Aux.


「ごっ…ごぼおっ」

【海兵技術学校に於ける技能考査風景】
訓練生 榊 悠良(検始<検定開始>後509秒)
同    鈴谷 佳子(同109秒)
同   水無月 青葉(同309秒)

「水無月生徒。呼気が多すぎるぞ。検了(検定終了)までの残り時間を考えろ」
教官の注意が、水中マイクを通じて大プールに響く。
「…」青葉は観察窓の方を向いて、頭を動かして頷いてみせる。やや涙目になっているのが自分でも分かった。
初級訓練過程を終えてのこの考査は、3人一組で受検することになっている。
 「実技T」では、青葉の凡ミスにより減点を余儀なくされていた。次の学科では佳子が大幅に盛り返したものの、最後のこの「実技U」を優等で通過しなければ、3人とも後がない。
 「実技U」は心肺能力と精神の強靭性を測るための実技検定だ。検定時間は各6分間。受検者は大きく深呼吸した上で閉息潜水し、大プールの底にハーネスで両足を固定される。検始から失神するまでの時間の長さに応じて配点が行われるが、ただし固定は6分後の検了まで解除されない。
 率先して先鋒を買って出た悠良は、失神するまで気力で4分半を耐え抜いた。2分おいて青葉が検定開始。しんがりの佳子は閉息潜水は苦手だ。怖いのだろう、じっとして酸素の消費量を抑えようとしているが、肩に力が入り喉もびくびくし始めていて、早くも苦しくなりつつあるのが青葉にも分かった。

 (悠良ちゃん…佳子ちゃん…)
 プールの壁面に貼られた時計の秒針が徐々に回転していくのがぼんやりと見える。 
 (今度はあたしが…あたしが頑張らなきゃ。見ていてね)
 ごぽっ、とまた口から気泡が漏れる。
 青葉の検了まで、あと219秒。