コンコン。
工房の窓が叩かれ、外を見ればソニックが居た。
何か用事かな。扉を開け外に出たが、彼はもう遠くにいた。
チラとこちらを見やると、また駆けだした。

「あぁ、待ってよ!」

あわてて追い駆けた。走りながら見る彼の背中はどこか懐かしかった。



トントン。
鳴るはずのない自室の窓からの物音にはっと息を飲む。
侵入者か、警戒しつつ目を向けると、そこにはソニックの姿が。
目が合った瞬間に彼は窓から離れた。

「何だと言うのだ……!」

少し出掛けると言い残し彼を追う。わざわざこちらまで来てどうしたのだろう。





追い駆ける。到底追いつけない。
でも見失わない。速度を加減している。
振り返って。見失わないように。
後ろにくっ付いて行く。彼はいつも先を行く存在。

息が切れる。脚が重くなる。
まだ追い駆ける。まだ走り続ける。
彼は走るのが好きだ。彼は走るのが得意だ。
どこかへ案内しているみたい。どこかを目指しているようだ。
何も言わないけど伝わって来る。何も聞かないがそう伝えて来ている。

どのくらい走ったかな。どれほど離れたか。
昨日の今日で大変だったんだけど。今日明日で忙しいというのに。
それでも追い駆ける。だが後に続く。
彼には何か目論みがあるはずだから。

ソニックの後を懸命に追っていたところ、彼は突如立ち止まり、同時に強烈な光に包まれた。


眩さに目を塞いだが、次第に慣れと光量の減少で辺りが見えてきた。
夕暮れの、草木が生い茂る丘の上。眼下には夕闇迫る空と、同じ色の海。

「ここは……?」
「先程居た場所から、移動した?」

隣から声がして自分一人ではないと判明した。
テイルスとブレイズが、共にソニックを追い、気付けばこの場に居合わせていた。
ブレイズも?テイルスもだったか。
二人同時にというのが気に掛ったが、あの光は彼の力によるものだっただろう。
お互い状況を把握し次に訝ったのは、当の本人の事だ。

ソニックはどこへ行った?

「Ladies & Gentlemen! 俺たちのお気に入りスポットへ、ようこそ!」

噂をすれば影、後ろから話しかけられ同時に振り返る。声の通りソニックはそこにいた。
二人も。

「あれ……ソニックが二人?」
「そうか、だから同時に……」

そう。俺たちが二人を呼んだんだ。
どちらともなく答えた。瓜二つの青いハリネズミ達。
だけど少しだけ違和感を覚えた。二人ともそれは感じたが、テイルスがその正体に気付く。
一人は僕と会って間もない頃のソニックだよね。

時空が歪められた今、時間を越えたソニックが二人同時に存在する。
それを利用した彼らは、時も場所も違う二人を一挙に呼び付ける事に成功したのだ。

「ま、少し待ってみな」

そうしてまで目論んだ事とは。
問うが先か、タイミングが来るまで少し待って欲しいということだった。
何が起きるのか二人には知る由もなく、大人しく従った。

太陽はやがて水平線の下へ身を隠し、闇が空を染め上げていく。
暗くなる空、海は隣人との境界を見いだせないでいる。
夕焼けはそれで美しいものであるが、特別感傷に浸るほどでもない。
一縷の光も消え失せようという頃、ソニックがカウントダウンを始めた。


「3……2……1……!」


ゼロのタイミングで指をパチン、と鳴らす。
そして眼下の海が、わっと光り出した。まるで電気を付けたように、海岸線を一瞬ではっきり照らし出した。

「ここの珊瑚は日が沈んだ瞬間に一斉に光り出すんだ」

天然の海底イルミネーション。そのまま小一時間は輝き続けるらしい。
突如光り出して驚いたが、仄かな青さを帯びた光は穏やかで綺麗だった。
海底の隆起も陰影としてはっきり映し出す。赤や緑に輝く部分だってある。
もう少し距離が近かったら、もしかすると泳いでいる魚まで見えたかもしれない。
水面は揺れ一層景観が幻想的に映った。

「綺麗だろ?」

言葉を返すよりも、二人が魅入っている姿の方がよっぽど正しい答え方だった。
綺麗。波打ち際数十メートルほどが柔らかく光り、闇に浮かぶ姿に吸い込まれそうな心地がする。
二人に見てもらいたくてさ。絶対に喜んでもらえると思った。
話しかけるソニックたちだったが、自分らの方がよっぽど嬉しそうな顔をしていた。
その後はさざ波の音だけで過ごし、珊瑚の光が弱りだす頃までこの光景を眺めていた。


「今日のソニック、どうしちゃったんだろう?わざわざ僕たちを呼び出したりして」
「全くだ。私は明日忙しくなると言うのに、間が悪い」

帰りの道すがら二人は話す。先にはソニックたちが歩く。

「明日何かあるの?」
「私の誕生の日を祝してパーティが開催されるんだ。準備で大わらわだったというのに……」
「ブレイズって明日なんだ。僕は昨日だったから、みんなで集まって誕生会したところだよ」

テイルスの言葉を聞きブレイズの歩みが止まる。
どうしたのかな、一瞬考えたけどその様子を見てテイルスも気付いた。
前を歩くのは上機嫌なソニック二人。
テイルスとブレイズは顔を見合わせ互いの答えが一致しているのを確信した。

そういうことだったんだ。その癖何も言ってくれない。
けれど、嬉しかった。
だから何も言わずに、二人で駆け寄って抱きついたり、腕を取ったりしてやった。








































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19thと6thで 祝ったったのはソニ20th祝いの年だからだよっと。
そしてブレイズは14才+6年=20thである(コジツケ