝ちたいんです。
今の手合わせで、舞さんがとても強いと感じました。これなら、優勝も夢じゃないって思いました」
舞 「は、はあ・・・それで、キングさんはどうしてここに?」
キング 「う、うん。弟に全て見透かされちゃってね。今の魂の抜けた姉さんなんか見たくないって。
闘っている生き生きした姉さんの姿が見たいって。あの子は闘っている私が誇りだって言うんだ。
出場して勝ち抜いて、そして優勝してほしいってね。・・・今、弟のために私がしなければいけないことは、
ベットの横に付き添っていることよりもキング・オブ・ファイターズに出場し、そして優勝することだと気が付いたんだ」
舞 「そ、それじゃあ、キングさん・・・」
キング 「ああ・・・!当然出場するよ!」
舞 「やっ、やったぁ!キングさんが一緒に闘ってくれるなら、もう言うことなしだわ!」
キング 「それじゃ、話は決まったわね!舞!香澄!出場するからには優勝を狙うわよ!」
香澄 「もちろんです」
舞 「当然よね!キングさんの弟さんのためにも!」