海を見下ろす海岸線の丘。温暖な気候を象徴する、背が高く幹の頭だけに葉を広げている木々。
赤土の大地には草花が生え陽光で緑に輝いている。
対岸の島、対岸の入江の眺めも壮観だ。山々、そこから注ぐ川が巨大な滝となり海へ落ちている。
遠景でも視認できるその規模はさぞ雄大であろう。
潮のかおり、草花の放つかおり、それを熱で浮かす太陽。
柔らかで爽やかな暖かいこの空気を、颯爽と切り裂いて走る青い風が二つ。


草葉を風圧で巻き飛ばし、丘を駆け上がり、崖をも軽く飛び越える。
坂を上り続け気付けば一周する、でも決して速度は落とさず、障害物や段差もテンポよく乗り越えていく。
何にも縛られない自由な風。岸壁の隙間すらスライディングでかわし足は大地を強く掴んだ。

「これぞ冒険って感じだよな。」
「ああ、全くそうさ。しかしここも懐かしいものだぜ。」
「待てよ、俺にとってはまだ始まったばかりの事なんだからな。」
「ハハ、そういえばそうだったな。」

蹴り出した崖は崩れた。一歩間違えば下まで真っ逆さまだっただろう。
一瞬ヒヤリとするが、背中を走ったスリルこそが冒険の面白み。
揺れる架け橋もお構いなく全力疾走。行く手を阻む一輪車型ロボ、鋭い牙を持つ魚のロボ、光弾を放つ蜂型ロボ。
それらもスピンアタックで一撃、誰もその速度すら奪う事は出来ない。

「でも俺には全てが新鮮に映る、毎回がBrand New Adventureなのさ!」
「ここでもそうなのか?俺たちの故郷なのに、知らない場所と同じようにドキドキするのか?」
「そりゃそうさ、なぜならお前が俺の横に居る。こんな風に冒険するなんて思ってもみなかったぜ。」
「なるほどな、確かに。俺だって考えもしなかった。」

競うように走るのに自然と並走していた。横を向けば時を越えた自分の姿。

「今も自由に冒険しているみたいだな。」
「お前が決めた心に従ってきた、それだけの事さ。」
「みんなの事、仲間の事を裏切ったりはしていないか?」
「約束は守る。それは変わっていないぜ。自分で決めた事なのに意外と心配性だな。」

ロボを足場に据えリズミカルにアタック、二人空中を行く。

「それを窮屈に感じてないかと思ってさ。」
「お前は一度でも感じた事があったか?」
「……いや。皆がまた笑顔になってくれる、それが何より嬉しいから手を貸す。」
「そういういことさ。そして助けた仲間がまた力になってくれる。だから俺は自由になれる。」

やっつけたロボの殻からは島の動物たち。みんなこちらに感謝するとそそくさと家へ帰る。

「この世界は限りなく広く、この先も見た事もない冒険が待っているぜ。」
「そりゃ楽しみだ。そのためにもトルネードを用意したんだからな。」
「そうだったな、空へも自由と冒険を求めた事もあった。」
「大空で風になると言うのも粋なものだぜ。」

水面は波頭が立つ度日の光を反射させ、煌めきは目に眩しいぐらいだ。

「未だにエッグマンのヤツは懲りないのか?」
「懲りないどころか毎回スケールアップしてるぜ。この間だって……」
「おっと、その先を言ってもらっちゃ困るぜ。折角の楽しみが薄れる。」
「Oops,危なく口が滑る所だったぜ。」

エッグマンの工場施設が見えてきた。
複雑に鉄骨が組み合わされ立っているそれは黒い煙を放ち島に寄生している。

「もたもたしていると置いて行くぜ!」
「Hey,それは誰に対して言っているんだ?」
「そこに新しい冒険があるんだ、こうしちゃいられない!」
「冒険は待った無しだ、一気に駆け抜けるぜ!」

両者鋭い視線を合わせると、上り坂の切り立つ崖を駆け上がり、同時にジャンプ。
宙に飛びだした二人を取り囲むように七色の光が回りだす。

「さあ、Show Timeの……」
「始まりだぜ!」

黄金の閃光が二筋、鈍色の建造物へ一直線に伸びていった。








































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20周年記念作。
彼らの冒険は今後も尽きる事はない。