「・・・で、そこに現れたのがソニックだったんだ。」
午後のティータイム、テイルスはエミーとクリームと一緒にいた。二人が工房まで遊びに来たので招き入れ、今はこうしてお茶をしている。
話題は色々移っていったがしだいにソニックに出会った頃のことになり、今テイルスが話し終えたところだ。
「私はね、ネバーレイクに行ったら・・・」
「ワタシはお母さんを助けようとして、逆に捕まったところを・・・」
みんなそれぞれ助けられたのが知り合うきっかけだった。ソニックはいつでも誰に対しても優しいからそれが魅力で憧れるのだ。
「カッコいいよね、ソニック。」
慕う気持ちはみんな一緒だから一同はうなずいた。そんな中クリームがポツリと言った。
「ソニックさんはどういう人に憧れていたんでしょうね。」









その夜にソニックは工房に突然やってきて一晩泊めてほしいと言った。テイルスは歓迎したが、これは尋ねてみるいい機会と考えていたからだ。
だから今日最後におやすみを言う前にソニックに聞いてみた。
「ソニックは小さい頃、憧れていた人とかいた?」
ソニックは小さく唸ってから答えた。
「忘れちまったなぁ、そんな昔のこと。」
「そう、わかったよ。それじゃおやすみ、ソニック。」









忘れたというのはいつもだったら適当に誤魔化すときによく使うフレーズだ。だからテイルスには真面目に答える気がないと取られたかもしれない。
しかし今日に限れば思い出せなかったのは本当のことだ。憧れは確かにいた。
それがはっきり解らない今は、気になって眠れなくなってしまっている。ベッドの中で悩んでいるうちにのどが渇いたから起き上がり、
水を飲もうとキッチンに向かって行く。途中、地下への階段から灯りがもれているのが見えた。
まだテイルスが作業でもしているのかと思って覗いてみたが姿はなかった。部屋は電灯ではない何かで照らされていたのだ。
それがなにか確かめていたとき、トルネードⅡの機首が光っているのを見た瞬間、目が眩むほどの光に包まれた。









目を開けたら景色が一変していた。青空が広がり、緑の芝が一面を覆い、南国の木々が生い茂り潮風がふわりと香る。
すぐに何処にいるのかがわかった。故郷のサウスアイランドだ。何が起こったのか、なぜここにいるのかは全くわからない。
でも懐かしい感触が心を浮き立たせ、ソニックは走り出した。
しばらく帰らなかったせいか景色にかすかな違和感があったが、その原因はあるはずのない光景としてはっきりと目の前に現れた。
切り立った高台にある大岩。それは小さい頃に地震で落下したはずだった。それが意味することは。
「ここは、俺の記憶の中のサウスアイランドだ。」
その下に人影が見えた。









子どもが数人そこにはいた。そして自分の姿を見つけた。でもそれは今の自分より一回り小さい自分。誰かがしゃべりだした。
「今日こそこの岩がおっこちてくるぞ。そしておれたちがせいきのしゅんかんの目げき者になるんだ。」
「いやきっとおちてこないよ。」
すぐに誰かが反論しだして落ちる落ちないだのとぎゃあぎゃあ騒ぎになった。その様子を見てソニックは思い出していた。
こうして友達と高台の下に集まって遊んだことを。でも後にここに来なくなった理由はやはり思い出せなかった。
「ぜったい今日落ちる!ぜったい!」
喚いたのは自分だった。なにを根拠に主張しているのか、見てて恥ずかしかった。また同じように周りから非難の声が上がる。
揺れを感じたのはその時だった。









岩はバランスを失い子どもたちに向かって落下しだした。ソニックは超音速で飛び出し一瞬で子どもたちを抱え込み危機から救い出だした。
間一髪。岩は轟音を上げ地面と衝突した。ほっと息をついたとき、誰かが叫んだ。
「岩がころがってく!」
高台のふもとは自分たちが住んでいる集落があるのを思い出した。岩はその方向に向かっている。急な斜面は岩をさらに加速させた。
ソニックは強く地面を蹴り出すと岩にむかって得意のスピンアタックを命中させた。その岩の中心から輝くものが出てきた。カオスエメラルド。
その輝きはあっという間にソニックを包み込んだ。そのとき最後に自分の顔を見てソニックは全て理解した。









工房に戻って来た。ソニックは複雑な思いだった。まさか憧れの人物が自分自身だったとは思いもしなかった。
このことをテイルスにそのまま言う気にはなれず、ソニックはどう伝えるべきか悩んで、そのうちに太陽は上っていき、
ついにはてっぺんまで昇っていた。
「テイルス、昨日寝る前のときの話だけど・・・」
「思い出したの?」
目を見開き意外そうな表情をした。やはり誤魔化したと思われたようだ。
「俺には成りたい自分がいたんだ。努力して少しずつそれに近づいていって、そして成れたときにそれは憧れじゃなくなった。
だからすぐに思い出せなかったんだ。」
「それが今のソニック?」
「そう。だからテイルス、憧れに向かってかんばって行けばいつかきっと、成りたい自分に成れるんだぜ。」
ここに実例がいるからな、と。テイルスは元気良く、うん、と答えた。そのときのテイルスの輝いている瞳は、過去の自分と同じ光を放っていた。



































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   ふとした思いつきから書き始めた作品。
   勢いだけで描いたので、やや読みにくくなっています。でも直す気ナシ。

   読んで頂きありがとうございます。